スケベ提督と元ブラック鎮守府   作:ルフレオ

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 一度描いてみたかった話。


神通のお悩み相談 ①

 

 神通の自室。

 

 そこは折り畳まれた机と鎮守府の全部屋に常備されている布団位の必要最低限の家具しか置かれていない殺風景な部屋。

 イヤな言い方をすれば可愛げのない部屋だ。

 

 武人肌な神通らしいと言えばらしいかもしれないが、せっかくの個人部屋なのだからもう少しオシャレをしたらいいのに、と神通の姉妹艦である川内、那珂はいつも思っている。

 

 戦場では自分よりも皆を優先して行動したり、私生活では自分自身の事にとんと無頓着だったり、性欲がめっさ半端なかったりと色んな意味で神通は提督とお似合いである(笑)

 

 そのお似合いのカップルは今、皆が寝静まった後に神通の殺風景な部屋に集まって物理的な意味で乳繰り合っていた。

 

「もうムリです!!お腹入らな…!!」

「あと一回…いやあと2回!こんな気持ちいい事やめられない止まらない!」

「何えびせんですか!?も、もう無理です!4回目ですよ!?」

 

 

 ・・・・・・夜は更けてゆく。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

「鳳翔さん、折り入ってご相談があるんですけれど」

 

「・・・あの、私ほんの数日前に帰ってきたばかりなのですけれど」

 

 司令室に備え付けられた通信機を使い、神通は佐世保鎮守府に電話をかけて鳳翔に助けを求めていた。

 

 長年二人の恋を見守ってきた鳳翔。

 だがあまりの進展の遅さに痺れを切らし、少し背中を押してあげた事でようやっっっと成就した二人の恋。

 成功報告を受けた時には思わずこっちが飛び上がってしまいそうな程に嬉しかった。

 だが成就したらしたで、今度は一週間以内に初夜まで済ませてしまうあまりに早すぎる怒涛の展開にまた違う懸念材料が増えた。

 

 約束の一週間の期限を過ぎたので泣く泣く途中で切り上げて帰投したのだが、案の定帰還して早々にヘルプを求められたので流石の鳳翔も苦笑いである。

 

「ま、まぁいいです。それでご相談というのは?」

 

「あの……精力剤を頂きたいです」

 

 ・・・精力剤。

 つまり、〇〇〇〇(放送禁止用語)をする回数を増やしたいと、そういう事ですか?

 仲睦まじいみたいでなにより。

 

「あら?神通さんの夜戦に提督がついてこれなくなっているのですか?」

 

「ち!ちが!!逆です!!提督に私がついていけなくなっちゃってるんです!!」

 

 …電話越しなのに、神通さんが真っ赤な顔でぶんぶん首を振ってる姿が容易に想像できます。

 

「多分佐世保鎮守府にも置いていないと思いますよ。そんなもの」

 

「で、では明石さんにお願いしてもらえませんか!?なるべく早く!!

 とにかく大至急頂きたいんです!!」

 

 明石は舞鶴鎮守府ではなく佐世保鎮守府に着任している。

 普段は夕張の着任する舞鶴出身の艦娘を除く全海軍基地の全艦娘の装備の『修理』『開発』『建造』を請け負っているが、稀に明石の元にこういったイレギュラーな依頼が舞い込んでくる事もある(何故かは不明だが、明石が作れば大抵の品物がワンランク上の仕上がりになる為)

 

 とても多忙な人物に思えるかもしれないが、一応艦娘の装備を人の手でも修理する事は出来るので(明石が修理するより時間はかかるが)大抵は他の鎮守府では人の手で装備を直す事がほとんど。

 そのため、案外暇してる事が多いのだ。

 

 それはそうと、やけに必死な声色の神通に鳳翔は少し疑問符を浮かべる。

 そもそも今の提督には普段の業務活動への影響と行き過ぎたセクハラ行動のないように、と金縛を装着させているはず。

 勃起が出来ないとなると、自然と性欲も抑えられるでしょうし、そうなればセクハラも鳴りを潜めるはず。

 

 雲龍さんからの報告では確かに毎日装着しているそうですから多少なり抑えれられていると思ったのですけれど…。

 それとも金縛を用いても尚、提督の性欲は抑え切れないというのですか?

 

「提督はそんなに激しいのですか?」

 

「そ、それが…以前鳳翔さんが下さった金縛を装着するようになってからというもの、昼間に抑えられている性欲が一気に夜中に爆発しているみたいで…」

 

 …思わぬ落とし穴がありました。私のミスです。

 

「逆に提督の性欲を抑えたりはしないのですか?」

 

「あう…そ、それは勿体ないじゃないですか」

 

 …あなたも大概変態ですよね。

 

「そ、そうですか。

 えと、一応探してみますが、無ければ明石さんに頼んでみます。

 完成次第、そちらに送るようにしますので」

 

 そう言って受話器に微笑むと、鳳翔は電話を切った。

 

 

 

 〜佐世保鎮守府の工廠〜

 

 

 鳳翔は鎮守府中を探してみたがやはりそんな代物は置いていなかった。

 まぁ普通はそんな物誰も必要としないだろうから仕方ない。

 

