スケベ提督と元ブラック鎮守府   作:ルフレオ

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熊野とお出かけ

 

 

 艦娘とは、深海棲艦と戦うただの兵器である。

 

 過激な思考のバカ共がよく言う謳い文句だが、そんなことは絶対にない。

 見た目おぞましい深海棲艦達と戦う彼女達と言えども、ひとたび陸に上がってしまえば年相応にお洒落を楽しんだり雑談に花を咲かす花盛りな女の子達。

 俺に言わせてみれば、そんじょそこらの一般人と何ら変わりないごく普通の女の子達なのだ。

 

 その中でも一際女子力に磨きをかけているのは間違いなく熊野であった。

 

「提督〜いらっしゃいまして?」

 

 司令室にやってきた熊野。

 栗色の髪をポニーテールに纏め、セーラー服を模した制服を着こなす彼女には“可憐“という言葉がよく似合う。偏差値の高い女子校とかに通ってても全然違和感のない熊野の瞳はまるで宝石のように美しい緑色をしていた。

 手入れの行き届いたキレイな髪。染み一つない白い肌。手先から爪先に至るまでどこを切り取っても上品な印象を与える彼女は、男なら思わず見惚れてしまうような魅力がある。

 

「いらっしゃるよ、どうしたんだ」

 

「実はその、一つお願いがございまして……聞いていただけますか?」

 

 熊野は随分と自信なさ気だった。

 俺の反応が気になるのか、何度も目を合わせてはそのたびにサッと逸らしてしまう。目を逸らされたと思えばまた目を合わせてくる。そしてまた離す。

 

 正直警戒心丸出しの小動物みたいで可愛いもんだが、それを言えばちょっと怒りそうだし黙っておこう。

 

「うん、で、お願いっていうのは?」

 

「その、私に…外の世界を探検させてほしいんですの!」

 

「…ここは、ウォール・マリアじゃないんだよ?」

 

 

※結論

 

「今度のお休みに街に連れてって下さいな♪」

「しゃあああああああ!!!!どこへだってお兄ちゃんが連れてったるかんなああああああ!!!!」

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 早速休日に出かけた俺と熊野。それと鈴谷も一緒になってついてきた。

 どうも熊野が鈴谷もお出かけに誘ったらしい。同じ姉妹艦の最上と三隈も誘ったそうだが、予定が合わずに今日は鈴谷だけ。

 どうせなら最上型勢揃いで今日を迎えたかったが、まぁ仕方ない。

 

「ホワァッ、カワイイお洋服…あ、こっちも中々いいですわ!」

「熊野どうこれどうこれ!?マジヤバくない!?」

 

 熊野と鈴谷は衣服屋の店内を歩き回って、無邪気にはしゃいでいる。

 

 横須賀では自由のないブラック鎮守府。間髪入れずに無人島生活では碌に自由も謳歌出来なかったことだろう。

 

 もしかすると衣服屋どころか、街中へ出てきた事さえも今回が初めてなのかもしれない。

 まだまだ遊びたい盛りで流行に敏感なJKらしい一面を持つ二人にとってそれはあまりにも酷な話。本当にそうだとすると、なんと可哀想なことか。

 

「この帽子もアリかも!!さっきの、えと…ぶ、ぶらうす?と合わせたら結構良さげじゃない!?」

「そうですわね!あ、でしたらこちらの青っぽいズボン(ジーンズ)と合わせてみては!?」

「それマジ神!はやく持って帰って試したい!!」

 

 ん?家で着るつもりなのか?

