彼が彼女で彼女らが彼らで   作:回転するカイデン

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無職3期決定めでたいですね
それと投稿無茶苦茶遅れてすみません
リアルが割といそがしかったもので


6話 外の世界

午前中には庭の草木を全て調べ終わってしまった

もう少し時間がかかると思っていたから暇な時間が生まれた

魔術の練習するにしても時間は余るだろうし、今日はロキシーが居なくなった部屋の片付けがあるからゼニス達に授業を受ける訳にもいかない

 

と、思ったが外があったな

折角外に出られるようになったんだから、探索に出てみるとしよう

そこまで離れたとこまで行くつもりもないが、この年で外出するんだったら親の許可ぐらい必要だろう

 

親は探したらすぐに見つかった、というより花壇の前で白昼堂々イチャついていたから嫌でも目についた

 

「お父様ー、お母様ーなにしてるんですか?」

 

わざと大きな声を出しながら近づいてやると、2人とも赤い顔をして離れてしまった

 

「お、おうルディなんの用だ?」

「外に遊びに行きたいので、許可をとろうかと思いまして」

「ん?別にそのくらい構わんぞ」

なぁと目線を横に向けるとゼニスも首を縦に振った

 

おや、随分あっさり

大丈夫かパウロ、このくらいの年の子供は何をしでかすかわかったんじゃないんだぞ?

 

「にしてもお前が外に行きたがるようになるとは、子どもの成長は早いもんだ」

「ええそうですよ、もうこんなに大きくなったんですから」

 

腕を広げて、プレゼントされた髪留めを強調するようにクルリと1回転

今日は昨日と違って凝った纏め方はしておらず、後ろで髪を束ねただけのポニーテールになっている

我ながらとても愛らしい見た目ではないだろうか

 

「最初は元気に育ってくれるのか心配してたが、その様子を見る限りは平気そうだな」

 

意外だな、別に何か病気に掛かった記憶もないし、動くのにも不自由してなかったが

 

「そうなんですか?」

「そうだぞ、お前生まれてから全然泣かなかったし、泣いてくれたと思ったらその1回きりだし、さらにそっから暫く元気が無くなるで、もしかしたら気付かなかっただけで何か病気にかかってるんじゃないかってゼニスとも心配してたんだぞ」

「お医者様にも見てもらったりもしたのだけど、特に何ともないって言われてたのよね」

 

そういやあの時なんか色々調べられてたような気がするな

あの時は健康診断か何かだと思ってたけど、そういうことだったのか

 

「なら別にいいじゃありませんか、本当に何も無かったんですし」

「まぁそれもそうなんだがなぁ」

「むぅ、まだ何かあるんですか」

「いや、何だお前ももう少しは淑女らしくしてくれると俺も安心できるんだけどな」

「えー、これでも不満なんですか」

 

後ろで纏められた髪をブルブルと振ってみる

 

「そういうとこなんだぞ、まったく……」

「まぁそのくらいはいいじゃない、ルディの自由にさせましょう」

「おお、お母様はわかってくれますか」

 

やはりこういう所は同性の方が賛同を得やすいのか

ふむ、ゼニスが賛同をしてくれている今ならパウロから剣術を教わるのに説得できるのではないか?

 

よし、やってみるか

 

「ほら、お母様だってこう言ってくれてますし

 いい加減私にも剣を教えてくれてもいいじゃないですか」

「うーん、でもなぁ、ゼニスとも約束してた訳だし……」

「ちょっと、前はまだ体が未熟だからと言ってましたよね!

 私だって5歳になったんです、もう始めても問題は無いと思います」

「いやでも、可愛いルディに怪我させる可能性あるのはなぁ」

 

先程のゼニスの言葉の手前、誤魔化しきれないのかいつもよりも手応えはあるが、まだ押し切れない

 

「そうやって誤魔化そうとしない!お母様からもお願いしますよ」

「そうねぇ、あなたルディもこんなに頼んでいるんだし、やってあげたらどうかしら

 もう十分なくらい魔術は頑張ったんだから私達もルディのワガママを聞いてあげてもいいと思うわ」

「おまえまで……、ううむ、まぁでもおまえもそう言うってんなら……」

 

パウロが俺に顔を向けた

瞬間、目を見開いて全力で念を送る

認めろー、認めろー……

 

すると眉間に皺を寄せていたパウロの顔がフッと和らいだ

 

「やるとするか」

「──っ!、今やるって言いましたよね!聞きましたよ、やっぱなしってのもなしですから!約束は破らないで下さいね!」

「だーっ、わかったわかった!やるって!ホラお前、外行きたかったんだろ、行って来い」

「ハーイ」

 

 

パウロによって向きを変えて背中を押された俺は上機嫌で外に飛び出していった

こうして、俺は見事パウロから剣の訓練の約束を取り付けるのに成功したのだった

 

 

 

 

─────────

 

 

 

 

「全く、約束にうるさくなって最近はますますおまえに似てきたな」

「あら、そう?」

「ああ、あの笑顔は間違いなくおまえ譲りのものだよ」

 

走って離れていく娘の背中を見送りながらゼニスと話し合っている

ロキシーが居なくなって授業の時間が空き、ルディの言った通り5歳になったから、そろそろ剣を教えてやろうと思ってはいたが

まさかあっちから説き伏されてしまうとは

 

