もう決して辿り着く事の無い……
あの懐かしき楽園を────
【跳躍姫】アール・スタンディー
ある識者が言った。
『〈エンブリオ〉は〈超級エンブリオ〉に進化する事で初めて
それが本当の事かどうかは分からないが、一定層の支持を得る事が出来る程度の信憑性は持っていたのは確かである。
それ程に〈超級エンブリオ〉の力は隔絶している。
〈下級エンブリオ〉と〈上級エンブリオ〉と〈超級エンブリオ〉の差は一段階ごとの比較としてそれぞれ10倍、100倍にも達すると言われている。
〈エンブリオ〉の特性、性質、性能の方向性にも左右されるが単純に〈超級エンブリオ〉は〈上級エンブリオ〉の100倍の能力を可能に出来ると言っても過言では無い。
そして、〈エンブリオ〉とは所持する者の本質や願い、在り方を映す鏡。
その為に〈エンブリオ〉から所持〈マスター〉のパーソナルを予測する事も可能ではあるが、その行動は倫理面から推奨は当然されないし、しない者も多い。
ドライフ皇国の〈超級〉
彼の〈超級エンブリオ〉【雷神器 トール】TYPE:アドバンスは彼の本質を映し出す鏡であり自身が忌避していた在り方そのものであったが故に……。
〈エンブリオ〉の在り方からパーソナルを予想するのとは逆にパーソナルから〈エンブリオ〉の性質を予測する方法も【犯罪王】などの一部の強者達は用いる事も多い。
〈エンブリオ〉、特に〈超級エンブリオ〉ともなればその能力を知らない事や見誤る事は戦闘において致命的な事態を呼びかね無いからだ。
それ故にジョブ以上に〈エンブリオ〉の能力を隠す〈マスター〉は数多い。
ジョブは超級職も含めて長い歴史において【跳躍姫】の様にその仕様が分かっているモノも数有るが、〈エンブリオ〉は個人のパーソナル基盤から来る者であるし
例外としては解析能力に特化した超級職の固有スキルや〈エンブリオ〉の固有スキルくらいだろう。
〈超級エンブリオ〉を持つ〈マスター〉、すなわち〈超級〉の情報や能力は極めて高い価値を持つ。
売る側、買う側、良くも悪くも莫大な金銭を払ってでも欲しがる者は珍しくない。
それ故に情報と言うものの重要性を知る〈マスター〉程、自身の能力を軽々しくは明かさないものだ。
中には皇国の〈超級〉【
ローガンの場合は情報が知られても問題が少ない特性の〈超級エンブリオ〉だった事もあるが、ラピネの様な初見殺しに近い能力を持つ〈エンブリオ〉はその情報を慎重に扱わねばならないのは当然の事である。(最もラピネに関しては情報秘匿にはさして興味は無かった。戦闘そのものが目的の〈エンブリオ〉では無かったからだが)
さて、以上を踏まえた上で【正義魔王】トラペゾ・H・ルーラーの〈超級エンブリオ〉である【然治全脳 アザトース】は情報を知られる事が致命的になるタイプか、否か?
それは結論から言えば両方である。
その肉体の特異性故に倒し切るのが難しいと言っても対処は有るし、保有スキルも
しかし、【正義魔王】トラペゾ・H・ルーラーの
何故なら、
そう、トラペゾンの真の戦闘形態『
◇◆◇
【跳躍姫】アール・スタンディーは必死であった。
彼女は今、特典武具の力によって慮外の速度を得た【風影】サルトビWによって追い詰められている。
細めに転移を繰り返しながらトラペゾン達の近くでドッグファイトじみた超高速空中戦闘をしているが形勢はよろしくない。
「このクサレ忍者!!最初から脚が無いってどう言う事っスか!?幽霊かジオングかはっきりしやがれっス!!」
罵倒しながらダガーを投げつけるもサルトビWに到達する前にその身をコーティングする様に施されている気流によって虚しく弾かれる。
「拙者とて狙ってアジャストした訳では無いでござるよ。やむにやまれぬ事情と言うヤツでござる。しかしジオング扱いとは言い得て妙でござる♪まあ、オールレンジ攻撃は流石に無いでござるから安心するでござるよー♪」
速度に余裕が出来たからか軽口を返すサルトビW。
言う様にサルトビWはクナイや向性スキルを使用してこない。
もはや必要無いからだ。
今のサルトビWの速度はラピネすら凌駕している。
下手な飛び道具より彼自身の方が速く、遥かに危険なのだ。
アールが作り出した見えざる足場である【エアロック】は強度自体にリソースを振っていない為に簡易構築物質系のスキルとしてもかなり脆い部類に入る。
継続強度を高めて作れなくも無いが、消費MPが指数的に跳ね上がる為にアールは使用する事はほぼ無い。
それでも足場として使う分の強度は充分に確保してあり、意図して破壊しようとしない限りはまず壊れる事は無い代物だ。
しかし、その【エアロック】はサルトビWに接触した端から微塵となり粉砕されている。
特典武具の力……、そしてそれに合わせて発動しているスキルによって耐久性を付与したサルトビWは既に本人そのものが空を自在に駆ける弾丸である。
AGI型のアールでは触れればまず助からないであろう事は明白だ。
そして圧倒的な速度に防御能力を兼ね備えた今のサルトビWはアールの天敵だ。
速度と言うアドバンテージを奪われ、迎撃する攻撃も投擲しか無い為にサルトビWの纏う風に遮られて届かない。
恐らく射撃系の攻撃を含めて実体のあるタイプの攻撃は全てが役に立たないだろう。
光や雷系統といった風の影響を受け辛い攻撃なら通るかも知れないが、投擲スキル系統を扱う超級職であるアールには生憎とアジャストした装備は無い。
攻撃魔法の【ジェム】くらいは幾つか持っているが、投擲し破壊されてから内部の魔法の効果を発揮すると言う仕様上、期待する様な効果は得られないだろう。
サルトビWもアールに自分に対する決定力が無い事を理解している。
超音速戦闘中に軽口を叩けるのもその余裕故だ。
(特典武具はボクの方が持ってるけど、有効打になりそうなのは無い!今更だけどトラペゾンさんに相手を任せておけば……!)
アールはマッチングの失敗を悔やんだ。
後の祭りではあるが、ラピネの能力をもっと慎重に見極めていれば今より優位に戦闘を進められていた可能性はあった。
しかし【バベル】の影響により、もはや二人は意思疎通が取れない……。
(ん!?い、いや!!オカシイっす!何でボクは先程、サルトビWと話せたんスか!?そう言えばサルトビWが飛び始めた当初も言葉は聞こえたっス?もしかして、スキル持続時間は長く無い!?)
「emruajnuvamepapm!(おい!アホ忍者!)」
「sjgdnvdgsodxpmsdj"gjcutwp?(何言ってるか分からないでござるよ。告白か何かでござるか?)」
アールが聞いたら再びブチ切れそうな返答をしたサルトビWだが、幸か不幸か会話は成立しない。
違和感を確かめる為にサルトビWに話しかけたアールの口から飛び出たのは再び意味不明な言語であった。
サルトビWの言葉も同じ。
つまりは【バベル】の影響は続いている。
先程、サルトビWと会話が成立した理由、状況との違いは……。
(位置!)
超音速で空中を移動している二人だが、【バベル】後の会話成立をしたポイントは2回共にラーフララの近辺であった。
その事実に気付いたアールは刹那の取り合いの最中に何とか集中して理由を予測する。
そして、自身もワールド使い故にその違和感に気付いた。
(やっぱり!あの
スキルの濃淡とは広域に影響を与えるスキルの出力を部分的に上げたりする為に範囲を凝縮したりする技法の一種だ。
【女教皇】扶桑月夜が使用する【カグヤ】の《月面除算結界・薄明》や神話級最上位〈UBM〉【凍竜王 ドラグフリーズ】の使用する《
いずれも優れた演算能力や技巧を必要とする高等技術である。
アール自身も空間系能力持ちだがスキルの性質上、出力を上げたり罠に使うスキル影響範囲の濃淡を作る意味は無い為に自身はまったく出来ない。
(そんな高等技術を使ってる?いや、自身の能力自体を無効化する程の空間……、とてもじゃ無いけど並大抵の技術で行える代物じゃない!と言う事は恐らく固有スキル!)
アールの推察は当たっている。
【粒言飛誤 バベル】の固有スキル及び特性は言葉による意思疎通禁止。
必殺スキルのリソース故に出力も高く、スキル影響範囲の濃淡を作り出す技巧を使おうにも並大抵の事では無い。
これは【バベル】のTYPE:ワールド・テリトリーのテリトリー部分の力。
正確には【バベル】が〈上級エンブリオ〉になりテリトリーからワールドに進化した際に
バベルの塔の逸話には続きが存在する。
それは人々の言葉が乱され充分な意思疎通が出来なくなった結果、コミュニティが細分化されてそれぞれ独自の文化が生まれる要因となったとされる逸話だ。
その逸話に由来した自身の特性をある意味否定する奇異なる固有スキル。
その名も《リ・カルチャー》。
必殺スキル使用後にのみ使えるスキルであり、ラーフララが指定した半径50メテルの範囲のみ再び意思疎通が出来ると言うモノ。
言語疎通を禁じながら、それを再び可能にすると言うある意味矛盾した性質を【バベル】は逸話故に有していた。
このスキルの範囲は自由に移動出来る為にラーフララの近くに適用すれば自身は問題無く詠唱が可能になるのだ。
(今なら何とか出来るかも!)
