スケベ提督と元ブラック鎮守府   作:ルフレオ

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 起承転結

 提督の過去は全四話構成でお送りします。



提督の過去(承)

 

 

 あの人が提督となってから数日が経過した。

 

 提督…いえ、前任の提督が『君になら任せられる』と太鼓判を押した程の方なのだ。

 若い方だけれどきっと優秀な方なのだろう、と少し期待をしていました。

 

 

 ですが、ここまで彼を見てきて私の中で結論が出ました。

 

 はっきりと言いましょう。

 

 

 

 

 彼は無能だ。

 

 

 

 

 

 知識だけは充分すぎるほどに蓄えている方でした。

 ですがそれだけ。

 あくまで知識はあるだけで、肝心の戦闘面での運用には全く生かしきれていなかった。

 もちろん、彼は入ったばかりの新兵である為、まだ適切な状況判断が難しいという事はよく理解しています。

 ですがそれを加味しても尚、彼は無能であると言わざるを得ない滅茶苦茶で臆病な指揮しか出来なかったのだ。

 

 

 

 

 

「提督は何故、あの人を次の提督に指名したのでしょうか…」

 

 

 私、神通は鳳翔さんが嗜む居酒屋にて速吸さん、大淀さんとの三人で軽くお酒を交わしていた。

 お酒が入った事でつい漏らしてしまった提督への不満だったのだけれど、大淀さんも速吸さんもその言葉に異論を唱えようとはしない。

 口には出さないだけで、きっと同じ意見なのでしょう。

 

「確かに…書面上での執務は文句なしなのですけれど、肝心の指揮があれでは…」

 

 前任に引き続き、提督の秘書艦として誰よりも近くで彼を見てきている大淀さん。そんな彼女が言うのだから、少なくとも書類上では優秀な方なのだろう。

 もっとも、肝心の指揮は擁護出来ないみたいですが。

 

 

「仕方ありませんよ、彼は着任してから一月も経過していないんですから」

 

「それは………そうなのですけれど…」

 

 そうだ、そうなのだ。

 彼はまだ右も左も分かっていないような状態なのだ。

 いかに優秀であった前任の推薦があったからといって、過度に期待を寄せすぎてはいけない事くらい私にも分かります。

 ですが、それでも提督の推薦という肩書きの持つ力は大きい。

 いけないと分かりつつも勝手に期待をしてしまい、勝手に失望してしまう。

 彼の立場にしてみればひどい話だと思うけれど、提督に推薦をされた時点でもう避けられない話なのかもしれません。

 

 とはいえ、これ以上提督のいない所で愚痴を吐いて株を下げるのはよろしくありません。

 提督の話はこれで終わりにして身の上話に花を咲かせる事にした私達は時間の事も仕事の事も忘れて思うままに酒を飲み、夜は更けていった。

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

「少し、飲み過ぎてしまいました…」

 

 

 消灯時刻を過ぎてから更に夜が更けた頃、艦娘寮へと向かう神通。

 寝てる他の艦娘達を起こしてしまわないよう、なるべく音を立てぬように気をつけて暗い廊下を進む。

 しっかり者の彼女にしては珍しく赤い顔で少し足取りもおぼつかない。

 よほど長く酒を飲んでいたのだろう。明日がお休みでなければ大変な事になっていた。

 

(…? な、なんだか司令室に光が灯っているような…?)

 

 ふと窓を覗いた時、司令室の窓ガラスにうっすらと光が見え隠れしている事に気がついた。

 カーテンが閉まっているので気づきにくいが、確かに部屋の電気がついている。

 

 眠気はあったものの…もしやという好奇心に押し流されて司令室の前までやってきた。

 中を覗いてみると予想通り。

 あの若い提督が一人で何か作業を行っていた。

 

(? 何をしているの…?なんだか、遊んでるようにも見えますけれど…?)

