スケベ提督と元ブラック鎮守府   作:ルフレオ

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 提督と黒狼の仲違いのきっかけとなったある事件とは…?



提督と無人島 副

 

 

 

「影波、お前は佐世保鎮守府に配属が決定した。

 お前はおそらく、提督として鎮守府に着任する事になるだろうな」

「きょ!恐縮です!!精一杯努めさせていただきます!!」

 

 

 

 あれは、影波が佐世保鎮守府に配属が決まった日だった。

 

 

(そうか…。そういや、影波は生まれつき妖精を視る事が出来たんだったな。………いいなぁ)

 

 

 

 羨ましかった。

 憧れの艦娘のすぐそばで働ける事がどうしようもなく羨ましかった。

 何故俺が艦娘に憧れてるかって?

 

 

 ガキの頃、俺は艦娘に命を助けてもらった事があるんだ。

 艦種も知らない、名前も知らない、どこの所属かも知らない、背の高かった一人の艦娘。

 彼女について覚えているのは青が強めな黒い髪に角が生えていた事。あと白いシャツとスリットの入った黒いミニスカートを着込み、巨大な棒のような何かを担いでいた事だけ。顔を見れば思い出すと思うが…。

 あの日、幼い俺を化け物達から守ってくれた彼女の背中があまりにもキレイで…カッコよくて…。

 正直、一目惚れだった。

 

 だから俺は海軍に入隊した。

 提督を目指したのだって、艦娘に出会う機会がもっとも多い職業だと踏んだからだ。一目惚れしたあの時の艦娘に会う為だけに提督を目指したと言っても言い過ぎではない。

 

 

 

 ……少し脱線したな。

 

 俺の提督になる夢は、妖精が見えなかった為に叶わなかった。

 だが、影波は妖精を視認する事が出来た為に提督になったのだ。

 

 嫉妬が芽生えなかったと言えば嘘になる。

 でもその時点ではまだ、不思議とあいつの事を嫌いになれなかった。あいつがいい奴だというのは新兵時代の付き合いでよく分かっていたから多分そのおかげだと思う。

 

 でもあの日、俺と影波の間に決定的な亀裂が起こる事件が発生した。

 

 

 

 

 

 〜新兵時代〜

 

 

「たまには裸の付き合いというのもいいな…」

 

「あぁ、男二人で温泉旅行ってのも中々楽しい」

 

 あの事件が起きたのは、休みの日に俺と影波の二人で秘境の温泉宿を訪れた時だった。露天風呂から見える山々がとても美しかった事をよく覚えている。

 

「いやー極楽極楽♪あとは隣にいるのがお前じゃなくて可愛い女の子だったら文句なしだったな〜」

 

「その言葉、そっくりそのままお返しするぜ、もやし野郎」

 

「あんだとぉ!?俺これでも体脂肪率めっちゃ低いぞ!!最近腹筋も割れてきたし!!」

 

「俺はとっくにシックスパックだブァーカ」

 

 細い身体を必死に強張らせて全身の筋肉を強調する影波が滑稽で仕方がない。いや、滑稽を通り越して哀れみすら感じる。

 体格的にどう考えてもお前じゃ俺相手に筋肉量で勝てねーよ。

(※フォローしておくと、当時の影波の筋肉は浜風が見たら鼻血を出すレベルです)

 

「───ん?女湯の方に誰か入ってきたな」

 

 ここの温泉では竹柵一つを挟んだ向かい側は女湯となっており、向こうの音が男湯の方にも普通によく聞こえる。

 つまり、この貧弱な竹柵の向こうで一糸纏わぬ女の子達が平気な顔で湯に浸かっているという事なのだ。だが、その事実を理解してもなお、俺達はあまり邪な気持ちにはならなかった。何故なら──

 

 

 

「どうせ年食ったBBAしかいないだろ」

 

 

 

 現実はそういうものである。

 

 

 

だ が し か し !

 

 

 

《露天風呂やんヤバー♪》

《いい景色ー♪》

《寒い寒い!もうえいき、はよ入ろうやー!!》

 

 

 

若 い 女 の 声 で あ る !

 

 

 

「こちらコード01。ズールーブラックウルフ、応答願う。どーぞ」

 

「誰がズールーブラックウルフだ、どーぞ」

 

 何故か風呂桶を頭に被せた影波が竹柵の側で中腰の姿勢でもたれかかった。

 まーたなんか訳わからんスイッチが入りやがったな。

 

「なんだよズールーブラックウルフって。意味わかんねーわ」

 

「鼻水ズルズル黒狼君って意味だ」

 

「俺がいつ鼻水垂らしたよ」

 

 影波は俺を無視して女湯の竹柵に足をかけてよじ登ろうとし出した。

 何堂々と犯罪しようとしてんだ。

 

「おい待てコラ、まだ希望段階とは言え憲兵の目の前で覗きとはいい度胸してんな」

 

「何を言うか、俺は友を置いて楽園に旅立ったりなんてしないぜ」

 

「は?いや俺はしねーぞ。憲兵として」

 

「おいおい黒狼よ、ここは風呂場だぜ?そしてここにいるのは、提督と憲兵じゃなくて、裸の男が二人だけ…そうだろ?裸の憲兵がどこにいる?