ゼニスがルディに肯定的だとわかるな否や、急に切り出してきたことに面食らってしまった

話をそう強く断れないでいるといつもよりグイグイ押してきて、それでも足らないと見るとゼニスに援護まで頼んできた

あの年であそこまで説得が上手いとは、魔術でもそうだが我が娘はどこまで才能があるのだろうか、

あの年で様子を見ていけそうなタイミングで話し出すってのはそう出来やしない

俺が同じ位の頃はひたすら主張をすることしか考えてないスカート捲りをしていたようなクソガキだったというのに

何故俺の種からあんな娘が産まれたのだろうか不思議でならない

 

しかも魔術を身に着けたら次は剣術ときた

やる気があるのは結構なもんだが、もう少し落ち着いて欲しくはある

貴族の堅苦しさが嫌で飛び出した身で何を言うんだと思うが、今のルディは女の子というより男の子みたいな感じがする

髪こそ伸ばしてくれているが、相変わらずスカートはあまり履きたがらないし、既視感があるだらしない格好をしていたりもする

 

幼い頃は男の子女の子区別ない感じにはなるのは知っている、それでもあのくらいになればどっちかに寄る様になるもんなんだがもしかしたらずっと家にいたのが悪かったのかもしれない

普通の子ならもっと同世代の子と一緒にいたりするもんだがルディが動き回る範囲は

最大でも庭までで外に出たことがなかったし、家が一応は貴族なこともあって村の子どもが遊びに来るってこともなかった

 

外からも人は来たがそれも男性で身近な女性のゼニスとリーリャは家事で忙しくてあまりルディをかまってやれなかった

ロキシーにはルディに魔術を教えてくれたことに感謝しているが、男だったのには今となっては少し複雑な気分だ

俺も家にはずっといる訳ではないが、魔物を駆除する時期でもない限り毎日午後には家にいた

自慢ではないが家事というものが全く出来ない俺はゼニスに比べてルディの前で何かをし続けているというのは少なかったはずだ

 

赤ん坊の頃はゼニスとリーリャが面倒をみていたが、1人で行動できるようになったルディは基本1人でいたし、それから人と関わっている時間も相手は男であることが多いはず

多分それが悪かったんだろう

あいつが行動の参考にするのは女性じゃなくて男性になってしまっていたんだ

そう考えると急にルディに申し訳なくなってくる

家の育児方針のせいで魔術をあの年から学ばせることになって、他の子と遊ばせてやれなかった

天才と持て囃してそればかりに目を向けさせていた

 

考えれば考える程ルディには不自由にさせてきてしまっているのに気が付いた

思えばあいつがやたらと俺に剣を教わりたがっていたのは、他の分だけワガママを言いたかったからなんだろう

なら今それに縛られることもなくなってワガママを好きなだけ言えるようになったんだから、叶えてやらないといけないな

 

「さてと、やると言ったんだし準備するか」

「私にも何か手伝えることがあったら言ってちょうだい、あの子がワガママ言いづらかったのは私が原因だもの」

 

親として不甲斐ないものだが、せめて今からでも甘えていいんだとあいつが思ってくれるようにしよう

 

 

 

────────

 

 

 

「ふん、ふふーん♪」

 

家を出た俺は鼻歌混じりの軽い足取りで村の道を歩いていた

 

時間こそかかりはしたが、遂にパウロから剣の鍛錬をつけてもらうことに言質をとれた、今まで散々はぐらかされてきたがこれで近接戦闘になったとしてもある程度対処できるようになるだろう自分からやりたいという以外にも、ここまで断ってこられたことに何としてでも首を縦にふらせてやるという気持ちがあったのもあったからか気分がいい

 

鍛錬をつけてもらうしても時間は必要だろうが、それもちょうどロキシーの授業が無くなったことだし、パウロが空いている時間に午前か午後のどちらかでやってもらえればいいだろう

 

 

「こんにちはー」

「こんにちは、ええっと君は」

「ルーディア・グレイラットです、父がお世話になっています」

 

当然であるが道をゆく中で人とも合う

その度に挨拶をしていく、中には昨日ロキシーと一緒に挨拶した人や既に俺のことを知っている人もいた

皆に俺が挨拶をする、もしくは俺に気づくと挨拶してくれた、こんなにも晴れやかな気持ちで外を歩けるようになるなど、考えても見なかった

こうしていられているのも単にパウロやロキシーの人徳と、ロキシーが外に連れ出してくれたことにある

どれほど感謝しても足りるということはないだろうな

 

「グレイラットということは、パウロさんのとこの子だったか

 今日は1人でお出かけかい?」

「はい、村を探索しようと思いまして」

「そうかい」

パウロさんによろしくと見送られると笑顔で手を振り返す

 

さて、人との交流をするのはとても大事だ、何せ前世はそれを失敗したからああなったのだから

とはいえ、外に出たのはその為だけではない、村でどんなものを育ててるのか、ここがどんな気候なのか、どんな地理なのか調べられるものは沢山ある

植物事典もあるのだし野性で生えてる植物の中に食べれるもの、毒があるものとかを知っておいたほうがいいだろう

そうすれば万が一家から追い出されることになっても生きてはいけそうだからな

 

そうして、村を探索しているとあっという間に日が暮れてしまった、村の中は畑の面積の割には狭く午後の間だけでかなりの範囲をみることができた

この村では主に麦、野菜、そして香水の原料の花を育てているらしい

花はラベンダーによく似た色でバティルスの花と言うそうだ

聞けば食べられるそうなのだが、花について教えてくれた人は食べられるのか聞くと不思議そうな顔をしていた

花の綺麗さより味を気にする女子というのは我ながらどうかと思うが、それでも俺としてはなにより気になることなのだ

 

