18禁描写はないですからご安心(?)を
夕食が終わり、ようやく私は解放された。
「ハァ…、ようやく終わった」
夕飯を終えた私は一風呂浴びようと大浴場へ来ていた。
提督の趣味全開で改装された大浴場は非常に広い。おまけにジャグジー、滝湯、サウナ、薬湯と多種多様。
この施設一つだけで一体どれだけのお金が動いたんでしょう…。
夕飯後にしては珍しく大浴場に誰もいない。普段は最低でも二人か三人はいるものなのに…。
まぁ、たまには一人でゆっくり浸かるのもいいですね。
大きめの湯船に浸かると、身体の芯から温まってゆく感じがして思わず声が漏れた。
………私が、あの憧れの提督と、交際を…。
こうして一人でいるとつい考えてしまう。提督の事を。
そのたびに、私は本当にあの人の事が好きなんだなと実感する。
初めこそ頼りなかったけど、今はそんなの見る影もない。スケベなところばかり目立つけれど、時折見せる真剣な横顔と人懐っこい笑顔が私は好きだった。
そんな人が私の事を…ス、好きだと、言ってくれた。
私を好きだと言って…
私を抱きしめ…
私に、キ、キスを…
(───!!!!!)
一人で考えてるうちになんだか恥ずかしくなってきてしまい、思わず湯船に頭を沈めた。
(私が提督の恋人私が提督の恋人私が提督の恋人私が提督の恋人私が提督の恋人私が提督の恋人私が提督の恋人私が提督の恋人私が提督の恋人私が提督の恋人)
湯船の中で同じ単語を何度も何度も頭の中で唱える。
やがて息が苦しくなってきたので、湯船から顔を出す。
そして息を整えると、最後にもう一度だけ呟いた。
「私が……提督の……恋人」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「………フヘへ♪」
これは、マズイですね…。
今の私、かなり幸せです。
気持ちの悪い笑い声だって出てしまったし、ダラシなくニヤけてしまう表情が抑えられない。誰もいない大浴場で、私は一人頬を持ち上げて幸せを噛み締めていた。
「神通さん、さっきからなにしてるんですか?」
「!!! は、浜風さん!!」
いつの間にか浜風さんが入って来ていた。
慌てて表情を引き締めて向かい直すが、さっきの醜態を見られてしまっただろうかと一瞬身構える。
しかし、浜風さんはいつもと変わらない様子で流し場(身体を洗うところ)へと向かい、シャワーを浴び始めた。
「浮かれる気持ちは分かりますが、表情ぐらいは引き締めておいた方がいいですよ」
や、やっぱり見られてました…。
「すみません…。以後気をつけます」
「いえ、幸い私しかいないみたいですから」
浜風さんはシャンプーを終えて泡まみれになった頭髪を流し終えると、私の隣にきて大浴場に肩まで浸かった。
「…神通さんにお聞きしたい事があるのですけれど」
「はい、なんですか?」
「初夜はいつになりそうですか?」
思わず壁に頭をぶつけた。
「い!いきなり何を言い出すんですか!!?」
「すみません、純粋な疑問です。
というのも……その…ほら、提督はとても性欲旺盛な方ではありませんか。神通さんと初夜を経験すれば、あのセクハラ行動も少しは大人しくなるかなぁ…と」
………確かに。
提督のセクハラ行動には少し目を見張るものがある。その性欲を私が少しでも解消出来たなら、確かに提督が大人しくなるかもしれない。
ただ、それには一つ問題がある。
「私、そういった事には疎くて…テ、提督をご満足させられるでしょうか?」
そう、私は未経験なんです。
聞いた所によると、提督は海軍に入隊する前から既に経験を済ませてるらしく、女性をリードするのにも慣れてるそうだ。
その為、もしかすると私の事を気遣い、ご自分はまだ満足していないのに道半ばで中断してしまう事も考えられる。
「それは心配いらないのでは?
あの提督の事ですもの。満足せずに一夜を終えるというのは中々考えにくいです。
例え最後まで致せなかったとしても、トイレで発散して賢者タイムに突入しそうなものです」
「そ、そうだと良いのですけれど…」
「とはいえ…お二人のペースというものがあります。
外野からとやかく言って、変にプレッシャーを与える事はやめておきましょう」
そう言うと浜風さんは大浴場から上がり、とても駆逐艦とは思えないような二つの胸部装甲をプルン♡と揺らしながら薬湯へと浸かり直した。
「というか…筋肉フェチの私個人的な意見としましては、あのナイスバディを一晩中堪能できる事がこの上なく羨ましいですよ」
少しだけ嫉妬するように、浜風さんは背中越しに語った。
…割と真面目な声のトーンでした。そういえばアナタ、極度の筋肉フェチでしたね…。
ナイスバディはむしろあなたの方でしょう…?
