スケベ提督と元ブラック鎮守府   作:ルフレオ

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浜風の正体

 

 

 ドロップ艦として新たに加わった新艦娘 浜風と多摩。

 

 二人が舞鶴にやってきてから一ヶ月が経過していた。

 

 

 多摩の方には球磨を教育指導艦(教導艦)として就けた。

 同じドロップ艦という立場でありながら、高い火力と天性のリーダーシップで艦隊でも一目置かれる存在だった球磨には教導艦としても適性があると判断したのだ。

 今回は相手が姉妹艦という事もあって試験的な意味で任せてみたのだが、やはり姉妹艦なだけあって話しやすいのか、多摩は舞鶴に少しずつ馴染んでいった。

 流石にまだ戦力としてはカウント出来ないが、そろそろ近海の哨戒任務にくらいは駆り出してもよいのではないかと思っている。

 

 

 問題なのは、浜風の方だ。

 

 浜風の教導艦には時雨を推薦した。

 

 夕立と一緒に高難度の海域へ出撃したり、遠征任務に出ることが多いため、駆逐艦での練度の高さは夕立に次いで二位だ。

 だがしかし、夕立の闘い方は野生を感じる独自の感覚的な部分が大きい為、理知的で落ち着いている時雨の方が指導者としては適してると判断し、夕立は教導艦には指名しなかった。

 

 夕立本人もその事には納得したようで、時雨に『彼女は任せたっぽい!』と元気よく託していた。

 

 事実、時雨の指導は中々的確なようで浜風もみるみるうちに能力を伸ばしていき、近海の遠征に駆り出せれる程度には座学も能力も備わった。

 つまり教導艦には問題なかったのだ。

 

 

 

 問題だったのは浜風本人。

 

 

 

 いや………。

 

 

 

 いやむしろ俺の方だったのだ。

 

 

 それは天龍達が遠方海域へ出撃して浜風達を持ち帰ってきたあの日に起きた。

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 目の前に広がるのは多摩の意外と隠れ巨乳な胸元の膨らみと際どい制服からチラ見えするその手のフェチにはたまらない健康的なおへそと太もも。

 浜風の最早説明不要の超おっぱい。

 

 神通に海に放り投げられると理解していながら、俺は最低極まりない発言をした。

 

『ちょっとパンツの色を教えて欲しいのですが』

 

 こんなひどい初対面の挨拶はないだろう。

 直後には神通が主砲を構えていた。

 構えた主砲と目が合ったと思うと、俺は次の瞬間には空を舞って海に吹き飛ばされていた。

 この経験にも慣れたもので、海中に沈んだ俺は案外冷静に海面に向かって泳ぎ出し、差し出された神通の手を掴んで引き上げてもらう。

 

『提督、いい加減にして下さい』

 

『はい、ごめんなさい』

 

 浜風と多摩には早速カッコ悪い所を見せているが、悪いのはどう考えても俺なので今は神通に平謝りする事しか出来ない。

 

『にゃー、あの人は提督…じゃ、ないのかにゃ?』

 

『いや、提督だ。あんなバカ野郎だけど、提督だ』

 

 天龍はもうこんな光景にも慣れた、と夕日をバックにして、神通に正座を決め込む俺をニヤニヤと見つめていた。

 仮にも軍隊の最高司令官ともあろう人間が立場的には部下に当たる軽巡一隻に正座させられる姿は異様としか言いようがないだろう。

 そんな異様な光景に慣れている、というのがこの舞鶴鎮守府と、俺がどれだけ異例な存在なのかをよく現している。

 

 普通、こんな光景を目にしたらドン引き、失望、最悪辞表を叩きつけられるだろうに。

 多摩は姉の血を色濃く受け継いだ結果なのか、困惑の表情を浮かべて目を丸くするだけでそれ以上のことはない。心の奥ではどう思ってるかは分からないが。

 しかし、浜風は予想通りのドン引きの表情をしたかと思うと…、続いて嫌悪感丸出しの睨みつけるような顔つきに早変わりしていった。

 

