彼が彼女で彼女らが彼らで   作:回転するカイデン

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続ける気はあります


2話 学習と失敗?

時が立つのは早いのもので

俺が転生してから既に1年が過ぎていた

 

体も随分としっかりとしてきて、まだ覚束ないが何かを掴まなくても歩けるようになった

 

とはいえ歩けるようになったからと言って、家の中は大体見終わっており

新しく見れたのは庭くらいなものである

 

折角本気で生きると決めたのだ、何か新しい発見がしたいが、今のところ親たちの話を盗み聞きする以外にすることがない

 

次にするとしたら語学なのだが話すのは兎も角、読み書きは如何せん文字がわからない以上、難しいだろう

解読しながらやるというには残念だが元々の知識がなさすぎる

 

そう思っていた矢先のこと

 

特に目的もなく家の中を彷徨っている最中ふと窓の外をみると

いつもなら空き時間には庭で剣を素振りしているはずの父親の姿が無かったのだ

 

珍しく思いながらも気にすることはないと窓から離れると後ろから声がかけられた

 

「お、ルディいたいた」

 

庭にいないと思ったら俺を探していたらしい

 

「探したんだからな」

 

そういうと俺を軽く抱き上げ、居間に移動すると椅子に座り、俺を膝に座らせた

 

「もうルディも1歳だからな、そろそろ言葉の練習もしないとな」

 

そう言うと小脇に抱えていた本を開き、俺を抱えながらに読み始めた

 

どうやら俺を探していたのは読み聞かせをするためだったようだ

 

こちらとしても手持ち無沙汰になっていたし暇つぶしになるか、それに読み聞かせということは本を見れるということだ、文字を覚えるチャンスだな

 

そうして次の日から親が読み聞かせをしてくれるようになった

 

本は全部で5つと、前世で持ってた量を考えると少ないようにも思うが内容は2つの物語、この辺りの魔物の種類、世界全体のざっくりとした案内、それになにより攻撃のみだが魔術教本と十分な内容だった

 

まさか魔術をこの年で教わることになるとは思わなかったがまぁ都合がいい、危ないからと止められる前に覚えれるものは覚えてしまおう

 

物語の方はどちらも仲間とともに行う勧善懲悪と冒険譚の2つ

言葉を覚える以外で興味は無いと感じてたが、父親の朗読がこれが存外上手いのだ

 

声のトーンを場面に合わせて変えたり

こっちに問いかけるようにしたりと手を変え品を変え読み進め

 

他に娯楽が無いのもあるが、この年にもなって読み聞かせに熱中してしまった

 

別に生前英語が得意だった訳でもないが

触れ続けているのと意欲的な勉強の甲斐もあってか早々に言葉を覚えることができた

 

読み聞かせをしてる中で発声の練習も出来た、初めて単語を喋ると親はそりゃもう興奮しきりでそのままの調子で父さん、母さんと呼ばそうとしていた

 

前世で弟が初めて喋った時にも親はこんな感じになっていたし、何処の世界でも親は変わらないようだ

 

それから父親と母親の言葉を覚えると事あるごとに父さん、母さん呼びをねだられることになった

 

言葉も覚えてきて自分からでも幾らか読めるようになってきた頃

 

「ルディー、パ ウ ロっていってごらん」

 

またも甘えるような声で呼びかけてきたが今回は今までと少し様子が違う

 

いつもは父親と呼ぶか、本の内容の読み上げなのだが、今回のパウロという言葉は本に出てきた記憶はない。

 

パウロという言葉は聴いたことがあるような気もしたが、どうしても思い出せず、記憶の中を探っていたのだが

その様子をうまく聞き取れなかったと思ったのか父親がもう一度口を開いた

 

「パ ウ ロ、父さんの名前だよ」

 

合点がいった

 

いつも夫婦では君、あなた呼び等で基本的に名前では呼ばないので親の名前に聞き馴染みがなかったのだ

 

「あ!ちょっとあなたズルいわよ、お母さんはゼニス、ゼ ニ スよ」

 

こちらの様子を伺っていた母親が抜け駆けしようとする父親の姿をみて話に入ってきた

 

ふむ、ゼニスだなしっかり覚えておこう

 

そうして頭の中で名前を反芻している俺の姿が何とかして言おうとしてる様に見えたのか、ゼニスはニコニコしてるし、パウロはドンドンニヤけた顔に変わっていった

 

その顔が面白かったものだから、しばらく眺めようと言おうとするフリを続けてた内に、侍女のリーリャがこちらに歩いてくるのが見えた

 

その時ふと魔が差した

 

リーリャは侍女ではあるが、両親とも仲がよいらしく仕事を頼まれる以外でも雑談をしたりしており、よく名前をよばれていた

 

それもあって先んじて名前を覚えてしまっていたが、名前自体は教えてもらったわけではない

 

そうであるのにそれをここで言ったら一体両親はどんな反応をするのかが気になった

 

