ヤーナムから来たアイリーン先生   作:照喜名 是空

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RAVEN小隊パワーレベリング回

 DUに帰ると、アロナからレポートやオーパーツを消費してシッテムの箱で生徒達をレベルアップさせてはどうかと言われたよ。

 どうもね、こういう安易な強化は血の医療みたいで心配だけれど……

 ミヤコに聞いたら、オーパーツから神秘を吸収して力を得るのも、レポートを読んだりBDを見たりして学習するのもキヴォトスでは当たり前らしい。

 実際オーパーツそのものがコンビニで売られてるしね……

 

 それと、アロナからシッテムの箱の中で貰った青輝石とやらを人形ちゃんに見せたら驚かれたよ。

 これで血の意志の代わりにレベルアップをできるらしい。

 

「狩人狩り様。これは……この石は、遺志があります。血ではなく、若さの……私がそれを、あまねく遺志をあなたの、そして生徒の皆様の力といたしましょう」

「人形ちゃん、本当かい……? いや、疑っているわけじゃないさ。どれ、試しに私が使ってみるよ」

 

 ……交換レートがえげつないねえ。良い意味でだ。血の意志と比べものにならないほど効率が良いじゃないか。

 まあそれもそうさね。穢れた獣の死に際の遺志と、若者の青春のきらめき。価値は比べるべくもない。

 とりあえず、筋力と体力に振っておいたよ。レベルがあと10もあがるとはねえ……

 

「先生、大丈夫だったでしょう? シッテムの箱のレベルアップと合わせて、生徒さん達を育てましょう!」

「……二人とも、本当に、本当に安全なんだね?」

「もちろんです!」

「はい、この力はきっと生徒様たちのお体に合うでしょう」

 

 わかった! 決断するよ……必ず使うさ。けれどね、弱い内にしかできないことがある。

 

「先生、それは?」

「基礎訓練さね」

 

 ◇

 

 子ウサギ共に尋ねて、郊外の訓練場を借りた。ああまた出費だよ……

 とはいえ、後輩も最近は聖杯の遺跡に転がってる貴金属を送ってくれるからね……なんとかはなったよ。

 貴金属など、狩人には用無しのものなだけで、ヤーナムの遺跡にはかなり沢山落ちてるからね……棺の中とかに。

 

「さてヒヨコ共、遠足の目的地はここだ。待たせたね、今日から週末まであんたらを徹底的に鍛えるよ。厳しい訓練になる。けれど、終わったときあんたらは絶対に強くなってるはずだ」

「おーっ!」

「やってやる……あたいがんばる! やってやる!」

了解(おけぴ~)ッス。待望()ってましたッスよ」

 

 やる気は十分なようだね。場所が郊外の森の中の廃墟というのもテンションを上げる要因だろう。

 まあかつて駐車場だったらしきだだっ広い広場で集合してるわけだが。

 真新しいネイビーブルーの官憲の制服に、RAVEN小隊の黒ヘルメット。手には残念ながら鉄パイプだ。

 それでも、背中に新品の武器でテンションは上がりきっている。

 ……ここで冷や水をかける必要があるね。

 

「ならまず、後でどれだけつよくなったか比較するためにあたしと1対1で戦いな。武器は今持ってるのだけ。降参か気絶、RABBIT小隊のドクターストップで中止だ。治療の準備はしてあるから、遠慮なくやりな」

『ウオオーッ! やってやるぜ!』

 

 さすがに銃が良い物だと面倒だったねえ。けど全員1分以内で片付けたよ。

 あたしも限界(カンスト)まで鍛え直したからね……体力50を舐めるんじゃない。

 

「ふう、ふう……治療だよ。じっとしてな」

 

 『聖歌の鐘』を鳴らすと、青白い光が舞い、周囲の傷があっという間にふさがる。

 

心底驚愕(マジビックリ)だぜ……」

「あたい知ってるよ、外の技術ってやつだろ?」

「また戦えるぞーっ!」

 

 もちろんこれはヤーナムの秘儀だ。

 あそこで唯一、安全で役立つ神秘だろうさ。

 もちろん、モエやサキにも治療に当たって貰ってるし、ミヤコとミユは録画だ。

 何度も授業をするのは正直しんどいしね……

 

「先生すごいねー何そのマラカス」

「こっちじゃあスタンロッドだとさ。重さが丁度良いんだよ。怯ませられるし、振りも早い。欠点は脆いことさ」

「ふーん、くひひ……それでエンジニア部に行ってたんだ~改良しちゃうんでしょそれ。えげつないね~」

「良い武器を持つことは勝敗に直結するからね……まあ、まだあいつらには早いさね」

「ふ~ん」

 

 さて、今度は刃を取った『獣狩りの斧』を取り出す。まあ教材代わりにはなるさね……

 なお、これは+10強化で血晶もいいのをつけてるから、この状態でも攻撃力400くらいある。

 ヤーナム市民なら一発で死ぬね。初心者相手の教導といえばこれだろう。

 

「というわけで今の実力はわかっただろう。近接武器の大切さもね。だから、武器の振り方を練習するよ。まずは模範演舞からだ。子ウサギ共、ちゃんと撮っておいとくれ」

「はい、大丈夫です先生」

 

