スケベ提督と元ブラック鎮守府   作:ルフレオ

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報告と天龍

 

「今、なんと言いましたか?」

 

「神通と付き合うことになったよ」

 

「………ま、まぁ…」

 

 俺と神通は早速、鳳翔に報告しにきていた。

 

 まだ少し明るい夕暮れ時。

 間宮と一緒に夕飯の支度をしていた鳳翔を見つけたので少しだけ手を止めてもらった。

 きっと恥ずかしいのだろう、前に出てこようとせずに俺の陰に隠れる神通(カワイイ)に代わって俺の方から手短に話す。

 

 一言話すそのたびに鳳翔は満足そうに頷いた。

 

「…ハァ、やっとですか」

 

「え?どういう事?」

 

「なんでもありませんよ。

 ……ウフフ♪ようやく一区切り、ですか?」

 

「あぁ、それと神通から聞いたよ。

 鳳翔が色々手伝ってくれたらしいな。ありがとう」

 

「お二人共が慎重すぎていい加減じれったくなっただけですよ」

 

「ハハハ…手厳しいね」

 

「しかし……間宮さん、少し困った事になりましたね」

 

「はい…本当に困りました」

 

 

 間宮が頬に手を当てて首を傾げ、わざとらしく困った振りをする。

 

 

「ん?どうした、何かあったのか?」

 

 

 この二人が同時に困るなど食事の問題に決まっている。

 ここは仮にも軍の施設。

 食事を抜いたことによる弊害があってはならぬと一日三度の食事を取ることを義務付けている本鎮守府において、食事関連の問題は早急に解決しなくてはならない。

 

「だって……ほら提督、これを見てくださいよ」

 

 そう言って、間宮は一つの大釜を開けた。

 中は真っ白に輝いている白飯の山。出来たばかりで湯気が立ち、ふっくらとしていて美味そうではないか。

 

「もうご飯出来ちゃってるんですよ?それなのに、今からお赤飯炊かなきゃいけなくなっちゃったんですから」

 

「作っちゃう前に言ってほしかったですよ…」

 

 

 思わず神通と二人で吹き出した。

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 その日の夕食、確かにお赤飯が並んだ。

(余った白ご飯は赤城が美味しく頂きました)

 

「今日はなんで赤飯クマ?

 誰かなんかおめでたい事でもあったクマ?」

 

「きっと球磨姉のお通じがよくなった事ニャ」

 

「おい、なんで知ってるクマ」

 

「食事の前にそんな会話しないでもらえませんか?」

 

 下品極まりない会話をする球磨型姉妹を睨む不知火。

 …本人に睨んだつもりはないのだろうが、その眼力でギロリと見られたら誰だって怯む。

 

「す、すまんクマ、気をつけるクマ。

 …ッ!!あ、提督が来たクマ!」

 

 俺がステージ上に立ったその瞬間、喧騒が途端に静まり返り食堂に集合した全艦娘が俺に注目した。

 統率の取れた動きに感心すると共に、こういう時に皆がしっかり俺の事を上官だと意識してくれてるんだなと再認識するよ。時々俺の事を上官だと思ってないんじゃないかって位、舐め腐ってる子とかいるからな。

 聞いてるか?人の顔に落書きしてきたポイヌちゃん。

 

「コホン、注目!!

 全員自分の飯は取ったか?

 きっと今日の夕飯が赤飯なのを不思議に思うだろう。

 お察しの通り、少しおめでたい事があってな。間宮達が気を利かせてくれたんだ。

 んでもって、そのおめでたい事ってのは俺のごく個人的な事だ。多分皆あんまり興味ないだろうけど」

 

 そう言うと、再びざわめきが広がる。

 

「とうとう青葉達を盗撮しましたか!?」

「ついに腹筋がシックスパックになりましたか!?

 最初の味見はぜひこの浜風に!」

「何かしら?鳳翔さんが舞鶴に異動…とか?」

「え…?それはご勘弁願いたいのですが…」

「あら赤城さん、それはどういう意味ですか?」

 

 思わず本音を溢してしまった赤城が鳳翔の眼光に殺されそうになってるのを横目に、俺は神通の名を呼ぶ。

 呼ばれた神通は艦娘達の視線を浴びながら、顔を赤くして恥ずかしそうにステージ上へと上がり、俺の隣に並んだ。

 

 ……この時点で鳳翔と間宮からは生暖かい微笑みを向けられ、何故か天龍や夕立、卯月、響といった本日の遠征組がニヤニヤと笑っていた。

 まるで、俺が今から何を言おうとしてるのか分かってるみたいに。

 

 ………もしかして、覗かれてたのかな?

 

「俺のごく個人的なおめでたい事ってのは、これだ」

 

 神通の手を取り、皆によく見えるよう目の位置まで高く上げた。

 

 

「神通と交際する事になった!」

 

 

 

 数瞬間、沈黙が流れた。

 

 

 

 そして、天龍の吹き出した笑い声を合図に、鎮守府が揺れる。

 

『ええええええええぇぇぇぇーーーーー!!!!!』

『ええええええええぇぇぇぇーーーーー!!!!!』

『ええええええええぇぇぇぇーーーーー!!!!!』

 

「ハッハッハッハッハ!!いい反応するな皆!!」

「うぅ…なにもこんな大々的に報告しなくても…」

 

 ある程度反応を予測していた俺と違い、神通は心底恥ずかしそうに頬を染める。

 

「ッヨシ!俺からは以上だ!食事を始めてくれ!