 共に行こうではないか。同志よ」

 

「……フッ、俺としたことが。付き合うぜ、親友」

 

 

 

 影波はスケベバカである。

 黒狼は立派なバカである。

 

 

 

 

「一瞬覗いたら変われよ!?」

 

「分かってる分かってるって♪」

 

 黒狼の肩に影波が両足を乗せて立ち上がる直列繋がりのおかげでなんとか影波が頭半分を竹柵から出すことに成功した。

 なお、順番はじゃんけんで決めた。

 

「フッフッフ…!いざ行かん!!花の都の桃源きょ「さっきからうるさいのよ!!!」バコッ!!

 

 突然女湯から投げられた風呂桶が影波の顔面に直撃した!

 バランスを崩した影波はそのまま露天風呂に背中から倒れて巨大な水飛沫を上げる。

 

「私達が言うのもなんだけど覗きをするんだったらもっと静かにしなさいよ!!」

「アッハッハ!!こっち丸聞こえやったでぇ♪」

「覗きなんて本当にする人いたんだ…」

 

 竹柵の向こうから女の子達が湯船を上がる音が聞こえる。

 どうやらこちらの作戦会議は全部敵陣に筒抜けだった模様。

 まぁ当然である。向こうの音は聞こえるのにこっちの音は聞こえないなんてそんな訳がないのだ。

 

「……ま、現実はこんなもんか」

 

 というか、そもそも向こうにいた女の子達が可愛い子だったかどうかも確認していない。目も当てられんようなモンスターが向こうにいた日にはこっちがトラウマを抱える事になる。

 そういう意味では、むしろ今日の覗きは失敗に終わってよかったかもな。

 

「おら、風呂上がりの牛乳でも飲みに行こうぜ」

 

 湯船に浮かんだ影波の足を蹴る。

 影波は妙にボーッとした様子で湯船に浮かびながら青い空を見上げていた。

 

「どうしたよ、影波」

「……エタ」

 

 あ?今なんつった?

 

「見えた、女の子の乳首が…しかもめちゃくちゃ可愛かったぞあの子達…!!」

 

 な、なん……だ…と…!!?

 

「はぁ!?見えただと!?ふッ!ふざけんなよ!!てめぇだけ見たってのかよ!?」

 

「……いいもん見たわ」

 

 

 

 その瞬間、二人の間に決定的な亀裂が出来たのだ。(!?)

 

 

 

 かたや桃源郷を見た男。

 かたや叶わなかった男。

 

 

 得た者と得られなかった者の差は大きい。

 故に、男達は自然と険悪な関係になっていったのだ。

 

 

 

 

 

 ………………普通はならないはずだが。

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

「これが、俺達が仲違いをするきっかけとなった忌まわしき事件。『リアルスコープ事件』だ」

 

「真面目に聞いた私が馬鹿だった…」

 

 武蔵はゴミムシを見る目で俺と黒狼を見下す。

 

「待て待て待て姉ちゃんよ、なんだそのいい草は。

 俺たちにとってあれがどれだけ衝撃的な事件だったか分からない訳じゃあるまい」

 

「分からないな。というか分かりたくないな」

 

 武蔵には心底分からなかった。

 異性の乳首が見えなかっただけで何故親友の男二人が仲違いをするにまで発展するのかが武蔵にはどうしても分からなかった。

 

「黒狼殿。私はお前はいい男だと信じていたんだぞ」

 

「勝手な理想を押し付けんじゃねぇ、俺はこういう男だ」

 

 あぁ、何故だか裏切られた気分だ。

 提督の親友だと言う割には中々常識的でいい男じゃないか、と思っていたのに蓋を開けてみれば提督と大差ない変態だったのだから。

 初対面時のあの得体の知れない何かを相手にした緊張感を返してくれ。

 武蔵の中で何かが音を立てて崩れてるような気がした。

 

 

 

「黒狼、あの時の一件は悪かったよ。謝る」

 

 その時、提督が軍帽を脱いで頭を下げた。

 

「ッハ!今更かよ」

 

「そうだな…今更だ。

 今更謝ったところで、ただ俺が楽になるだけなのかも知れない。

 だがそれでも言わせてくれ。本当に…すまなかった」

 

 

 ………なんだか深刻な空気を流そうとしてるが、単に覗きが出来なかった事詫びてるだけだよな?

 

 

「おう、そうだな。まず謝るのは大事だ。

 それで、影波。それだけか?俺に言わなきゃならねぇ事はそれだけか!!?

 俺が欲しいのは謝罪じゃねぇんだよ!!!」

 

「分かってる、分かってるともさ。俺も、あの日のことを一日たりとも忘れたりしなかった。

 黒狼…、女の子の乳首はピンク色だったぜ」

 

 

 真顔で何を言ってるんだ貴様。

 

 

「……そうか。

 それが聞けただけで俺はもう…十分だ。

 お前の事は一発くらいぶん殴らないと気が済まねぇと思ってたが…その気も失せた」

 

 

 あぁ、私もお前を一発ぶん殴ってやろうか。

 

 

「んじゃまぁ…仲直りと行こうか」

 

「……あぁ。親友」

 

 

 提督と黒狼は固い握手を交わした。

 これにて、提督と黒狼の仲違いは終焉を迎える事となったのだ。

 

 

 

 

 なお、一部始終を見届けた武蔵は深い深い溜め息を吐いた。

 

 

(類は友を呼ぶとは、正にこの事だな)

 

 

 





 最初にチラッと触れた幼い黒狼の命を救った艦娘は、既に登場している艦娘の誰かです。探してみてね。


 そして、最後までシリアスたっぷりの短編だと信じてここまで真面目に読んで下さった読者の皆様に一言。
 大変申し訳ございませんでしたァ!!!!!
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