 

 彼は数枚の紙を机上に広げて、顎を摘んで何か考え込むように黙り込んでると思いきや、やがて一枚の紙を後ろへ下げた。

 すると今度は反対側の席へと移動してまた同じように考え込むと、今度は別の紙を隣へ動かした。

 まるで一人でカードゲームを楽しんでいるようだ。

 

 覗き見をしてた無礼を承知で、私は二度のノックをした。

 

「!!?  は、入れ」

 

 若い男性の声で入室を許可される。

 意を決して扉を開けると、机の上の紙が今の一瞬で片付けられてキレイさっぱり無くなっていた。

 

「ど、どうしたんだ?こんな夜更けに」

 

 彼はとぼけるように言った。

 

「司令室から光が見えましたので、少し覗きに。提督こそ、こんな夜更けに何をなさっていたのですか?」

 

「ちょ、ちょっと残業だよ。終わらせときたい書類があってね」

 

 

 ……下手な嘘をつく人ですね。

 

 

「何か机にゴミを広げていたように見えましたが?」

 

「え!?」

 

「もう一度聞きますね。何をしていたのですか?」

 

 

 そこまで言ってやると彼は観念したのだろう。

 怒られた子犬のようにしょんぼりとした様子で机の中から数枚の紙を取り出した。

 それは『駆逐艦』『軽巡』『補給艦』といった艦娘達の艦種に加え、『主砲』『電探』『魚雷』といった装備品までもが書かれた手作り感満載の千切った紙だった。

 

「これは…?」

 

「そ、その〜…ほら…俺、指揮が上手く出来てないから…戦場のシミュレーションを……みたいな〜」

 

 その言葉を聞いて、彼を見る目が少し変わった。

 私達が知らないところで、彼はしっかりと努力をしていたんだ。

 

 提督は心底恥ずかしそうに顔を真っ赤にして必死に目を合わせないようにしている。なんだか少し可愛い…。

 

「恥ずかしい事ではないですよ?むしろ立派なことではないですか」

 

「か、かもしれないけどさ、問題はそこじゃないんだ。ほら?今はダメダメかもしれないけど、誰の力も借りずにいつの間にかバリバリ指揮とか取れ出したらなんかカッコいいだろ!?そういうカッコいい提督を目指してたんだよ!!」

 

 彼のあまりに情けない告白に思わず吹き出してしまった。

 そんなバカらしい理由で努力する姿を隠してたんですか!

 

「ワ、笑っちゃってすみません。 それより、私でよければお相手努めますよ?伊達に戦場に長く居ませんから。この状況ならば深海棲艦はこう動きたいという事位は分かってるつもりです」

 

「いいのか!!助かる!!いやー、大淀には中々お願い事をしづらくてな」

 

 その言葉に私は首を傾げた。

 大淀さんは優秀な方だ。指揮を取ることはあまり得意ではないけれど、様々な作戦を立案し、成功に導いてきた功労者だ。

 戦場のシミュレーションを行うならば秘書艦でもあり、頭の良い彼女の方が適任のはずなのに。

 

 

「ほら、大淀ってさ、横から見たらスカートに隙間があるだろ?執務してる時も、ついつい覗いちゃってさ、割と目のやり場に困るんだよ」

 

 その言葉に更に大笑いした。

 なるほど!確かに大淀さんのスカートは目のやり場に困るかもしれませんね!

 

「そ、そんなに可笑しい事じゃないだろ!?」

 

「アハハハ!!!意外と()()()なんですね!!」

 

 

 彼の意外な素顔を見てしまったからなのか、今の一瞬で打ち解けてしまった。

 提督は恥ずかしそうに顔を赤くしながら椅子に腰掛ける。

 私は提督の向かいに座り、提督から手作りの紙を何枚か受け取った。

 

「最初は駆逐艦三隻の軽巡、重巡、空母で勝負してみましょうか」

 

「分かった。早速、戦略とか色々教えてくれ」

 

 

 それから私達は、人目につかない真夜中にこの対戦をする事が日課になっていった。

 

 