そう考えて、トラペゾンの近くに向かおうとしたアールの視界でトラペゾンが
驚きながらもそれが攻撃を受けた訳では無い事をすぐに理解する。
アールはそれを何度も見ているからだ。
(トラペゾンさん……、アイツらをそれだけの
トラペゾンの姿が変わるのを見とめたアールは作戦を変更する。
トラペゾンの戦闘に
◇◆◇
トラペゾンの連れである〈四司士〉達は行われている激闘に釘付けとなっていた。
〈マスター〉が台頭する以前のこの世界における人型範疇生物としての頂点であった超級職。
それに就いている四人だからこそ、今行われている戦いの凄さが分かる。
超級職同士の決闘などはさほど珍しくは無いが、七人もの超級職がやり合う戦いともなれば話は別だ。
国家所属クラン同士の戦闘でもまず見ない数。
昨今起きた事例としてはアルター王国とドライフ皇国の間で起きた騎鋼戦争くらいなものであろう。
トラペゾンの力こそ知っていたが、普段は率先して戦わないアールの実力にそれを知らなかった叉乱、ツィーリン、ティキは驚愕から目が離せない。
それを半分くらい呆れた顔でメルマリアが眺めていた。
アールよりトラペゾンと長く付き合いのあるメルマリアだけはその実力を理解していた。
〈四司士〉が出来る前のパーティーでトラペゾンと共に三人で戦った〈UBM〉や犯罪〈マスター〉や犯罪ティアンの数は両手では効かない。
「アールのヤツ、あんなに強かったのかよ……。何で隠してやがったんだ?」
叉乱が一人呟く。
出身国である天地は強さ至上主義。
そこの常識では自身の能力を隠す為に実力を偽る事はあっても弱者を装う事は無い。
デメリットがメリットに勝るからだ。
「……アールさんは隠していた訳ではありませんよ。アールさんはパーティー内では移動要員に徹していますから、自身の能力はそれだけに使われるべきと考えているだけです。彼女は良くも悪くもトラペゾン様のお供ですから」
そう、
より正確に言うならば、自身の戦闘能力自体を
彼女の願いはその破格の必殺スキルにこそ集約されているからだ。
「アールよりもリーダーが心配だヨ。リーダーは本来の実力をまるで出して無い。あれで勝てるカ?」
トラペゾンの強さを知っているからこそもどかしげにするのはツィーリン。
その言葉に他のメンバーも同意するがどうしようもない。
他ならぬトラペゾンが決めた事だからだ。
「せめて超級職の奥義スキルを使うならどうにかなったかも知れないけど……。《パニッシュ》も《
ティキが【コメットラ】の高感度観測モニターで激闘を観察しながら語る。
そうこうしている内に必殺スキルや特典武具を相手側が使い出してトラペゾンとアールが劣勢側に立たされた。
その事態に手に汗握りながら祈る様にして見守っていた〈四司士〉達の視界においてトラペゾンの身体が弾けた様に見えた。
その事に驚愕は無い。
むしろ四人は安堵した。
何故なら、それこそが【正義魔王】トラペゾ・H・ルーラーの本気の戦闘形態への移行と知っていたからだ。
その能力を知る故に……彼女達はトラペゾン達を応援すると同時に相手にこそ心の底から同情した。
ギストリー達がこれより知るのは類い稀なる
◇◆◇
トラペゾンの身体が爆発した様に見られたが、至近にいたラピネは高いAGIを生かしてその一部始終を冷静に見ていた。
弾けた様に見えただけで、実際は全身から周囲に無数の
その無差別に放たれた武具を自身の双槍で丁寧に素早く捌くラピネ。
自身の後ろに位置する形で陣取っているギストリーやラーフララ達を守る為だ。
そうして、周囲への無差別攻撃に近い脅威を凌いだラピネ達の視界には先程とは異なる風景が映されていた。
決闘フィールドの一角に出来上がった墓標の如く突き立つ無数の特典武具群の地を。
いや、墓標の如くでは無く、それはある意味正しく
名だたる〈UBM〉が撃破された時、その戦闘における討伐MVPに対して贈られるトロフィー。
その固有スキルや能力を具現化させた力の結晶こそが特典武具。
それらが無数に大地に突き立つ様は見る者に不気味さと畏怖を刻む。
マトモな〈マスター〉の常識からは考えられない程の量は有り得なさから不気味さを。
そして、その元になった〈UBM〉を撃破した紛れなき証明に対する強者への畏怖を。
そして、ラピネ達は
その力の所持者は墓標群の中心に立っていた。
長剣、短剣、大剣、突剣、長槍、突撃槍、短槍、斧、戦斧、斧槍、槌、鎚、手甲、薙刀、刀、太刀、小太刀、盾、根、枴、弓、弩、銃、大砲、ブーメラン……、ありとあらゆる武器が散らばる
そう、
赤黒い不気味に蠢く触手の塊は人型を象りながらも人ならざる八本の腕を作って無数の武具を持っておりそれぞれに構える。
防具は纏ったままに無数の触手が蠢いて武器を構える姿の異常さは筆舌に尽くし難い。
とてもでは無いが“正義”を冠するジョブに就いた者の姿には見えない。
その立ち姿は天地の準〈超級〉【阿修羅王】の華牙重兵衛に近いが……あちらがある種の神々しささえ感じる佇まいなのに対してトラペゾンのソレは人によっては生理的嫌悪感やおぞましさすら感じる冒瀆的なその姿。
〈マスター〉と相対している筈なのに、まるで〈UBM〉と相対しているかの様な威圧感と違和感をギストリー達は感じていた。
トラペゾンのその姿にギストリーは思い出す。
トラペゾンに敗れてからリベンジを決めて準備する間に【正義魔王】について調べた事を。
その〈エンブリオ〉や超級職についての情報はまるで集まらなかったが、代わりにその通り名については充分に知る事が出来た。
通り名や二つ名は付けられた本人の性質、能力、経歴等を色濃く反映している事が多い。
そう言った部分から【正義魔王】の能力や特性が知れるのでは無いか?とギストリーは労力を割いて調べ上げたのだ。
“
【正義魔王】の最も有名な通り名である。
【正義魔王】がギストリーが調べた情報の一説には一度足りともデスペナルティをした事が無いと言う事実から付けられた名と言われている。
“
これもレジェンダリアで有名な通り名だ。
本人の能力と言うよりは超級職である【
そして、最後の通り名。
“
この呼び名を知った時にギストリーは困惑した。
それは
指名手配こそされているが、目立った犯罪はしておらず、むしろ真逆の人助けの噂ばかりが聞こえてくる始末。
ならば【魔王】でありながら、それをしている事か?と考えたがしっくり来ない。
そもそも【魔王】とはデンドロ内では役柄ならぬ単なる超級職、つまりは一ジョブに過ぎぬ存在であり、その名に相応しい悪事等をしなければならぬと決まっている訳では無い。
〈デザイア〉の【魔王】達の犯罪行動は単なる本人達の気質故だ。
その証拠に【怠惰魔王】などは国から指名手配こそされているもののほぼ無害と判定されて半ば放置されている始末。
下手に手を出しさえしなければ問題無い為に〈マスター〉達すら挑む者は稀だ。
そんな事情から“冒涜者”と言う二つ名は他の二つ名に比べて遥かに来歴が分からないモノであったのだが……ギストリーはその理由を今ここで知る事になった。
騎士装備を身に付けながらもその腕、脚共にこの世の物とは思えない異形に変じたその姿。
西方ではメジャーなジョブでありカッコイイジョブの代表である騎士の姿をしていながら、その在り方を冒涜するが如き立ち姿。
成る程、まさしく冒涜者に他ならぬ。
事情を知らぬ者が見れば中から人間が触手に乗っ取られたかの様にさえ見えるその姿は悍ましさを越して恐怖すら覚えるかも知れない。
無数の触手を漂わせ、両手?合わせて八本もの特典武具と思わしき武具を持つ異形の騎士。
それが今のトラペゾンであった。
『行くぞ』
先程までと違い、何処かくぐもった声色で一言を告げるとトラペゾンはその無数の触手を……、腕をしならせてラピネ達に振るった。
先程までと違うのは、
ステータス自体は先程までと変わっていない。
しかし、その速度は明確に速く、攻撃は鋭くなっている。
その理屈は
鞭はリアルにおいても人力で音速に達する事が出来る稀有な武器である。
高速でしなり、振るわれる鞭の先端部分の速度は素人でも少し練習すれば音速に達した事を証明する空気が弾ける様な音を出す。
そしてトラペゾンの速度は素の状態でAGI三万、すなわち音速の三倍を記録する。
そのステータスによって振るわれる超高速の鞭状攻撃の終端速度は概算にしてAGI十万を超えていた。
ギストリー達には影すら見えない攻撃を今度はラピネが必死になって捌く。
その表情は真剣であり、先程まで見せていた様な余裕は一切見えない。
そして、そんな攻撃が八本の腕から自在に放たれるのだ。
有効射程はざっと30メテルに近いだろう。
人間の姿の何処にそれだけの量の触手が詰まっていたかは分からないが、質量保存の法則等はこの世界で論じるだけ無意味だろう。
異形と化して縦横無尽に特典武具を振るうトラペゾンに対してラピネは明確に押されていた。
速度的優位はその肉体特性によってほぼ無意味と化している。
二本ならともかく、槍以上の遠間から瞬間速度とは言え自身に匹敵、凌駕するかも知れない速度で振るわれる八本の特典武具による攻撃の嵐はもはや常人に何とか出来る域を超えている。
そして、数多の攻撃を受けて力にしてきたラピネだからこそ理解出来る事が有る。
物理威力以上に付与されているスキルが危険で有る事を経験から導き出した。
並の〈マスター〉ならその攻撃による制圧圏内に入っただけで即座にミンチになるであろう。
もし必殺スキルを使って物理ステータスを強化していなかったらラピネも一瞬で同じ姿になっていた。
ラピネは先程の自身の考えを思い出して反省する。
(
恐るべき八腕でもって数多の武具を自在に操るその姿は東方の神仏、阿修羅の如し。
天地の【阿修羅王】を彷彿とさせるその戦闘スタイルはしかし、禍々しき異形故か真逆の印象を覚えさせる。
ギストリーはトラペゾンの異形とその戦闘力に戦慄しながらも何とか頭脳を働かせる、働かせるが……。
(あ、あり得ねぇ……あり得ない筈だ!?)
本日、何度目か分からない驚愕を覚えながらもギストリーは自身の役目を遂行する。
<Infinite Dendrogram>と言うゲームの売りについて挙げていけばキリが無いのだが、その中の一つにアバター作成の自由度が挙げられるだろう。
性別、美醜、体格は言うに及ばずそれ以外の本来、翼や多腕等の普通の人間が持ち得ない器官を付ける事や巨人から小人までの極端なサイズも自由自在。
しかし、それでも大半の〈マスター〉は普通の人間の姿を選ぶ。
空を飛ぶ事を夢見て背中に翼を付ける事を選んだり、無数の腕で複数の武器を使用する姿に憧れ多腕を選んだりする人物も諦めてアバターの作り直しを選んだりする。
理由は簡単。
翼や多腕を付けてもアバターにはそれを動かす機能が付いていないからだ。
〈エンブリオ〉やジョブに付く事によって機能する様になる事は多いが、不便さは常に付き纏う為に大半は諦める。
それでも一部の人は望みを捨てずに願った力を手に入れるのだが少数派だ。
トラペゾンの今の姿はアバターと言うよりは〈エンブリオ〉の力。
即ち、レアカテゴリーのTYPE:ボディ。
アポストル以上に珍しいそのカテゴリーの〈エンブリオ〉はカルディナ所属の〈超級〉【殲滅王】アルベルト・シュバルツカイザーが所持している事が有名であるが、それ以外にはまるで例が無い。
【犯罪王】もTYPE:ボディではあるが、その能力は世間に知られていない為にギストリー達にも考慮の外だ。
しかし、そんなレアカテゴリーの持ち主がギストリー達の前に現れた。
世にもおぞましき姿をした、正義の名を冠する【魔王】が……。
ギストリーは再び【哲人】の奥義、《我思考する故に我此処にあり》を使う。