仕方ないね、元日本人だもの るーでぃあ

 

家に帰ると昨日ほどとはいかないが、普段よりちょっと豪華な料理が出てきた、話を聞くと水聖級になったことのお祝いらしい2そこまで裕福な訳ではないだろうに2日続けて祝ってもらうのは何だか申し訳ないが、好意でやってくれているのだから無碍にするのは失礼だろう

ここは素直に喜んでおこうじゃないか

 

翌日の朝、剣を教えてやるからと真面目な顔のパウロに庭に連れ出された

 

「約束守ってくれてよかったです」

「なぁルディ、おまえそう言うこというが、俺っておまえの前でなんか約束破ったことあったか?」

「いえ、なんとなくです」

「おまえなぁ……、いいか男というものは一度すると約束したものは必ず守り通さなければならんのだ」

「ふーん」

「その顔はなんだ、さては信じてないな?」

「いーえ、信じてますよ」

「違うな、お前の顔は信じていない顔だ、母さんもそんな顔をするからな」

 

パウロの顔は呆れたような顔になっていてあまり楽しそうではないが、少なくとも先程の空気よりはマシになった

なにやら気が張っているみたいだったから和ませてやろうと思ったんだが、これは成功でいいのか?

 

「約束の話はここまでにするとして……、とりあえずルディ、まずはこの剣を振ってみてくれ」

 

そういってパウロから渡されたのは子供用サイズの小さな木剣だった

木剣は作られてから時間が経っているみたいだが汚れやささくれ等は見当たらないので放置されていた訳ではないようだ

にしても随分備えがいいな昨日言ったばかりだぞ

 

「お前俺が教えてない間にも体鍛えたりしてただろ?教えるにしても今体がどうなってんのか知らないと教えるものも教えられん」

「わかりました、しかしどこからこれを?」

「あー、それなんだがな、実はお前が生まれる前に俺と母さんで1つ約束をしてたんだ」

「男の子に剣を、女の子には魔術を教えるってのですか?」

「なんだ知ってたのか、まぁそういうことだ

その剣は男の子が産まれた時に渡そうとしてたんだがお前が産まれたからな

今までずっと仕舞っていたんだが、お前が散々剣を教えろってうるさいし、ずっとそうしてやるのも剣に悪いからな

仕舞ってた間手入れは欠かして無かったつもりでいたが、どうだ持ってみてなんか違和感あるか?」

 

パウロに言われ抱えている状態から手に握り変えて、色々持ち方を変えてみるが何処にも違和感はない

 

「大丈夫そうです」

「そうか、じゃあ話を戻すが早速振ってみてくれ」

 

そういわれ、剣を握る手に力が入る

しっかりと前方を見据え剣を上段に構えると、渾身の力を込めて振り下ろした

 

「─っとと」

 

が、振り下ろす勢いに体のバランスを崩し、あわや転びそうになった

結構鍛えたつもりだったがまだまだ足りないようなのは残念である

 

「どうでしたか?」

「ま、初めてならこんなもんだろうな

 振るの自体は問題なさそうだが、振り方はまだまだだな」

 

やれやれとでも言いたげな様子のパウロはそう言うと腰に下げた剣を抜いて構えをとった

 

「いいか、もっと腰はしっかり落としてだな、手だけじゃなくて腕にも力を入れて、こう体全体を使って」

 

ブオンと風切り音と共に振られた剣の風圧が前髪を揺らした

 

「こんな感じだ」

 

体制を戻すとドヤ顔をしながらこちらに振り向いた

威厳のある父親の姿を見せられてご満悦なのだろう、実際あの姿自体はカッコいいがそんな風にしては折角のそんな気持ちも冷めてしまう

 

それと先程の説明の仕方を見るにパウロは理論派というより感覚派ならしい、ざっくりとしたことは教えて後は個人の感性でというやつだ

あまり教わるのに向いていないタイプではあるが、それでもさっきのみたいにやっているのを間近で見れるし、自身ではわからないとこを教えてもらうのには充分だろう

見て盗ませてもらうとしよう

 

「おお、凄いですね、流石お父様です」

「ふふん、そうだろう」

「それと私ではさっきのだけでは上手くわからないので、もう一回見せてもらえませんか?」

「おお、そうかそうか」

 

俺からのアンコールに上機嫌になったパウロからその後も流派を変えて色々動きを見せてもらった

型を変える度に褒めていたのだが、娘に褒められるのがそんなに嬉しいのか、練習の間は終始ニヤけた面のままだった

 

 

 

 

 

お昼になって本日の分の鍛錬はここで終わった

今日は丸一日パウロは家にいるみたいだが、“剣は1日にしてならず”ということで午前の間で終わらせたらしい

俺としてもまだ村の探索は終わってないし、魔術の練習もあるので午前で終わらせてくれるのは歓迎だ

 

ということで家を出たが、既に家の近辺は既に探索し尽くしているし、今日は少し遠出しようと思う

具体的には少し外れたところにある森のあたりに向かうつもりだ、森には魔物が出るらしいが今はそこまで魔物が活性化してるわけでもないので入口くらいまで入るくらいならば多分平気だろう、仮に出たとしても入口くらいなら逃げるのも容易いしな

 

そんなことを考えて足早に進んでいると小高い丘に差し掛かった、今まで進んできたなだらかな道と比べるとこの小さな体では越えるのに少しばかり労力がいりそうなくらいには大きな丘である

