次回が長くなりそうですねぇ…。
その日はまさに悪夢だった。
「ソ!速報!!!!鎮守府近海に深海棲艦を確認しました!!姫級です!!戦艦棲姫…!!そ、それも改です!!しかも空母ヲ級二隻に重巡リ級が三隻も!!」
「第一部隊出撃!!メンバーは大和・比叡・赤城・飛龍・神通・夕立だ!! 頼んだぞ!!」
佐世保鎮守府の最高戦力で迎え撃つ。
威勢よく出撃命令を下したものの、内心は不安と胸騒ぎでいっぱいだった。
最近皆からの評価も上がって来ているとはいえ、まだ新米の指揮で姫級…それも改となんて戦えるのか…!?
〜〜〜
「ヒエェ…!!姫級が何故突然…!?最近は艦隊さえ現れず、海も落ち着いていたはずです!!」
「嵐の前の静けさという事でしょう。戦力が整うまで時期を伺っていたのかも…!!」
比叡と大和は突然現れた姫級に疑問を抱いたが、今は考えても仕方がない。
鎮守府を…引いては日本の人達を守る為、第一艦隊は海へと出撃した。
だが、それこそが深海棲艦の狙いであった。
「ウフフ…コレデヤツラヲキチカラヒキハナセタ…!!」
神通を含む佐世保鎮守府の最高戦力、第一艦隊は佐世保鎮守府をドンドンと離れていく。
離れていく艦隊を嘲笑うように、佐世保鎮守府の裏側から
鎮守府近海を見張る探査機はあくまで電波の反射によって位置情報を掴んでいる。
深海にまで電波が届かないのは当然ながら、艤装や装備等が身に付けられていない…いわば身体の強度を除けば生身の人間に限りなく近いであろう装備を外した軽巡棲姫を、探査機は拾ってくれなかった。
たった一匹だけ鎮守府への侵入を許してしまったのだ。
それも姫級という危険個体を。
軽巡棲姫は装備を整える為に工廠へと向かう。
工廠には当然明石一人しかいない。
第一艦隊がいつ帰ってきてもいいようにドックの点検を行っていた明石は、自分のすぐ後ろに姫級が迫っているなど夢にも思っちゃいない。
陰から現れた軽巡棲姫が明石の首元を後ろから締め上げる。
「!!? ウッ…!グゥッ…!!何ッデ!!」
「ウフフ…スコシネテイテネ…」
軽巡棲姫は明石を絞め落とすと、工廠に立てかけられた艦娘用の装備を手に取る。
「ヤハリカンムスノソウビハヨクナジムワ…」
佐世保の艦娘達は皆、不測の事態に備えて海の近くで待機していた。
まさか、その鎮守府の中に姫級が出現しているなど誰も思わなかったが。
「サヨウナラ…!!サセボノテイトク…!!」
軽巡棲姫は司令室へ砲弾を放ち、司令室は爆発した。
〜〜〜
「えッ!!?」
「ぽい!!?」
「なに!!?」
鎮守府近海で戦艦棲姫達と激突を繰り広げていた第一艦隊は突如鎮守府の方角から爆発音が響いた事に戸惑いを隠せない。
「ウフフフフッ!!!アッハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
戦艦棲姫達の笑い声に突如包まれる。
その不気味な様子に神通は何か嫌な予感を感じながらも、戦艦棲姫を睨みつける。
「何が可笑しい!!?」
「ネェネェアナタタチッ!!ワタシタチニカテタトシテ…ソノアトドコニカエルツモリカシラ…!!?」
「何を…?当然佐世保鎮守府に決まって………まさか!!」
「イマゴロガレキノヤマニナッテルワヨォォ!!!!アーハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」
神通は反射的に鎮守府へと走り出す!
その走る背中へと戦艦棲姫は砲口を向け、黒い笑みを浮かべた。
「スキダラケ…!!アハッ♡」
戦艦棲姫は主砲を撃つ。
そしてその砲弾は艦娘へと直撃した。
射線上へとすぐさま移動した大和のお腹へと。
「アラ…!?アノコノタテニナルツモリ…!?」
「鎮守府の事は神通さんにお任せする事に決めました。
私達は今アナタ達を潰しておくべきだと判断します!!」
「許さない…!!よくも私達の家を!提督をォォ!!!」
「ゴニンダケデカテルモノカ!!!」
怒りに燃える第一艦隊は、再び戦艦棲姫率いる敵の大艦隊と激突を始めた。
(皆…!!!提督!!お願いです!無事でいて…!!)
祈る気持ちで全速力で帰投した神通。
彼女が目にしたのは、変わり果てた姿の佐世保鎮守府だった。
工廠は破壊され、建物は半壊。提督の居られる司令室など全壊といってもよいほどの被害だった。
そして、ガレキの山に囲まれた先に鳳翔さんがいた。
彼女の手には深海棲姫の首が握られている。
奴は軽巡棲姫。
鎮守府を破壊した元凶は、既に討伐された後であった。
そして彼女から少し離れた所では、爆発に巻き込まれずに済んだたくさんの艦娘達に囲まれて、提督が横たわっていた。
右腕を失い、半身に酷い火傷を負った変わり果てた姿の提督がいた。
「提督…!!そ、そんな…!!」
「ジ、神通か…!!心配するな!なんとか生きてる!!」
口ではそう言うが、彼はどう見ても瀕死の容態だった。
肩から先が消失した右腕には赤く染まった包帯が念入りに巻かれ、身体全体を覆うような火傷の跡による爛れた皮膚が見ているだけで痛々しい。
「申し訳ありません…!!!申し訳ありません!!!
敵が…!深海棲艦が内部へと侵入する可能性に思い至らず…!!このような…!!!」
「いやいいんだ、今回は仕方がなかったさ。
姫級は頭の良い個体だ。探査機に反応しないように武装を解除するなんて考えもしなかった。
それよりも鳳翔、それと大淀。この話を大本営に連絡するんだ。
軍全体で共有し、対策を立てる」
「……」
自分が死にそうだという時にも周りの事を、今後の事を第一に考える人の上に立つ者としての言葉。
以前までの頼りない提督ではない。
提督としての立場を自覚し、自らの責務を全うしようとする姿は神通の目にもカッコよく映った。
「…前任の提督が何故あなたを推薦したのか、今やっと分かった気がします」
火傷だらけ、埃だらけの汚い顔で提督は機嫌よく笑う。
そして強く咳込んで吐血をすると、そのまま倒れ伏してしまった。
「早く医務室へ!!早く!!」
鳳翔達は担架に素早く提督を乗せると慌てて医務室へ運び込む。
運ばれていく後ろ姿を目にしながら、神通は彼の横たわっていたブルーシートの上に力無く座り込んだ。
「……どうして……こんな事に、」
私は、ほんの一瞬で変わり果てた姿となった佐世保鎮守府の姿にただ涙を浮かべる事しか出来なかった。