()()()提督は残念そうな方ですね』

 

 浜風が神通から説教を受ける俺を見て機嫌悪そうに睨みつけていた。説教がてら目が合ってしまったのだけど、浜風からの敵意ある視線に思わず怯んでしまう。

 近くにいた不知火と吹雪もまたその敵意を含んだ視線に気がついたらしく、すぐに浜風を見た。

 それとは別に、不知火は浜風の言った言葉が気になっていた。

 

『浜風?

 今度の、とは一体どういう事ですか?

 もしや…やはり沈む前の記憶が残っている浮上艦なんですか?』

 

『……ごめんなさい、不知火姉さん。

 お察しの通り、私は、沈む前の記憶を持っています』

 

 

 ここにきて新しい事実。

 

 浜風もまた、夕立と同様に沈む前の記憶を持って建造された『浮上艦』だったのだ。

 つまりそれは、以前不知火達の勤めていた大湊警備府の記憶が残っているという事だ。

 

『そうだったんですね。

 ………浜風、()()()()は確かに翔鶴さん達に伝えましたよ』

 

 ()()()()とは、大湊で不知火が主力部隊に向けて伝えていた言葉の事だろう。

 浜風は沈む前日、不知火に伝言をお願いしていたのだ。『たまに思い出してくれればそれでいいから』と。

 私達の死が彼女達の足枷になってしまわないように。

 自分達の幸せを掴んでもらう為に。

 ほんの少しだけの、私達を忘れないで欲しいというワガママを伝える為。

 

『そうですか…。良かった』

 

『私を含め、大湊出身の艦娘は舞鶴鎮守府に全員受け入れられました。そして、その舞鶴鎮守府の提督が今まさに神通さんにヘコヘコしているあの男性なんです』

 

『そうだったんですか。まぁ、だからといって提督への印象は変わりませんが』

 

 浜風は再び俺を見つめると、またゴミを見つめるような視線を向けてきた。

 そ、そこまで敵意剥き出しにするなんて、俺浜風になんかしたかな?……いやついさっきしたわ。

 その敵意ある視線に神通も気がついたようでお説教を話半ばで切り上げると不満を露わにして浜風へと歩いていった。

 

『浜風さん。

 確かに先程の提督のセクハラ発言はひどいものです。ですが、彼はそれ以上に優しいお方なんです。どうか嫌わないであげて下さい』

 

『さっきのセクハラは大した問題じゃないんですよ』

 

『……と、言いますと?』

 

『彼自身ではないんです。私は、提督という存在が大嫌いなんです』

 

 え……、ちょ、ちょっと傷付いた。

 

『大湊の提督が関係してる…って事だよな?』

 

『………私は、多くの姉妹や仲間達が沈んでゆく所をこの目で見届けてきました。それでどうして、沈めた張本人である提督を恨まずにいられましょうか?』

 

 浜風の表情は怒っていた。その目には恨みの炎が灯っており、こちらを見るその目つきは敵を見る冷たいものだった。

 

『……お気持ちはお察しします。

 ですが、その提督とこの方は別人です』

 

『それは理解しています。ですのでこれは私自身の問題です。

 どうかもうしばらく、心を整理する時間を下さい。

 今この場で提督という存在を許す事は…私には出来ません』

 

 そう言うと、浜風は俺に向かって一礼をした。

 言葉の節々からはまだ提督という存在を許せていない拒絶の感情を感じられた。

 しかし、その提督にこうして頭を下げるという事は今の自分はよくないと自覚し、それを変えようとしている証拠だ。

 

 俺だって、大湊の提督が行っていた捨て艦戦法を許すことは出来ないし、当事者である彼女達がそう簡単に割り切れずに同じ提督である俺に辛く当たるのではないかという事も覚悟していた。

 その時が来た、というだけだろう。

 

『分かった。では、浜風が吹っ切れるのを気長に待つとしようか』

 

『…お気遣いありがとうございます』

 

『ただし、俺から歩み寄る事はやめないぞ』

 

 最後に笑顔を浜風に向けると、彼女も不器用に笑顔を作ってくれた。

 案外、受け入れてもらえる日はすぐに来るかもな。

 

 空気をリセットする為、大きく手を叩いた。

 

『ヨシ!この話はここで終わり!