頂上を見るとこの辺りに生えている木の中では群を抜いて大きな木が一本だけ生えていた

あの高さからなら見渡せば村を一望できるだろうし、登りきったら調べるついでにあの木の陰で少し休憩するとしよう

 

そう考え木を視界に中央に捉え斜面を進んでいてもうすぐ頂上につくかという時のことだった

 

「魔族は村から出てけよー!」

 

進む先から聞き覚えのある嫌な声音が聞こえてきた

声を聞こえると反射的に足を止まってしまった、それと同時に脳裏に浮かぶのは前世で引きこもる原因となったあの光景

この声音は間違いなくその時と相手を馬鹿にして、虐げる時に出すものだ

そしてこれが聞こえるということはそれが向けられる対象、もといいじめられている奴がいるということになる

 

「あっちいけよなー!」

「おらおらー!」

 

意を決して進むと、そこでは3人の少年が離れた所で蹲っている少年目掛けて泥を投げつけていた

夢中になっているのだろう、俺に見られているのに気づくことなく全身の至る所を泥で汚しながらも投げるのをやめない

 

はー嫌だ嫌だ、ガキはどこでもこんな事するんだから

純粋なのは結構だけどね、少しでも自分達が悪いと思ったものには何やってもいいと思ってる

 

投げつけられている少年も蹲っていないでとっとと離れればいいのにとも思ったが、よく見てみるとただ蹲っている訳ではなく体の下にあるバスケットを泥に当たらないように体で覆って守っている

前世だったら露知らず、むしろ今生だから目の前で行われている行為を無視することなぞ出来やしない

ここで無視したら、きっとそのことはこれからの人生ずっと尾を引くことになるだろう

 

一旦虐められている子からは目を外し、虐めている奴らの方を向くその中でも一番背が高いリーダー格らしき奴に狙いを定める

本を持ち替え利き手を開ける、そして空いた手で弱めの『水弾』を作り始めると同時に走り始め、距離も充分詰まると急ブレーキをかけて、勢いそのまま振りかぶって全力でぶん投げる

 

「やめなさい!」

 

止まった時の音でやっと此方に気づいたらしい少年は体はそのままに顔だけをこちらに向けると、丁度その顔面に命中した

 

「ぶえっ!?」

「うわっ、ってなんだよお前!」

「邪魔する気かよ!」

「女がなんの用だよ!」

 

目論見通りこちらに狙いが移った

しかし、なんの様とはさっきの言葉が聞こえなかったんだろうか

 

「さっきから見てましたけど、3人そろって1人を虐めるとか恥ずかしくないんですか?」

「うるさいなぁ、お前には関係ないだろ」

「魔族の味方するならお前も同じ目にあうぞ!」

「そーだ!そーだ!」

「魔族かどうかは関係ありません、虐められているのは見逃せないだけです」

「ふざけんなよお前!女がカッコつけてんじゃねーよ!」

 

さっき水弾をぶつけた奴が顔を拭うと、泥玉をこちらに投げつけてきたが間一髪避けることが出来た、パウロとの特訓様々だ

しかし、なんと野蛮なことだろう、魔族と言うだけで虐めるに飽きたらず幼気な女子に泥を浴びせようとするとは

出かける前にもう少し女の子らしくと言われたばかりなのだ、泥汚れが付いたらまたいらん心配をさせてしまう

 

「あっぶないですね、汚れたらどうするつもりですか!」

「うるせーよ!」

 

そう言ってさっきの奴が泥玉をもう一発投げてきた

これは完全に頭に血が登っているな、説得はもうどうにもならなそうだ

そう思ったのも束の間避けられ続けて腹がたったのだろう聞き捨てならない言葉を吐いてきた

 

「避けんなよブス!」

「は?今なんと言いましたか?」

「ブスだよ!ブゥーース!」

 

ほほう、先程から言わせておけば良い気になりおって

これは少し灸をすえてやった方がいいだろう、さっきは加減して水だけだったがムカついたので泥をなげてやろう

 

「それが女の子にかける言葉ですか!」

「あっぶね!」

 

さっきと違いこちらが見えてる状態だからか泥は相手を掠めるだけで避けられてしまい、傍観していた奴の1人にあたった

 

「うわっ、てめぇ!」

「おい!お前らも投げろよ!」

 

飛んでくる泥が3倍になるものの相手も子供、狙いは甘く見えているなら避けるのにそこまで苦労はしないし、魔術でも叩き落とせる

そして泥玉を避けている内に次第に楽しくなってきた、投げられる玉をリズム良く避けて反撃するのがワンセットのゲームのような感じだ

 

「あぁもう、避けんなよ!」

「あいついつの間に泥を取ってんだ!?」

 

避け続けるだけでなく、悔しそうな声を聞いて更に気分がよくなってくる、ここらで1つ煽りでも入れてやるか

 

「男子が3人もいて女の子1人相手に1回も当てられないとか、情けないとは思わないんですかー?」

「うっせぇ喰らえ!」

「おっと、からのホイッ」

「うえっ!」

 

その後も飛んでくる泥を避けながら、次に何を言ってやろうか考えていた次の瞬間

 

「はーあ、つまんねーの!」

 

大きな声で吐き捨てる様にリーダー格の奴が言った

自分達が必死になって投げているのに、涼しい顔するどころか楽しそうに避ける俺に当てることは無理だと悟ったらしい

それならそうと素直にどっかに行けばいいのに、わざわざ離れた俺に聞こえるように言ったのは女子に負けたというのが認められないからだろう

 