その効果によってAGI型超級職と同等、あるいは上回る思考速度を手に入れたギストリーは思考の海へと没入した。
トラペゾンの戦闘スタイルを見極め、弱点や欠点を探り当てない事にはもはや勝ち目が無いからだ。
トラペゾンの肉体が〈エンブリオ〉である事は理解した。
数多有るジョブの中でも一部の種族型ジョブ、吸血鬼系統や死霊系統などは就く事で自身の種族を変える事が出来るが、トラペゾンの姿はその域からも逸脱している。
十中八九、〈エンブリオ〉がその肉体そのもの。
しかし、問題はそちらでは無い。
問題なのは装備……多重装備の方である。
デンドロにおける装備と言う概念は単に身に付ける、手に持つ等の行動では無くステータスウィンドウを開いて装備を選択すると言うゲーム的な行動を取らなければいけない歴としたシステムの一部である。
勿論、戦闘中において明確な隙になる為に普通は《瞬間装備》等の補助スキルによって入れ替えたりするのが一般的だ。
しかし、《瞬間装備》等は便利ではあるがスキルの為に一度使用したらクールタイムが発生すると言う明確なデメリットが存在している。
そして、武器等は通常の【アイテム】は当然として特典武具だろうと装備しなければ固有スキルも当然使用出来ない。
素材系の特典武具等と違い武器型、装備型の特典武具における鉄則である。
今もギストリーの目の前で、その装備システムを嘲笑うかの様に滑らかに……と言うよりはギストリーの目では追い切れぬ速度で装備が入れ替えられた。
ラピネが触手先端部を見切り、武器を保持している部分を斬り飛ばしたが即座に次の武具が補填されてしまった。
通常の〈マスター〉やティアン相手なら四肢の切断は戦闘において致命的であり、そのまま戦闘の趨勢を決める決定打になりえる行為だがトラペゾン相手には当てはまらない。
それどころかギストリーやラピネから見て、心臓や脳の破壊といった致命部位の損傷すら意味があるか甚だ疑問である。
新しく装備された妖しく輝く武具はその力を発揮しだしたのか不可思議な現象を起こすが、それ事態は問題無い、問題は武器の入れ替えでは無くスキル使用だ。
通常、武器の装備枠は片手ずつの二本。
【闘士】系統を初めとした一部の武器使用に優れた前衛系戦闘ジョブは装備枠自体を拡張可能なのだが、それと比べても異常に過ぎる。
アルター王国の〈超級〉、アルター王国三巨頭の一人“無限連鎖”の【
それに装備枠の拡張を行っても武器を複数持つ事をする〈マスター〉は殆どいない。
何故なら人間は複数の腕を持っていない為にその扱いを十全にする事は出来ないからだ。
【超闘士】や【阿修羅王】がそれを出来るのは彼等が紛れも無き才覚者であるからに他ならない。
並の〈マスター〉では複数の武器を使用しても闇雲に振り回すのが関の山であり、明確な脅威にはならない。
それ故に装備枠拡張もアクセサリーや防具に割くのがそういったスキルを使用する者達の間では不文律となっていたのだが……。
ギストリーの目に途切れ途切れに見れる超高速攻防においてトラペゾンの武具は技巧を持って振るわれていた。
もし、闇雲に振り回していただけならラピネはとっくにトラペゾンの間合い内に入り込み滅多刺しに出来ていたろう。
しかし、トラペゾンの動きは特異極まる姿にありながら無数の対人戦闘に使用される技巧が見て取れる。
歩法、牽制、フェイント、崩し……。
様々な技法を自由自在な肉体で行使するその厄介さはラピネにしても攻め切る事は出来ない。
ステータス自体は変わっていないが、その差を帳消しにする闘り辛さであった。
そして何よりスキルの使用。
目まぐるしく入れ替わり、数多のスキルを自在に扱っているが装備を幾ら増やそうともパッシブ系でも無い限りはスキルの多重発動は基本的に不可能なのだ。
そのシステムに対する反逆の様な不可思議な仕組みを解き明かす事が目の前の【魔王】打倒に必要だとギストリーは考える。
ラピネが必死にトラペゾンの攻撃を捌き、先端の触手を少しずつ破壊するのを見ながら超速思考により見極め続けるギストリーは気付いた。
トラペゾンのスキル使用の仕組みに。
「わ、分かったぞ!!ラピネ!!そいつはスキルを同時に多重してる訳じゃねえ!!使用される武具のスキルは常に二つだ!そいつはスキルを使用する武具以外は
ギストリーの推論は当たっていた。
装備をしなくては武具の固有スキルを使用する事は出来ないが、武具を手に持っているだけならスキル使用を考え無いなら問題無く可能。
その為に、その装備枠を目まぐるしく替えながらも同時に使用出来る武具のスキルは二つのみ。
そもそもトラペゾンは《装備枠拡張》を持っていない。
肉体特性的に必要無いからだ。
「つまり、そいつの使用するスキルを見極めれば他の武器は恐れる必要は無い!お前のステータスならスキルを使用しない攻撃は受け切れ……」
「バカッ!!!」
ギストリーの説明をラピネが途中で遮って怒声を飛ばした。
「な、何を!?」
「アンタ、言ってて分からないの!?超音速戦闘しながら読み負ければ即、死に繋がる無謀なジャンケンをアタシにしろって言ってるのよ!?!?」
「あっ……!!」
能力の解析に夢中になっていたギストリーは気付かなかった。
自身が言っている事がどれだけ理不尽なのかを。
確かにトラペゾンの特典武具はスキル性能に特化している。
MP、SPの消費量は高く、所持者への安全性も無く、武具自体の攻撃力や強度も比較的低い。
そう言ったデメリットの代わりに元となった〈UBM〉の固有スキルに近い高出力を保証している。
その為にスキルを使用していない状態のトラペゾンの攻撃はラピネに直撃しても大して通らずにその身を滅ぼすには至らない。
トラペゾンとラピネのステータス差は以前として存在しているのだから。
しかし、理屈上やれるのと実際に出来るかどうかは別問題だ。
ギストリーの言っている事は相手が振り回す八本の腕の中から、スキルを使用する二本を間違いなく見極めて一撃も受ける事無く懐に入り撃破しろと言うもの。
そして、当たり前であるがイニシアチブはトラペゾンに完璧に握られた状態で、それをやらなければいけない。
スキル選択、フェイク、フェイント、牽制、射程等々の全てを相手側に握られたままそれを行う。
ラピネにはそれをやり切る自信など到底無かった。
【覇王】、先々代【龍帝】、 “技巧最強”、【破壊王】、【武神】等の技巧に優れた面々なら可能であるかも知れないが、槍の天才とは言え戦闘における才能で劣るラピネにそれをやれと言うのは無理だ。
まあ、トラペゾンもそう言った技巧の化け物達とやり合うなら
この事実からトラペゾンは自身の本気の戦闘形態である全経覚醒形態を開示しても一向に困らないのだ。
有り余る程の特典武具から有効な物をチョイスしてぶつける。
いっそ、清々しい程に明確な解答を虚実織り交ぜて自在に仕掛けてくる触手の怪物はラピネの手に余る。
しかし、ラピネもこれ以上手をこまねいて見てる訳にもいかない。
ラピネの《サド・マゾ》の使用可能時間はこうしている間にも刻一刻と過ぎて行く。
高いステータスを持つ今だからこそ対応出来ているが、スキルが切れた瞬間に通常のステータスに戻ったラピネは瞬く間に粉微塵にされてデスペナルティにされるだろう事は分かり切っていた。
「《インパルス》!!」
ラピネの逡巡を引き裂くかの様にラーフララが魔法を発動した。
ラーフララが手を向けた先はトラペゾン。
しかし……、その攻撃は
『!?』
そこにいる誰も……、トラペゾンさえもその攻撃を見る事は出来なかった。
しかし、
自身の触手腕の一本をラーフララ側に差し向けたトラペゾンはその触手が
それとほぼ同時に今いる位置から退避する。
そして、その次にはトラペゾンの立ったいた場所にクレーターが出来ていた。
「ひっ、ひひひッ♪し、初見で避けられたのは久しぶりだよ……、さ、流石は〈超級〉♪」
トラペゾンの攻撃射程が広がった事でラピネとの距離が開いた結果フレンドリーファイアを怖れる必要が無くなった今、ラーフララが攻撃に移ったのだ。
アールへの対応がサルトビWだけで充分になった事でモアドープがその近接カバーに就いていた。
上級職【
魔術師系統波濤術師派生超級職【
天属性系統の風属性と海属性系統の水属性の複合型属性の魔法系ジョブ。
近いジョブとして上級職【
しかし、明確な違いは
対生物特化の闇魔法と違って物理攻撃性能もある程度は保持しており、何より肉眼で見る事が出来ない波動という振幅での攻撃は非常に避け辛く厄介である。
指向性こそ分かり易いものの不意打ちでの対応し辛さは光属性に次ぐのだ。
ラーフララの〈エンブリオ〉とのシナジーは別に無い……、無いが、このジョブを選んだ理由は無関係では無い。
炎や氷などは派手さはあるが、そのエフェクト故に視界を塞ぎ易い。
ラーフララの望みは脱ぐ事そのものでは無く、着飾らない自分自身を見て貰う事。
故に他者に見せなければならない訳であり、そう言った派手なエフェクトを出す系統に比べて視界を一切邪魔しない魔法を好んで使っていたらいつしか就けただけの事であった。
ラーフララが参入して来た事でトラペゾンは警戒をそちらにも割かねばならなくなり、ラピネへの対応が僅かに甘くなる。
そして、その隙を見逃すラピネでは無い。
「シャァッ!!」
ラピネが上級職として就いている【
超級職に就いて無い〈マスター〉ですらスキルの効果で超音速に達する事が可能なその刺突は今のラピネが放てばその速度は超々音速域に達して影すら残さずにトラペゾンへと瞬時に肉薄する。
しかし、その超々音速の一撃をトラペゾンは元々付けていた鎧の胸部で上手く受けて弾き飛ばされた。
「やったか!?」
攻防こそ見えなかったギストリーはその結果だけを見て喜ぶが、ラピネの顔は険しいままだ。
「やって無い!!自分から飛んで衝撃を殺してる!!」
自身の槍から返って来た手応えによって結果を認識していたラピネは即座に追撃を仕掛けようとしたが立ち止まる。
刺突の威力を殺し切れずに飛ばされて決闘フィールドの端まで
数多持っていた武具ごと自身の体内に格納して触手塊のボールと化したトラペゾンが地面に触手を突き刺さして自身の勢いを止めると同時に餅状に変化して二本の触手をラピネ達に向けた。
全経覚醒形態・TYPE=B
トラペゾンは自身の肉体が模る形状にそれぞれ適正使用の武器群を用意している。
二本の触手腕にはそれぞれ、グレネード・ランチャーとミサイル・ランチャーらしき武具が装備されていた。
『
グレネード・ランチャーのトリガーは連続して引かれ、その回数分だけ赤熱した火球をレーザーの如く砲口から吐き出した。
古代伝説級特典武具【
炎の支配者、古代伝説級〈UBM〉【禍災龍 ヴォルケルノ】が遺した特典武具。
【
それらをラピネ、ギストリー、ラーフララ、モアドープにそれぞれ二発ずつ狙い撃ちで連射する。
ラピネのステータスなら超音速に満たない速度の灼熱弾など難なく躱せるがモアドープはともかくラーフララやギストリーを守る為に動かざる負えない。
炎を纏わせた槍【イン・ヤン】で迎撃するが熱量は遥かに【ヴォルケルノ】が上回っている為に逸らすので手一杯だ。
魔法系超級職の奥義にも匹敵するその威力はラーフララの防御魔法では到底防げない為にこちらも何とかギリギリ逸らすのが関の山。
恐るべき熱量がすぐ側を通り過ぎ、着弾した地面をマグマが煮立つクレーターに変えるのを見てラピネ達がゾッとする。
その隙にトラペゾンはもう一つの武具、ミサイル・ランチャーである逸話級特典武具【追撃弾導 ジェット・ペッカー】でアールを付け狙うサルトビWを照準してトリガーを引いた。
