ヤーナムから来たアイリーン先生   作:照喜名 是空

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DUヘルメット団征服完了

 

 私はレイ、鮫島レイだ。

 あの「ヘルメット狩りの夜」で負けて手下にされたヘルメット団の一人にすぎない。

 最初は『先生』を引き連れて『ヘルメット団を統一する。そして連邦生徒会の軍隊にする』なんて誰もが世迷い言だと思ってた。

 けれど、たった一日でシラトリ区を壊滅させてから流れはちょっと変わってきた。

 

 ちょっかい出したヤツは皆こてんぱんにされてヴァルキューレ送りになったし、ゆっくりとではあるけど、着実に勢力を伸ばしていく奴らにヘルメット団は大いに混乱していた。

 ゲヘナやブラックマーケットに逃げる者。ああ、正しいさ。

 混乱に乗じて他のヘルメット団を吸収するヤツ。悪くない選択だ。

 ただ怯える者たち。それも仕方ない。

 

 私もちょっとした派閥を率いていた。さらさらヘルメット団という30人くらいの小さなものだけど。

 気心知れたいい奴らだと思う。

 私は、あの時……あえて迎え撃った。

 

『リーダー、どうすんだよ!?』

『ただの不良、そうは生きられない時代か……いいじゃないか。面白い。迎え撃とうぜ。あたしらにやられるようなヤツならそれまでだっただけだ。けど、けどさ。本当にキヴォトス中のヘルメット団が一つになるなら……すごく面白くなりそうじゃないか。乗ろうぜ、この波に』

『軍隊は嫌だよぉ~。マジかよリーダー……』

『同じような事考えてる奴らに声をかけるぞ。それにな、ここで私が勝てば……一気に有名になる。それはそれで面白いだろう』

『かぁ~不良ってのはつらいねえ。まあ、やるだけやるしかってやつだな!』

 

 そうして、あの夜にはなんだかんだでDUの精鋭たちが集まっていた。

 逃げたいヤツは皆逃げたから。

 DU最大派閥めらめらヘルメット団総長『紅出セラ』

 

『強いヤツだけがテッペンを取る。良い時代が来たもんじゃないか。悪いがうちは小細工は苦手でね、正面からいかせてもらう! あんたらも好きにやりな』

 

 金髪パーマが赤い自転車用ヘルメットから覗くダブルガドリングの猪武者だった。

 かなり粘ったが、わずかに突出したところを分断されて3人がかりでやられた。

 

 同じく巨大派閥のエース、うろうろヘルメット団のポニテサブマシンガン『青蓮マキ』。

 足を折って再起不能って話だったが、カイザーにうまいこと話をつけてメカ義足で素早く立ち回った。

 

『良い空気だよね……ここが、この鉄火場が! 私たちの居場所だ! 青春だ!』

 

 向こうのリーダーらしき赤い鳥の模様が入ったヤツに同じくらいの高速移動をされて激闘の末に腹にいいパンチを貰って沈んだ。

 

 残りは弱小派閥と私たちだけ……

 

『お互い不器用な生き方だよな……こういうくだらない事しかできないバカだ。けれどだからこそ負けられないよなあ!』

 

 ライフルに近接用のハンドガンだけでよく頑張った方だと思うよ。

 大派閥2つが落ちて、普通に6人がかりくらいで掃討された。

 

 ◇

 

 それで、負けてさあどんな所につれてかれるのか、と思ったら普通に鍵を渡されてそこに行けと言われた。

 住所はなんか鍵に書いてあった。

 どうせタコ部屋だろ……と思ったら意外に綺麗な所だった。

 

「リーダー、これミレニアムのプレハブだ。スゲー居心地いいんだよ」

「プレハブなのか? これが? たしかにちょっと安っぽいタイルだなと思ったけど、アパートみたいだ」

 

 たしかになんか壁はちょっと薄そうだし、角張ってるけど……すごく清潔だ! 新品だこれ。

 

「人数分鍵貰ったけど、一人一部屋ってマジでいいのかな」

 

 サブリーダーがみんなに鍵を配る。普通のシリンダー錠だ。

 

「さすが連邦生徒会だ。金がある。開けてみよう」

「スッゲ! ベッドがちゃんとある! タイルカーペットだ! 金庫まで!? おいおい、共同だけどシャワーにトイレもちゃんとしたやつだ!」

 

 床はカーペットだしシャワーもかなり数が多い。交代で入れば余裕だろう。トイレも仮設だけど仮設に見えないやつだ。かなりしっかりしてる。

 食堂まであるのか……? 

