「という訳で、今日からまた仲間が増える。
皆、仲良くしてやってくれよ」
『はっ!!』
黒狼含む無人島組の紹介を終えると、すぐさま夕食が始まる。
大井と北上は球磨型に、最上型は重巡組に、大鳳は空母組に、伊401と秋月型は潜水艦と駆逐組に混ざる。
緊張してるのも相まって流石にまだ皆少し固いが、会話も割と弾んでいる。打ち解けるのにそう時間はかからないだろう。
「本当はもう六人いるんだけど、今は長期遠征中に行ってるんだ。帰ってきたら紹介する」
長期遠征には天龍を旗艦として衣笠、五月雨、野分、陽炎、如月に行ってもらってる。まさかこんな事になるとは思わなかったので、かなりの長期遠征に向かわせたばかりだ。しばらく戻ってこないと思う。
「そうだったのか。でもそれでも人数多いな。ざっくりで何人位いるんだよ」
その言葉を待っていた!!
愛する艦娘達の事とあらば、それぞれの得意な間合いや装備運用はもちろんのこと、スリーサイズにセクシャルポイント、持ってるパンツの色まで完全に把握している超筋金入りの変態であるこの影波提督!!
それぞれの艦種を何人抱えてるのかなんざ、息をするかのように把握しておるわァ!!!!!
「駆逐艦十七名、軽巡洋艦八名、重巡二名、戦艦三名、空母が五名、潜水艦一名、給糧艦が一名だ。
総勢三十七名かな?これにプラスされて、無人島組の皆がやってくる訳だ」
「……お、おう。流石だな」
えっへん、当然である。
(………憲兵さん、私なんだかあの人を通報しなくちゃいけない気がするんですけれど)
(奇遇だな秋月。俺もだ)
秋月と黒狼がものすごく失礼なことを小声で言った気がするが、気にしない。
〜〜〜
新規艦娘達の簡単な歓迎会を終えた舞鶴鎮守府が次にする事は、お風呂の準備だ。
夕飯の後はお風呂に入る。ごくごく自然な事だ。
…が、無人島組の艦娘達はその当たり前の事に大変驚いていた。
まぁ無理もない。
彼女達は三年以上を無人島で暮らしていたが、それ以前に勤めていた横須賀鎮守府でもろくな扱いをされていなかったと聞く。
下手すれば修理目的の入渠ドック以外でお風呂に入った事がない可能性だってあるのだ。
だからこそ、舞鶴及び大湊出身の艦娘達はこぞって無人島組の子達を風呂場へと連行していくのだ。
少しでも早く、彼女達にも幸せになってもらいたいが故に。
「なにこのバカデカいお風呂!ヤッバーー!!」
無人島組の一人である私、重巡 鈴谷は舞鶴鎮守府自慢の大浴場に圧倒されていた。
提督代理を自称する武蔵さん曰く、提督の趣味全開で改装された大浴場はジャグジー、滝湯、サウナ、薬湯と多種多様な温泉が整備されていてとても気持ちがいいらしい。
実際入ってみると、確かにハンパなかった!
生まれて初めて見るかもしれない温泉施設に興奮が冷めず、待ちきれなくなった私は早速一番風呂をする為に湯船へと走る。巨大な胸部装甲をプルンプルンと揺らしながら!
「ちょっとそこ!!ちゃんと身体を洗ってから入りなさい!!」
湯船に飛び込もうとした私を嗜めたのは後から入ってきた瑞鶴だった。
反射的に急ブレーキを踏んじゃったが、それが悪かったんだろうなぁ…。浴場の濡れた足元ではブレーキが効かなくって、私はそのまま派手にすっ転んでしまった。
「ご!ごめん鈴谷!!怪我してない!?」
「痛タタァ…!!ぜ!全然ヘーキ!!」
ぶつけたお尻がジンジンと痛む…。お尻赤くなってたら恥ずかしいな。
差し出してくれた瑞鶴の手を握って、私は立ち上がる。
「ありがと。ねぇ、お尻赤くなってたりしない?」
「ん?……あー、ドンマイ」
え!?赤くなってた!!?
「知らなかったわ、鈴谷ってお猿さんだったのね」
「え?何それどういう事?」
瑞鶴に突然小馬鹿にされた。誰が猿よ誰が。
「真っ赤なお尻のお猿さんって言うじゃない?今の鈴谷にピッタシよ」
「ちょっとあんたバカにしてんの!?」
先に着任している先輩相手でも流石にムッとしてしまう。
が、瑞鶴はそこから更に挑発する。
「あ、お尻腫れてるって事は発情期?流石処女ビッチね」
「瑞鶴ー!!!!あんたマジぶっ殺すわよ!!!」
大浴場の事など頭から抜け落ちた私は瑞鶴を追い回す。
が、当然瑞鶴は逃げ出す。当然私もそれを追う。
流石というべきか、瑞鶴はとても素早かった。私が一歩進む時には瑞鶴は二歩先に進んでいた。
熱い湯船をかき分けながらでは体力もすぐに底を尽きてしまう。早くに息を切らして肩で呼吸する私を煽るように舌を出して『ベー♪』と言ってる瑞鶴にとんでもなく腹が立つ。
なので、私は自慢の胸部装甲を両手で持ち上げてこう言ってやった。
「瑞鶴ったら速いんだねぇ…!?
