スケベ提督と元ブラック鎮守府   作:ルフレオ

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鳳翔と大和

 

 翌日

 

 ついにやってきました。演習の日が!

 

 昨日は楽しみで楽しみで寝られませんでした!何故かって?それはこの演習を行う本当の理由にある!

 

 佐世保鎮守府の子達には舞鶴鎮守府の子達の実力を測る事。

 そして高い実力を持った皆の闘いを見てもらって闘いのイメージを手っ取り早く掴み、効率よく練度を上げるためと伝えているが。

 

 

 そんなもんは表向きの理由!!

 

 

 演習を行うと当然砲撃や魚雷を受けて被害も出る。

 そしてダメージを受けた艦娘が中破、もしくは大破するとどうなるか?

 

 そう!服が破けるのだ!

 何故服が破けるのかはさておき、とにかくあられもない姿を晒すのだ!

 

 男、冥利じゃない?

 

 欲を言うならば全員の中破姿を並べてパシャリと写真を撮りたいものだが、それは流石に俺の良心と一部の艦娘(神通辺り)が許してくれない。

 

 

「さて、第一回目の演習メンバーは、と」

 

 大淀から送られてきたメンバーを確認し、こちらの予定メンバーと示し合わせる。

 

 

 舞鶴鎮守府  武蔵 金剛 加賀 天龍 弥生 吹雪 

 佐世保鎮守府 大和 鳳翔 

 

 

 おっと?向こうは大和と鳳翔だけ?

 

 別に悪い訳じゃないけど、なんか…舐めプされてんじゃねぇの?

 てっきり神通とか比叡とか血の気の多い奴もセットで出てくると思った(殴

 俺の予想だと流石の大和も金剛と武蔵で手一杯だろうから、鳳翔一人で残り四人を相手することになるぞ?

 

 あ、勝てるな多分。

 

 提督は鳳翔なら勝てるわ、と今回は敵側だというのにも関わらず誇らしい気持ちになった。

 

 

 〜〜〜

 

「おい提督!!ありゃなんだ!?なんで向こうは二隻しかいねぇんだよ!!」

 

「いや俺に聞かれても!」

 

 チラリと大淀を見ると申し訳なさそうに頭を下げるばかり。

 

「鳳翔さんが出ると聞いて全員観客席に回ったんです」

 

 後ろを振り向くと速吸が申し訳なさそうに立っていた。

 本当は速吸も出撃する予定だったらしいのだが、鳳翔さんが飛び入りで参加すると聞いて慌てて第一回の出撃を取り下げたらしい。

 

「鳳翔さんは滅多に戦場に出てくれませんからね。速吸も貴重な戦闘を観客の立場で眺めたいんです!」

 

 速吸の瞳は期待に溢れてキラキラと輝いていた。

 ところで同じ戦場に立って共に戦うことの方が余程貴重な経験だと思うけど…。

 

 とはいえ、確かに昔から鳳翔は闘いをしたがらなかったからな。

 俺も久しぶりに見るから楽しみな気持ちはある。

 

「要は舐められてるって事だよな。面白え!!艦載機だろうがなんだろうがこの俺様が全部撃ち落としてやらぁ!!」

 

「流石は天龍!頼もしい!」

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

「なんだか大変な事になってしまいましたね」

 

「ご、ごめんなさい。こんなことになると思わなくて…」

 

 演習開始前、恥ずかしそうにしながら二人は所定の位置で艤装の手入れを最後まで行っていた。

 特に鳳翔の艤装は長く使われてなかった事で汚れが目立つ。

 

「鳳翔さんが第一演習に出ると分かっていれば、私も武蔵との対決は第二演習に回していた所ですよ」

 

「それだと私一人になってしまうじゃないですか。流石に無謀というものですよ」

 

 大人びた二人は優しく微笑み、開始の合図を待つ。

 

 

 

 

『これより第一演習を開始する。

 両鎮守府の艦娘は戦闘準備に入れ』

 

 

 提督の声が通信機を通して海上に響いた。

 その声を受けて私と大和さんは口を閉ざし、艤装を背負い直して戦闘準備に入った。

 

「行きましょう」

「はい」

 

 海の上に立つのも、いつぶりかしら。

 

 

 

 

『全艦演習 開始!!!』

 

 

 

 開始されると同時に鳳翔と大和は縦列に並び、鳳翔は索敵機を飛ばす。

 

 それを見て大和は少し首を傾げた。

 

(索敵機?開始位置は決まってるのだから敵の位置は分かりきってるのに?)