(そうと決めたらリーリャが行ってしまう前に言わなければ)

 

「いリャ、リーりャ!」

 

まだまだ舌足らず、されどもしっかりとそれとわかる音が家の中に響いた

 

まず言われた当人のリーリャは名前を呼びかけられたと思ったのか、振り返ると誰が呼んだのかわからないのか見回していたが、

自分に指差す俺に気づくと何しろまだ教えられてないはずの自分の名前を呼ばれたからか“そんなはずはない”と言わんばかりの引きつった顔をされてしまった。

 

ゼニスはというと“あら?”という顔をしたかと思うと少し困り顔になりながらも凄いと撫でてくれた

 

最後にパウロなのだが、発言のすぐはニヤけた顔のままだったが理解するとその笑みは消え、暫く停止していたかと思うと、凄まじく間抜けな顔に変わり、ギシギシと音がなりそうな動きでリーリャの方を向いた

 

その顔をみたゼニスは初めは堪えていたもののパウロが間抜けな声を出すと、たまらず吹き出してしまった

 

リーリャもパウロを見ると表情が変わり、すぐに顔を隠したものの肩が震えており笑いを堪えているのはよくわかった

 

(すまないパウロ、そんなに名前を呼ばれるのを楽しみにしているとは思わなかったんだ)

 

まもなくして表情を戻したパウロがこちらに向き直した

 

「まったくルディは凄いな、だけど次は俺を呼んでみてくれないか、ほらパ・ウ・ロだ」

 

(面白いものも見せてもらったし、もう焦らす必要もないか)

 

「パウうぉ」

 

すると聞いたパウロの顔がみるみるうちにニヤけた顔に変わった

 

「なぁ聞こえたか、今俺の名前を呼んだぞ!」

 

「そんなに声を出さなくても聞こえてるわよ」

 

興奮しきりのパウロにゼニスは困ったような笑顔で答えると、そのまま俺の頭を撫でてきた

 

「ルディったら凄いわね、こんなに早く言葉を覚えちゃうんだから、ひょっとしたら将来とんでもない人物になっちゃったりして」

 

やはりというべきか出来たことを褒められるのは嬉しいものだな、だがこのくらいは出来て当然だ、もっと力をつけなくては

 

 

 

 

 

 

言葉を理解できて文字も読めるようになったとあらば、いよいよ魔術の練習を始めるときがきた、人の目を盗み魔術教本を読み進め魔術の発動にもこぎつけた

 

それから手を変え品を変え日々鍛錬し、途中にハプニングもあったが使える魔術も順調に増え、3歳も過ぎたとある日に一度初級以外の魔術も使えるか試してみることにした

 

使う魔術はいつも使っている『水弾』を一回り大きくした見た目をしている

『水砲』にすることにした

 

いつも通りに魔力を込め、段階に分けて生成していき無事に

水属性中級魔術『水砲』が完成した

テストはここで終わったのだが、調子に乗った俺はふと興味が出て威力はどんなものなのかを見てみたくなったのだ

 

 

射出用の魔力を込め、さぁいざ発射というときに帰ってきた反動に嫌な予感を覚えたが、無慈悲にも『水砲』は発動された。

 

その予感は悲しくも的中し、『水砲』は轟音をたてて書斎の壁を吹き飛ばしたのだった

 

なんということをしてくれたのでしょう

本は少ないものの綺麗に纏められ、ホコリ一つ無いように掃除された、窓からの木漏れ日が綺麗な書斎は、壁が全て取り払われ、辺りには木片が散らばった外の空間が丸々一望できる開放的な空間になってしまったではありませんか

 

あまりにも変わり果てた状況に唖然としていると、こちらに駆け寄ってくる音が聞こえ、振り返ると扉からパウロが焦った様子で飛び込んできた

 

「なんだ今の音は、ってうおあっ!?」

 

「一体何があったんだ…?」

 

パウロが目の前に広がる変わり果てた空間に目を向いていると扉の前でへたり込んでいる俺と目があった

 

「ああ、ルディもいたのか、怪我とかないか?」

 

あれだけの威力の魔術を撃ったのだから心配になり、一通り体を見回し、軽く腕も動かしたが、幸いにも何処にも不調は無かったようでホッとすると向き直し、軽く頷いた

 

「そうか、それならよかった、ちょっと父さん部屋を調べるからな、木の欠片とか踏まないようにそこを動くなよ」

 

そう言うとパウロは壁があった方に進み、穴の周囲や向こうの景色を念入りに調べ始めた

 

優しいのか思考から外しているかわからんが、壊れた壁の縁から水が垂れていてそれが俺まで繋がっているのに、こちらを疑う様子はない

 

パウロが調べ始めて間もなくゼニスとリーリャも部屋に入ってきた

 

リーリャは部屋につくと表情を変えることもなく、手に持った掃除用具で散らかった部屋を掃除し始めた

 