「もう飽きたからあいつのことなんかほっといてあっちいこうぜ!」

「さんせー!」

「兄ちゃんに言いつけてやるからな!次あったら覚悟しろよ!」

 

そんな捨て台詞を残してガキ達は去っていった

 

どうだ!正義は必ず勝つのである

胸を張ってみるが、改めて行動を振り返るとこっちも別に大人の対応をしたわけでも無いので、ちょっと恥ずかしくなった

 

ガキ達が離れていくのを確認すると服を払って、森に向かうのを再開しようとすると、さっきまで泥を投げつけられていた少年がこっちを見ているのに気が付いた

狙いが俺に移った時点で離れていたものだと思っていたが、もしや何処か怪我していたのだろうか

だとしたら尚更奴らは許せん、それにするとは思ってなかったが彼に謝ってもいないじゃないか

 

「大丈夫?怪我してない?」

 

とりあえず様子を確認するため声をかけて顔を覗くとなんとびっくり、とんでもない美少年じゃありませんか

泥汚れと対照的な白い肌に整った鼻筋、子供らしい丸みを帯びながらも優美な目、自分の語彙力では到底表しきれない外見をしている

 

ふぅむ、男で生まれたならば俺もこんな見た目がよかったな、多分男で生まれていたらパウロ似になっていただろうし

いや別にパウロも悪い見た目な訳ではないが、何というかこう美男子というタイプの見た目では無いからな

 

「あ……えっと……うん、大丈夫」

 

顔をまじまじと見られているからか、オドオドとした喋り方をしている

身を縮こませて喋る様子は何とも庇護欲を誘う、元男の俺でさえこうなのだから真に女性だったらその破壊力はどうなるのやら

 

「その……、助けてくれてありがとう……じゃあもうボクは行くね」

「うん……ってちょっと待って!」

「え?」

 

答え終わるや否や泥も落とさず立ち去ろうとしたので、つい大きな声で呼び止めてしまった

 

「な、何……?」

「その泥落としていかないんですか?」

「これ?いや、いいよボクのことは気にしないで」

「いいえ、よくありません、ほら荷物置いて身を屈めて」

 

急いでいるのか何なのかは知らんが、その見た目のままいたら間違いなくまた虐められるだろう

それに嫉妬でしかないが折角の恵まれた見た目を捨てているのは腹が立ってしまう

 

少年はすんなり俺の言うことを聞き、奇跡的に無傷のバスケットを横に置くと膝をついて四つん這いになった

それを見ると俺も本を汚れないように乾いた土の上に置くと、少年の頭の上に水の塊をつくりそれを40℃ほどになる様に温めて少年にぶっ掛けた

最初こそ酷く驚いていたが、暴れないように抑えて掛け続けていると次第に慣れてきたのか落ち着きを取り戻した

 

泥を落とし終わるとドライヤー代わりの温風を当てて髪を乾かす

服の方を乾かすには出力が足りないが、そこはまぁ自然に任せるか最悪家で干してもらおう

 

「こんなところかな」

「ごめん、こんなことまでしてもらって」

 

泥も落としきり、フードも外れた状態になるとそこから現れたのはエルフらしきとがった耳と日に照らされて艶を放つエメラルドグリーンの髪の毛だった

それが見えた時少し身構えた、エメラルドグリーン、というより緑色の髪の色、それは師匠から教えてもらったスペルド族の特徴と一致していたからだ

とはいえここでビビって逃げ出すのはこの子に悪い、イジメっ子から助けられたと思えば今度はその人が逃げていってしまったら誰を信じれるのか分からなくなってしまう

それにさっきまでの様子は教えられた様な恐ろしい種族には到底見えないものだった

すこしの思案の後師匠が話してくれた特徴がもう一つあることを思い出した、それは額に赤い宝石のようなものが埋まっているというものだ

ならばそこを見てみればこの子が本当にスペルド族なのかも分かるだろう

 

「ちょっと失礼します」

 

おでこにかかった前髪をどけてよく見てみるが、そこには濡れてツヤツヤと光る白いおでこで赤い宝石らしきものはどこにもなかった

しかし綺麗にして改めて見てみると本当に美少年である

この年齢でこんな見た目をしているのだから、その親は一体どんなものなのか、興味が湧いてくる

 

「も、もう大丈夫?」

「あ、うんごめんね急に」

 

至近距離で見られたままで恥ずかしいのか少し顔を赤くしてそう言った、なんにせよこの子はスペルド族ではないそこがわかってホッとした

 

「無事でよかったけど、貴方もああいうのにはしっかり反撃しないと図に乗らせることになりますよ」

「無理だよ……」

「初めからそう弱気なのがよくないんです、意思だけでも出さないと」

「だ、だっていつもはもっとおっきな子もいて……」

 

なるほど、あいつらやたらでかい顔をしてたし、兄に言いつけるってのは普段から敵わないのにはそうしてたからってことか

虐めるやつはどこの世界だって同じことをするものだ

 

「でも貴方はスペルド族ではないんでしょ?」

「き、君は怖くないの?」

「師匠が魔族でしたからね、知識があるんですよ

 でも貴方の様なのは知らないですね、何という種族なんです?」

「わ、わからない……」

 

ふむ、耳を見るにエルフっぽくはあるが、確かエルフはミリス大陸にいるんだったか、それにエルフは基本金髪らしいしな

 