 質問は飯食いながら受け付けるぞ」

 

 

 〜〜〜

 

 

 神通です。

 

 憧れの提督と交際がスタートし、私はこれまでにないほど浮かれていた。

 鬼教官だの武神だの巷では散々な言われようを受け、舞鶴鎮守府で最高練度(佐世保出身の鳳翔さん除く)を誇る皆の模範となるべき存在の私ですが、せめて今だけは艦娘としてではなく、ただ一人の女の子として精一杯幸せを噛みしめたい。

 恋焦がれたあの人と、ようやく結ばれたのですから。

 

 そして、交際を公表すると当然姉さん達からの質問攻めにあう。

 もちろんこうなることは予想してました。

 

 

「ちょっと神通!?あんたいつの間に提督と!?」

「なんで那珂ちゃんに教えてくれなかったの!?」

「いつからですか!?青葉だって知りませんでしたよ!!」

「告白は神通さんからなの!?」

「武蔵さんんん!!金剛さんが息をしてません!!」

 

「ハッハッハ。神通お前大人気だね」

「提督も見てないで助けてくれませんか!?」

 

 が、何故か提督の所には誰も行かずに全員私に向かってくるのは流石に予想外です。なんで私ばかり?

 私と同じ立場のはずの提督の所には鳳翔さんと赤城さんの二人がついているだけで快適に食事出来ている。

 

 その他の駆逐艦から戦艦に至るまでの全艦娘は何故か私一人だけに殺到しているのだ。

 

「ちょ!ちょっと待って下さい!!一人ずつ対応しますから!!」

 

 このままでは満足に食事も取れない。

 助け舟を期待して提督の方をチラリと見やるが、こちらの視線にも気付かずにお水を片手に鳳翔さん達と談笑を続けている。

 助けてくれる可能性は低そうだと判断した私は、諦めて皆に向き合った。

 

「待て待てお前ら。

 そんな一気に詰め込まれたら神通だって満足に答えらんねーだろ?」

 

 意外にも、助け舟を出してくれたのは天龍さんだった。

 落ち着かない喧騒を腕一本広げるだけで静止させ、一瞬のうちに場の空気を纏めた手腕は見事なものです。

 

「質問は一人ずつにしとこうぜ。飯くらい食わせてやれ。

 で、早速俺からなんだが、いつの間に付き合ってたんだお前ら?」

 

「つ、つい昨日の事です…。鳳翔さんに後押しされて、そのまま…」

 

「あぁ、だから今朝は『私にとっても初めての思い出なんですから♡』とか抜かしてやがったのか」

 

 !!?!? まさか見られてたんですか!!?

 

「フハハ!!いや面白ぇもん見たよ!!

 ィヨッシ!!俺からの質問は終わりだ!

 次は夕立だぞ」

 

 ま、まさか…司令室の甘いひと時を見られてしまっていただなんて…。

 く、口付けしてるところも見られたのでしょうか…?

 い、いえ天龍さんの事ですから、きっと空気を読んでどこか遠いところにいってくれてますよね…?

 

 

 

「神通さーん!!提督さんとのチューどうだったっぽーい!!」

 

 

 ・・・・・・・・・

 

 

「うーちゃんも見たぴょん!すごく美味しそうにチューしてたぴょん!!」

 

 

 ・・・・・・・・・

 

 

「ハラショー。ロシアでもあんなキスは見ないよ」

 

 

 ・・・・・・・・・

 

 

 ………あぁ、きっと私の顔はとてつもなく赤く染まっている事でしょうねぇ…!!

 

 川内姉さんが気まずそうに私の顔色を伺ったと思うと、目を合わせてくれず、呟くように、こう言った。

 

 

「………舌は入れたの?」

 

「い!いやああああぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!!!」

 

「それは入れてないって事だよね!!?」

 

 

 真っ赤になった顔を隠すように、私は机に突っ伏した。

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

「あらあら…。まさかキスまで済ませていただなんて」

 

「今までの進展の遅さが嘘みたいですね」

 

「ハハ…、想像以上に恥ずかしいな、これ」

 

 騒がしい神通サイドを横目に、俺は鳳翔と赤城の二人と食堂の隅にいた。不思議と二人は俺に何も質問をしてこなかった。

 その代わり、神通に浴びせられる質問の嵐にはしっかりと耳を傾けているようでなにか興味深い話題が上がればすかさずに俺にも話を振ってくる。

 大人びた二人だからこその、余裕というものを感じる。

 

 少し赤面している俺を微笑ましく見つめる鳳翔は、ふと思いついたようにクスリと笑って呟いた。

 

 

「このペースだと、私が帰るまでに初夜も済ませてしまうのでは?」

 

「アッハハハハ!!!交際して三日目で初夜は流石に早すぎますよ!!」

 

「いやいくら俺がスケベでもそこまで手は早くないぞ!」

 

 

 

 

 





 次回 初夜
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