 いずれ支給される重打杖に見立てた鉄パイプをヒヨコ共が構える。

 

「まずはもっとも基本的な振り回し(R1)からだ。×(ばつ)の字を描くように右に左に振り回す。基本は二連。真似しな。よし、いいね。矢島、重心はもっと先に、羽のように軽く早くだ。良くなってるよ。白栗はもう少し強くやってもいい……まずは100回さね」

 

 この調子で振り回し、(R1)振り下ろし、(R2)なぎ払い、(ダッシュR1)突き(ダッシュR2)を教えていく。

 これはノコギリ鉈系のすべてに共通する振り方だ。まあそれぞれの武器で微妙にアレンジはあるが……これだけ覚えておけば問題ない。

 最初の狩人ゲールマンから、あるいはその遙か以前の直剣術から連綿と伝わる基本的な扱い方さね。

 そして、ヤーナムの狩人のみに伝わるステップもきちんと教えていく……

 

「驚いたよ。あんたら、案外やるもんだね。よくやったね、今日はカレーだよ」

「わーいっ!」

感謝(アザ)ッス……」

「あたいはもうへとへとだよ……」

 

 休憩と食事、休みを挟みながらヒヨコ共はなんと3日でこの狩人の基礎を完全に習得した。

 残り4日は完全に実戦訓練に当てる。

 刃を取った獣狩りの斧と獣狩りの散弾銃を使ってガスコインの真似事をする。

  ちなみに、あたしが使うのは刃のない獣狩りの斧だけど、あいつらに渡しているのはトニトルスの+10だ。普通に使えば普通にあたしでも死ぬんだよ。

 そういやあ、あの神父。なんだかんだで新人狩人をこうやってしごいてたっけね。

 

「無理だーっ! もう一戦だーっ!」

「鈍痛ェ……まだ余裕(イケ)るッスよ……!」

「なんでこのスタンロッドの方が強いのに負けるんだ……? あたいの動きのせいか……?」

 

 いいねえ。まだ折れない瞳だ。十分に休ませてひたすら戦っていけば獣になる前のガスコインくらいなら倒せる実力はつくはずだよ。

 

「迷いが多いのさ。一つ助言をくれてやるよ『恐ろしいならば、一歩前に出たまえ』前に避けるんだ。すれ違うようにね」

 

 うっかりあたしが死ぬ前にアロナのお嬢ちゃんにバリアをお願いしてるけどね。バリアを使わせられればあの子達の勝ちさね……

 

「狩人の戦い方は防御を捨ててる。こっちでいう回避タンクならぬ回避ストライカーさね。2つめの助言だ『殺される前に殺せ』」

 

 いいねえ。若いってのは……砂に水をやるみたいにあっというまに飲み込むじゃないかい……

 

「三つ目の助言さね。ターン制を理解しな。攻めるのは順番にやるんだ。相手が攻め、こっちが攻める。順番だ。けれど、こっちの手番を長く取り過ぎれば後で痛い目に合う。『欲張りすぎるな』」

 

 そして、とうとう使わされちまったね。アロナバリアを……不慣れな武器とはいえ、この狩人狩りアイリーンを倒したんだ。誇って良い。

 

「よくやったね。ヤーナムの狩人狩り講座初級編は卒業さね。基礎の最後にこの助言を贈るよ『不測の事態を予測しろ』相手にも奥の手があると思いな。さあ、基本講座の卒業祝いさね。ミレニアムで作って貰った『獣狩りの杖』を受け取りな」

 

 細やかな文様に彩られた銀色の杖は否が応にもヒヨコ共のテンションを上げた。

 夜中にこっそりシャーレビルに帰って受け取っておいたのさ。

 とりあえず全部+7までシャーレの工房で強化して、19%血晶をつけてやってる。

 あとは働き次第だねえ。

 

「これ、ものすごいぞーっ!?」

心底感謝(マジアザ)ッス……」

「あたい、本当にこれをもらっていいのかい?」

 

 あたしは笑顔でうなずく。

 

「洒落た杖だろ? そのデザインには意味があるのさ、それが美であれ正義であれ……人らしさを忘れるんじゃあないよ。お洒落をするのは人だけだからね……血に呑まれた獣になるなってことさ。最後の警句を教えるよ『知らぬ者よ。かねて血を畏れたまえ』」

 

 神妙になっちまったね……

 

「それを忘れない事が、これを受け取る資格さね。ああ、それとそこのボタンを押すと電撃が流れるから気をつけな。それは人を殺せる威力がある。『殺しの道具だからこそ、何か一つ笑える要素が要る』のさ。その力が何をもたらすか、よく忘れないためにね……」

 

 その後、シャーレに帰ったらメチャクチャレベルアップもした。

 画風が変わるほど強くなったねヒヨコ共……

 さぁて、力を与えた以上は使う場を与えてやらなきゃね……

 丁度、リンちゃんからの治安維持依頼が溜まってるんだ。

 

 思い切り暴れさせてもらおうか。

 

 一夜でDUシラトリ区の不良はヒヨコ共に屈した。

 まあ妥当だね……お披露目としては上々だろう。

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