スケベ提督と元ブラック鎮守府   作:ルフレオ

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文月とご飯

 

「よっしゃ……!!!今日のノルマ達成〜!!!」

 

 執務室で一人書類に向かい合い、俺は珍しく仕事をしていた。今日の秘書艦は赤城。

 残りの仕事も少なかったので、先に食事処へと向かわせた為、この場にはいない。

 だが、思ったよりも片付けるのに時間がかかってしまった。

 時計の時刻はヒトサンマルマル(午後一時)。

 

 

 早速食事にしようと席を立つ…その前に、引き出しを開けて小さな袋を取り出した。

 小袋の中には一口サイズのチョコレートがぎっしりと詰まっている。早速袋に手を入れてチョコレートを一つ口に放り込む。

 

「ん〜♪優しい甘さだ」

 

 昼飯の前に甘いものを食べる。子供に言い聞かせるような悪い行いだけど、その悪い事が妙にチョコレートを美味しく感じさせる。

 

 赤城を先に食事処へと向かわせたのはこれを食べる機会を失ってしまうからというのもある。

 食い意地の張った赤城の目の前でチョコレートなんて取り出そうものならその日のうちに食い尽くされるのが目に見えているからな。

 

 頑張った自分へのご褒美として置いてあるチョコレート。俺は甘いものが好きなのだ。

 

 

 

 

 コンコン

「しれーかーん…!!ご飯だよ〜!!」

 

 二度のノックをした後、戸の外からチョコレート以上に甘ったるい声色がした。

 このロリ声は間違いない。文月だ。

 

「あぁ、すまない。すぐに行くから」

 

「早く〜!!あたし間宮さんにしれーかんを呼んできてって頼まれてるんだから〜!!」

 

 それでわざわざ来てくれたのね。カワイイ。

 

「そうだ、文月。ちょっと来てくれないか?」

 

「? いいけど?」

 

 戸が開かれると予想通り文月が立っていた。

 吹雪や時雨達よりも更に一回り小さな体躯に幼い顔立ち。

 睦月型共通の黒いセーラー服に身を包み、茶色の髪は後ろで一つにまとめられて腰辺りにまで届いている。座り込めば地面についてしまう事だろう。

 

 言われた通り部屋に入ってきた文月は不思議そうに俺の顔を覗き込み、『どうしたの?』とばりに少しだけ首を傾げた。

 

 カワイイからそうやってちょこちょこ動くな!!

 チョコだけに!!

 

 

 

閑話休題(コホン)

 

 

 

「食べるか?チョコ」

 

 一つチョコレートを取り出してみると、文月の表情がパァッと明るくなり目を輝かせた。

 

「う、うん!!

 あ、でも睦月ちゃん達にもあげていいですか?」

 

「ん?睦月達にもか?」

 

「あたしだけいい思いするのはいけない事だと思うから」

 

 

 天使や、この子天使や。

 

 

「分かった。じゃ、これは皆の分な」

 

 たくさんのチョコレートを掴み取ると他の小さな袋に詰め込んで文月に持たせてやった。

 

「んで、これは文月の分、ここで食ってしまいなよ」

 

 二つ程文月の手に握らせてやった。文月は嬉しそうにチョコレートを受け取ったが、同時に少しだけ不思議そうに首を傾げた。

 

「あたし、皆と一緒に食べたいよー」

 

「大丈夫。皆で一緒に食べる用のはその袋の中のヤツだよ。

 その二つは文月一人の分」

 

「え?」

 

「文月はいい子だからな。

 たまには一人だけいい思いしちゃってもいいんだよ」

 

 

 遠慮しがちな文月にちょこっとだけのご褒美という訳だ。チョコだけに(殴

 

 特別扱いされる事になれていないのか、文月は照れ臭そうにした後、ほんの少しだけ躊躇い、やがて意を決したように一粒チョコレートを口に入れた。

 

 確かめるように数度咀嚼をし、飲み込むと一気に表情がパァッと明るくなり、さらにもう一つも口に入れる。

 すると今にもとけてしまいそうなだらしない笑顔で『美味しい〜♪』と呟いた。

 チョコレートの味が相当美味しかったみたいで、思わず俺まで嬉しくなってしまう。

 

「へへへっ!!どうだ美味いだろ?」

 

「うん!!しれーかんありがと〜!!」

 

「あ、この事は皆には秘密にしてくれよな?」

 

 

 子供っぽいかな、と思いつつも口元に人差し指を立てて秘密に、のサインをする。

 文月もイタズラっぽく笑って同じように口元に人差し指を当てて片目を閉じてウィンクをする。

 

「分かった!!文月としれーかんの二人だけの秘密!!」

 

 そう言って無邪気に文月は笑う。幼い文月にとって二人だけの秘密というのに憧れるものなのだ。

 

 

「さて、俺もそろそろ飯食いに行くか」

 

「あ、そうだった!早くご飯に行こうよ〜!!」

 

 思い出したように俺の手を取り、文月はしきりに食事処へと連れ去ろうとしてくる。

 抵抗しようと思えば抵抗できる弱い力だったが、この世界一可愛いエスコートに抵抗できる人間がいるのだろうか?