 

 大和だけではない。

 観戦している赤城でさえもこの索敵を飛ばす意味がまるで理解できなかった。

 

(爆撃機と間違えたのかな?)

 

 赤城は自分がしてしまいそうなミスを考えたが、それはないと考えを捨てた。

 しっかり者の鳳翔さんがそれをするわけがないのだ。

 

 しかしそこからさらにとんでもない行動をする。

 続けて鳳翔さんはなんと海面にその爆撃機を飛ばしたのだ。

 

 通常、爆撃を行うのならば当然上空からやってくる事が大前提だ。

 だって上から攻めなくては爆弾は落とせないもの。

 

 

 これには流石に皆が頭を抱えた。

 

 海面に爆撃機を飛ばせば当然海面に直撃して即墜落する。

 自分の武器をそのまま海に捨てるようなものだ。

 

 投下魚雷を行う攻撃機を飛ばすというのならば海に向かって撃つのもまぁまだ納得できる。

 だが、積んでるのはどう見ても爆撃装備。

 空に向けて飛ばすべきなのになぜ海に向かって撃ったのだろう。

 

 鳳翔は静かに海の先を見つめ、大和に向かって静かに微笑んだ。

 

「大和さん前進しましょう。速度は私に合わせてくれると助かります」

「ふえ?あ、はい!もちろん!」

 

 大和は鳳翔さんの後ろにつき、敵艦である加賀の艦載機を気にかけながら突撃を始めた。

 

 

 

 〜〜〜

 

「鳳翔さんの発艦にはどういう意図があるのでしょう?」

 

 大和と鳳翔、更には提督の希望で今回の演習に限り、提督と大淀は指揮権を放棄している。

 

 というか、指揮をしてくれといわれても二人しかいない艦隊にどう指示を出せばいいのか大淀も困るところなのでその提案に乗っからせてもらっている。

 

 そして大淀の隣にいるのは提督と神通だった。

 

「私も確信は得られませんが…」

 

 神通は何か思い当たる可能性があるようだ。

 そして神通が思いついた可能性と同じ考えに至り、ただ一人鳳翔の行動の意味を確信してニヤリと笑う男がいた。

 提督だ。

 

「ムッフフ〜♪俺分かっちゃったわ。鳳翔の攻撃の意味」

 

「え? ど、どういった意図が!?」

 

「すぐに分かるよ。ただ一つ言うなら、多分この攻撃はめちゃめちゃ強くて、戦闘経験が豊富な艦娘にこそ効いてくるだろうな」

 

『ちょうどお前みたいな奴にな』と一言付け加えて提督は神通の背中を叩いた。

 神通は照れ臭そうにしながらもどこか嬉しそうだ。

 

 俺としては武蔵達の大破姿が拝めそうだから静かに成り行きを見守ろう。

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 鳳翔が打った艦載機の意味。

 それは武蔵達の艦隊に確実に忍び寄って来ていた。

 

「電探に反応だ!鳳翔の艦載機と見て間違いないだろう!!」

「大和も既にこっちに向かってきていると考えられる!大和の相手は私一人が引き受ける! 金剛達は艦載機を潰し、鳳翔の手を塞ぐんだ!数は三十機!撃ち落とせない数じゃない!! だが相当な練度である事が予想される!!心してかかれ!!」

 

『了解!』

 

 武蔵の指示に従い、金剛達は電探の反応を頼りに10時の方向に砲口を向ける。

 

 

