スケベ提督と元ブラック鎮守府   作:ルフレオ

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 今回は短め。


黒狼と天龍

 

 

 

「……お、やっと見えてきたか」

 

 

 遠い遠い海の果て───単縦陣を維持しながらフラフラの足取りで航行する六隻の艦娘がいた。

 背に積まれているのは、溢れるばかりに大量の資材が詰め込まれたドラム缶。六隻全艦がそれぞれ持ち合わせており、向こう一ヶ月は資材不足の心配をしなくてよいだろう。

 

 彼女達の任務は、遠征であった。

 それも数日をかけて行われる長期遠征。彼女達が鎮守府に戻るのも久しぶりだ。遠征慣れしている歴戦の彼女達と言えども、海の上に立つのも辛くなってきていた。いい加減に土を踏みたい事だろう。

 

 帰路につく最中、その先頭を進む一人の艦娘は青い空へと目を向けた。

 

(……そういや、新しい仲間が増えたんだっけ?無線では相当な人数が増えたって言ってたな)

 

 長期の遠征に出ていたが故、彼女達は無人島から新たに加わった仲間達の事も、新たに雇われる事となった憲兵のことも知らなかった。

 

「……チビどもー!!もうちょっとで舞鶴に着く!気張れよ!!」

 

「はーい!!」

 

 旗艦 天龍は随伴艦の衣笠、五月雨、野分、陽炎、如月に檄を入れる。なお、衣笠は決してチビではない。駆逐艦ではない。ないったらない。

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

「艦隊帰投したぜ、久しぶりだな提督!」

 

「おう!皆長期遠征お疲れ様!!」

 

 律儀に港で俺達を待ち構えていた提督と神通に敬礼をし、俺達の遠征任務は終わりを迎えた。

 溢れんばかりの資材を納品し、すっかり軽くなった身体をほぐすように思いっきり伸びをする。

 

「皆には無線で報告してるけど、皆が遠征に行ってる間にちょっと色々あってな。仲間がたくさん増えたんだ。ひとまずは全員風呂にでも入ってきな。紹介するのはその後だ」

 

「了解だ!聞いたな?チビ共!さっさと風呂行くぞ〜!」

 

 五月雨達を先導しながら天龍は意気揚々と鎮守府の建物へと歩を進める。

 ……天龍も駆逐艦達のお守り役が板にハマったものだ。

 

 と、天龍の向かうその先から灰色のタンクトップに薄青いジーンズを履いたなんともすっきりとした服装の男と、その後ろから白いワンピースに水色の薄いジャケットとシンプルながらも清潔感を感じさせる柔らかな服を着込んだ艦娘が歩いてきていた。

 

 噂をすればなんとやら。新しく増えた仲間達の代表ともいうべき二人が向こうから来てくれて助かった。

 

「黒狼〜!!秋月〜!!ちょっと来てくれ!!」

 

 呼ばれた二人は小走りとなってぐんぐん距離を詰めてくる。

 二人との距離が縮まるにつれて、遠征の皆も彼女達の正体に気がついてきたのか、段々と期待するような話し声で賑わってきていた。

 

「先に紹介しとくよ。新しく着任した仲間の秋月だ」

 

「秋月型防空駆逐艦、一番艦、秋月です!皆さん!よろしくお願いします!」

 

「んでもって、そっちのN◯R漫画の竿役で出てきそうな筋肉モリモリマッチョマンの変態が黒狼だ。新しく着任した憲兵なんだ。仲良くしてやってくれよ」

 

「・・・」

 

「どうした?肩にちっちゃい重機乗せてそうなローストチキンさんよ」

 

「え、あ、あぁ!悪い。ちょっとボケちまってた…」

 

「?」

 

 口切れの悪い黒狼に提督は首を傾げた。

 渾身の筋肉罵倒が完全スルーされたのもそうだが、今の彼は他の事に意識を割いている。なんだか心ここに在らずと言った感じだ。

 黒狼は、天龍に見惚れていた。股間探知器に反応でもあったのだろうか?

 

 

「…? おい、なんだよ。ジロジロ見んな」

 

「……な、なぁあんた。◯◯地区に任務で来た事とか、ないか?」

 

「あ?◯◯地区ぅ? んー……あぁ、そういや大分昔に行った事あったかもな」

 

「そ、そん時に子供を助けたことはないか!?」

 

「あぁ!!あったな!そんな事も!!鼻水垂らしたべそガキだったな!よーく覚えてるぜ!!……なんで知ってんだ?」

 

「………その鼻水垂らしたべそガキが、俺なんですよ」

 

 

 黒狼は、天龍へと深く深く頭を下げた。

 

 

「ずっと、ずっとあなたに会ってお礼を言いたかったんですよ。助けてくれて、ありがとうございました」

 

「!? ハァ!!?お前が!?あん時のチビか!?」

 

「えぇ、あのときのクソガキです」

 

 ……驚いた。

 まさか黒狼がよく言っていた昔命を助けてくれた艦娘が、天龍だったとは。いつか必ず見つけ出すなどとカッコよく宣言しておきながら、まさか既に同じ基地に所属していたなんて世間は狭いなぁ…。

 黒狼が幼い頃ということは、俺が着任するよりもずっと前…もしかすると、先代のクズ提督よりも更に昔の話かもしれない。

 そんな昔の話が巡り巡って今に繋がってくるとは…不思議な縁もあるものだ。

 

 だが、黒狼と天龍の再会に誰よりも驚いていたのは俺ではない。

 当人である黒狼でもなければ、天龍でも、ましてや隣に立つ神通でもない。

 

 誰あろう、秋月であった。

 

 

「………え?黒狼さん、の、恩人さん…て、こと…ですか?」

 

「あぁ、俺の命の恩人だ」

 

「あ、あぁーー、まぁ…そういう事になっちまう、かぁ?」

(正直ちょっとうろ覚えだなんて言えねーな…)

 

「そ、そうだったんですね!ア、アハハ……」

 

 黒狼に対して並々ならぬ恋心を抱く秋月にとっては、黒狼の生命線ともいうべき存在である天龍の登場は内心穏やかなものではないだろう。

 

「天龍さん、よかったら今度二人で飲みませんか?積もる話がたくさんあるんですよ!」

 

「お!お前飲める口か!!?よっしゃ!!さっさと風呂入って、宴と行こうぜ!!」

 

ガーンΣ(゚д゚lll)(!?!? ウ、ウソ!!?私のことは一度もお誘いしてくれないのに!?)

 

 

 ……秋月の心がズタボロにされてゆく。

 

「背中の剣は何に使うんですか?」

 

「え…?あぁー、それはな」

 

「ただのオシャレアイテムよ、使ってるとこ見たことないもの」

 

「陽炎!言わなくていいんだよ!!」

 

「そうなんですか、でも、それもカッコいいですよ」

 

「お?へ、へへ…!そうか?」

 

(ムゥゥ…!!私だってオシャレしてるのにぃ…!!)

 

 口を膨らませた真っ赤な顔で黒狼の背中を睨みつける秋月。

 秋月の中に決して小さくない焦燥感が芽生え、彼女にしては珍しい嫉妬の感情が顔を出す。

 

 

(こ、このままじゃもしかして黒狼さんのこと取られちゃう!?黒狼さんが天龍さんとお、お付き合い…しちゃったり………ヤダァ!!!!そんなのヤダ!!!絶対ヤダ!!!!黒狼さんの隣は私がいい!!!それ以外はヤダァ!!!!)

 

 

 

 

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