 遠方海域攻略お疲れ様。入渠が終わったら、旗艦の神通は報告書を提出する事。

 以上、解散!!』

 

 その言葉に一番に反応したのは天龍だった。

 

『よっしゃ!さっさと風呂行くぞチビ共ー!!』

 

『チビとは心外ですね』

『吹雪は小さくないです!』

 

 天龍に連れられて続々と入渠場へと向かう駆逐艦達。

 それを見届ける傍ら、神通が微笑みを浮かべて俺の横顔を見つめる。

 

『お風呂が必要なのは提督ですよ。

 さっきからずっとずぶ濡れではないですか』

 

 そうなのだ。

 神通の主砲の直撃を受けて、海面へとぶっ飛ばされた俺は全身ずぶ濡れの状態で陸に上がり、服を着替える事も出来ずにずっと濡れた軍服姿のままだったのだ。

 今の季節が夏一番の猛暑であった為、体調を崩さなくても済みそうだが、流石にそろそろ肌が震え始めてきた。

 

『せ、せめて上だけでも先にぬ、ぬ脱いでみては…い、いかがでしょうか?風邪を引いて、しまうかもですし…』

 

 神通の言う通り、このままでは風邪を引いてしまうかもしれない。妙に滑舌が悪くなっていたのは気になるが、提案を受け入れて早速上だけでも先に脱ぐ事にした。

 

『それもそうだな。じゃあ早速一枚』

 

 上の軍服を脱ぎ捨て、上下白のお堅い印象の服装から、黒のタンクトップと白のズボン一枚のラフな姿へと早変わり。

 

 神通は俺の肉体を見て驚嘆の声を漏らしている。(ホントは興奮の吐息)

 フッフッフ、そうだろうそうだろう。

 ここだけの話、実は身体の筋肉には少し自信があるのだ。

 流石にシックスパックとまでは行かないが、腹も割れているし、腕にもそこそこ筋肉がついている。

 少なくとも、見られて恥ずかしい身体ではないと自負している。

 

 

 え?何故鍛えているのかって?

 

 

 いつ艦娘の皆と◯◯◯◯(放送禁止用語)な関係になってもいいようにだぁぁぁぁ!!!!!

 

 

『神通お前見過ぎだって』

 

『はえっ!!?も、申し訳ありません!!』

 

 しばらく見惚れていた神通を軽くからかい、俺も風呂へ向かおうとした時、もう一つの異変に気が付いた。

 

 浜風の様子がおかしいのだ。

 

 あれだけ敵意剥き出しだった冷たい目は驚くほどに見開き、口元も半開き。今なら指を入れてもバレないのではないかというほどに浜風はフリーズしていた。

 

『は、浜風…さん?どうしました?』

 

『お、おーーい浜風〜?帰ってこ〜〜い』

 

 応答はない。

 浜風は瞬き一つせずに俺をガン見している。呼吸は……さすがにしてるみたいだが。

 

『ス………スゴイ』

 

 

 え?今なんて?

 

 

『なんて理想的な肉体美…!

 確かな膨らみの上腕二頭筋!!

 来るもの拒まない大胸筋!!!

 チラリと見える鎖骨!!!!