「迎撃準備完了デース!魚雷の可能性もありマスから、警戒はマックスヨ!」

「全部撃ち落とす!舐めてかかって来たのを後悔させてやる」

「鳳翔さんの艦載機…。どんな動きをしてくるのかしら」

 

 

 

 

 砲口を向けた空の彼方に艦載機の大群が見えた。

 それは戦闘機でも攻撃機でもない。まさかの索敵機であった。

 索敵のみを行う為の機体である索敵機が何故か大群で押し寄せて来ていたのだ。

 

 当然、加賀達はそれを見て一瞬の躊躇を挟む。

 

「さ、索敵機!?戦闘機でもなんでもない、ただの索敵機!?」

「そんな間抜けな真似を鳳翔さんがする訳ないですよ!た、多分特攻です!!狙いは多分特攻ですよ!!」

 

 まぁそんな考えに至っても可笑しくない。

 敵の位置が分かってる以上、そもそも飛ばす必要のない索敵機が群れをなしているのだから何かしら積んでると考えるのが自然だ。

 

 しかしまさかそれが爆弾も積んでいない、武装すらも施していない本当にただの索敵機だとは誰も思わず、死に物狂いで砲弾を撃ちまくる。

 

 特攻をされた艦の被害は決して軽いものではすまない事を知っているからだ。

 

 しかし五隻の一斉砲撃を前にしても鳳翔の放った索敵機は右往左往して砲弾、機銃を躱す躱す。

 何も積んでいない分より身軽に動け、かつとんでもない練度に達する鳳翔に従う妖精さん達の熟練の機体を落とす事は至難の業であった。

 

 しかし流石に全機が避け切る事は出来ず、数機の索敵機が海に落下した。

 だが僅か数機、全滅には程遠い。

 

「な、なんですかあの速さ!?私達が撃つ前に避けてる!?」

 

「私達の動きを読んでる…?い、いやそれだけでは説明が出来ない。経験…?経験値の差というの…!?」

 

 間髪入れずに加賀は同じように戦闘機を発艦させる。

 やがてこちらに向かってくる鳳翔の索敵機との制空権争いが始まった。

 

 

 索敵機と戦闘機が争い、一機、また一機と墜落していく。

 流石にここまで来ると加賀も『これ、本当にただの索敵機なんじゃ…』と薄々感じ始めるが、その時には鳳翔の次の一手が迫っていた。

 

「ど!どうして一発も当たらないの!?」

「これはチョット予想外ネー…」

「とにかく残りも落とすぞ!早くしねぇと大和が追いついてくる!」

 

 天龍は狙いを定めて機銃を掃射し、やがて一機が火を吹いた。

 

「ッヨシ!次は…」

 

「敵戦闘機を捕捉!!!」

 

「ナニィ!?」

 

 吹雪の声に反射的に遠くの空を見てみるが、何もいない。

 慌てて電探を見てもそこに反応があるのは今撃ち合っている数十機の戦闘機だけ。

 

 どこだ!?

 一体どこに!?

 

 そしてふと耳の奥に、いくつもの艦載機の音がするのが確かに聞こえた。

 

 その先にいたのは、海面をプロペラが叩くほどの水面ギリギリを通る十九機の爆撃機。

 

 いつの間にこんな近くまで!?電探に反応はなかったハズだぞ!?

 

「撃ち落とせ!!」

 

 天龍の合図により、吹雪と弥生は一斉に砲撃を始める。

 

 だがそこでまた予想外な事が起きる。

 

 当たらないのだ。ただの一発も。

 それどころか爆撃機のかなり手前で砲弾が爆発してるように見える。

 

「なんで当たらないんですか!?」

 

「海面の反射にVT信管の砲弾が反応してるのよ!!爆撃機に当たるより大分手前に爆発してるわ!!」

 

 海面スレスレを飛ぶとそんな事が出来るのか…!?

 

「機銃を使え!!機銃でなら関係ないはずだ!!」

 

 吹雪達はすぐさま機銃に切り替えて機銃掃射を始めた。

 すると、今度は爆撃機は弧を描き、ゆっくりと上空高く飛び立ち、やがて猛スピードで滑空し始めた。

 

(し!しまった…!!これが狙いか…!!)