「お父さん、お母さんはどうなの?」

「お父さんは半分エルフで、お母さんはちょっとだけ獣族が混ざってるって……、でもお父さんもお母さんもボクとは髪の色が違う……」

 

見た目で虐められているというのに、その見た目が親と違うと言うのは本人にとってはさぞ苦しいことだろうになんとかしてやりたいが……

 

「2人とも優しい?」

「うん、でも怒ると怖い」

「そっか」

 

喋り方が少し柔らかくなった、どうやら愛されていない訳でもなさそうだ

少し安心すると少年が思い出したかの様に置いていたバスケット取ると立ち上がった

 

「心配してくれてありがとう……、じゃあボクは今度こそ行かないと」

「何処に行くの?」

「森にいるお父さんのとこ、お弁当届けに……」

「うーん、じゃあ私もついて行っていいかな?」

「え……な、なんで……?」

「1人でいたらあいつらが戻ってきたらまた虐められるでしょ」

「で、でも君も危ないよ」

「あいつらでも本当に女の子を攻撃はしないでしょう、もししてくるようなら親の出番ですよ」

「そ、そう……」

 

少年はやや釈然としない様子であったが、強く断われないようでこちらをチラチラと見ながらも森に向かって歩き始めたので、俺も本を取ると軽く払ってから後ろについて行った

しばらく歩いているとおずおずとでも言うのか姿勢を低くし、囁くような声で尋ねてきた

 

「な、なんでそんなにボクを守ってくれるの……?」

「なんでとも言われましても、人を助けるのは当たり前ですし、 一応貴族でもありますからね」

「で、でも君は女の子だし……」

「それこそそれを理由に逃げたら両親に怒られてしまいますよ」

 

まぁ実際のところ、貴族としてというよりは経験から俺自身が見逃せなかったからという方が大きいのだが、それを言われても余計に混乱させるだけだろう

あと、あのされるがままの姿を見たら目が離せなくもなるというものだ

それにしても女の子か、パウロも言っていたし基本あまり前に出ていくような対象ではないと言うことなのだろうか

 

「そういえば名前を聞いていませんでしたね、私はルーディア、ルーディア・グレイラットです」

「ボクはシ、シル…フ──」

 

名前のあとの方がモゴモゴしており上手く聞き取れなかったが何とかシルフとは聞き取れた

シルフ……いい名前じゃあないか、確か風の精霊の名前だったな、前にやってたゲームとかでも緑髪のエルフっぽい外見をしていたっけか、丁度その見た目とドンピシャだな

 

「シルフかぁ、うん、貴方によく似合ってるいい名前ですね」

 

褒めてやると頬を赤くしてコクンと頷いた

 

 

 

 

 

森に向かっている最中にあいつらが戻ってくることはなく、無事に森の入り口にある櫓で佇んでいるシルフの父親の下に辿り着いた

父親は率直に言ってイケメンであった、とがった耳に日に照る金髪、シャープな顔立ちをしていて細く見えるがしっかりとついている筋肉と、ハーフエルフらしく人間との良い所を併せ持っている

 

それまでは一緒に歩いていたシルフも父親の姿を見ると、表情を明るくし駆け寄っていって、父親の方もそれに気づくと優しい笑顔でそれを迎え入れた

 

「お父さん、これ、お弁当遅れてごめんなさい」

「ああ、いいんだよルフィそれよりも今日は虐められなかったかい?」

「それなら大丈夫助けてくれたから」

 

そういって俺の方に振り返った、ルフィというのは愛称なのだろう、その名を聞くとどこぞの腕の伸びる青年を思い出すが、彼はシルフと同じくらいの年で山賊にケンカを売っていたからな似ても似つかん

 

「始めまして、ルーディア・グレイラットです」

「おお、これはご丁寧に、グレイラットということはパウロさんのところの子かな?」

「はいそうです、お父様がお世話になっています」

「いやいや、こちらこそ息子をありがとう、申し遅れましたが私はロールズと言います、君のことはパウロさんからよく聞いているよ」

 

紹介を受けてロールズに向かって挨拶をする、最近は空いた時間でゼニスから礼儀作法とかについて教えてもらっている、パウロは渋っていたがゼニスは俺がしたいことならと快く教えてくれた

事実こういったことが起きたりもするのだから、その時に恥をかかないためにも知っておいて損はなかろう

 

「ルフィのことは気にしないでやってくれ、これは少し先祖返りしてしまっただけで悪いものではないんだ、よかったら仲良くしてあげてくれ」

「わかっていますよスペルド族とは特徴が合いませんでしたから、父子共々今後とも仲良くしていきましょう」

「父子共々か、その年でその言葉が出てくるとは、話に聞いていた通り優秀な子だ」

「お褒めに預かり恐縮です、ですが私もまだまだ未熟なものです今でこそこうですが、大きくなった時にどうなっているのかはわかりませんよ」

 

応対を続けているとロールズは苦笑いを浮かべ頭の後ろを掻きはじめた

 

「なるほど、パウロさんが言っていたのはこういうことか……」

「父がなにかいってたのですか?」

「君と話していると子供じゃなくて大人と話している気分になってくるんだそうだ」

「ふむ、でしたらもう少しワガママを増やしてみましょうかね」

 

ハハハと笑い合っているとふと後ろから服を引っ張られる感覚があり、そこを見ると不満そうな顔をしたシルフが服の裾を摘んでいた

しまった、久しぶりに話がわかる大人との会話を楽しんでいてすっかりほっといてしまった

 