 理想郷です…!!私の理想郷が…!!今目の前に…!』

 

『は、浜風…?』

 

『ハァッ…ッン!!な、なんて美しい腹筋の動きなんですか…。

 下着の上からでもわかる筋肉の動き…!!揺れる衣擦れが起こす天然のハーモニーがたまらない!!』

 

 浜風の様子がおかしい。

 息が荒い。頬が赤い。表情が溶けている。

 

『あの…、提督。私、あなたの事を…提督を、許します』

 

 和解成立しちゃったんですけど。

 

『ですから、どうかお願いがあります。

 私に、この浜風に提督のお腹を…、筋肉を触らせて下さい!

 筋肉フェチなんです!』

 

 神通はドン引きした様子で一歩引いた所から成り行きを見守っている。

 うむ、俺も神通の横に並びたい気持ちだ。

 まさかさっきのあれからこうも印象が変わるとは思わなかった。

 

『あ、あぁ…。それくらいなら別に』

 

『シ、失礼します…。

 フゥーッハァー!!フゥーッハァー!!

 スゴイ…!!初めてです!男の人に触れる事自体数える程度の私が、こんな素晴らしい殿方に巡り会えるだなんて…!!』

 

 

 …………これが逆の立場だったら捕まるのってホント、世の中不平等。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

 その後、数十分間堪能した浜風はツヤツヤとしたいい笑顔で神通に連れられて艦娘寮へと向かって歩いていった。

 

 

『提督!!浜風はあなたの艦娘になれて幸せです!!』

 

『……ありがとう。俺もお前に受け入れてもらえて嬉しいよ』

 

 

 まさか俺が艦娘にドン引く日が来るとは思わなかったよ。

 

 

 〜〜〜

 

 

 そして時は一ヶ月後に戻る。

 

 

 本日の秘書艦である赤城と共に書類を作成している時、ゆっくりと扉が開かれた。

 

「お疲れ様です。

 提督、今週の浜風さんの進捗報告書だよ」

 

「お疲れ時雨。

 そこ置いといてくれ。後で確認する」

 

「うん、それと…浜風さんは食事が終わったらこっちに来ると思うよ」

 

「…おう」

 

 その予言通りというべきなのか、食事を終えたばかりであろう浜風が時雨の後ろからゆっくりと扉を開いて颯爽と現れた。

 

「! 時雨さんがいらっしゃいましたか。出直します」

 

「だ、大丈夫だよ。僕の要件は終わったからさ」

 

「そうでしたか…。では!」

 

 浜風は期待に満ちた眼差しを俺に向けると待ちきれない様子でモジモジと指を絡めてその時を待つ。

 その視線には流石の赤城も苦笑いで俺の背中を見つめる。

 

 …若干の呆れた感情を胸に、俺は机を立ち、両手を広げた。

 

「浜風、補給に入りまーす♡」

 

 軍服姿の俺を思いっきり抱きしめて、思う存分顔面を胸に埋めて何度も大きく深呼吸をする。

 流石に少し恥ずかしい。

 

「スウゥゥーッハアァァーッ……

 スウゥゥーッハアァァーッ……。

 提督、本日もありがとうございました。

 補給は完了しました。明日の任務に備え、部屋へと戻ります」

 

 

 浜風はキレイに敬礼をすると、すぐに部屋を出て行った。

 

 

「提督…。前から聞こうと思ってたんだけど、補給って…なに?」

 

「俺が聞きたいよ。

 まぁ、胸に顔を埋めないと得られない栄養はあるからな。

 俺だって赤城や時雨の胸部装甲に顔を埋めてみたいもんだよ」

 

「提督も浜風ちゃんと同レベルではありませんか」

 

「僕のおっぱいは埋まるほど大きくないよ」

 

 

 これが舞鶴鎮守府の問題児、浜風である。

 まぁ、俺もほぼ毎日あんな超弩級おっぱい駆逐艦と合法的にハグ出来て役得この上ないし、あの位の変態性位は目を瞑るとしようか。

 

 

 余談だが、神通と浜風は俺の知らないところでバチバチやり合ってるみたいよ。

 

 

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