大湊からまた随分長い時間をかけてようやく舞鶴へと俺と神通は帰宅した。
その後、少し遅れて大湊の艦娘達も車に乗って全員が到着。
「うひゃあ…。大きいなぁ…!」
「舞鶴鎮守府へようこそ!
ここが皆の新しい家になるんだぞ!!」
舞鶴鎮守府の門を開くと、本棟の玄関前で待ち構えていた夕立が突撃してきたので、思いきり抱きしめてやった。
なんでわざわざ玄関前で待ってんだよ。マジで忠犬じゃねぇか。
ひとしきりわしゃわしゃしてやると夕立はご機嫌な笑顔を浮かべ、大湊組の子達に元気のよい挨拶をした。
『ぽい!』の一言を挨拶と呼ぶかは疑問だが。
その後、すぐに司令室を訪れた。
俺がいない間の代理として艦隊の指揮を取っていた武蔵がいる。
早速大湊組の皆を紹介するとお前は何を言ってるんだ、と言わんばかりの乾いた視線をくれた。
「待て待て提督、流石にいきなりすぎるぞ!
いやもちろん提督が大湊まで行っておいて手ぶらで帰ってくるのはない話だと思っていたが、まさか全員連れ帰ってくるとは思わんだろう!?」
「いやごめんって。
でも考えてみろよ。人数増えたおかげで資材の回収効率も格段に上がるぞ。
そうなると高難度の海域へもばんばん行けれるようになるぞ。必然的に武蔵の出番も増えるんだぞ」
「おぉ!まぁ人数が増える位どうという事はないな!」
意外とチョロいな…。
それとも長く戦場に出ていないせいでよっぽど鬱憤が溜まっているのか?
まぁとりあえず、大湊組を皆に紹介しなくてはな。
館内放送を繋ぎ、舞鶴鎮守府全域に俺の声を響かせる。
『全艦娘に伝達!至急大広間へと集合せよ!』
〜〜〜
数十分後、大広間へと舞鶴に在籍する艦娘達が集結した。
「テートクー!!Welcome Baaaack!!」
「お疲れ様でした!司令官!」
「お疲れ様です」
帰ってきた提督に皆がちゃんとおかえりって言ってくれるからなんか家に帰ってきた感が倍増して気分がよくなる。
そしてその後、恥ずかしそうに皆の前へと進む大湊組が一人、二人、三人、四人、五人……列が止まらない。
合計 十七名もの艦娘が提督の後ろに続き、一列に並んだ。
舞鶴の人数よりも多い艦娘が入って来たものだから流石に困惑した視線となる。
なんか思ったより多い?
舞鶴鎮守府の意見はソレ一択だった。まさか全員を連れてくるなどと誰が予想出来ただろうか?いや予想してた艦娘はいた。
赤城だ。
(まぁ…提督ならばそうするだろうと思いましたけれど…)
神通さんでも大本営でも、提督の勢いは止められなかったんですね。
赤城は今頃、提督が全ての艦娘を引き取ってしまった事で慌てて処理に追われてるであろう大本営の方々に同情した。
一段高いステージ上へと登ると、大湊組の皆を俺の後ろにつかせて一人ずつ皆へと紹介していった。
「大湊警備府から異動してきた新しい仲間だ!
一人ずつ自己紹介…と、行きたい所だがその前に飯にするぞ!!」
さぁ、お待ちかねの時間がやってまいりました。
舞鶴鎮守府で解決し切れていない問題の一つ、人手不足はこれで解決出来たと言ってよい。
そして、もう一つの問題だ。
それは食の改善である。
もちろん手が空いてる時は俺が作ってるし、金剛や天龍なんかも時々厨房に立ってくれている。
が、料理などあまりした事のない男一人に、そもそも食べる経験が乏しい元ブラック鎮守府の被害者達。
料理の品数も少なくなりがちだったし、インスタント食品が並ぶ事もあった。まぁそれでも皆美味しそうに食べてたけど。
という訳で根本の解決にあたり、大湊に偶然着任していたあの人の出番である。
そうすなわち!!!!
「間宮食堂じゃアァァァァァァ!!!!!!」
俺の号令を合図にして、赤城が物凄いスピードで間宮の前に並んだ!