 

 そう、一度切り替えると、艦娘はすぐに装備を変える事が出来ないのだ。

 そして何よりも、急な向き変更には対応し切れない!

 

 慌てて加賀も戦闘機で爆撃機の撃ち落としにかかるが、索敵機の対応に躍起になるあまり、遥か遠方までまんまと誘き出された戦闘機達が肉眼で発見出来るほどの距離まで近付かれた爆撃機に追いつく事は難しく流石に対応しきれない!

 

 

 混乱が収まらない艦娘達が慌てて上空へと砲口を向けた時にはすでに遅し。

 

『武蔵、小破判定! 金剛、吹雪、中破判定! 加賀、天龍、弥生、大破判定!撤退せよ!』

 

「ホーリーシイィィィッッット!!!!!」

「マ、マジかよ…」

「…油断したわね」

 

 

 

 〜〜〜

 

「おおおぉぉぉ!!!吹雪のパンツg ドゴォン!!!

 

 提督の顔面に主砲が炸裂!

 

 隣では赤い顔の神通が砲口を構えている。

 その赤い顔が怒りか、嫉妬か、恥じらいからなのか分かる者はいない。

 

 そして提督の顔面に躊躇なく砲弾をぶち込む神通の姿に舞鶴鎮守府の子達は震え上がった。

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 そしてやがて十九機の爆撃機がグルリと宙を返し、再び艦娘達に狙いをつけた。

 

 そして、さらにそこから後ろ。

 

 未だ混乱が収まらない艦隊の後ろからはちょうどのタイミングで現れた大和が……。

 

 

『あ…』

 

 

 誰かが言ったその一言は、その場にいた全員が思った事だろう。

 なにせ、たった一人の軽空母だけで艦隊が壊滅にまで追い込まれたのだから。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…鳳翔さん…。思ったより早いのですね」

 

 

 大和は演習場の舞台となった鎮守府近海の端から端まで全速力で航行を行ってようやく武蔵と相見えたというのに…。

 

 

「あうぅ…」

「ツ、強すぎる…。あれが……鳳翔」

「無理だよぉ…。あんなの勝てっこないぃ…」

 

 

 鳳翔一人でほぼほぼ殲滅した武蔵部隊が出迎えてくれた。

 

 そして大和が武蔵部隊と会敵したのを見計らって、提督は再び無線を繋げる。

 

 

 

『勝者 佐世保鎮守府…改め、鳳翔!』

 

 

 

 大和が出たのはほんの少しだけ。

 やっと武蔵と闘えると少しウズウズしていたのに…

 

 大和は若干いじけてしまった。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

「…まさか鳳翔さん一人だけで…」

 

「最初にさ、鳳翔が海に向かって爆撃機を放ったろ?

 実は海面スレスレを飛行すると電探が戦闘機を海面の反射光だと勘違いして拾ってくれないんだ。

 とはいえ、十九機もの爆撃機にあの高度をずっと維持させ続けるというのは、普通の艦娘には到底真似出来ない無理ゲーなんだがな」

 

 

 口と頭から黒い煙を吐き出す焦げた提督が簡単な解説をしてくれた。

 最初の意味不明な海面向け爆撃機はそういう意味があったのですね…。

 

「最初に索敵機を飛ばしたのは?」

 

「単なる陽動。視線を海面からは最も遠い上空に固定させるためだろうな」

 

 なるほど、確かに目の前に三十機もの艦載機が現れれば当然視線は空に誘導される。ましてや電探になんの反応もないとなると普通は艦載機はあれで全部だと決めつけてしまう。

 幾度もの戦場を経験し、電探のありがたみを知る熟練の戦士であればあるほどこの攻撃は効果的だろう。

 

 

 

 

 

「まぁ…今回の演習で分かったのはあれだ。

 

 鳳翔は怒らせるな」

 

 

 戦いの成り行きを見守った全ての艦娘が心の中で頷いた。

 

 

 

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