爆音を引く様にして噴進発射されたミサイルは超音速でサルトビWに向かって行く。
「ござっ!?」
今のサルトビWよりは遅いが、装填弾数僅か一発と引き換えに高い追尾性能と破壊力を両立させた小型ミサイルがサルトビWに追い縋る。
その脅威に気付いたサルトビWが流石に足を止めて防御スキルである《風神ノ術・暴風壁ノ型》で守りを固めた。
ミサイルに追われ続けたままではアールの相手がおぼつかないと判断して、受け切る形で対応する事にしたのだ。
ミサイルがサルトビWに着弾すると同時に爆発の轟音が鳴り響き、空に黒煙と爆炎の花火が出来上がった。
普通なら生存は期待出来ないが……。
「ふひぃぃぃっ……、ビックリしたでござるよ!!拙者の暴風壁がギリギリになったのは久方ぶりでござった!」
トラペゾンは撃破出来る事を期待していなかった。
黒煙の中からサルトビWが無傷で現れる。
しかし、実際にはギリギリ防げただけであった。
ミサイルの能力上、爆発とその衝撃でダメージを与える為に近い性質の暴風の壁に受け流されてしまったのだ。
しかし結果的にダメージは与えられ無かったが、アールに余裕を作る手助けになった為に無駄では無かった。
ミサイルの攻撃が一発で終わったのを確認したサルトビWは再度アールの追撃に移るが再び追い詰めるのには時間が掛かる。
その前にトラペゾンは地上の相手を掃討する事を決めたのだ。
肉体の弾性と肉体を収縮させて一時的にステータスを上げる《フレキシブル・ワーム》を併用して超音速で飛び上がりラピネ達の頭上に瞬時に移動したトラペゾンは空中で巨大な掌の如き形に自身を変形させた。
全経覚醒形態・TYPE=H
指に相当する五本の触手腕に長物の特典武具ばかりを装備して頭上からリーチを取りつつ滅多刺しにせんと迫るトラペゾンにラピネが迎撃の超音速刺突を繰り出すが体当たりする勢いで放たれたそれをトラペゾンは自身の肉体を変形させて掌に穴を開ける形で素通りさせた。
そして掌をそのまま上に裏返すかの様に五本の触手腕で空中のラピネを串刺しにせんと狙った。
「!?!?」
「《メガ・ショック・パルサー》!!」
空中で死に体になりかけたラピネを救ったのはラーフララが放った【波動姫】の奥義魔法だった。
空間自体が
その威力を全身で感じ取ったトラペゾンは即座に空中で弾ける様にして地上に向けて逃げる。
「も、もう!素早い!」
「ラフちゃん、助かったわ!」
ラーフララはトラペゾンに躱された事に文句を言い、ラピネは礼を言った。
「しかしあの肉体、変幻自在過ぎでしょ!?本当にやり辛いわね!」
「身体を操る、か、感覚はどうなのかな?痛覚と違って無視出来ないよね?」
「ワームやオクトパスの〈UBM〉と戦ってる気分になるヨー、あの肉体をあの精度で自由に操れるのが信じられないヨー」
「化け物が……!!」
四者四様に好き勝手にトラペゾンを評するが、トラペゾンは気にしない。
言われ慣れてるし、概ね間違って無いと理解するからだ。
【正義魔王】トラペゾ・H・ルーラーの〈超級エンブリオ〉【然治全脳 アザトース】は
その操作はマニュアルだが、余人のそれとはまるで異なる。
トラペゾンのボディコントロールの精度は常人のそれとは文字通りに別次元なのだ。
自身を構成する触手の一本、一本に気を巡らせて髪の毛一本分の狂いも無く操作し切る。
普通の人間なら発狂しかねないその異常な肉体感覚を自身の境遇故に気にもせず、十全に扱い切る脅威の〈マスター〉、それがトラペゾ・H・ルーラーの真骨頂なのである。
【然治全脳 アザトース】というTYPE:ボディの〈超級エンブリオ〉の特性、それは
人ならざる姿を所有者に与え、人ならざる精度と自由度の肉体操作を可能にする
その特性はその肉体に付随するべき装備に関するスキルとしても現れている。
《フリーダム・セレクト》。
【アザトース】が〈超級エンブリオ〉に進化した事で手に入れた固有スキル。
効果としては大した事では無い。
ただ、自身の思考と同じ速度で自身の装備枠を切り替える事が出来るだけのスキルだ。
《瞬間装備》や《瞬間装着》などの亜種といっても良いスキル。
効果の少なさ故に〈エンブリオ〉のリソースも殆ど取ってないオマケの様なスキルであったが、今のトラペゾンのスタイルを扱うに当たって最重要となるスキルであった。
そしてそれに付随するスキルが《イノセント・チャージャー》。
一般的に強力なスキル程に準備が必要になるのは通例だ。
しかし、そのスキルチャージ時間を限界まで短縮して即座に発揮出来る様にするスキル。
スキルであるなら、パッシブであろうとアクティブであろうと関係無い。
同時に使用出来るスキル数に限界こそあるものの、一般的な〈マスター〉のソレとはスキル使用時の自由度の桁が違う。
この二つの固有スキルによってトラペゾンは思考即装備、装備即使用の超短縮された一連のスキル行使を可能にしていた。
トラペゾンにとって、肉体操作は思考及び頭脳労働に過ぎない。
思考する肉体、考える触手である。
試行を繰り返し、そのスタイルを練り上げ……。
志向を掲げ、その目的の為に弛まぬ努力をひたすら行い……。
指向を与え、その肉体操作こそを自らの能力によって十全にして……。
至高の座、世界に百人に満たない〈超級〉にその肉体で至らんとした男……。
その男が練り上げ、作り上げた自身の専用戦闘スタイルこそが全経覚醒形態である。
トラペゾンが見る者の魂すらも凍てつかせる様な冷気を纏う薄蒼色の小太刀を振るった。
古代伝説級特典武具【
剣に人生を、その魂さえも捧げた尽くしアンデッドとなった剣鬼の成れの果てである〈UBM〉が元になった小太刀。
その刃に触れた者を散華させ、霧と氷の破片と為す刃を持つ。
その威力と脅威を見て取ったラピネは最新の注意を払って斬撃を捌くが、その刃は掠めるどころか近くを通っただけで周囲の気温を奪い去り、生きとし生ける者の動きを鈍らせる。
ラピネは長期戦は不利と悟り、その類稀なるセンスで武器が吹き荒れる制圧圏内へと侵入して刺突を振る舞おうとしたがその表情はある斬撃を捌いた時に歪んだ。
ラピネの双槍【イン・ヤン】の先端部分が脆いクッキーか何かの様に抵抗無く斬り飛ばされたからだ。
それを為したのはトラペゾンの腕の一つ、触手の先端に握られた小さなダガー。
古代伝説級特典武具【
西海の極地に潜んでいたダンクルオステウスの如き怪魚の〈UBM〉の短刀型特典武具である。
元になった〈UBM〉は高いENDを誇り、あらゆる物質を穿つ牙、全身から発する振動波カッターで武装していたが特典武具になるに辺り、その攻撃力だけを保持する形で生まれ変わった。
その固有スキル《斬震破断》。
超高速振動する刃はあらゆる物理防御を無為にして斬り裂く事を可能にする。
【ソーサイド】と同じく【神話級金属】ですらこの刃の前には形無しとなってしまう。
それ程の硬度を持たない【イン・ヤン】なら尚更だ。
これでラピネの武器は無力化……、は出来無かった。
「《
その得物の先端部分が破壊されるやいなやその武具の名前を冠するスキルを叫んだラピネ。
すると途端に双槍は爆炎と氷雪そのものにそれぞれ姿を変じて再び槍としての形を取り戻した。
伝説級特典武具【氷炎太槍 イン・ヤン】。
〈マスター〉と違ってジョブ適性が血筋や才能、種族によって変わるティアンにおいて代々炎属性に高い適性を持ち、【
その力は有り得ざる相反する力を矛盾無く同居させる事に成功していた。
特典武具の名称をそのまま付けられた固有スキルは〈エンブリオ〉の必殺スキルの如くにそのスキルの出力を跳ね上げる。
爆炎と氷雪の槍はそれぞれラピネの両手に握られて有り得ざる暴威を振るいだす。
「はあああぁぁぁぁぁっ!!!」
気合いと共にこれまで以上の勢いと精密な動きでトラペゾンと斬り結ぶラピネ。
実体無き氷炎の槍はトラペゾンの武器を受け止めて、その猛攻を主の技量と合わせて凌ぐ……凌ぐが……その奮闘は長くは保たない。
死角より振るわれた三叉鉾が僅かにラピネの左手に掠った。
そして、その一撃は掠るだけで充分であった。
「!?!?」
ラピネが左手に違和感を知る。
その左手につけられた僅かな傷が石になりかけていた。
(【石化】の状態異常!?〈エンブリオ〉でもそこそこレアな状態異常を良く持ってたわね。流石は特典武具って事かしら!)
ラピネは瞬時に後退する判断を下して一息の間に距離を取って【アイテムボックス】から【快癒万能薬】を取り出して使用した。
デンドロにおいて状態異常を防ぐアクセサリー等はほぼ無いが、受けた後に治癒する事自体はさほど難しい事では無い。
【快癒万能薬】はメジャーな状態異常からレアな状態異常まで幅広く効果を発揮して治癒し短時間ではあるが状態異常を受け付けなくする有能アイテムである。
それなりに高価な為に使用を躊躇う者も珍しくはないが、使わなければ無用の長物でしか無くラピネも今躊躇う様な愚か者では無い。
トラペゾンの追撃を警戒しつつ飲み干すラピネ。
トラペゾンもその様子を見つつもアイテムの使用を邪魔したりはしない。
まるで、もう
飲み干したラピネは傷口の石化が治るのを待ったが、何故か治る気配が無い。
それどころか傷口から更に少しずつ【石化】が拡がっていくでは無いか。
「そ、そんなバカな!!【快癒万能薬】が効かない!?普通の【石化】じゃないの!?」
ラピネの言う通りにその【石化】は普通の【石化】では無い。
極めて【石化】に似ているが、似て非なる状態異常。
もう少し【石化】が進めばその異常さが目に見えて分かったろう。
石と化した肉体に混ざる生物跡の如き模様によって。
この状態異常は【
古代伝説級特典武具【
【化石化】する範囲が拡がるのは遅いが、【快癒万能薬】でも治せず防げない恐るべき現象の状態異常である。
西方の特殊な生態系を残していた古代海域に生息する主、古代伝説級〈UBM〉【化石障鱗 シーラセクト】の遺した特典武具である。
ラピネの判断は素早かった。
【イン・ヤン】の炎槍側によって焼き切る様にして左手を【化石化】した傷ごと切断して出血防止と被害拡大を防いだ。
しかし、両手で自在に双槍を操るスタイルであるラピネにとって片腕の欠けは致命的でありその戦力は半減に収まらない。
ラピネの対応を見て取ったトラペゾンは再び攻勢に移ろうとして……、その動きを飛来した無数のナイフにより阻まれた。
「ヘイ!!」
モアドープはラピネを守る様にして立ち塞がり、トラペゾンを足止めする。
その僅かな隙にラピネは距離を取り、モアドープも牽制しつつそれに追随した。
トラペゾンはその動きを阻害しない。
モアドープがアールとの戦闘から離れてここに来れているのはサルトビWが切り札の一つである【ダテアシ】を使用したからだ。
アールはピンチだが、それでも今すぐに死ぬ可能性は少ないとトラペゾンは信頼して放置している。
ここでモアドープを倒し切るのはトラペゾンにとって避けては通れない為にその能力の見極めを優先した。
「予想以上の強者だったねぇ。ラピネさん、腕をだしてヨ」
「……恩に着るわ、モア」
促されて左腕を出したラピネにモアドープは躊躇なく手にしていた緑色の薬液に満たされた
「んっ♪」
「こんな時にもブレないの流石だヨ」
痛みを味わうラピネの左腕が無くなった部分からみるみる再生していく。
そして、瞬く間に完全な左腕として再生されてしまった。
「後、何発有る?」
「最後の一発だけだよヨ〜。自分用にとっておきたいから一回だけのリカバリーだと思って欲しいネ」
その遣り取りを黙って警戒しつつ見ていたトラペゾンは目の前で起きた奇跡を分析していた。
部位の完全欠損は超級職の奥義や回復に特化した〈上級エンブリオ〉の必殺スキルで無ければ治らない。