(それにしても……初夜………ですか。
そうですよね…、いずれかは訪れますものね)
その時私は想像してしまった。
提督と交わっている自分を。
提督に求められ、快楽に泣かされる自分を。
たくさん注がれて、子を身籠った自分を。
そして海の見える白い家で、大きくなったお腹をさすりながら椅子に揺られる自分を…。
〜〜〜
家の中から私服姿の提督が現れて、カップに入ったコーヒーを二人で飲みながら水平線の彼方を一緒に覗き込むんです──
『キレイな夕日ですね─』と椅子に揺られながら大きくなったお腹を気遣い、水平線に見惚れる私の手を握る提督。
思わず彼を見つめると、夕日に照らされる私の王子様が『君の方がキレイだよ』と微笑む──
そして太陽が水平線に隠れたその時、『僕達の愛を覗こうとする太陽はいなくなったね』と言いながら私へと近付き、『愛してるよ』と呟きながら、夕日をバックにして包み込むような優しい口づけを──
〜〜〜
我に返った私は再び壁に頭を叩きつけた。壁に大きなヒビが入るが気にしない。
突然壁に頭をぶつけ始めた私を浜風さんが怖がっている。
(私って、結構変態なんでしょうか…)
少しだけ自分がイヤになりつつも、これ以上はのぼせてしまいそうだったので浜風さんに会釈だけすると、先にお風呂を上がった。
(何なんですか今の神通さん…!!?怖い…!!)
一人残された浜風は、神通の奇行に震えるばかりであった。
〜〜〜
〜司令室〜
(大本営の老害共…!!
自分の仕事全部こっちに振ってきやがった!!)
皆が寝る準備を始め出した夜更けの時刻。
提督は司令室にて、大量の書類の処理に追われていた。
(とりあえず、キリがいいとこまではやっときたいが…。
うひ〜!!!こりゃ寝れねぇー!!)
神通と恋人同士になれたことで気分は最高潮に浮かれていたが、それを執務には持ち込まない。
私情に流されていざという時の判断を間違えるといった事態にならないよう、普段から公私はきっちりと分けるようにしている提督はいつもと変わらない様子で頭を働かせていた。
コンコン
「テ、提督。そろそろ仕事も納め時ですよ?」
数回のノックと共に神通の声がし、あまりに最高のタイミングで登場した神通になんだか嬉しくなった。
「あぁ。すまない神通。ちょっといいか?」
「? はい」
部屋に入ってきた神通。
神通は執務に関しても優秀だという事を今までの経験上から分かっていた提督は、少し卑怯な物言いになるのを理解した上で、執務の手伝いをしてもらう事にノーを言い出せないような言い方をする。(神通がノーを言うとも思えないが)
「明日、神通って一日休みだったよな?」
「へ…?あ、そうです、けれど…」
(い、いや違いますよね?これは決して明日休みなんだったら、一晩中相手をしてくれとかそういうのではないのですよね?)
「すまん、今日は寝られないつもりでいてくれ」
「…………………………………………ひゃい」
「?」
(あれ?まだ何も言ってないのに引き受けてくれた?)
その後、神通と提督は仲良く執務に取り掛かった。
なお、脳内。
(こ、この書類が終わったら初夜が始まるのでしょうか…!!?
それとも日が変わってから…!?)
(今日の神通、珍しく落ち着きがないな…?
まぁ交際したてだもんな。神通も俺と同じくらい浮かれてるみたいで安心した!)
完全にその気になっている神通。
微塵もそんな事考えてない提督。
どちらかと言うと提督の言葉足らずなお願いの仕方が悪かったのだが、脳内ピンク色に染まっていた神通にも非がある。
その時、風呂上がりの神通から柔らかな香りが漂い、提督の鼻を刺激した。
「ん…、神通」
「!! は、はい!」
「もう風呂入ってるのか?」(今すげえいい匂いした)
「…………………はひ、入って…い、ます」(…もう、始まるのでしょうか)
「あぁ、どうりで髪がちょっと濡れてる訳だ」
「す、すみません…。ちょっと乾かしてきますね」(す、少し生臭かったのでしょうか)
「いやいやぜひそのままで!
