スケベ提督と元ブラック鎮守府   作:ルフレオ

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挨拶と味噌汁

 

「吹雪には先に挨拶しているが、この鎮守府に新しく着任することになった。皆に一日でも早く認めて貰えるように精一杯勤めるつもりだ。

よろしく頼む!」

 

『よろしくお願いします!』

 

 僅か九名。

 艦娘達の視線を浴びながら俺は簡単な挨拶を終え、皆の顔を軽く見渡してみる。

 う〜〜ん、やっぱり可愛いなぁ皆。

 

 

 吹雪 時雨 響 弥生 天龍 夕張 加賀 金剛 武蔵

 

 

 皆俺の方を見てくれているし、最初の掴み位は好印象だったかな?

 

 ……あ、いや違うな。俺に集中してる訳ではなさそうだ。

 いや、実際意識の大部分は俺に割かれてるのだと信じたい。

 でも、残りの部分は食事処のある一箇所に釘付けになっている事だろう。

 

 それは俺が作り置きしているご飯と味噌汁である。といっても、具材は豆腐とワカメだけの朝飯レベルの簡素なモノだが。

 

 皆気になって仕方ないんだろうなぁ…。さっきからめっちゃチラチラと見てる。

 

「オ、俺からの挨拶は以上だ。質問とかはあるか?」

 

「では、一ついいかしら」

 

 手を挙げたのは加賀

 この鎮守府で唯一の空母艦だ。

 

「先程から気になっているのですが、向こうで音を立てている大鍋は何ですか?」

 

「お!よくぞ聞いてくれた!この俺様特製のスペシャルミソスープセットだ!」

 

 ………ちょっとノリが寒かったな。

 まぁいいや勢いで誤魔化せ。

 

「安心しな。明日からはもっと腹一杯食べられるように大量の食材と腕利きの料理人を雇ってきてやっから……っさ!!」

 

 ウケ狙いで、完全に滑ったセリフまわしを使って加賀に向かってウインクをしてみせた。

 ウインクを向けられた加賀から帰ってきたのは侮蔑の目でも、生暖かい目でもない。

 

 ただただ、困惑するだけの泳ぐ目である。

 

 

「………俺が作った飯だよ。皆で食べていいからね」

 

 なんか、逃げ出したくなった。

 

「……え?それ、全部私達が、食べていい物なの?」

 

「味は保証しないけど」

 

 その言葉に艦娘達は一斉に大鍋に視線を移した。

 未だ保温状態の味噌汁と白飯。

 今すぐにどうぞ、という感じだが、イマイチ皆手が伸びない。

 多分、号令待ちだな。

 

「冷めちゃう前に食べてくれよ。以上、解散!!」

 

 ダメ押しに手を鳴らすと皆堰を切ったように一斉に台所へ駆け出した。

 

「や、やった!!早く食べよう!!」

「ワァァ…真っ白だ。響の髪と一緒!」

「おいチビども!ちゃんと並べって!!よそってやるから!」

 

 うんうん、ちゃんと分け合ってるようで何より。

 やっぱり仲良くなるには美味い飯を囲うのが一番だな。

 

「食べる時はいただきます!だ!!」

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 私にはあの提督の事が分からない。

 少なくとも、優しい人なのだろうとは思う。

 

 私は空母艦だ、一航戦 加賀。

 艦載機を扱う事で制空権を確保し、敵に超火力をぶつける事が出来る。

 そういった特性から前任の提督は私を戦場に送る事が多かった。

 

 でも、その高い火力を出せる特性を存分に生かす為には私達空母、及び戦艦は多大なる補給が必要だった。

 だが前任はそれを知った上で少ない補給と休息のみで次々と戦場に向かわせた。当然充分な能力を発揮出来るはずもなく、思うように戦果が振るえずにいた。

 そうして帰投するとあいつの暴力が迎えてくれる。

 

『お前達の愛国心が足りんからこんな情けない戦果しか出せんのだ!!』

 

 そんなことを言われても無理なものは無理なのよ。

 そう何度伝えてもあいつは聞く耳を持ったりしなかった。

 

 しまいには『その身体に教え込んでやる!!』等とほざいて無理矢理司令室へと連れて行き、そこで……奴に()()()

 

 今でもあの時の恐怖は消えずに残ったままだ。

 あの気持ち悪い感触も、息遣いも、何もかも。

 

 一時は何物かを胃に放り込む事も身体が拒否していた位だ。

 

 燃料にしてもボーキサイトにしても同じ。

 私は、食べる事が嫌いになっていた。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 でも、目の前にあるコレは…。

 この温かくて美味しそうなご飯とお味噌汁を前にして、一体いつぶりになるか分からない程にお腹が空いたと感じた。

 

 食べる事を拒否していた身体が、その料理を物欲しいと発している。

 

「…い、いただき、ます」

 

 箸で米を摘んで、口に入れる。

 白くてホクホクと湯気が出るご飯の温かさが口一杯に広がった。

 間髪入れずに味噌汁を口に含み、飲み干す。

 

 

 

 

 

 

 ……………美味しい。

 

 

 

 ポロポロと涙がこぼれた。

 情けない。鼻水まで出てきそうだ。

 涙を拭っても次々と溢れてきて止められない。

 せっかくの味噌汁に落ちてしまわないよう、必死になってその涙を拭い続ける。

 

 

 ……私って、こんなに涙脆かったのね。

 

 

「ヘイ加賀!!これ使って下サーイ!!」

 

 目を開けると金剛がハンカチを差し出してくれていた。

 よく見ると私以外にも泣いてる子達がチラホラと。

 私を含む、感極まって泣いてしまった子達に一枚一枚配っていってるのだろう。

 こういう嬉しい気配りが出来る所が金剛が皆に愛される所以なのだ。

 

 

「ありがとう」

 

「…今だけは、弱い姿を見せていいデスヨ。今日は何も見なかった事にしマス。 私の知ってる加賀は、涙を見せない強い人ダカラネ」

 

「…明日には立ち直るわ。……今だけは、泣かせてちょうだい」

 

 静かに微笑んだ金剛は駆逐艦の子達をさりげなく遠ざけてくれた。

 

 ……一つ、借りが出来たわね。

 

 

 

 

 

 

 そして、そんな大人二人の熱いやり取りを遠目に見る男が一人。

 

「なんか分からんけど……ああいうのえいわアアァァァァァ〜〜〜!!!!」

 

この男、艦娘が大好きなのである。

 

 

 

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