トラペゾンは時間経過によって自動回復出来るがそれはほぼ例外だ。
それを考えると……特典武具の能力によって起こした再生であるのは簡単に予想出来た。
逸話級特典武具【
リソース貯蔵型の注射器状の特典武具であり薬液を一本充填するのに三日。
最大貯蔵数は僅か三本であるが、使用者が攻撃、バフ、回復の効果から自由に中身を選べる。
その効能は先程見た通りであり、超級職の奥義に匹敵する効果を発揮する。
薬液を注入すると言う工程が必要ではあるが、攻撃に使用すれば〈UBM〉すら殺し得る毒性を発揮するし、バフ効果は……。
モアドープがラピネの完全回復を見届けてから赤い薬液が満たされた注射器を自分の首筋に躊躇なく突き刺して中身を注入した。
「キ、効く〜♪♪」
中身を注入しきると同時にその肉体のステータスが爆発的に強化された。
《薬物耐性》レベルEXを持つモアドープには通常の薬品は回復薬を含めてまったく効果が無い。
超級職の奥義や特化〈エンブリオ〉なら徹るが出会う事は稀。
身近な例外は【インフェクション】と自身の〈エンブリオ〉である【アンブロシア】くらいである。
「《
そして、更にはダメ押しとばかりに必殺スキルを使用して左手の紋章から虹色に輝く果実を取り出して齧り付いた。
「キ!キ!キ!キ!キ!!効くゥゥゥゥッ♪♪」
必殺スキルによって取り出される【アンブロシア】の効能、効果は通常の比では無い。
この世の物とは思えない美味しさ、1週間程度の絶食不眠不休を可能にする栄養素、そして、全ステータスの一時的な超強化はリソース貯蓄型ならではの力である。
必殺スキル使用後はゲーム内時間で三日間は新しく【アンブロシア】が生らなくなるが、背に腹は代えられ無い。
そして、必殺スキル使用時のラピネに匹敵……いやステータス合算値だけなら凌駕する怪物がそこに生まれた。
モアドープは懐から手甲と一体化した様な奇妙な形状の槌を取り出して装備した。
伝説級特典武具【
モアドープの切り札である攻撃用特典武具だ。
ラピネとモアドープが揃ってトラペゾンに相対する。
「待たせたわね」
「おう、失礼したヨー」
ラピネとモアドープもトラペゾンが途中で準備の邪魔をしない事を確認してから完全戦闘態勢を整えた。
「構わないさ。全力を出さないと収まりがそちらもつかないだろう?」
強者なりの傲慢だが、そこに嘲けりは無いしラピネ達もトラペゾンを格上とはっきり認識したが故に思うところは無い。
「“
「“
ラピネとモアドープは自身の通り名を名乗り身構える。
二人なりの筋の通し方だ。
それを見てトラペゾンも改めて名乗り上げる。
「“
その名乗りと同時に超ステータスの怪物達の激突が再び起きる。
ラピネに向かっていた武具の半分がモアドープに向かう様になった事でラピネには余裕が出来る様になった。
「《
クールタイムが明けた事で牽制代わりに必殺スキルを再び行使するギストリー。
先程のトラペゾンの名乗り上げのおかげで効果は再び最大値に達したが本気のトラペゾンに何処まで通じるかは分からない。
しかし、何もしないよりはマシだと思って使用した。
そして、その効果の程を見届けんとするギストリーであったが。
「危ない!ギストリー!!」
緊急事態に吃る事無くラーフララが叫び、その手から軽い衝撃波を出してそれがギストリーに直撃し【シキンコウコロ】の台座から転げ落ちた。
吹き飛ばされたギストリーだったが突然の暴挙に文句を言う前にその理由が分かった。
ギストリーの頭上からギロチンの如くに回転する斬撃が降って来た。
アールが【ソーサイド】を投擲したのだ。
サルトビWとのスカイチェイス中の僅かな隙に放たれたそれはほぼ対処不可能な代物。
【シキンコウコロ】の蔦ではその絶大な威力を殺す事など到底不可能。
その勢いを減んじる間も無く【ソーサイド】は【シキンコウコロ】を難なく切断して二つに別つ。
あえなく台座ごと切断破壊されてしまった【シキンコウコロ】。
その破壊の余波によって装填していた砲弾に引火、誘爆。
ギストリーの目の前で自身の〈エンブリオ〉は炎と爆発に包まれて完全に破壊されてしまい光の塵に変わってしまった。
「あぁぁぁ!?」
悲痛な叫びを上げるギストリー。
〈エンブリオ〉は特典武具と同じく完全に破壊されても自動的に復元されるが、ここまで破壊されては当分使用する事は不可能だ。
使用したばかりの必殺スキルの砲弾も諸共に光の塵に変わってしまった。
【砲撃王】ギストリーの戦力はこれで半減以下となった。
「ち、ちくしょうが!!」
しかし、それでギストリーが無力化された訳では無い。
悲しみに暮れる暇も無く、懐の【アイテムボックス】から携行式のハンドカノンを取り出して装備する。
TYPE:アームズの所有者に良くある事であるがメイン武器が無くなった場合の予備品や戦闘スタイルを持っておく事はままある事であった。
攻撃力と防御力は著しく下がってしまったが機動力は大分上がる形。
しかし、それでもトラペゾンやラピネに近付く事は到底出来ない為に手招くラーフララの近くに寄って効くか効かないか分からない牽制砲撃をする羽目になった。
ラピネは自身と同じ超ステータスを得たモアドープと連携してトラペゾンと渡り合う。
自身に向いていた攻撃が半分になる事で余裕が出来る。
(モアが合流してくれた事で大分楽になったわね。私が対応しなければいけない数が四本になったし……、けど、何で
ラピネの疑問はもっともだ。
トラペゾンの【アザトース】は自由自在に形状を変えられる触手の塊。
変形、集合、分離と何でもござれだ。
勿論、武具を保持する触手腕も数を幾らでも増やす事は可能だ。
ならば、何故それをして手数の利を得ないのか?
答えは簡単。
触手腕をこれ以上増やすのはメリットよりもデメリットが勝る形になるからだ。
【アザトース】は触手の集合体として基本的に活動するが、MPとSPを除いてそのステータスは触手の総体で保持している。
この特性は〈下級エンブリオ〉だった時代からも変わる事は無い。
〈超級エンブリオ〉に進化し、超級職について昔とは比べ物にならないステータスを得たが、その肉体を構成する触手の一つ一つのステータスは脆弱に過ぎる。
上手く肉体を構成、配分して人型の時と同じステータスを全経覚醒形態でも保持してはいるがこれ以上に触手腕を増やせばその物理ステータスは均等に下がっていってしまうのだ。
触手が減る、即ち総体としてのHPが減ってもステータスはどんどん少なくなっていく為に無茶な使い方は出来ないのだ。
ただし、
ラピネはトラペゾンの肉体のシステムを理解は出来なくても、その腕がこれ以上に増える事は無いと直感した。
もし、腕を増やせるならとっくにしていてもおかしくないからだ。
それをしない以上は何らかの事情があるのだろう。
ただ……。
ラピネとモアドープは共に違和感を感じていた。
それは、打ち合う毎に、時間が過ぎるごとにトラペゾンの一撃一撃が重くなっていってる事。
いや、増えているのは攻撃の重さだけでは無い、触手腕の速度、硬さも徐々にではあるが増えているのだ。
その力の秘密はトラペゾンの腰部の特典武具。
不気味な灰色と白色で飾られた、ウエストメイルである。
その名は古代伝説級特典武具【
ドライフ皇国でも最も寒い厳冬山脈に近い一地方で、現地民達に語られている吹雪を総べる悪魔と呼ばれていたスノーマン型エレメンタル〈UBM〉の成れの果てである。
その固有スキルは周辺環境のリソースを吸収し、自身のステータスを戦闘中のみ際限無く強化するという、どんどん大きく作られる雪だるまを模した様な力であった。
特典武具としての固有スキルは《ステータス・サイズアップ》。
限界こそあれど時間経過と共にトラペゾンの物理ステータスを強化していくという破格のスキル。
ステータスが最大値になるまで時間はそれなりに掛かるが、その時には今のラピネやモアドープの高ステータスを超えるだろう。
必殺スキルの仕様もある故に元より短期決戦しかラピネ達には取れないが、それでも脅威となる危険な能力である。
トラペゾンの武具をラピネとモアドープは高ステータスもあって上手く受け流すが、その技量の差もある為にモアドープは幾つか掠らせていた。
ラピネを【化石化】しかけた【シーラネクト】もその一つだったが、その効果は発揮されない。
トラペゾンはその事実に驚愕しない。
半ば予想していた結果だからだ。
ラピネと戦いながらも肉体特性でアール達の戦いを
【中毒王】と【アンブロシア】の合わせ技こそがその正体であろうと予測していた、そしてそれは正解だった。
薬師系統の異端職【
普通は就けばまともな精神状態では居られないが、〈マスター〉故の精神保護により無効。
激減する寿命と言うティアンにとっては重いデメリットも〈マスター〉故にほぼ無問題。
その為に【憂鬱魔王】に近い形で複数の状態異を無効にしてくる。
直接的な破壊効果は無理だろうが、ラピネもモアドープもそれを重々承知している為に危険な攻撃だけを上手く捌いて対応している。
(ならば……)
トラペゾンはモアドープに対応する為にある策を練る事にした。
『
「「!?!?」」
『万生を呪う、黒く深きモノ』
(詠唱!?近接戦闘型の超級職じゃ無かったの!?ま、マズイ!!)
唐突に魔法系スキルの準備と思わしき詠唱を始めたトラペゾンにラピネがラーフララに対して合図を送った。
単なるハッタリかも知れないが捨て置く事は出来ない。
ラーフララの必殺スキルによって再び詠唱を封じなければならない。
先程までは意思疎通の為に《リ・カルチャー》によって言葉が通じる様にしていたが、それを除けば再び意思疎通不可能な領域にラピネ達は入る。
ラピネもモアドープも戦闘に影響はしない為に問題無い。
『ejswtsmyet'r&kagjmw.y(骸より湧き出で……やはり
自身に詠唱が不可能になったのを理解すると同時にトラペゾンが新しい特典武具を取り出した。
それは不気味な造形が多いトラペゾンが所持する特典武具の中でも特に目を引く逸品であった。
不吉な黒紫の色合い、骸を配した柄、歪んだ刃に禍々しいオーラを纏う長物……、
モアドープはその薙刀を見ても躊躇せずにトラペゾンに接近していく。
見るからに呪怨系状態異常を発生させるタイプの武具であるが問題無い。
【中毒王】は病毒耐性や薬物耐性のみであるが《アンブロシア》使用時の状態異常耐性は呪怨系状態異常さえも無効化出来る。
故に、恐れる事は無く自身の特典武具を叩き込むべく超音速機動で踏み込んで行く。
「ejjnpjd(ヘイ)!!」
牽制で振るわれる触手腕とそれが持つ刃を紙一重で避けて【イクイノックス】で殴打した。
途端、触手腕はラーフララの魔法を受けた時の様に激しく震えて崩壊した。
いや、その崩壊は触手を伝播してトラペゾン本体に迫ってくる。
それを見てトラペゾンは触手腕を切り離した。
切り離された触手腕は粉々になって光の塵となった。
(あの攻撃は直撃すればヤバい)
トラペゾンは直感で判断するが、それは事実である。
【イクイノックス】は殴打した部分から振動波を送り込み生物を粉砕する固有スキルを持っている。
斬撃、打撃等とは違う振動波はまともに食らえばトラペゾンの特殊な肉体とて纏めて粉砕されかね無いのだ。
更に言うならモアドープはもう一つ、トラペゾンを撃破しえる切り札を持つ。
【中毒王】は【猛毒王】の対となる超級職。
故にその悪名高き最終奥義である、治療不可能の【極毒】を発生させる《
その名も《
恐るべきその効果は間違い無くトラペゾンの命に届く。
そしてモアドープは複数の攻撃を受け流し、僅かにダメージを負いながらもトラペゾンに接近して行くが……。
