スケベ提督と元ブラック鎮守府   作:ルフレオ

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とあるお方の純愛に胸を打たれ、描いた過去編です。

※若干タイトル変更しました。


提督の過去(起)

 

 

 これは、彼がまだ一般提督Aだった頃のお話。

 

 

 

 舞鶴鎮守府に着任した今でこそ的確な指揮、迅速な判断を持つ頼れる提督なのかもしれないが、彼だって最初から優秀な司令官ではなかったのだ。

 

 

 〜〜〜

 

 

「君には提督になってほしい」

 

 

 

 その日、俺は提督になった。

 俺は生まれつき妖精を視認する事が出来た。

 生まれつきであった為、他の皆も見えるものだと思い今日まで生きてきたのだが、それが当たり前ではなく、日本中を震撼させる深海棲艦の脅威に立ち向かう艦娘達の力の源となる提督になる素質がある証明だという事を知った俺はすぐに親に相談をした。

 提督になりたいと願った。

 母さんや父さん達の居場所を守りたいと思った。

 

 当初、親は反対した。

 今にして思えば当然の反応だ。

 

 それはつまり、自分の息子が戦争の最前線に送られるかもしれないという事なのだから。

 

 だからこそ、親を説得するのには時間がかかった。時には父さんと殴り合いの大喧嘩にまで発展した。

 それでも、提督になる事を諦めなかった。

 その想いが届いたのかそれともただの根負けか、ついに両親は俺が提督になる事を許してくれた。

 

 こうして、俺は舞鶴鎮守府よりも前に勤めていた佐世保鎮守府へと配属する事になったのだ。

 

 

 

 

「ここが俺の新しい職場になるんだな…」

 

 佐世保鎮守府の前で一人、俺は新品の軍服に身を包んで初めて見る軍の施設に感嘆の声を漏らしていた。

 

 もう少し遠くから眺めていたいと思ったが、いつまでも立ち呆けている訳にもいかないので、門に向かって歩き出す。

 門のそばには一人の女性と、自分が着てる物と同じ白い軍服を身につけた年老いた男性がいた。

 

「やぁ、初めまして。新任の提督で間違いないね?」

 

「は!はい!!影波と言います!」

 

 年老いた男性は柔らかな表情をしていた。

 穏やか、という言葉がそのまま服を着て歩いているかのようだ。

 

「私がここ、佐世保鎮守府の提督だ。早速なのだけど、君にこの鎮守府を説明する。 頼んだよ、赤城」

 

 男性は隣に立つ和装の女性に微笑むと、それを最後にその場を立ち去ってしまった。

 その場に残されたのは緊張が未だ解れぬ俺と、赤城と呼ばれた一人の女性だけ。

 

「さて、と。改めましてようこそ!佐世保鎮守府へ!」

 

「よ、よろしくお願いします!!」

 

「あ、ダメですよ!私達に敬語を使っては。軍で習ったはずです!」

 

 そうだった。

 今日初出勤の若輩者とはいえ、彼女達は俺の部下という事になる。ついつい使いたくなるだろうけれど、極力敬語は避ける事と習ったのだった。

 

「あ、あぁそうだったな、ごめん。えっと…赤城…と呼んでいいのかな?」

 

「はい、大丈夫です。これからよろしくお願いしますね」

 

 

 赤城に案内され、俺は佐世保鎮守府の中を見て回った。

 道中たくさんの女の子達とすれ違い、そのたびに見事な敬礼を返されて思わずこちらがたじろいでしまった。

 その姿に赤城はクスリと笑った。

 なんだか気恥ずかしかったが、少なくとも好感は持ってくれているのだとポジティブに考える事にし、その後も赤城の後をついて回った。

 

 

 そして、最後に演習場へ案内された。

 そこでは一人の女の子が集中した鋭い表情でただ一心不乱に砲撃を行っていた。

 砲撃の凄まじい爆音が響き渡り、肌を震わせる。

 

「神通さーーん!!!少しいいでしょうか〜!!!」

 

 神通と呼ばれた少女は振り向くと、小走りになってこちらへと駆け寄ってきてくれた。

 

 彼女は俺の目の前に到着すると、他の子達と同様に敬礼を決める。

 ただ他の子達と違うのは、彼女は軍人らしい硬派な表情とこちらの事を探るような疑り深い目をしていた事だ。

 

「川内型軽巡洋艦 神通と言います。以後、よろしくお願いします」

 

 

 

 これが、神通との出会いだった。

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

「さて、鎮守府の説明も終わった事だし、あとは引き継ぎを済ませてしまうだけだ」

 

「え?引き継ぎ?」

 

「これから一月後、私は大本営に異動する事が決定していてね。それまでにこの佐世保を君に引き渡さなくてはな」

 

「えぇ!?自分は今日初出勤なんですけど!!?」

 

「心配はいらん。私の部下も時折様子を見に来てくれるし、何よりこの鎮守府の子達は優秀だ。どんなミスがあっても上手くカバーしてくれるさ」

 

 いやいやそういう問題じゃないですよ!

 

「何故わざわざ自分なんですか!?他にも中堅の方とかはいたでしょう!?」

 

「うん、いたな。だがそれでも私は君がいいのだ」

 

「艦娘達の命を預かる立場なんですよ!!いい加減な事をしないで下さい!!」

 

「………うむ。やはり君を選んで正解だった」

 

 

 何故決意が更に固まるので!?

 

 

 

 それからの一ヶ月はめちゃくちゃ抵抗した。

 初出勤してからたったの一ヶ月で一つの鎮守府を任すなどと言われて『はい、いいですよ♪』などと即答できる神経はしていない。

 

 随分長く提督とは言い合った。

 しかしそれが提督に響く事はなく、泣く泣く時間だけが過ぎていった…。

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 一ヶ月後

 

 

「では、後の事はよろしく頼むよ。影波提督」

 

「……まだ納得したわけではありませんが…精一杯頑張ります」

 

 最後に佐世保鎮守府の艦娘達に向かい、美しい見事な敬礼をした()()提督は、佐世保鎮守府を去っていった。

 車に乗って去ってゆく提督へと佐世保の艦娘達はいつまでも敬礼をし続けていた。

 あの人がどれだけ艦娘に愛された提督だったのか、彼女達の態度から分かったような気がする。

 そして、俺はあの人に任されたんだ。この佐世保鎮守府を。

 

「さて、今日から俺が提督か…。しっかりしなくちゃな!」

 

 

 

 こうして、俺の提督人生が始まったのだ。

 

 

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