スケベ提督と元ブラック鎮守府   作:ルフレオ

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 お久しぶりです。
 投稿頻度は落ちると思いますが、ボチボチ再開してきます。


秋月と憲兵

 

 

 

 無人島組が舞鶴に着任してから随分経った。

 

 先着の艦娘達の歩み寄る努力によって、今となっては艦娘同士の心の距離は0に等しい。

 同じ鎮守府で生活を共にする仲間同士、自らの背を預ける仲間同士。艦娘達の心は一つとなっていき、鎮守府は一つの集団として纏まり始めていた。

 そしてそんな中、舞鶴鎮守府で唯一の憲兵として着任することとなった空風 黒狼。

 

「………あぁ〜〜、ヒマ」

 

 今日も今日とて来るはずもない陸からの攻撃に備え、賑やかで楽しげな舞鶴鎮守府から離れた所で一人で門番としての業務を全うするこの男。

 

 まず最初に断っておくが、決して……決して彼が艦娘に嫌われてる訳ではない。むしろ好かれてる位だ。

 だが、彼の仕事はあくまで門番。

 艦娘達の生活する鎮守府から少し離れて行動する事が多い以上、どうしても艦隊からは孤立気味であった。

 

 とはいえ、当の本人はそれを苦にも思わない。

 一つは長年の無人島生活で孤独感に慣れた事。

 もう一つは元々たくさん人がいるところがあまり得意ではない事。

 意外とボッチ気質な黒狼には、門番という一日のほとんどを立って過ごすだけの暇な業務は案外合っているのかもしれない。

 

 そんな彼は今日も今日とて、著しく時間を無駄にしてる自覚を持ちながら、これも仕事だと割り切り、一人でタバコを咥えるのだ。

 が、今日は一人ではなかった。

 

 

 

 鎮守府の外壁にもたれかかり、退屈そうに空を見上げて煙を吹かす黒狼の姿を木陰に隠れて見つめる者がいた。

 ………見張り員の見張りとはこれ如何に。

 煙を吹かす黒狼にガッチガチの足取りで一歩一歩バレないよう、コッソリと近づいていく一人の黒髪の艦娘。

 

 少し立ち止まって、軽く深呼吸…。

 気持ちを新たに一新し、隠れて煙を吹かす彼の横顔をキッと睨みつける。

 彼女は大きく息を溜め込み、鋭い声で言った。

 

「憲兵さん!!!タバコはめっ!ですよ!!」

 

「げっ、秋月…!」

 

 秋月型駆逐艦一番艦 秋月。

 黒狼の喫煙を咎められる唯一の艦娘だ。

 そして───

 

 

 

 

 

「げっ、とはなんですか!?憲兵さん!!」

(ハワワワワワワワワワワ!!どどどどうしよう!!?どうしようどうしようすずちゃん(涼月)はつちゃん(初月)てるちゃん(照月)ふゆちゃん(冬月)!!!!今の言い方変じゃなかったよね!?!?黒狼さんにドン引きされてたりしないよね!!?)

 

 

脳内騒がしい系艦娘である!!

 

 

「外で吸ってるんだから、別にいいだろ?少しくらい多めに見てくれよ」

 

「めっ!です!!タバコなんか百害あって一利なし!副流煙を撒き散らかすのはやめてください!」

(ハアアァァァァァァァァ〜〜〜〜〜♡♡♡黒狼さんがフゥゥゥ…って煙吐いたあぁぁぁ〜〜〜〜!!!!何今の煙の吐き方カッコいい〜〜〜!!!頭おかしくなっちゃいますよおぉぉォ〜〜♡♡♡)

 

 

 

 かつての横須賀鎮守府に勤めていた際、他の艦娘達の例に漏れずに着任していた提督や憲兵達の慰みものとなっていた秋月。容姿が提督の好みだった事もあり、艦娘達の中でも頻繁に犯されていた秋月は完全に生きる希望を失っていた。

 

 そして、そんな時に現れたのが正義感と漢気溢れるこの空風 黒狼。

 

 黒狼は、囚われた秋月の身体に繋がれていた鎖を解くと、まだ少し放心状態になっていた秋月の手を取り、真っ直ぐに目を見ながらこう言った。

『大丈夫だ、秋月。もう大丈夫だ』

 