「nejtsrusxmdtrgd(モア!上を見なさい)!!」
「wutodwodmupme(モアドープさん!【高位霊水】を飲んで)!!」
「ldkpsydajtjaslmtpn(モアドープ!!ヤバい!ヤバい!!)!!」
仲間達がモアドープに必死に叫ぶが《バベル》の判定内の為にその言葉は届かない。
しかし、その表情の必死さとジェスチャーはモアドープに気付かれた。
「cdwtslto(上?一体、どうした……)」
そして、頭上を仰いだモアドープは見た。
自身の頭上に浮かぶ数字のカウントが0を刻む瞬間を。
「ノッ!?ノォォォォォッ!!」
そして、モアドープはデスペナルティとなって光の塵に還った。
モアドープは自身のデバフ耐性を信じるあまり見逃していたのだ。
自身が食らってはいけない攻撃を食らっていた事を。
その一撃こそ、伝説級特典武具【刻死薙刀 ノーグレイブ】の斬撃、その固有スキルこそは《刻死絶至》。
対象の状態異常耐性を突破して【死呪宣告】を確定で付与する恐るべき一撃である。
使用可能なのは一日一回であり、カウントも三秒に変わっていたがオリジナルに近い性能を発揮する事に成功していた。
ただ、〈UBM〉であった【ノーグレイブ】の能力と同じく【高位霊水】を飲んでさえいれば防げたのだ。
それを阻んだのは意思疎通を邪魔し気付かせる事を遅らせた《バベル》であり、その効果を自身の周囲に使わせたトラペゾンであった。
詠唱の様な真似事をすれば十中八九自身の攻撃範囲に意思疎通不可空間を展開してくれると読んだトラペゾンの作戦勝ちである。
「「「モアドープが……!」」」
実力者のあまりに呆気ない幕切れにラピネ達が驚くがその瞬間にもトラペゾンは迫ってくる。
ラピネ達の状況はモアドープ参戦前より悪化している。
もはや、いよいよなりふり構っていられなくなった。
ラーフララはモアドープが撃破されると同時に切り札である最終奥義を準備していた。
自身のMPを根こそぎ使用して発動する無差別破壊の空間波動を作り出す《ギガ・パルス・ゾーン》。
効果圏内の生物は超出力の巨大な電子レンジに入れられた様に弾け飛ぶ。
敵味方の区別も出来ない為に生き残るのはラーフララだけである。
ラピネとギストリーはラーフララのスキル発動時間を稼ぐ為に攻撃を開始する。
攻め切る為では無く、守り抜く為の決死の覚悟に報いる為にラーフララも最速で準備する。
そんなラーフララの装備していた【救命のブローチ】が突如壊れた。
「えっ?」
突然の事に振り返ったラーフララの眼前に
その柄部分に触手の切れ端が絡み付いているのが見れた。
「こ、これはトラペ……!!」
言い切る前にラーフララの腹部を槍が容赦無く貫いた。
「ぐぶっ!!」
伝説級特典武具【
数多の生命を奪った魔槍がエレメンタルモンスターと化して獲物を求め続けた伝説級〈UBM〉【幽現行刺 ワンダラーピアス】のなれ果て。
元となった〈UBM〉と同じく、装備さえしていれば一人でに動いて敵を襲う能力を持つ。
所持者の状態は関係ない。
例え肉片一つが付いて、装備とも言えない様な単に掴んでいる状態だろうと超音速で浮遊して獲物を狙う。
トラペゾンはわざとこの槍ごと触手腕を斬り飛ばさせて奇襲用に忍ばせておいたのだ。
腹に穴が空いてしまったがラーフララは即死はしていない。
致死は免れないだろうが、動けなくなった訳では無い。
不完全ながらも死ぬ前に最終奥義を発動しようとしたラーフララの視界に無数のダガーが映った。
アールの追撃である。
見るとラーフララを貫いた槍が天高く掲げられていた。
それが合図となったのであろう。
後衛職で【救命のブローチ】も失ったラーフララにはその攻撃を耐えられる筈も無い。
ラーフララは今際の際ににっこりと笑い。
「わ、私の中身見てぇ……♪」
と言ってからダガーに串刺しにされて光の塵となった。
「最後までブレないの流石っスね!?」
アールがラーフララにある意味賞賛を送ると同時にその光景を見たサルトビWが慌てる。
「ラ、ラーフララ殿ぉ!?一人で満足して死なないで欲しいでこざるよぉ!!」
「サルトビィ!!必殺スキル使いなさい!!」
「もう背に腹は代えられねえ!!頼む!!」
ラピネとギストリーが必死に叫ぶ。
モアドープとラーフララが落ちる様を見たサルトビWはいよいよ自身も後が無いと悟り、自身も切り札を使用する事にする。
「《
必殺スキルの使用と同時にこれまでに見なかった程の勢いと量でサルトビWが腰に付けた〈エンブリオ〉より風が吹き荒れた。
【カゼノサブロウ】の必殺スキル、《流石の溜息》。
その効果はシンプルにして強力。
溜め込んだ風力リソースを一時的に五倍にして吐き出し、同時に必殺スキルリソースによる精密制御を行うというモノだ。
そして、その効果によって生み出されるはサルトビWの切り札にして最大の奥義。
〈超級〉が台頭する以前の時代、
その名も《神風ノ術・
その一撃はまさしく神の御技の如き破壊力を発揮し、城に放てば実際に諸共全てを消し飛ばしてその名の如くに国崩しを為す力を持つ。
術の構築、制御の為に一分間程の準備時間が必要となるが完成して解き放たれたなら敵味方諸共に決闘フィールド内全域を間違いなく滅砕するであろう切り札だ。
しかし、その準備をおめおめと見逃すアールでは無い。
「やらせないっスよ!!」
【ソーサイド】を一見無防備に見えるサルトビWに投擲したが、その攻撃は見えざる暴風によって阻まれて明後日の方向に逸らされてしまった。
(やはり対策してたっスか!)
アールとてダメ元で攻撃してみた訳だが、やはり効果は期待出来なかった。
根本的に攻撃の相性がどうしようも無いのだ。
それでも何かしなければいけない、と動こうとしたアールの目に地上から投擲された三本の針が映った。
【穿投針 デンジャーダーツ】だ。
ラピネ達との戦いの合間にトラペゾンが援護で投じたそれはスキル準備の為に移動をやめたサルトビWに過たず狙いすまされ放たれたのだ。
サルトビWも勿論、それをはっきりと認識している。
しかし、その攻撃を鼻で笑った。
(その武具はギストリー殿から聞いているでござるよ。しかしギストリー殿の〈エンブリオ〉で防げたそれが拙者に通じるとでも思っているのでござるか?舐められたものでござるなぁ)
本命スキルの準備中とはいえ防御用の暴風壁の強度は自身の必殺スキル使用時というのも相まって効果は絶大だ。
ギストリーの【シキンコウコロ】の防御性能を知っているだけに、それを上回る自身の防御を突破出来るなどとサルトビWは露ほども考えなかった。
投擲武器に対する自身の無敵に近い防御能力を良く知っているのもあり、今更に投擲武器を使用された意味を深く考えなかった。
そして、それが致命的であった。
「があっ!?!?」
心臓部に投げられた一撃は即死判定故か【救命のブローチ】によって防がれたが、それ以外の攻撃は無理である。
サルトビWは致命ダメージの影響でスキル準備を一時中断する羽目になった。
(ば、バカな!!何で暴風壁を投擲武器がすり抜けられるんだ!?)
自身の投擲攻撃耐性に絶対の自信を持っていたからこそサルトビWの混乱は大きい。
彼は知らなかった。
【デンジャーダーツ】の前身となった〈UBM〉。
グランバロアにおいて見えざる死と恐れられた逸話級〈UBM〉、その名は【一威穿針 デンジャーダーツ】。
小型のダツ型怪魚の〈UBM〉は嵐の日だろうとその風の影響を受けずに獲物の致命部位を穿ち抜く力を持っていたのだ。
その力をそのままに特典武具と化した【デンジャーダーツ】は炎や風では防げない。
堅固な物理防御や物理干渉ならばどうとでもなるが、それ以外の効果の一切を無視する属性系防御スキル殺しの特典武具がまさしくコレであった。
思わぬダメージを受けて混乱したサルトビWは思わず上を見上げたが、そこには自身の
「覚悟っス!!」
暴風壁が止まったタイミングをすかさず狙い撃ったアールが【ソーサイド】を手に持ったままに上空からサルトビWを狙って降りて来る。
しかし、サルトビWの意識は自分に迫る攻撃に無かった。
その視線は……アールのズボンの隙間から僅かに確認できた下着に向かっていた。
「う、薄緑……」
その視線と言葉に気付いたアールは憤怒の表情になる。
「さっさとくたばれっ!!このクサレ変態ィィ!!」
怒りと共にアールが全身の力を込めた【ソーサイド】はサルトビWの身体を正中線から縦斬りにする。
「あばばばばばっ!?!?!?さ!さよならっ!でござるぅぅぅっ!!」
そして身体を両断されたサルトビWは断末間の台詞を残して光の粒子になって四散した。
南無三!!
サルトビWがあえなくデスペナルティになったのを見届けたラピネは自身も覚悟を決めた。
そして懐からペンダントを取り出して砕いた。
逸話級特典武具【
一度使用すると再構成までに1週間程掛かる為に軽々しく使えないが、自分の
「ギスっち!後は頼んだわよ♪アタシ、死んでくるからねっ♪♪」
覚悟ガンギマリの様な台詞であるが、何処までも自分の為の台詞である。
ラピネはトラペゾンと相討つ覚悟を決めて突進を仕掛ける。
自身の奥義を使用して。
「《ライオット・エクストリィィィィムッッ》!!!」
【双槍姫】の奥義である《ライオット・エクストリーム》は単純な突撃技である。
槍使いとしての本義に戻り、双槍にて敵を穿ち撃砕する。
トラペゾンもその脅威を悟り全部の触手腕で迎え撃つ。
「無っ!!駄ぁぁあああっっ!!」
しかし、ラピネの勢いは止まらない。
肉を斬り裂かれ、骨を砕かれ、肉体を破壊し尽くされ様とも止まらない。
【死兵】の《ラスト・コマンド》でさえここまで肉体を破壊し尽くされればどうしようも無いと言うレベルのダメージすら意に介さない。
これこそが【ノブレス・オブリビオン】の唯一の固有スキルにしてラピネの切り札、《ラスト・オブリージュ》。
完全に肉体が破壊されても一分間だけ存在し続ける事が出来るスキル。
そしてサブジョブに置いた【決死隊】の固有スキル、HPが0になった時に対象を指定してその対象へのダメージを2倍にする《ラスト・アタック》と併用する事でラピネの最大最強の一撃が完成する。
「わっ!たっ!しっ!とっ!逝きましょうよぉぉぉぉぉっっっ♪♪♪」
死なば諸共の精神で致死ダメージを楽しみつつ突撃を仕掛けたラピネの《ライオット・エクストリーム》がトラペゾンに届いた。
推定ダメージ数百万のその一撃は……。
トラペゾンの鎧に受け止められていた。
「はっ!?はぁっっ!?!?」
望んだ結果とまるで違う結末にラピネが今日最大の驚愕と困惑をした。
爆炎と凍結の双槍にて放たれる一撃は実際には一撃に非ず。
【救命のブローチ】も無為と化すがそもそもの手応えが無い。
これは、まるで……。
『素晴らしい攻撃だった。ここまでの威力を食らったのは久しぶりだ。お前達の能力も
トラペゾンの鎧が輝き、スキルの発動がされんとする。
ラピネ自身がダメージをリソースにする能力を持つ故に理解した、理解出来てしまった。
トラペゾンが身に付ける鎧の名前。
古代伝説級特典武具【
その前身となったのは先々期文明時代に造られた自律能力を持つパワードスーツの〈UBM〉だ。
当時の【
その固有スキル、《
その効果とは、『自身に蓄えられたダメージをそのまま相手に返す事』。
「ホント……〈超級〉って理不尽よねぇぇぇっ。でも楽しかったわ♪」
『それは俺も否定出来ないな』
ラピネはボロボロの肉体で最後にトラペゾンに別れを言ってから反射された固定ダメージで消し飛んだ。
「ラ、ラピネェェェッ!!」
ギストリーが叫ぶが満足した顔で光の塵となったラピネに届く筈も無い。