まぁアンタには私と違って重りがないもんねぇ…!!?
「アンタそれ言ったら戦争だろうがああああアアアア!!!!!!」
「先に煽ったのはアンタでしょうがあああ!!!!」
(……五航戦は本当にやかましいわね)
浴場の隅っこの方でギャーギャーと騒がしい瑞鶴と鈴谷を小耳に挟みながら加賀は溜息を吐く。
耳障りなのでなるべく無心になりながら一人身体を洗っていると、また新しい艦娘が横に座った。
「加賀先輩。隣、いいでしょうか?」
五航戦の静かな方、翔鶴だった。
「好きに座ればいいでしょ?」
そう言うと、翔鶴は嬉しそうに隣の流し場に座ってシャワーを浴び始めた。
全く、ホント可笑しな子ね。
「すみません、瑞鶴も悪気があった訳じゃないんです…」
申し訳なさそうにする翔鶴に、私は少し目を細めた。
翔鶴の言ってる事は、今の新しく入隊した鈴谷と早速喧嘩を始めた事に対してだろう。
先に煽った瑞鶴に非があるのは事実。
でも、あの挑発はちゃんと瑞鶴なりの不器用な優しさ故なのだという事も分かっている。
「新しく入った子達が纏っている固い空気を少しでも和らげようとしたのでしょう?
ちゃんと理解しているわ」
チラリと周りを見渡す。
脱衣所と洗い場の至る所で無人島組の子達が、浴場の隅の方で頬を引っ張り合って取っ組み合いを続ける鈴谷と瑞鶴の姿に思わず笑ってしまっているのが見える。
そしてその中には、既に着任済みの艦娘達の姿も混ざっている。
少なくとも今の状況では、私達先着組と無人島組の間に壁は存在していない。瑞鶴と鈴谷の喧嘩という共通の話題ができた事が大きいのは明らかだ。
その結果を見れば、瑞鶴の狙い通りに艦娘同士の距離は縮まったと言ってよいだろう。
「まぁ、それでも鈴谷を不必要に怒らせたのは事実よ。少しは反省させなくちゃね」
「……先輩、カッコいいです♡」
やめなさい五航戦、気持ち悪いわ。
キラキラとした目を向けてくる翔鶴と目を合わせようとせず、さっさと浴場に浸かりにいった。
〜薬湯スペース〜
「フッフッフ〜!!やれば出来る子YDK!!
球磨型軽巡洋艦一番艦の球磨だクマ!!!」
「多摩はこたつで丸くなる(棒)
球磨型軽巡洋艦二番艦の多摩だニャ」
「スーパー北上様参上(棒)
球磨型軽巡洋艦三番艦の北上様だよ〜」
「魚雷撃ち込みますよ(棒)
球磨型軽巡洋艦四番艦の大井です」
「お、お前に最高の勝利を与えて…やる(恥)
球磨型軽巡洋艦五番艦の木曾だ…キソ」
『みんな揃って球磨型姉妹!!』
「クマーー!!!」
ついに集結した球磨型姉妹。
長姉である球磨を中心にしてドラゴン◯ールのどこかで見たことあるようなファイティングポーズを決める姉妹艦。
なお、センターの球磨以外は完全に棒読みである。
無理矢理付き合わされている球磨型姉妹に、艦隊の皆は冷ややかな目を向けるのだった。
「おいコラ木曾ー!!!
今のポーズ若干遅れてたぞ!もっかいだクマー!!」
「ふざけんなよ姉ちゃん!!これ以上やってられるか!!」
末妹である木曾はたまらずに大浴場から半裸で逃げ出した。
木曾がいなくなった事で球磨型姉妹は不完全となり、球磨考案の球磨型ファイティングポーズを決められなくなってしまって球磨はブー垂れる。
「ヌー…木曾はどうして姉ちゃん達と仲良くしてくれないクマ?」
「……私は、木曾の行動が正しいと思うよ」
「北上さんに同意です」
大井と北上までもが二人でジャグジー風呂の方へと向かってしまった。
取り残された球磨と多摩はとりあえず、薬湯に肩まで浸かって冷えた身体を温める事にした。
薬湯に浸かりながら、隣でポケーっと気持ちよさそうに目を閉じている多摩の横顔に球磨は話しかける。
「多摩ー?」
「ニャー?」
相変わらず、猫みたいな妹だクマ。
「北上と大井は、姉ちゃん達に心を開いてくれるよな?」
「……どうだろニャー」
(もう開いてるような気もするけどニャ…)
球磨型姉妹もまた、独自の方法で無人島組の子達と距離を詰めようとしているのだ。
なお、球磨型姉妹の心の距離は既に0である。
代わりに、球磨はその妹達から圧倒的にナメられているのである。