ゼニスはというと部屋に入って驚いた様子こそ見せたが、慌てることもなく部屋全体を見回し、壁から滴る水と壁の穴から俺に繋がる水の跡、そして『水砲』について書かれたページを開いたまま俺のすぐ前で落ちている魔術教本をみると少しこちらに近づきしゃがみこんで目線を合わせていた

 

「ルディ、もしかしてこの本のここに書かれてるのを声に出しちゃった?」

 

優しい笑みを浮かべてこそいるものの、雰囲気は全く優しくない

明らかに目が笑っておらず、ただこちらをじっと見つめている

正直かなり怖い

 

(こうなってしまってはもう誤魔化す手段もない、黙っていたところでよくなる訳もないし素直に謝ろう)

 

目が泳ぎそうになるのを抑え込み、しっかりと目と目を合わせた

 

「ご、ごめんなさい」

 

(しっかりと、誠意を見せた

これで駄目なら仕方がない、また別の方法を探せばいいんだ

まだ時間はある、諦めないのが大事だろう)

 

こちらの謝罪を聞くとゼニスの目も和らいだ…、というか目だけではなく表情がやたらと緩んでいる

 

「そう、わかったわ、ありがとう 」

 

そう言うと、立ち上がり妙に浮足立った様子でパウロの方へ歩いていった

 

「いや、ちょっと待てこれは中級の

「やった!やったわ!やっぱりうちの子は天才だったのよ!」

 

こちらの話を聞いていたのか狼狽えているパウロとそれを遮ってゼニスが歓喜の声をあげた

 

ピョンピョンと跳ねて喜んでいるのを見るとこちらの謝罪はいらなかったような気もしてきた

 

「すぐに家庭教師を雇いましょう!今から伸ばせば将来は凄い魔術師になるわ!」

「おまえな、少しは落ち着け、まだ文字も教えてないんだぞ」

 

とりあえず魔術の禁止の心配は無くなったが、ゼニスの喜びようが凄い

パウロが落ち着いて話をしようとしているのに止まるどころか

なんか勢いが増している気がする

 

「明日にロアの街に募集をかけましょう

 才能はのばさなきゃ!」

 

さっきからゼニスがずっと天才だと盛り上がっているが、そんなものなのだろうか初級でなくとも中級ではあるが、それでも下から二番目、そんなに騒ぐものだろうか

 

それとも親馬鹿ってやつか…、まぁ多分親馬鹿なのだろう

 

(それにしてもさっきやっぱりと言っていたが、魔術の練習はずっと隠れてやってきたはず、なのに何でやっぱりなんて言い方を?)

 

今までのやってきたことを振り替えると一つの心当たりが思いついた

 

(そういえば、時々本を読んでるときにゼニスが話しかけてくることがあったな、読んでいる時に独り言が漏れていることがあるし

それが聞こえてたのか)

 

読み聞かせはしてもらってはいたからな、聞いた言葉を理解するのは同じくらいの歳の子でもできるだろうが

今俺がやったのは文字の意味を理解し、それをどう発音するのか理解し読むということだ

 

しかもそれを俺はまだ教わっていない

 

そりゃこの年でそんなことすれば天才だの言いたくもなるだろう

 

(中身は40手前のオッサンなことなぞ露知らず、盛り上がり続ける母親には悪いことをしてしまっているな)

 

「ロアの街に家庭教師の募集をかけましょう!きっといい家庭教師が見つかるわ!」

「だからおまえは少し落ち着け!」

 

興奮が冷めないゼニスを宥めていたパウロがいよいよ落ち着かせるために声を張り上げた

 

「なによ大声なんてあげて」

「いっかい落ち着こう、なにかの間違い何じゃないか?」

「間違いも何も、ルディからやったっていったのよ」

「だとしてもまだ文字は教えてないし、なによりまだ3歳だぞ」

 

パウロも俺が喋った時は随分興奮してた割に、今回ゼニスとの反応が随分違うが一体どうしたんだろうか、父親と母親で育児への期待が違うのはよくあることだと思うが

 

「やっぱりまだ家庭教師は早いんじゃないか?もう少し様子を見ても」

「まだまだって、男の子が生まれたら剣を教えて、女の子が生まれたら魔術を教えようって約束したじゃない」

 

あ、そんな約束してたの

 

「いやでもな……

「でもも何も約束でしょ、また破るつもりなの!」

 

約束してたからかパウロが妙に弱気だ

今までカッコつけてたとこばっか見てたから新鮮だな

 

「私としては奥さまに賛同しますが、お嬢様はまだ3歳になったばかりです、はじめのうちは午前か午後のどちらかのみ学べばよいでは?」

 

いつの間にか掃除を終わらせていたリーリャが呆れた様子で

提案し、この場はひとまず落ち着いた

 

親馬鹿に振り回されている子どもの気持ちも考えて欲しいものだが、これも親孝行だと思っておこう

 

 

 

 

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