「アァァァ!テメッ!!なんでそんな早ぇんだよ!!」
「一航戦の誇りにかけて!」
「捨てちまえ!そんな誇り!!」
厨房に立ってくれなんて一言も言われてない間宮は提督がいきなり間宮食堂などと言い出した事にただ困惑し、オロオロと困り果てている。
「え?え?お、お食事…ですか?」
「ハイ!!赤城スペシャルでお願いします!!」
「それは鳳翔しか知らん!!」
困惑を続ける間宮の事などフル無視し続ける赤城はお構いなしに間宮に詰め寄る。
最近舞鶴鎮守府に異動してからというもの、佐世保鎮守府時代の大好物である鳳翔特製の赤城スペシャル(メガ盛りカツカレーに唐揚げ特盛りの赤城専用メニュー)を食べられなくなった反動なのか、それとも元々の性格なのか、食事が絡むと途端に目の色が変わる。
おまけに上記の赤城スペシャルからも分かる通り、本当によく食うのだ。
空母や戦艦の宿命である莫大な補給が必要である事を加味しても尚、赤城はよく食うのだ。
鳳翔が金曜の夜にだけ開く居酒屋鳳翔では赤城だけが出禁食らってる。
どれだけ料理人泣かせな女なのかお分かりだろうか?
いっぱい食べる君が好き、とは言うものの限度があるだろう。
「ご飯を…他の皆に作ってあげてもよろしいのですか?」
「むしろこっちが頼みたい!」
赤城に並んで俺も注文に走る。続けて加賀、球磨、夕立までが間宮の元へと辿り着く。
「私にもその、赤城スペシャル?というものを」
「球磨は鮭の塩焼きクマ!!」
「提督さんとおそろの奴がいいっぽい!」
「ほらな?皆お前の飯を食いたいんだよ」
間宮は一気に嬉しさを隠し切れないニヤケ顔となり、すぐに厨房へと入って調理に取り掛かった。
炊かれた米をよそい、魚を捌き、やがて鍋もコトコトと音を立て始める。
それらを他所目に見ながらも間宮は一つ一つ他の料理を作り、その合間にも新しい注文を受け取るとすぐさま新しい料理に手を染める。
その手つきは思わず惚れ惚れしてしまうほど素早く正確だ。
おまけに超特急で作ってるはずなのに飯が非常に美味い。
う〜ん…流石は給糧艦というべきか…。
弥生とか吹雪に飯を作る時に上達しておきたいし、今度料理のコツとか教えてもらおうかな。
やがて大湊組の駆逐艦達も続々と集合しだし、少しずつ食堂の席が埋まりだす。
時雨と夕立は村雨、白露、五月雨の白露型で集まり、赤城と加賀はお待ちかねの赤城スペシャルを幸せそうに食ってる。(若干加賀は辛そうだったが)
そして、睦月型は特に大賑わいだ。
以前までは弥生一人だけだったが、大湊組が加入した事で一気に姉妹艦が増えた。
睦月、如月、文月、そして卯月。
数えて四人も新しく姉妹が着任した事で、弥生もいつになく笑顔が多いような気がする。
そのうち俺の所からも離れていってしまうのね…。
「ん?お前らは食べないのか?」
ふと視界の隅の方に大湊組の軽巡以上達がその場から動かずに、立ち尽くす姿が写った。間宮の飯に夢中になるあまり気付くのが遅れてしまったな。
「あ、いえ…今は間宮さんも忙しいでしょうし、その、もう少し後から頼もうと思って…」
なるほど、間宮に気を使ったのか。いやもちろんそれもあるだろうが、単純にまだ馴染めていないだけだろう。
そんなすぐに打ち解けるのは中々難しい話だ。ましてや他の駆逐艦との関係も少し気まずい筈の彼女達ならば特に。
「やっぱりお前らは優しい奴だな。でも食える時に食っとけよ?
明日からじゃんじゃんコキ使ってやるからな」
すると川内が首が千切れんばかりの速度で振り向いた。
「夜戦もあるの!!?」
「おうよ!俺の部屋に来ればいつでも夜戦ウェルカムだぜ!…って!ヤバい!!」
反射的に顔を隠して防御の姿勢を取る!
………しかし、待てども待てどもお約束の砲弾が飛んでこない。
おそるおそる薄く目を開けると、神通は呆れたように溜息をついて、目を閉じながら鮭の塩焼きを箸で切り分けていた。
「あ、あれ?怒ってない?」
「今は食事中ですから。後でお説教ですよ?」
神通はそう言って切り分けた鮭を口へ運ぶ。とても上品な所作だ。
でもちょこっとしか口に運ばないのカワイイな。
「…もしかして、この鎮守府で一番強いのって提督じゃなくて神通だったりする?」
「ある意味で言えば、そうかもしれませんね」
神通は提督に少し冷たい視線を送った。
その後、神通からこってり絞られたそう。