こうして決闘フィールドにはトラペゾンとアール、そして〈エンブリオ〉を失ったギストリーが残された。
『負けを認めるならデスペナルティにはしない、と言いたいところだが【契約書】には決着はデスペナルティで付くと書いてしまったしどうしようも無いな』
無慈悲に言い放つトラペゾンをギストリーが睨みつけながらハンドカノンを構えた。
「うるせぇぇぇ!!触手野郎がぁ!!くたばりやがれぇぇぇ!!」
破れかぶれで《フォートレス・バスター》を使用して砲弾を連射するが悲しい事に武器の性能が間に合っておらず、トラペゾンにはまるで届かずに片手間に弾かれる。
「ちくしょぉぉぉぉっ!!」
『その気概は買うが、俺だけに集中して良いのか?これはパーティーバトルだろ?』
そう言って触手の一つでギストリーの背後を指差すトラペゾン。
「ああっ!?」
ギストリーもそれに気付いたが、時既に遅し。
背後から来ていたアールのダガーによりサボテンの様にされてしまった。
「じゃあ、サヨナラっス♪ヤラレ役のギストリーさん♪」
「ぢ、ぢぐじょおぉぉぉぉっ!!!覚えてやがれぇぇぇっえぶしっ!」
ギストリーはそうして半泣きになりながらデスペナルティとなり光の塵になった。
そうして決着が付くと同時に決闘フィールドが消え去る。
「ふぃぃぃぃっ!疲れたぁぁぁ……」
激闘の余波でメチャクチャになった草原のまだ無事な部分にアールが大の字になって寝転がる。
トラペゾンとアールが無事に勝てたが、それでも際どい部分は多かった。
何だかんだで勝てはしたが、内容としては圧勝にはならないな、とトラペゾンは分析する。
「データは充分っスか?トラペゾンさん」
側に立つトラペゾンを見上げながらアールが訊ねる。
「ああ……充分に収集出来たよ。お前のおかげだアール。助かったよ、ありがとう。それにシャンバラもな」
アールの側に彼女を労る様に佇むシャンバラはトラペゾンに対して反応を示さないが目線だけは返した。
触手体を装備内に仕舞い込み、人型に戻ったトラペゾンが笑いながら礼を言うとアールが頬を少し赤らめて頷く。
「ボクはトラペゾンさんの右腕っスからね!役に立つのは当然っス!メルマリアさんよりも!」
「メルマリアが聞いたら怒るぞ?」
苦笑しながら返したトラペゾンの視界に〈四司士〉達がこちらに向かって来るのが見えた。
◇◆◇
「ご苦労様です、トラペゾン様、アールさん」
「お疲れ様だ、大将!それに……アールもな」
「流石ネ、リーダー!超級職が五人掛かりでも相手にならないヨ」
「結局、最初に言った通りになったんだね。ボスはやっぱりスゴイや」
〈四司士〉がそれぞれにトラペゾン達を労う中、アールは一つの疑問を思い出した。
「そう言えばトラペゾンさんが言っていたボクを巻き込んだ最後の理由って何だったんスか?」
それを聞いたトラペゾンがステータス画面を出して聞き返した。
「アール……、
「えっ?ああ……、言われてみれば上がってるっスね。超級職を三人も倒したからかなぁ、って!まさか!?」
こう言われてトラペゾン以外はようやく気付く。
トラペゾン程の高レベルになると誤差だが、アールくらいのレベル帯なら超級職を倒す事は経験値取得手段として充分有効なのだ。
「……あの人達が知ったら激怒しそうっスね」
ギストリー達もまさか超級職に就いた準〈超級〉の自分達がレベル上げの餌として利用されたとは夢にも思って無かったろう。
本人達には言わぬが花だと、アールは心に誓った。
アールにとて慈悲の心は有るのだ。
「さて片付いたが、騒がしくし過ぎたし場所も荒れたから移動するか。恐らく当初の狙いだった〈UBM〉は当分出てきそうに無いしな」
〈UBM〉はその強さと共に高い知能を持っている個体も珍しくは無い。
自身の近くで強者同士が戦ったのに気にしないと言うのは強力な古代伝説級や神話級でも無ければ有り得ない。
今回、狙っていた〈UBM〉は概算で伝説級くらいであるし更に可能性は低いだろう。
「アイツらも三日後までは現れないだろうが、また挑戦されても面倒だしそこそこの距離を稼いでおきたい。
「了解っスよ、トラペゾンさん♪」
トラペゾンに頼まれたならアールに否やは無い。
地面から飛び起きてトラペゾン達を自身を中心に集めてスキルの準備をする。
「じゃあ、行くっスよ!」
アールを中心に複雑怪奇な魔法陣の如き光が浮かび上がり、トラペゾン達とアールを包み込む。
そして……。
「《
アールの必殺スキル発声と同時にトラペゾン達の姿はその場からかき消えた。
トラペゾン達の視界には先程まで居た場所とはまるで違う風景が広がっていた。
「さっきの場所から普通の移動で
目の前の海岸線を見ながらトラペゾンがアールに聞いた。
「そうっスね……、だから【シャンバラ】も三日くらいは出て来れ無いっス。ボクも暫くはリアルの用事で来れないからいつもの様によろしくっス♪」
何程も無い様に会話しているが、アールが必殺スキルで起こした事象を〈マスター〉達が知れば半狂乱になるだろう。
〈マスター〉達の誰もが願ってやまず、そして実現しない便利機能のファストトラベルをアールは可能にしていたのだ。
世に知られればアールの取り合いで殺し合いさえ起きるだろう。
もっともどんな好条件を出されようがアールがトラペゾンから離れる事はあり得ないのだが。
「では、しばしオサラバっス♪皆さん♪」
「ああ……世話になった。元気でなアール」
そうして【跳躍姫】アール・スタンディーはリアルに帰って行った。
◇◆◇
「お〜う、やられちゃったねぇ……」
【死呪宣告】によってデスペナルティした【中毒王】モアドープことサルヴァトーレ・モラーレは病院の一室で身体を起こした。
自身の作った料理の試食によって
自身の治療とレストランの客達からの起訴によって休まる暇も無い彼の唯一と言って良い娯楽からこれで丸一日は遠ざかる事になり、溜め息を吐く。
(やれやれ、負けたとはいえやり切れないなぁ。まあ、仕方ない。今回の経験を糧に新しい料理でも考えますか!)
サルヴァトーレはもう一人の
◇◆◇
「あ〜あ、負けちゃったぁ……」
【波動姫】ラーフララのリアルであるクロエ・ボーヴォワールは寮内の自室でベッドに身を放り投げる様にして寝そべっていた。
クロエはデンドロのキャラとは真逆の輝かしいばかりの金髪を弄りながら今後について考える。
「う〜ん、私もそろそろ……」
思案にくれるクロエの肢体を窓から入る光が照らし、寮内で唯一寛げる自室で裸体を晒す彼女を祝福していた。
◇◆◇
「あばーーーっ!!」
奇妙な絶叫と共にVR機器を放り投げたのはリアルの【風影】サルトビWである駿河了。
デンドロ内とは似ても似つかないイケメン男子がそこに居た。
「久しぶりだなぁ、デスペナ食らうのも……まあ、しょうがないか。次に生かそう!」
自身が負けた理由の考察を始めると同時に戦闘における今後の改良点も思案するサルトビW。
その脳裏には先程の激戦の記憶と、最期に見た爽やかな深緑が焼き付いていた。
◇◆◇
「あぁぁぁんっ!!♡」
ビクンと全身を仰け反らせてリアルに戻って来た【双槍姫】ラピネ・ルピこと相楽流歌。
何処となくラピネの面影を覗かせるその表情は喜悦に染まっており、赤く頬を火照らせていた。
「はぁぁぁ♪凄かったぁぁぁぁ♡戦って正解ねぇ♪あぁ……さっきの感触が消えない内にぃ♥︎」
ゲーム機器をベッドの側に放り投げた流歌は別のナニカに没頭する為にベッドに潜り込んでいった。
◇◆◇
「クソったれがぁぁぁ!!」
激昂と同時にゲーム機器を床に叩き付け様として、すんでのところで思い止まったのは【砲撃王】ギストリー・グスタフのリアルである大学生の鈴原純司である。
ギストリーとは似ても似つかないどこか神経質な雰囲気を見せる細身で眼鏡を掛けた彼は敗北の屈辱に身を捩り頭を抱えながら、自身の進退を考える。
「ア、アイツらにどう申し開きしろってんだよぉ〜〜〜!!」
リアルでもデンドロでもギストリーの心労は耐えない……。
◇◆◇
そこは飾り気の無い部屋だった。
10畳程の部屋に綺麗に整えられた棚が設えられており特撮ヒーロー等のフィギュアやグッズが大事そうに飾られている。
部屋の壁にはダーツの的が置かれており、高得点の取得をしたであろう状態のままに放置されていた。
白い無地のベッドの横にはバランスボールが置かれている。
健康志向なのか、ダンベルやランニングマシンも揃えられていた。
しかし、飾り気が極力廃されたこの部屋を初見で女性の私室と見抜ける者がどれだけいるのであろうか。
そして、この部屋の主が簡素な白いベッドの上で目を覚ます。
<Infinite Dendrogram>用のVRヘッドギアを外して脇に丁寧に置くとベッドの横に最低限のレベルで用意されている鏡や化粧棚で身支度を整える。
切れ長の瞳に黒い美しい髪を備えて豊満な胸を持つ女性としては長身の美女だが、どこか陰を感じさせる雰囲気を醸し出している。
何もかもが<Infinite Dendrogram>内の姿と真逆。
そう、この女性こそがリアルにおけるアール・スタンディーの姿であった。
身支度を整えた女性はスーツを身に纏い、用を済ます為に部屋から出ようとする。
忘れ物が無いか確認がてら見回した部屋の片隅に勉強机が置かれていたが、その年季の入りようにどれだけ女性がこの机で努力したかが見て取れそうであった。
女性は少しだけ感慨そうに机を見た後、家を出て行った。
夜道を行くその女性の所作には隙が無い。
体幹もブレず、人体の急所が連なる正中線がしっかりと一本通ったその姿は見る者が見れば武術を高いレベルで修得しているのが見て取れる程だ。
女性が向かう先は近所にある病院であった。
その病院の名は
近隣では知らぬ者の居ない総合病院である。
女性はスタッフカードを見せて病院に入るとスタッフルームに顔を出した。
「こんばんは。院長先生は部屋におられますか?」
「こんばんは立花さん。院長先生はこの時間ならおられると思いますよ?」
「ありがとうございます」
知りたかった事を聞けたリアルのアールはスタッフに礼を言うと院長室までの最短ルートで向かおうとする。
「いつもの報告?大変ね、貴女も」
「……いえ、これが私の
一寸の隙も無い立ち姿でお辞儀したアールに気圧されたのかスタッフ達はそれ以上声を掛けなかった。
そうして、院長室に到着した彼女はノックをしてから入室許可を貰って部屋に入る。
「ご苦労様、立花君」
そこにはこの病院の院長であり、日本における脳医学の権威である御条正孝が椅子に座って待っていた。
リアルのアール……彼女の名前は
この病院の新人研修医であり、院長直属のスタッフである。
「正義の様子はどうだい?」
「正義さんの状態はまったく問題ありません。常人とはまるで違う身体を手に入れてますが、あの世界を満喫なさっている様子です」
瑠璃子からそれを聞いた正孝はいつもの事ながら安堵する。
「そうか……、良かったよ。国内でも意識不明患者があのゲーム内では意識を取り戻してプレイ出来ているらしいし、アメリカの脳医学研究所でも正義と同じ境遇の女性が問題無くゲーム内で身体を得て楽しんでいると言う情報を聞いている。その女性のゲーム内での対応は所長自らしているらしいが、正義の場合は君に一任しているのが申し訳ないよ」
そう言って頭を下げた院長に瑠璃子は頭を下げ返した。
「と、とんでもありません!院長先生は御多忙ですし、それに私の我儘の様なものなので申し訳ないのはこちらです」
瑠璃子の反応に苦笑した正孝は椅子に深く腰掛け直した。
「そう言って貰えると私も少し気が楽だよ。レポートは後日で構わないから今日は帰って構わない。わざわざ来てくれて済まないな」
「いえ……、ところで院長先生。今から御条邸にお邪魔しても構いませんか?」