「ごめんなさい、話もこの辺りで2人で遊んできますね」

「そうか、わかったよ、私のことは気にせず行ってきなさい

 それとくれぐれも森には入らないように」

 

元々は森を調べたかったから外出したのだが、今はそれよりも優先したいことが出来たからな別に構いはしない

おっと忘れるところだったパウロ達には伝えたのに、ロールズには伝えていなかった、報連相は欠かさないようにしないとな

 

「私達はここに来る前にあった丘の上に生えた大きな木の当たりで遊んでいますので、用がある時や遅くなっても帰らない時にはそこに来てください」

「あ……ああ、わかったよ」

 

もう伝えることも無くなったので、急かすシルフの言葉に誘われ2人一緒に先程までいた丘まで戻ってきた……が

 

「うーん、何して遊ぼうか……」

「わかんない……」

 

俺は外での人との遊び方を知らないのだ

俺も本当にガキの頃は他のやつと鬼ごっことかでもした気はするんだが何せ今回は2人きり、出来る遊びには限りがある

うんうん唸っていると、ふとシルフから声がかかった

 

「ね、ねぇ」

「どうかしたの?」

「えっとね。さっきのをまた見せてほしいなって……」

「さっきの?」

「ええっと、あのあったかいの水をバシャーってするやつ」

「ああ、あれね、わかった」

 

早速手を広げて水を集める、今回は人に当てないのでさっきのよりも大きく作れる、温度も自分に跳ねて熱くないくらいにすればいいだろう

そして出来たものをザバーっと落とすとシルフがキラキラした目で俺を見てきた

 

「ねぇねぇ、それってどうやってるの?」

「これ?これはね魔術を使ってるんだ」

「ボクにも使えるかな?」

「うーんどうだろう、多分練習すれば使えるのかな……」

「ならさ、ボクに教えてよ」

 

そうしてこの世界初めての友達が出来たその日にその友達と日が暮れるまで遊ぶついでに魔術の特訓をしたのだった

 

 

 

 

 

家に帰る頃にはもう完全に日も暮れ、周りも暗くなってしまっていた

単純な作業であろうに友達といるというだけでここまで時間感覚が狂うものなのだと、この年になって新たな発見である

 

家が見えてくるとそれだけでなく家の玄関でパウロが頬杖をつきながら座っているのが見えた

2回目とはいえ何せこの時間だからな、森に向かうとは伝えていたし、昨日は夕暮れくらいには帰ってきていたのだから心配くらいするものだろう

ならばここは元気な姿を見せてやった方がいいな

家までのあと少しの距離を思い切り走っていく、そのことに気づいたパウロが徐ろに立ち上がった

てっきり腕を広げて感激するかと思っていたんだが、予想に反して苦い顔で俺を迎えた

 

「お父様、ただいま帰りました!」

「お、おう遅かったな」

「ごめんなさい、友達と遊んでいたらこんな時間に……」

「そうか、友達が出来たのか……それはよかったな……」

 

ふむ、随分しょっぱい反応だな

言葉では喜んでいる風だが表情が明らかにおかしい、悲痛とか怒りとかじゃなくてなんて言うのか困っている感じだ

 

「あの……何かありましたか?」

 

そう言うと腹を決めたのか大きく呼吸をすると真剣な表情になって俺に問いかけてきた

 

「さっきにエトさんが息子のソマル坊を連れて家にきてな、すごい剣幕だったから何かと聞けばルディと喧嘩して殴られたって言うじゃないか」

 

ふむ、エトさんにソマル坊か、うーん記憶にあるようなないような、村での挨拶周りはまだ完全に出来ているとは言えないし、もしかしたらその人たちかもしれない

それに喧嘩となったらあのガキ共達か?でも殴ってなんかはいないんだよな

 

「すみません、その喧嘩ってなんですか?」

「その前にだお前、さっきの喧嘩の話は本当のことなのか」

「だからまずその喧嘩というのがわからないから聞いているんです」

「──それならどうやら1人でいたお前を遊びに誘おうとしたら、急に殴られたってことだ」

 

ううん、どうも話が噛み合わんな

俺に起きていることだから絶対的に俺の視点が正義なんだが、パウロとしては相手方の話が気になるらしい

 

「それで、どうなんだ」

「でしたらお父様、私はそもそもそんなことをしていません」

 

俺の言葉を聞いてパウロは俯いて鼻から息を吹くと改めて俺の方を見た

 

「──何があったんだ?」

 

そこからはあの丘で起きたことの全体を出来るだけ客観的に伝えた、若干煽ってしまったことも伝えた、それもこの出来事に繋がった可能性もあるからな

 

話を聞き終わるとパウロはため息をついて、申し訳無さそうに謝ってくれた、どうやらシルフのイジメについてロールズから既に話があったようでその事を話した時点でこちらの事情を察してくれたようだった

 

「なるほどな……そういうことか」

「信じてくれますか?」

「あぁ、ロールズからもそういう話は既に聞いているからな

 お前が嘘を言っているとも思わん、納得したよ」

 

まぁ俺の気持ちはともかく、どれだけ怪しくても相手方の話を聞くというのは人として大事なものだとは思う

ただもう少し親として子供を守っても欲しいんだがな

まぁもう気にはしていない、真相も判明したし話はここで終わりだ

 

