装備をととのえよう!
RAVEN小隊を連れてDUに帰る。適当な階をまるごとヒヨコ共に渡して、引っ越しをさせておく。
それにしても、キヴォトスの戦車ってのはすごいね……普通に道を走って良いのかい。
だがまあ、ヒヨコ共のおかげで車は増えたよ……出所は、考えないようにしよう。
落ち着いたら訓練だが……その前に制服を揃える必要があるね。
「そういうワケで、この制服をまずは20着。サイズは紙に書いたとおりだよ」
あたしはDUの制服専門店を尋ねた。ここの場所はモエに調べてもらったけどね。
さすがは未来の服……布の質が良い。
「これは……ハイランダーの制服ですか? このライトはずいぶんアンティークなようですが……」
「ああ、そのランタンは別口で用意するよ。こいつは『官憲の制服』外の遠い国の治安維持組織の服さね」
「……なるほど、わかりました。それであれば、ワッペンだけは別の物をご用意しましょうか?」
「ああそうだね、この名刺の連邦捜査部のマークで頼むよ」
「かしこまりました。少しお預かりします」
ロボットの店員がランタンだけ外して制服を店の奥にもっていく。
時間がかかりそうだ……暇だね。
「ねえ、お婆さん。このライト見せてもらって良いかな」
なんだか、これまた夜の職業みたいな格好した娘だねえ……まあ、いいさ。ファッションも事情も人それぞれさね。
「ああ、大したモンじゃない。好きにしな」
「ありがとう……へえ、今時珍しいオイルライター式……ものすごく頑丈だね。でも、これじゃ光量が少ないと思う」
夜の女みたいな子は丁寧にランタンを調べる。手つきが本当に丁寧だね。何か工作でも趣味なのかね。
まあ、こんな素材と制服ばかりの服屋に来るんだ。裁縫でもするのかもねえ。
「そうさね、古い物さ……どうせ、あいつらに買うならもうちょっと良い物をやるつもりさ」
実際腰のランタンは松明より暗いからね。これなら適当なライトとやらを買った方が良いだろ。
「そっか、ねえお婆さん。私ミレニアムサイエンススクールでエンジニア部をやってるの。ほら、生徒証、これだよ」
「ああ、間違いないねえ。へえ、若いのに技術者かい。丁度良かった。そろそろそういう職人を探そうと思ってたんだよ」
「なら、お婆さん。あたしなら同じデザインでもっと光るライト、作れるよ。どうかな」
この子が本当に技術者なら、まったくもって渡りに船だね。まあ……騙されたらその時さね。
「悪くないねえ。じゃあ、せっかくだから頼むよ。ああそうだ、あたしは連邦捜査部のアイリーンだ。あんたは?」
「猫塚ヒビキ。連邦捜査部ってことは……先生?」
「そんな大したもんじゃあないが、そうなってるね」
「そっか。じゃあ先生の買い物が終わったらまた呼んでね。この後時間があるならミレニアムについてきてくれるかな」
帰りが遅くなるとヒヨコ共が心配するね……電話だけしとこうかね。
「ああ、構わないよ。晩飯前までには帰りたいけどね。あいつらに飯を作ってやらなきゃいけないのさ……」
「4時くらいだよね? うん、間に合うと思う」
「じゃあ決まりだ」
そういうことになった。それにしても20着の制服がその場で受け取れるとは思わなかったよ。
宅配もできるようだけど、『懐』に入れてさっさとヒビキについていくことにした。
◇
ミレニアムってのはずいぶんハイカラな場所だねえ……この時代はここまで技術が発展するのかい……あたしゃついていけないよ。
「ふふ、先生おどろいてる……ミレニアムに初めて来た人はだいたいそうだよ。……はい、できた」
ヒビキが軽くランタンをつけて壁に向かって光を当ててみせる。
明るい室内だってのに光って見えるからこりゃ相当だね。
「いいじゃないか」
「オイルランタンなんて初めて触ったから良い経験になったよ。とりあえずLED充電式にして、ホログラム投影機能にブルートゥース……スピーカーもつけたよ」
「えらく高性能だねえ。けれど、できればヒヨコ共のにはただのライトだけにしといておくれ。予算に限りがあるのさ」
「うーん、予算は同じで良いよ。その代わり実験的な機能をつけさせてくれたらタダで良い……」
あの後、10人分のランタンを金を払うし後日で良いからと頼んだけど、どうも不安だよ。いや、絶対に大変な事になるね。
こういうときの技術者は面倒臭いんだよ。あたしゃ知ってるんだ。
しかし、悩ましいねえ……タダか……
「いや、すまないけど金を払わせておくれ」
「そっか、じゃあまあいいけど……そのうちね」
やれやれ、露骨にがっかりするじゃないかい……
「けれどね、あんたを優れた技術者と見込んで依頼がある……武器を注文したいのさ」