 まぁそれもいいけれど、試すだけなら試着室があるだろうに…。

 あ、もしかして試着室を知らないのか。

 

「鈴谷、あそこの試着室を使ったらいいぞ」

 

「え?しちゃくしつ?」

 

「そそ、買う前にあそこで試しに着替えてもいいんだよ」

 

「うっそマジ!?サンキュー♪提督!」

 

 鈴谷は途端にパァッとした明るい笑顔となり、我先にと試着室へ駆け込んだ。

 

「ほ!本当なんですの!?あそこで着替えてみても本当にいいんですの!?」

 

「いいんだぞ、試しに着ないと中々分かんないだろ」

 

「ハァッ、夢みたいですわ…♡」

 

 鈴谷に続いて試着室へ消える熊野を見送り、俺は二人が出てくるのを待った。

 

 ……仕方ない事なのだが、薄いカーテン一枚隔てて二人の衣擦れの音が丸聞こえでさっきから落ち着かない。

 ただでさえ男一人試着室の前に取り残されて居心地悪いというのに…。

 

「じゃ〜〜ん♪ど!?これどう提督!!」

 

 熊野よりも先に試着室から現れた鈴谷。

 

 灰色のベレー帽を被り、肩からかけられた黒のショルダーバッグに押さえられた白いシャツ。おっぱいの谷間に挟まった黒い斜線が却ってその巨大なおっぱいを強調しており、目のやり場に若干困る。

 それでいながら、膝上までしか丈のないミニスカートを履いているのに無邪気にクルクルと回って見せたり、腰と頭の裏に手を置いてポージングまで取ったりするものだから、いよいよどこに目を向ければいいものか。

 無防備な女子は大好物だが、ここまで無防備だと却って困ってしまうものだな。

 

「おぉ〜!!似合ってるじゃん!」

 

「ふっふ〜ん♪鈴谷ったらオシャレ上手なんだから〜!」

 

 鈴谷は満足気に深い鼻息を一つ吐くと、試着室の鏡に向かい直った。

 よほど気に入ったのか、鏡に向かい合ってひたすらポージングを決めてはそのたびにニヤニヤと一人楽しそうに頬に手を当てて目を輝かせている。

 

「買う!鈴谷絶対これ買う!超ヤバい!てか、鈴谷センス爆発してんだけど…え、待って無理!マジ可愛すぎて無理なんだけど…!!これホントに鈴谷!?ウッソ!これマ!?待って待って無理無理無理無理!!これやっばすぎて、ウケるんだけど〜!!」

 

「オ、落ち着けすずy「熊野も見て!!熊野出てきて早く!!」

 

「え?ちょ、ちょっと待って下さいな!」

 

 完全に自分の世界に入った鈴谷は俺には止められない。

 それにしても、こうして無邪気に喜んでる姿は本当に年相応の女の子だ。察するに、やはりこんな風にショッピングを楽しんだ事などなかったのだろうな。

 

 さて、それはそれとして…私服の鈴谷イイな!!

 普段の制服の着こなし方からも鈴谷のセンスが抜群なのは見て取れたが、思う存分センスを発揮させた私服の着こなしは正に至高と呼ぶに相応しいぞ!素晴らしい!めっちゃ可愛い!Fantastic!

 

「え、えと…準備出来ましたわ」

 

「おぉ!熊野もか!!」

「見せて見せて!」

 

 少しして、ついに熊野も私服を見せた。

 

 水色の長スカートに桜色のシャツ、白いジャケットを羽織った割とシンプルな衣装。

 なれど、そのシンプルな服装が却って熊野の魅力を引き立てて全体的にお淑やかな印象を与える。

 上品な熊野にとてもよく似合ったコーデと言えるだろう。

 

 あぁ〜〜!!熊野っち可愛い〜〜!!!

 

「正直、自信ありですわ♪」

 

「優勝!!」

 

「えぇ!?ウッソォ!!!」

 

 鈴谷も相当可愛かったが、熊野もめちゃくそ可愛い!今日まで生きてて良かったです!