俺好きなんだよ髪の濡れた女の子って!なんとなーくエロく見えるだろ?」
この時の提督も普段のノリで完全にセクハラのつもりで言ったのだ。
きっと普段の神通ならば軽く受け流すか、冷ややかな視線を向けてくるだろうと思っていた。
だが今日は…。
「ワ、分かりました。提督がお好きなんでしたら…」
「…………ん?」
何故か素直に受け取って顔を赤くする神通に逆に提督の方が困惑する。
(あ、あれ?なんか反応思ってたのと違う。
ま、まぁ付き合い始めたんだし、関係も多少変わってくる…のか?)
(提督は濡れた髪がお好きなんでしょうか…!?
浜風さんの筋肉フェチみたいに、濡れ髪フェチとかあるんでしょうか!?)
様子のおかしい神通に首を傾げる提督に、全く的外れな事を考える神通。
お互いがお互いのすれ違いに気付くことはない。
「あ、そうだ神通。お前って(海戦の)夜戦得意だよな?
なにか気をつける事とかってあるか?」(書面に夜戦の事が記載されてたので、なんとなく聞いた)
「や!夜戦(意味深)!?
気をつける事なんてないです!そもそも得意じゃありませんよ!」
(私未経験なんですよ!?)
「えぇ?お前より夜戦強い艦娘なんて中々いないと思うんだけど」
「私にどんなイメージ持ってるんですか!?」
(そんなはしたない女だと思ってるのですか!?)
「そりゃ夜戦最強の意外とおっぱい大きい最高の大和撫子だと思ってるぞ!!!」
「私はそんなイヤらしい女じゃありません!!」
「いや俺だってそんな事思ってないぞ!!?」
二人のすれ違いは続く。
二人の誤解が解けたのは、すっかり日が変わってしまった夜更けだというのにも関わらず延々と口争いを続ける二人に痺れを切らした武蔵が怒鳴り込んで来てからだった。
「二人ともいつまで騒いでるんだ!!
消灯時刻はとうに過ぎてるんだから静かにしろ!!!」
「はい、すみません…」
「すみません…」
二人仲良く武蔵に怒鳴られて萎縮してしまう。
提督はともかく、神通が怒られるなど中々レアではないか?
「全く、一度でも落ち着いて話し合えばすぐに誤解も解けただろう?
もう少し相手の言う意味を考えるんだな」
自分だって金剛を含めた三人で勘違いコントを繰り広げてた事を棚に上げているではないか。
「私はここらで失礼するよ。それと提督。
もし資材に余裕が出来たなら、ぜひ私を使ってくれよ」
「あぁ、検討しておくさ」
最後に勇ましげに微笑みを見せると、武蔵は部屋を出ていった。
「も、申し訳ありません提督…。私の早とちりでした」
「俺の方こそごめん。
なんか噛み合わないと思ってたんだよ」
お互いが非を理解して謝る。
その時に、神通は微笑んで見せた。
いつもと同じように、優しく包み込むような笑顔を。
すると偶然にも雲が割れ、窓の外から月明かりが二人を照らした。
「あら、今日の月は満月だったのですね」
「…………あぁ」
ふと、提督が月を見ながら、呟くように言った。
「月が綺麗ですね」
……その言葉の意味を知る神通は、少しだけ微笑んだ。
意外とロマンチストなんですね。
「きっと、貴方と見るから綺麗なのですよ」
微笑みながら月を見上げる神通に、提督は我慢出来なくなったようだ。
自然と近付く。
提督の手が頬に触れる。
意図を理解した神通は静かに目を閉じると、少しだけ上を向いた。
そして、ゆっくりと唇を重ねる。
…ちょっとだけ、お酒の味がした。
「……なぁ神通。ちょっと真面目にベッド行こうぜ」
「ふええっ!?あ、アゥ…!ワ、分かり、ました。
ででで、ですが提督!ワ、私、初めてなので…。
出来れば、優しく…して下さいね?」
「・・・」
提督は無言で膝の下と肩に手を回して無理矢理お姫様抱っこをした。
「テ!提督!!離してください!!」
「んなカワイイ事言われて我慢出来るかボケがアァ!!」
「ええええええぇぇぇーーーーーー!!!!!」
この後、めちゃくちゃ
翌日から、提督のセクハラは大人しくなったそうです。