エンジニア部の工房。そのとてつもなく広い建物の中に、銃器がならべてある一角があった。
一目で手入れが行き届いているとわかる。
まあ、この子で無理なら技術者のツテをたよるのもアリだろう。
「それは、嬉しいな……どういうのがお好み?」
「見本があるからちょいといくつか出させて貰うよ」
「ああ、先生の『神秘』か……『神秘』って本当にあったんだね」
「まあそんなものさね」
まず出すのは『仕込み杖』。普段は洒落た硬いステッキだけど、ボタン一つで蛇腹剣、あるいはムチとして使用できる。
そして次にその原型の『獣肉断ち』。軽く実演してみせるとまあ目を輝かせて他の部員も寄ってきた。
「へえ、ガリアンソードか……漫画とかでよく見るけど、本物は初めて見るね。これほど完成度が高いとは……」
「すごいですね! こっちの大きな剣のほうが初期型で、こっちの杖のほうが後期型ですかね?」
「それで、先生どうする? どんな機能つけよっか」
喜んでくれたみたいでうれしいよ。きっとこの子たちなら喜ぶと思ったよ。
「そうだねえ、まずこのノコギリ刃はいらない。治安維持用の警棒が欲しいからね。そしてできれば、この杖のデザインでこっちの剣……獣肉断ちの素材を使って欲しいのさ。なんなら耐久性を上げるために仕掛けをなくしてただの無垢の鉄の杖でも構わないよ」
「なんだって!? この武器は仕掛けこそ本質じゃないのかい!? ただ強いだけの棍棒ならすぐにできる。けれど、私たちにこれを持ってきたのは仕掛けを理解できるからこそだろう!?」
押してくるじゃないかいウサギ娘が……けれど一理あるね。
「そうさね。仕掛け武器の仕掛けは敵の手に渡っても簡単に使いこなさせないためだ。強いだけの武器ならたしかに他を当たることも必要だろうさ。けれどね、この杖には足りない物がある」
「それがこの旧式の剣にはあると……?」
「ああ、それは重打さ。あえて重くすることで殴ったときに敵の体制を崩す力。怯ませる力。そういうのが必要なのさ。この杖じゃあキヴォトス人相手だと軽すぎるんだよ。それに、この剣の素材の方がずっと頑丈なのさ」
「なるほど、つまりこの剣……獣肉断ちと仕込み杖。その両方の良い所取りというわけか! これは新素材開発部にも声をかけないと……」
「うーん、それなら電撃を出せるようにしてスタンロッドにすれば、怯みがとれるかも……」
ああそういえば丁度良い教材があったねえ。『トニトルス』。
「今度は何だいこのマラカスみたいなメイスは!」
「まさにその電撃が出せる警棒さね。こっちでもあるんだろうが、こいつは参考になるだろう」
「バラしてみてもいいですか……?」
「いや、その前に試しに使ってみてくれ! いや! この際その3つの武器をとりあえず使ってみてくれ! 的なら今から出す!」
「ん……面白くなってきたね、先生」
工房のシャッターが開いてぞろぞろと人形のロボット……オートマトンだったかね。それと小型のドローンとやらが出てくる。
「さあ! それを実際に使ってるところを見せてくれ。コトリ、撮影の準備はいいかい?」
「ばっちりですよ。さあ、お願いします先生!」
「ああ、やるだけやってみるさ」
的は本当に的だったねえ……盾を構えちゃいるが、楽なもんだった。あっけないくらいさ。
「できるなら、このトニトルスの使い心地でそっちの獣肉断ちの耐久性でもかまわないよ。このトニトルスは怯みは取れるけど脆いのさね」
「なるほど……目標が見えてきたね。見た目は杖、耐久力と重量は剣、機能はトニ……トルニトトト……? まあいいやそのスタンロッド! 至高の電撃杖か……一週間待ってくれ。必ず満足してもらえるのを作ってみせるよ」
「くれぐれもデザインは杖のままで頼むよ。それから耐久性もね」
「もちろんさ! かっこよさは大事だからね! モチベーションに直結するよ」
「ああ、そういうことだよ。美学こそ人を人にとどめる縁なのさ……とりあえず、この50万円は前金さね。あとで追加の250万をなんとか用立てるよ……すまないね、本当はもっと出してやりたいんだが。ああそうだ、その素材は好きにしな。あんたがそれを再現して儲けようと自由さね」
それは血石で強化してないやつだからね……血の絡まない純粋なヤーナムの技術なら、この子達の手にあるべきだろう。
さて、また質屋通いと予算申請だねえ……
「よーしやるぞー!」
「ん……先生、ありがとね。面白い素材をくれて」
「ああ、その仕掛け武器ならくれてやるよ。好きにバラしな」
「それは本当かい。助かるよ、この武器の代金は料金から負けておくね」
「ああ」
1週間か……その間に皆を鍛えなきゃねえ。