 

「ふっふ〜ん♪この服はお気に入りに登録しなくては♡」

 

 ルンルン気分のご機嫌な熊野は服の名札を見て……ガッカリしたように項垂れた。

 

「流石に、予算オーバーしてますわね…」

 

「え、あ…鈴谷も、ちょっちアウトかも…」

 

「無問題!今日は奢っちゃる!」

 

 そう言って俺は懐から少し重たい財布を出した。多めにお金を引いてきてて良かったと心底思う。

 

「え!?い、いやそれは流石に…「マジで!!?サンキュー提督!!ちょ〜大好きィ!♡♡♡」

 

 俺の背中へと、無遠慮に全身で抱きついてくる鈴谷。

 必然的に背中に当たる二つの双丘がモニュン!と背中の上で

 遠慮する熊野とは対照的に鈴谷は甘える気満々である。夢見心地で笑顔を振り撒く鈴谷の頭を熊野が叩いた。

 

「鈴谷は少し遠慮というものを知りなさいな!!上官ですのよ!?」

 

「いいじゃん!奢ってくれるっていうんだからお言葉に甘えよーよ!!」

 

「そうだぞ熊野!お言葉に甘えろ!!」

 

「なんで提督にまで責められるんですの!?」

 

 ぶっちゃけ、二人の服の総額はお財布に優しいものではない。

 だがそれがどうしたというのだ。

 推しの二人に服を買うこと改め、推し活をすることにお金がかかるなんて当たり前ではないか。

 

「よく聞け熊野。これはお前達にだけ得のある話じゃないんだぞ?」

 

「と……言いますと?」

 

「俺の立場に立って考えてみろ。 もう既に鈴谷と熊野という超弩級美少女と二人に一番似合うコーディネートも揃ったんだ。あとは服と靴とカラコンとネイルと化粧品を揃えれば、タダでお前らの私服姿が拝めるんだ……俺得すぎるだろそんな話」

 

「タダの意味知ってます?」

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

「マジサンキューね提督!!あとで最上姉達にも見せてあげないと!」

 

「ほ、本当にお金はいいんですの?せめて、5千円だけでも…」

 

「熊野は本当に遠慮するなぁ…なら、千円だけ徴収させてくれ。それでチャラだ」

 

「もう…あなたという人は……」

 

 二人から手渡された千円をすっかり軽くなった財布に仕舞い込み、二人分の購入した荷物を俺が両手で持ち運びながら鎮守府への帰路につく。

 

「あ、荷物は鈴谷達が持つよ」

 

「大丈夫だって、力仕事は男に任せてくれ」

 

「そう言う訳にもいかないんだよね〜」

 

 すると鈴谷は、半ば強引に自分の荷物を奪い取ると、空いた右手と手を繋いだ。

 

「鈴谷が荷物持ったら、こうして手を繋げんじゃん?」

 

 まんまと手を繋いだ鈴谷は、ニヒ♪と悪戯っぽい笑顔を浮かべる。

 

「…確かに。これは一本取られた」

 

「ほらほら、熊野も熊野も」

 

「そ、そうですわね…失礼しますわ」

 

 熊野も同様に、俺から半ば強引に荷物を奪い取ると、空いた左手と手を繋いだ。

 

「は、早く帰りますわよ…」

 

 熊野は恥ずかしそうに、帰りの歩を早めた。

 

 熊野に引っ張られるように俺と鈴谷も帰路の速度を早めた。

 

 

「提督、またお出かけ行こうね♪」

 

「ん〜〜…鈴谷がまた俺にパンツ見せてくれたら、考えてあげよう」

 

「ちょっ!!?あれは忘れてって言ってんじゃん!!!」

 

「ウッフフ♪約束ですわよ、提督」

 

「だったら、鈴谷に一瞬でも早くパンツを見せてもらわないとだな」

 

「もうぜ〜〜ったいに見せない!!」

 

 

 

 

 手と手を繋いだ黒い影は、夕日に向かって進んでいく。

 硬く結ばれた三つの手は、離される事なく硬く結ばれた絆を現すようだった。

 

 

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