まるで乞う様に願う瑠璃子に正孝は頷く。
「君ならいつでも構わないよ。更科さんに頼んで入れて貰うと良い。しかし、今も正義はゲーム内に居るんだろ?わざわざ見に来なくても……」
「……お願いします」
立花瑠璃子の返答は不断の覚悟に満ちていた。
「そうか……、好きにしなさい。正義にも偶には帰って来る様にしてくれると嬉しいと伝えておいてくれないか」
「了解しました。それでは失礼します」
立花瑠璃子は礼儀正しくお辞儀すると院長室を辞して帰った。
その様子を御条正孝は困った様に見つめて見送った。
立花瑠璃子は足早に挨拶しながら病院を抜け出し、近隣にある御条邸に向かう。
巨大な門の前に立ち、インターホンで挨拶しつつ邸に入れて貰う。
「あらあら、瑠璃子ちゃん。久しぶりねぇ♪いつもの部屋よね?坊ちゃんは戻って来て無いのだけど、良いの?」
「はい、それは存じております。お願いします」
恰幅の良い年配の女性が応対に出る。
更科さんと言う御条家のお手伝いさんだ。
瑠璃子とも長年の知り合いであり、心よく家に迎え入れてくれた。
そして、瑠璃子が向かう部屋は決まっていた。
本邸から少し離れた別邸、御条正義の脳髄が置かれて厳重に管理されている場所。
薄赤色の液体が満たされた保管容器に浮かぶ脳髄を瑠璃子は黙って見つめていた。
今、その脳髄の意識は此処に無い事を瑠璃子は重々承知している。
先頃まで一緒に冒険をしていた仲だからだ。
その脳髄だけの男性を悲しげに見つめながら瑠璃子は呟いた。
「……先生が戻って来ないから寂しがっているよ……。けど、仕方ないよね。だって……ようやく手に入れられた自由と肉体なんだもんね……。仮初とは言え、そこにずっと居たいのは分かるよ、正義
そう一人呟く女性の頬に、一筋の涙が溢れ落ちた。
立花瑠璃子。
【正義魔王】ことトラペゾ・H・ルーラーのリアル、御条正義に幼い頃に事故から救われてその生命と引き換えに彼を脳味噌だけの存在にした要因となった1人の少女。
その成長した姿が彼女であった。
自身の不注意によって幼馴染の男性を取り返しのつかない状態にしてしまった彼女は自身を責めた。
そして血の滲む様な努力を長年費やして脳医学の道に入り、御条正義の身体を取り戻すべく研究を重ねる研修医が立花瑠璃子と言うアール・スタンディーのリアルでの姿だ。
そう、アール・スタンディーが<Infinite Dendrogram>をプレイする理由はゲームを楽しむ為などでは決して無い。
彼女がプレイする理由はただ一つ、それは
自分の不注意のせいで起きた事故によって全てを失った、幼い少女だった自分にとっての憧れにして初恋の男性をゲームでサポートする為だけにアール・スタンディーというキャラクターは用意されているのだ。
アール・スタンディーの〈エンブリオ〉である【シャンバラ】はデンドロ内でも数少ない希少なTYPEのアポストルだ。
〈エンブリオ〉がアポストルになる条件の〈マスター〉のパーソナルは『デンドロが嫌い』もしくは『デンドロと言うゲームをプレイする以外の目的をもってプレイする』だ。
アールは仮初とは言え正義に自由を与えてくれた<Infinite Dendrogram>と言うゲームに感謝さえしている。
嫌う事などあり得ない。
だから、【シャンバラ】というアポストルが生まれた理由はまず間違いなくもう一つの理由であった。
研修医と言う忙しい身でフルダイブ型のゲームをする余裕など無い。
しかし、自身の贖罪と御条正義の為にせざるを得ないと言う二律背反こそが生み出した要因である。
【シャンバラ】はアールのパーソナルを読み取って産まれた存在である。
それ故にアールの事情を本人と同じく完全に把握していた。
〈エンブリオ〉と言う存在は【シャンバラ】に限らず何処までも自身の〈マスター〉の為にあるものだ。
だからこそ、自身の為では無く他者の為に動くアールの原因となったトラペゾンを嫌った。
トラペゾンもアール達の事情こそ知らないが、アールが自分に献身的過ぎるのが【シャンバラ】が気に入らない原因だろうと推測はしていたのだ。
しかし、それとは別に意思があり好悪は存在する。
その為に自身の力の行使こそアールの為には躊躇わないが、トラペゾンへの嫌悪は消す事が出来無いのだ。
【シャンバラ】はアールの為に自身の願いを殺しつつも転移能力で彼女の望みを叶え続ける。
その力の詳細を知った時にアールはこの上無く喜んだ。
ファストトラベルが存在しない<Infinite Dendrogram>と言うゲームにおいてトラペゾンの助けにまず間違い無くなる。
トラペゾンにリアルの自分が立花瑠璃子である事を気付かせずに助けになるのに十二分な能力だと。
心優しい御条正義はアールが瑠璃子だと気付けば自分の為にわざわざ自由を犠牲にする事は無いと諭すだろう。
しかし、それこそが瑠璃子にとって何より心苦しい気遣いとなる。
故にアール・スタンディーと言う人物はリアルの自身とかけ離れた容姿、性格にしたのだ。
万に一つも気付かれない様に。
リアルにおける理想郷シャンバラという概念を近代において有名な小説家がモデルにしたある小説を書いた。
ただ、その小説自体よりもシャンバラをモデルに作られた言葉の方が有名となった。
その言葉とは
その言葉は明るい意味合いを知らぬ者にこそ感じさせるが、実際の意味を知る者にとってはそうでは無い。
ユートピアとは憧れても辿り着けぬ地を意味する場所の事。
すなわち、
アールにとっての届き得ぬ楽園は自身が慕う男の子が自身を庇った事で身体を失う前。
即ち、決して戻り得ぬ過去の事だ。
あの時に自身を、もしくは正義を移動させる力があればという願いより作られし〈エンブリオ〉こそが【シャンバラ】なのだ。
立花瑠璃子のその願いこそが、身体を失った御条正義をゲーム内で助ける事になったのは皮肉と言って良いであろう。
【跳躍姫】アール・スタンディーは【正義魔王】トラペゾ・H・ルーラーに供として寄り添い続ける。
リアルの彼が再びその身体を取り戻す、その日まで……。
◇◆◇
ギストリー達がトラペゾン達に決闘で敗れた日から三日後、デスペナルティが明けた当日。
ギストリーはレジェンダリアのセーブポイントに佇んでいた。
その顔はあまりの居た堪れなさにゲッソリとしている。
万全を期して挑んでおきながら不様に敗北した準〈超級〉と周りが笑う訳では無い。
ただ、根が真面目な為にラピネ達に巻き込んだ謝罪をしなければならないと待っているのだ。
「あっ!ギスっち、お久〜♪ってリアルじゃ一日振りでしか無いか〜♪キャハッ♪♪」
先日の敗北など無かったかの様に明るく振る舞うラピネをギストリーは信じられないと見つめる。
「来てたで御座るか、丁度良かったで御座るな♪」
「は、入って来ないかとちょっと心配したよ?」
「ギストリーさんもデンドロに病み付きだネ!分かる、分かるヨ!」
沈むギストリーとは裏腹のハイテンションなラピネ達。
「お、お前等……俺を責めないのかよ?」
「???何でアタシ達がギスっちを責めるのよ?責められたいの?マゾに目覚めたの?」
とんでもない言い掛かりにギストリーが思わず反論する。
「お、俺はお前とは違う!!」
「じゃあ良いじゃない♪終わった事は仕方ないんだから、未来の為に行動しましょ♪」
取り敢えず責められる事は無さそうと一安心したギストリーだったが、良く分からない解答に疑問を覚えた。
「未来の為に、ってどういう意味だ?何かする気なのか?」
「決まってるじゃない、トラペゾン
「はぁ!?!?」
〈超級〉トラペゾンの理不尽さを改めて味わったギストリーの心は完全に折れていた。
自分が〈超級〉にでもならない限りは欠片も勝ち目など見えはしない。
「ふ、ふざけるな!俺はゴメンだぞ!!お前達だけで挑め!!」
「勿論、今すぐは無理よ♪世界を旅して経験を積んでレベルアップしたり、特典武具を手に入れてからじゃないと失礼だもの。トラペゾン様に♪」
「さ、さっきからトラペゾン様ってのは何だよ!」
「アタシ、あの人に惚れちゃったの♪あんなに沢山、色々な痛みを貰っちゃったからしょうがないわよね♪あぁ〜リベンジが楽しみ♪待っててちょうだいね〜トラペゾン様ぁ〜♥︎」
ここに厄介ファンが爆誕したのをトラペゾン本人が知らないのは幸か不幸か分からなかった。
しかし、今ここに後の世で良くも悪くも世界に名を馳せ〈【砲撃王】と愉快な仲間達〉と呼ばれる事になるパーティーが誕生したのだった。
【正義魔王】と【跳躍姫】、【砲撃王】と愉快な仲間達について FIN
いつもの様に補足説明じゃ♪
『全経覚醒形態』
トラペゾンの本気戦闘を行う形態であり、本来の戦闘スタイル。
普段の人型のまま騎士として戦う姿は普通の人間の感覚であれば手足を縛って戦っているのに等しい様なものであり、〈超級エンブリオ〉としての本領もこの姿で無ければ発揮出来ない。
その姿、形を自在に変形させ、更には状況に即して特典武具を使い分ける為に決まった型が無く、その為に見切るのは困難だが基本は無惨様の様に無数の触手腕で特典武具をぶん回して周囲を斬り刻むのが多い。
全経覚醒形態・TYPE=B
脚を止めての遠距離射撃に特化した形態。
移動する場合は転がって行動する。
Bはブルトン。
※ブルトンとはウルトラマンに出てきて四次元怪獣。
テトラポットが寄り集まった奇怪な形をした怪獣であり、アンテナの様なモノを出しての隕石落としや行動巻き戻しビームを得意としている。
触手だけを出して射撃戦をする姿が似ている事から名付けた。
全経覚醒形態・TYPE=H
巨大な手を模した形状になる形態。
パワーと耐久に優れた姿であり足を止めての殴り合いや斬り合いに特化している。
相手が耐久性に劣る場合には肉体を使用して握り潰す事もある。
Hはそのままハンドの意味。
《届き得ぬ楽園に》
アール・スタンディーのチート級必殺スキル。
本編にすら存在しない〈エンブリオ〉による多人数、長距離空間転移。
一度行った場所にしか転移出来ず、移動の為にマーカーを設置しなければいけないが、コスト(デメリット)を払えば人数や距離を幾らでも増やす事が出来る(限界は有る)
このスキルのオマケとして普段の個人転移があるが、パーソナルから理由は分かる筈。
古代伝説級〈UBM〉【征鎧魔 ディモン・アクティブム】&古代伝説級特典武具【制衝鎧 ディモン・アクティブム】
さり気なく挿絵も貰ってた暴走パワードスーツの〈UBM〉。
アルベルトの特典武具【エグザデモン】の系列兵器。
エグザデモンはパイロットの生命を吸い取っていたが、こちらは自身の保持の為なら中身がどうなっても良いとダメージを中に徹す様に暴走した結果、所有者である昔の【機甲王】が死んだ。
固有スキルはリアクティブアーマーとダメージ貯蔵反射。
性能は低下して燃費も悪くなっているが特典武具化しても両方持っている。
《ストーム・スティンガー》の直撃でもろくにダメージが無かったのはリアクティブアーマーが発動していた為。
MP、SPの消費が激しいがある程度はチャージしておける為に使い勝手は悪くない。
古代伝説級〈UBM〉【硬甲震牙 ザルカルム】&古代伝説級特典武具【無音震牙 ザルカルム】
甲冑魚と呼ばれるダンクルオステウスに酷似した怪魚の〈UBM〉。高いENDと超振動能力を利用した高い攻撃力を兼ね備えた純粋性能型の〈UBM〉であった。
特典武具は強度自体は低いが、切断能力だけならザカライアの超振動ナイフを上回る出力を発揮する大振りのダガー。
今回はここで一端更新終了じゃ♪
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