 いるのならば手を挙げろ。俺がぶん殴ってくれるわ。

 

 

 

 〜〜〜

 

「あ、やっとご来店ですか?」

 

 食堂侵入して早々に間宮が笑いかける。決して怒ってるわけではないのだけど…待たせてしまった事実が少し後ろめたさを感じさせる。

 

「遅くなってごめん。日替わり一つ」

 

「フフフ、提督なら日替わりを頼むと思ってましたよ」

 

 すると間宮はすぐ後ろからお盆を運んでくる。その上には日替わり定食の品揃えが並んでおり、微かに湯気が立っていた。

 

「出来立てとはいきませんが、まだ温かいですよ」

 

「……流石だわ。間宮さん」

 

 

 俺が頼む定食を予想し、予め作り置きしていたのか。

 なるほど、文月を使ってまで俺を呼び出す訳だ。

 

「今日はトンカツか…。文月にもちょっと分けてやるよ」

 

「いいの〜!?ワーイ!!」

 

 かわいく無邪気な女の子はついつい甘やかしたくなってしまうのが見守る男の性なのだ。

 

 適当に空いてる席に座り、まずは両手を合わせる。いただく食材達へのマナーである。

 隣に文月が座ると、日替わり定食のメインであるトンカツを一切れ箸で掴んで文月の口元へと運ぶ。

 

 文月も嬉しそうに表情を綻ばせ、その小さな口を一生懸命開いてあ〜ん、とわざわざ声に出した。

 別に自分で言わなくても俺が言うから大丈夫よ。

 

「ほい、文月あ〜ん」

 

 こんな風に。

 

「アムッ…、美味し〜い…!!」

 

 一切れ丸々は流石に無理なので、半分程をかじって切断した文月。途端に目を輝かせて夢中になって咀嚼をする。

 が、夢中になって食べてる文月を微笑ましく見つめる俺の視線に気付いたのか、途中から少し控えめに口を動かし出した。

 まぁそれでも美味しそうに食べる文月はたまらなく可愛い。

 

 次は味噌汁に入ってた豆腐を箸で摘む。

 文月はそれを見ると一気に水を飲んで口の中を流し込み、またすぐに大きく口を空ける。

 開かれた小さな口の中へ箸を突っ込み、そして取り出す。またすぐに咀嚼が始まり、その間に俺は次の食材を摘む。

 それを見て、文月はまた口を開き、それに俺はまた箸を突っ込む。

 

 

 そんな事を調子に乗って数十回繰り返したとき、全てのとんかつが皿の上から消えていた事に気が付いてようやく俺は箸を止めた。

 

 

 間宮がせっかく作ってくれた日替わり定食の七割は、文月の腹の中へと消えることになったのだった。

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 〜夕食〜

 

 

「にゃしい?文月ちゃんはご飯食べないの?

 お魚は苦手?」

 

「ううん…お腹空いてないだけだよ〜」

(しれーかんのご飯食べ過ぎちゃった…)

 

 

 お腹いっぱいでお夕飯を食べられなくなった文月は結局また提督の元へと向かう。

 そこには焼き魚が二匹を載せた大盛りランチを美味そうに食べる姿があった。多分…いや間違いなく文月に食べさせすぎたせいで肝心の自分の分を取り損ねた結果だろう。

 

「お、文月!!魚食べるか!?」

 

「!!!うん食べる〜!!しれーかんのちょうだい!!」

 

 

 昼間に大半の飯を食べさせておいて、まだ文月に食べさせようとする提督は箸を器用に使って焼き魚を細かく切り分けた。

 そして、お腹いっぱいのはずなのに提督が食べさせてくれるご飯だったらいくらでも食べられる文月もまた、提督同様懲りない奴なのかもしれない。

 

 

 

 そうして昼飯、夕飯と提督の分までたくさんご飯を食べた文月に待っていた結末とは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「太ったにゃしね」

「太ったわね」

「太ったね…」

「太ったぴょん」

 

 

 

「ウ、ウワアアァァーーン!!!!」

 

 

 

 

 

 後日、提督はちょこっとだけ文月に嫌われたみたいです。

 そう、チョコだけに!!(殴

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