 なので、工廠を訪れて明石に依頼を出す事にした。

 

 明石の発明に関する腕前は舞鶴鎮守府の夕張でさえも寄せ付けない圧倒的なものだ。百戦錬磨の経験を誇る鳳翔でさえも全幅の信頼を寄せるほどに。

 

 それでいて、彼女はかなりの工作好き。

 

 放っておけばあるだけの資源を勝手に使って延々とよく分からない品物や装備の開発をし続けるものだから、ある意味最も警戒するべきトラブルメーカーだ。

 

 あまりに作業に熱中しすぎて食事を忘れる明石を心配して他の艦娘の子がわざわざ食事を運んでくる事も珍しくない。

 注意をしたい所だが、そういった時に制作された品物に限って強力な新兵器だったり皆が必要とするような一品だったりするので中々文句も言いづらい。

 

 …私達の事をモルモットかなんかと思っているのか、時折「ソレ使って大丈夫なんですか?」みたいな品物を作っては容赦なく勧めてくるのがたまに傷ですが。

 

「神通さんの依頼です。なんとか精力剤を作って頂けませんか?」

 

「……その前に、一つ確認させてください。

 精力剤を飲むのは、提督ですか?それとも神通さんですか?」

 

「神通さんが服用するみたいです。それがどうかしましたか?」

 

「……フッフッフ〜!待ってましたこの依頼!!」

 

 

 早速依頼を受けた明石が不穏な笑い声を上げだす。

 

 自然と鳳翔は少し距離を取る。

 今までの経験上、明石が不穏な笑いをしたときは決まってとんでもない一品が出てくるのだ。

 

以前、「ついに完成しましたよ!!出でよ!汎用人型決戦兵器 エヴェンデリリオン!」等と高らかに宣言した後、鎮守府の床がパカッと開いてバカでかい図体したロボットがガシャン!ガシャン!と出てきた時は海の底に沈めてやろうかと思いました。

 

 流石の提督もグーで拳骨したレベルです。

 あれのせいでどれだけの資源が消えたと思ってるんですか。

(※エヴェンデリリオンは赤城さん、神通さん、大和さんと連携して鉄クズにしました)

 

「そんなに警戒する事ないじゃないですか!自信ある一品ですよ!」

 

「あなたは前科がありますからね」

 

「あぐ! ア、アハハ…反省してまーす」

 

 途端にバツが悪そうに引き攣った笑顔になった明石は自らの胸元に手を差し込んで一本の瓶を取り出した。

 …胸が大きいとそんな収納が出来るんですね。私への当てつけでしょうか?

 

 何故か突然殺意を向けられた明石は内心冷や汗をかく。

 

「ワ、私も提督と神通さんの恋模様にはモヤモヤしていたんです。

 そして、ついにお二人が結ばれたと連絡が来た時からこの薬の製作に取り掛かってました。

 近いうち、きっと必要になると思いましたから」

 

 取り出した瓶の中には薄い桜色をした液体が入っている。

 案の定というかなんというか、もう見るからに怪しい品物が出てきたので思わず顔をしかめてしまう。

 

「だ、大丈夫ですよ!毒は入っていませんから!」

 

「本当ですか…?」

 

「そんなに信用ないですか?私?」

 

 前科がありますからね。

 

「ま、まぁいいです。

 とにかく!このお薬を神通さんに送ってあげて下さい!!きっと面白い事になると思いますから!!」

 

「・・・」

(イマイチ信用なりませんね…)

 

 明石さんのゴリ押しに負け、結局鳳翔はその薬がどういう代物なのか充分確認しないまま、舞鶴鎮守府に速達を出したのだった。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

 神通が鳳翔に連絡をした翌日、早速佐世保鎮守府から配達が届いた。

 皆が寝静まった真夜中、神通は一人で薬を取り出した。

 

(これが精力剤なんですね…。初めて見ましたけれど不思議な色)

 

 今日も提督から声をかけられた。

 今晩もまた、私は快楽に泣かされるのだ。

 だから提督が部屋を訪れるその前に私は怪しい精力剤を一口で飲んだ。

 

「…………苦い」

 

 口の中に苦味が残っていて気持ちが悪い。口直しに水を飲もうと洗面所へと向かった。

 水道水をコップ一杯に受け止めてそれを飲む。

 うん、水道水もあまり美味しくないですね。

 

 そしてふと、洗面所の鏡に映った自分が目に入る。

 

 

 鏡の中の自分の姿に雷に打たれたような衝撃を受けた。

 

 

 普段と変わらない容姿に普段と同じ髪色と髪型。

 

 なのに、ほっぺたから三本ずつ細いヒゲが伸び、頭の上から新しい動物の耳が生えていた。

 鏡の隅の方にゆらゆらと左右に揺れる何かが見えた。

 それは茶色い尾だ。

 いったいどこから伸びている?

 鏡を向いたままで後ろに手を伸ばし、尻尾を捕まえてその付け根を辿ってゆく。

 案の定、私のお尻に触れた。

 

 

 

 ・・・私は、猫になっていた。

 

 





明石「ほら!面白い事になりましたよ!!」
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