 この瞬間から既に秋月はちょっと惚れてた。

 そこからは怒涛の【こんなん惚れるわー!】ラッシュ。

 他の憲兵ですら瞬殺する手腕。

 頼れる判断と行動力。

 無人島で見せた豊富な知識とサバイバル術。

 時折見せるかわいくて人懐っこい笑顔。

 圧倒的な肉体美と顔面。

 そして、無人島組の艦娘達の中では間違いなく断トツで彼に触れ合う機会の多かった秋月。

 

 六、七年にも及ぶ無人島生活の副産物は、そうやって誕生した。

 そう、それこそが───!!!

 

「憲兵さん!私の話!ちゃんと聞いてますか!?」

(黒狼さんんんんん!!!♡♡♡好き!!!大好き〜〜〜〜!!!!!)

 

 この脳内やかましい系モンスターである!!

 

「聞いてる聞いてるって…。ほれ、お前も飲むか?コーヒー。まだ蓋も開けてない」

 

「話を逸らさないで下さい!で、でもそれはいただきます!」

 

 鎮守府の壁にもたれかかる憲兵さんは、服のポケットからサッと缶コーヒーを取り出して私に握らせた。

 黒狼さんはまた悪びれもせずに煙を吹き始める。

 タバコはめっ!と言っても聞く耳持たない憲兵さん。なんだか注意するのに疲れた私は缶コーヒーに口付ける。

 

 うえッ!!に、苦ぁ…。これ、無糖だったんだ。私はブラック飲めないんですよねぇ……。

 

「あ、わり、お前、ブラックダメか」

 

「ま、まだちょっと…苦手です」

 

「ん、ちょっと待て」

 

 憲兵さんは懐から小銭を取り出すと、私にいくつか握らせた。

 

「やるよ、購買でなんか買ってきな」

 

「えぇっ!?ダ、ダメですよ!こんなお金もらえません!」

 

「いいから、“子供“は大人に黙って奢られとけ」

 

 ───子供という言葉に、思わずムッとしてしまう。

 

「私、子供じゃありません!」

 

「んー?ま、確かにパンツだけはいっちょ前に大人だしな」

 

「はええっ!!?パパパッ!!パ!パ、パンツ!?どどど!ど!どうして!!?」

 

「嘘だ、エロガキ。お前のパンツなんて見てねえし興味もねぇよ」

 

「〜〜〜〜〜〜!!!!!」

 

 ま、()()からかわれた!!

 満足したのか、ご機嫌に煙を吹き始める憲兵さんが腹立たしい!

 コンクリートの壁を背もたれに、白い煙を吐きながら愉快そうに笑っている憲兵さんの姿が妙に決まってて、ついかっこいい♡と思ってしまうチョロい自分にも腹が立つ!

 

「と、とにかくこのお金はお返しします!」

 

 嫌がる憲兵さんに無理矢理小銭を握らせ、私は彼と同じように壁にもたれかかった。

 

「今日の私は非番ですから!サボれるなんて思わないで下さいね?」

 

 ……不満そうに溜息を吐いたのを私は見逃さない。

 憲兵さんは勿体なさそうに目を閉じ、まだ火のついたタバコを地面に落として足で踏み捨てる。足元から昇るわずかな煙が寂しそうに消えていくのを見て、ほんのちょっとだけ残念に感じてしまった。

 

 タバコに嫌悪感があるのは間違いないけれど、憲兵さんが煙草を吸ってる姿を遠目から見る事自体は好きだから。

 

「憲兵さん、今日だけで一体何本吸いましたか?」

(横顔カッコいいなぁ……♡♡私の事なんて目にもくれずに真っ直ぐに前を見るその姿……好き!!まるで銀色に染まった山の頂上で神に向かって気高く吠える狼のようですぅ…♡♡)

 

「えぇ〜〜……、さ、三本くらい?」

 

「本当ですか…?」

(三本!? 黒狼さんのあの大きくて硬い指先で弄られて、ヌルヌルの唾液と舌先でペロペロしてもらいながら白いナニかを吐き出していた小さな棒が三本もあるっていうんですかあぁぁー!!?)