 〜〜〜

 

 

 

『今日は撤退戦の想定です。敵は潜水艦一隻に軽巡一隻と重巡がニ隻。こちらは軽巡一隻に駆逐艦が二隻。最も被害が少なく済む撤退のルートを考えてみて下さい』

『そうか…!格上相手だと撤退戦を余儀なくされる場合もあるのか…』

 

 

 〜〜〜

 

 

『今日の演習は反省点だらけでしたね。早速再現してみましょうか』

『ダ、ダメだ…。何がいけなかったのかがどうしても分からない…』

『相手の立場に立って考えてみましょう。この状況でしたら…』

 

 

 〜〜〜

 

 

『このメンバーで戦った場合、弱点ってあるのか?』

『夜戦に突入した場合ですが、これだと対抗勢力が戦艦二隻だけになります』

 

 

 〜〜〜

 

 

 俺は神通に全てを教わった。

 本には描かれない戦場の注意点。

 仲間との連携の重要さ。

 そして、深海棲艦とはどういう存在なのか。

 

 

 神通との想定戦は早くから効果を発揮し始めた。

 

 

 〜〜〜

 

 ある時の新海域開拓任務にて

 

『暁、皐月、飛龍が中破!長月、大淀、比叡はまだ行けます!』

 

『……任務は続行する。暁、皐月は索敵にのみ集中。大淀、長月は中破艦の護衛に回れ。比叡はいつでもぶちかませるように砲撃待機だ。 逐次、状況を報告しろ』

 

『!! リョ、了解です!!』

(この状況で臆病な提督が撤退をしなかった…!?)

 

 

 〜〜〜

 

 ある時の遠征任務にて

 

『提督!ドロップ艦が出現しました!!』

 

『ひとまず回収せよ。任務は続行する!』

 

『了解です!』

(な、なんだか以前と違って指示に迷いを感じない…)

 

 

 〜〜〜

 

 高難度任務にて

 

『提督!!神通さんと伊168さんが大破です!!これ以上は…!!」

 

『至急撤退せよ!!航路は指示する!!まずは南西へ向かえ!!岩場があるはずだから身を隠すんだ!!』

 

『は!はい!!』

 

『スモークは使うな!じきに雨が降る!!雨音に紛れて全速力で走れ!!』

 

 岩場に身を隠してから数刻後、確かに大雨が降り出した。

 深海棲艦達の志気が一時的に下がったのを見計らい、提督の指示通りに私達は一気に脱出。

 一切悟られる事なく、撤退に成功した。

 

 

 〜〜〜

 

 

「最近の提督、変わりましたね」

 

 食堂にて、大淀はポツリと呟くように言った。

 その言葉に反応したのは速吸であった。

 

「大淀さんもそう思いますか?ほら、以前に速吸と大淀さんと神通さんの三人でお酒を飲んだあの日以来、なんだか妙に上達しましたよね? 一体何があったんですかね?」

 

「もしかして、あの時の会話が聞かれていたんでしょうか?だとすると申し訳ない事をしました…」

 

「…ッフフ♪大丈夫ですよ。あの時、提督は司令室にいた筈ですから」

 

「あ、そうだったんですか。よかった‥。神通さんは何故知ってるのですか?」

 

「さぁ…何故でしょう」

 

 ただ一人訳を知る神通は、静かに微笑みを浮かべるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜遠海〜

 

 

 

 

 遠い海の果て。

 二人の深海棲艦が海中より姿を現した。

 

 

「ウフフ…!!タノシミマショウ…!?」

「エェ、ソウネ…。ココカライチバンチカイカイグンキチハ…?」

 

『戦艦棲姫』と『軽巡棲姫』

 

 一体だけでも脅威である姫級が同時に出現するなど異例であった。

 二体の姫は一つの海軍基地へ目標を絞る。

 

 

 その基地の名は…

 

 

「サセボヨ!!ウフフフ!!!ホロボシテヤル…!!」

 

 

 

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