「すまんなルディ、疑っちまって」

「いいですよ、人だったらそういうこともあります

 きっと私もそういう風に物事を1つの視点からしか見ずに早とちりをすることもあります、その時にはお父様が叱って止めてくださいね」

「あぁ……わかったよ、まぁお前がそうなる心配はなさそうなもんだがな……」

「でしたら、私の弟か妹にそれを伝えてくださいね」

「全く、そこまで言われたら俺はもう型無しだな……」

 

疑った負い目なのだろうか、何時になく弱気になっている

流石にちょっとやり過ぎてしまっただろうか、流石にこの空気が続くというのは余りよろしくない

話を別の話題にするとしよう

 

「そうですお父様、私まだおかえりって言われてませんよ」

「え、あ……ああ、そうだな、ルディおかえり」

「はい、あ、そうですシルフ何ですけどね実は魔術を教わりたいって言われちゃいまして、今後とも教えることになりそうなんですよ」

「おお、そうか、遂にお前にも友達が出来たのか、そりゃよかったな」

「そうなんですよ

  あ、そうです、折角なので今度はシルフを家に連れてきてもいいですか?」

「それはもちろんいいぞ、俺からもちゃんと話がしたいからな」

 

話していてパウロの雰囲気も和らいでくると、家の中からゼニスが俺達を呼ぶ声が聞こえたので2人で並んで入っていった

 

 

 

───────────

 

 

 

 

既に太陽も沈み、辺りもすっかり暗くなった頃にやっと娘が帰ってきた

俺の気持ちを知ってか知らずか満面の笑みで走ってくる、その様子を見れば今日という日があいつにとっていいものであったのは間違いなかったのだろうし、俺としても心配したぞと抱きしめてやりたかったが

さっき来たあのことについて聞くまでは我慢しなくてはならない

 

年頃の子供らしく上機嫌でいる娘にどうしてもそれを壊してしまうのが嫌でそっけない返事をしていると、俺の異変を感じ取ったのか

何かあったのかと聞いてきた、相変わらず人の様子を伺うのが得意なようだ、まぁこれは俺が分かり易すぎるのが問題なのかもしれないが

心配そうに見つめる我が子に何でもないと言いたくなってしまうがそれを飲み込んで、さっきやってきたエトの奥方が家に来た話をする

 

あと少しで夕暮れになるという時だったか、家の子はいるかと怒鳴り込んてきた

その剣幕からただごととは考えられず、ルーディアは今は居ないと伝えると、後ろに隠れるようにいた息子のソマルを見せてきた

ソマルの目尻には青痣があり、それはある程度剣士と冒険者をやってきて、人に出来る傷を知っている俺から見て転んだり、物にぶつかったりして出来るものではないのはすぐにわかった

 

話は聞けばソマル達がいつも仲良くしてる2人と遊んでいた所見覚えのない女の子がこっちを見ていたらしい

それを見て遊びたいのか近づいて聞こうとすると急に殴ってきてそのままどっかにいってしまったとのことだった

 

名前も聞かずに去っていったのになぜ家に来たのかと聞くと、そもそもの家が少なくそれで子供もすくないこの村では子供同士の交流はしやすく、殆どの子とは知り合いだということ

その子が来ていた服が自分達が着ているものよりいいもので目立ったことから、本を持っていた等確かに特徴を当てはめようとしたらうちの子しかいないだろうということはよくわかった

 

とはいえ疑問は残る、あいつが見ず知らずの人に攻撃するようなやつではないこと、そもそも初めて合う人もしくは知らない人にはまず自己紹介するあいつがそれをしていないことなど、何かルディにも事情があったのではというのもある、ソマル自身があまり話してくれないからこちらとしては想像を巡らせるしかないというのもある

 

だがソマルの顔には殴られて出来る青痣がはっきりとあるというのも事実だ、まぁ大方ソマル達がルーディアが遠慮してるのにしつこくして来たから反撃したらそれが顔に当たってしまったというところだろう、何せルディは美人だからな、そうもしたくなるだろう、もし本当にそうだったらこちらとしても謝って欲しいがそれは真相がわかってからだ

 

などと思っていたのだが、ルーディアはその事を尋ねられると首を傾げてしまった、本当なのかと聞いてもただ眉を潜めていてそもそもの話がわかっていないようなので、仕方が無いのでざっくりとした説明をしたが

それでも話すことはなく、あまつさえそもそもそんなことしてないといってきた、その要領を得ない態度にカッとなりそうになったがルディからも事情を聞くことを思いだし、気持ちを一旦落ち着けて何があったのかを聞いた

 

するとルーディアが話してくれた内容はさっき聞いたものとは大きく違うものだった、殴ってなんかおらず、水か泥を当てたのみで、それも当人達の喧嘩ではなくロールズの子が虐められていたのを助けるための行為だった

事情はあるとは思っていたのだが、まさかここまでの物だとは考えていなかった、家の娘が帰ってきた時の様子は気にしていなかったのではなく、はなから誇らしい行為をしてきたからのものだったのだ

 

全く……不甲斐ない父親だ

ショックを受けていると、娘がフォローをかけてくれた

これではどちらが大人かわかったものではない、折角昨日に頼られるようにしようと決めてこの始末だ

俺は本当にコイツの親としていられているのか心配になる

 

いや、何を弱気になっているんだ

こいつがどれだけしっかりしていようと俺の子なのだ、ならば親である俺が親なのを認めなくてどうするのだ

その心配は1人であるときにするべきだ

 

今は一先ず友達の話を嬉しそうにする娘の話を聞くとしよう

 

 

 

 

 

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