 

「………ほんとは、六本目」

 

「まだお昼前なのに、吸いすぎです!」

(六回なんて嘘オォォォーー!!!そんなにシていたんですか!?そんなに私は黒狼さんが白いモノを吐き出してる姿を見逃してたんですか!?)

 

「おっと、長年のニコチン不足を解消してんだ。今の俺に禁煙は禁句な?」

 

「だとしてもです!憲兵さんだって、ニコチンは血管を収縮させ、血圧が上昇し、心臓に大きな負担をかけるんです!百害あって一利なし!禁煙するべきですよ!!」

(つまりつまり!血流が悪くなるということは黒狼さんの黒くて大きな◯◯◯(放送禁止用語)にも血液が回らなくなってしまうって事なんですよぉ!!?!? ワオォォン!!と吠える黒くて立派な狼さんがワンワン♪としか鳴けないカワイイワンちゃんになっちゃうかもしれないんですよぉ!!?)

 

 

 秋月の脳内は完全にお花畑になっていた。

 

 

「フハハ…!好きな事我慢して長生きよりゃ、好きな事して早死するのを選ぶさ」

 

「むうぅぅ……。ああ言えばこう言いますね…」

(でも、好き♡♡♡)

 

「すまんすまん、お前が相手だとついついダラシなくなっちまう」

 

「え?どうして私が相手だと…?」

 

「ん?あぁ、秋月はしっかり者だからな。変に肩に力入れなくて済む」

 

 え?私だけは、特別って事ですか?

 私にだけなら、見せてくれるお顔があるって事ですか…?

 そ、それってもしかしてですか…?

 もしかしなくてももしかしてですか…?

 もしかしてだけど(もしかしてだけど)

 もしかしてだけど(もしかしてだけど)

 それって、私と両想いだったりするんですか!?

 

「軽巡とか重巡洋艦の前では理想の提督を演じなきゃ行けなかったからな…。駆逐艦のお前が相手だったら演じる必要はないから楽でいい」

 

 ・・・え、駆逐艦?

 

「それに、鈴谷とか熊野みたいに変に物をねだってきたり、甘えてきたりとかもないからな。安上がりな奴で助かる」

 

「それはちょっと失礼ですよ」

(あれ?なんだか私、子供扱い?というか、都合のいい女みたいになってないです?)

 

「あと、微妙におっぱいあるのも高得点」

 

「エッチ!!」

 

 いきなりなんて事言うんですか!!?

 

「冗談冗談」

 

「他の女の子にそんな事言っちゃいけませんよ!」

 

「言う訳ないだろ、言うならベッドの上でだ」

 

 むううぅぅぅ!!!!黒狼さんのすけべ!!……と、脳内で叫ぶその一方で、私は一連の流れで憲兵さんの隠れた本音を察した。

 

 多分───憲兵さんは、私の事なんか眼中にないんだ。

 憲兵さんの目に写る私は、あくまで大勢いる駆逐艦の一人としか見られていない。

 いやこうして暇さえあれば黒狼さんがタバコを吸ってるのを咎めている訳だから、少しは印象に残ってると信じたいけれど…。

 でも、憲兵さんは私の事を恋愛対象として見てない。明らかに自分の娘とか近所の妹分みたいに扱っている。

 

 ……無人島生活の頃から薄々分かってた。彼が私の事になんかこれっぽっちも興味ないって事。

 分かってはいたけれど、やっぱり想い人の眼中にも写っていないというのは………凹むなぁ…。

 

「それでも、私は諦めませんからね……!!」

 

「あ?なにを?」

 

 黒狼さんの眼中に写ってないからなんだというのです…!?

 写ってないなら私の事しか目に入らないくらい夢中にしてしまえばいいんですよ!!!

 

「憲兵さん…いえ、黒狼さん。私は、秋月はここで宣言します。絶対に諦めないって、ここで誓います」

 

「いや……だから、諦めないって何を?」

 

 諦めませんからね…!!?秋月は、決して諦めません!!

 黒狼さんとお付き合いするまで私は…!!

 

 

「秋月は諦めませんから!!」

 

「だから何をだあああァァァ!!!!!」

 

 

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