 

「あっちに食堂があるそうだ。見てみよう」

「たぶん誰もいないだろリーダー」

「いや、良い香りがする」

 

 そういえばそろそろ世間的には朝ご飯か……いってみよう。

 

「よく来たな貴様ら! これより貴様らヒヨコ以下の殻付きの給餌係をする元SRTの川原ミキだ! へこたれていないようだな! いい根性だ飯を食え!!」

 

 なんか……特殊部隊らしき人が居た。声でっか。

 

「あっ、はい……なにこれリーダー」

「軍隊にするって言ってただろう。きっともう始まってるってことなんだろう。そうですよね? 川原サン」

 

 絶対この人も強いよ……まずヘイローがちゃんとしてるし、あの悪夢みたいな杖を持っているもの。

 

「貴様がその殻付き共のリーダーか! 少しは察しがいいようだ! 鍛えがいがあるな! その通りだ! 12時より貴様ら猿山のボス共には特別講習がある! 食って体を休めておけ!!」

「あっ、本当にもう始まってるんですね……」

 

 朝食は普通に目玉焼きとかトーストとか洋食でおいしかった。

 ご飯とスープいつでも無料というのは本当にありがたかったし、なんなら24時間無料でドリンクバーまでついてるのは大いに手下どもを安心させた。

 思ったよりいい所かも知れない。少なくとも、食いっぱぐれはないようだ。

 

 ◇

 

 訓練は普通に地獄だった。映画とかであるような軍隊のしごきだった。

 ただ映画と違ったのは基礎訓練が少なめというか、整列と行進、あと武器の基本的な振り方を習ったら後はひたすら……おお、もう……ひたすら実戦訓練だった。

 SRTにひたすらぶっとばされて治療されて、また再戦して、休んで、再戦して……

 ちょくちょくBDで基礎の動きを見て、また再戦して。

 三度の飯より喧嘩が好きな連中ですらもうしばらくはいいかな……というくらいは戦いに戦った。

 

 それから何日たったか……整列、行軍、素振り、組み手。それで一日が終わる日々。

 ようやっと教官を倒したと思ったら少しの休憩を挟んで別の教官が出てきてしばき回される。

 苦しい訓練だった。けれど、一人倒すごとに私たちの中で確実な成長と達成感が満たされていった。

 

 ちなみに私たち派閥のリーダー以外はそこまで過激じゃなく整列、行進、BDで素振りを学習って感じだったらしい。

 なお、騒いだり茶化したりした奴らは容赦なくボコボコにされるのは同じだった。

 

 やがて、私たちが当たり前に整列して私語なく行軍できるようになった頃……第一次訓練修了を告げられた。

 なんか……『先生』が鴉マスクにとんがり魔女帽子、羽マントに軍服みたいなフル装備で来てちょっとした『先生のお話』をしに来た。

 

「あんたたち、よくやったね。あんたたちは学ぶ姿勢と狩人の基礎を身につけた。ひとまず基本は修了だよ。あんたたちはもうただの不良じゃない。私たちの一員だ。これは新しい仲間にお祝いだよ」

 

 先生がなにやらタブレットを操作すると私たちの体に力がみなぎった。疲れが一気に吹き飛んで何だってできる気がする。

 これがレベルアップってヤツか……

 

「少しは力がついただろう? これから手柄を上げる度にあんたたちにはこのレベルアップとしかるべき報酬があるからね。とはいえ、働かざる者食うべからずだ。できることを少しづつでいいから働きな。頑張るんだよ」

 

 先生の話は案外短かった……実際の説明はSRTの人らがしてくれた。

 なんでも私たちは『廃墟でひたすらドローンと戦ってスクラップをミレニアムに売る仕事』か『料理や掃除、事務なんかの裏方仕事』か『物資運搬ドライバー』のどれかをするらしい。

 そして私たちのいる建物が『PMCミグラントDU支部第28駐屯地』というらしいのもこの時知ったし、実はシャーレとミグラント掛け持ち扱いになることも知った。

 マジかよ……とも思ったけど、そのうち『治安維持のためのパトロール』や『教官として他の元ヘルメットに狩りを教える』という任務も解禁され、そしてその時の日当はなんと一日二万円。そして訓練生ではなく今の新入生扱いになると週休二日に月2日の有給がつくと聞いて私たちのモチベは上がりに上がった。

 

 思ったよりこの生活悪くないかもしれない……

 今ではすっかり愛着の沸いた『獣狩りの杖』を眺めながら私は食堂でコーヒーを飲んだ。

 えっ、第二次講習は週一で勉強なの!?なんで!?あー……戦術のね。戦術をするから社会と理科の勉強もあるんだぁ……

 ううん、でも修了すればさらにレベルアップだし日当もちゃんと出るのか……やるか。勉強。

 ちなみに手下共も選択制で重機や戦車、ヘリの運転免許とかパソコン教室とかあるらしい。

 なんで軍がまっとうに勉強を教えているんだ。どうなってるんだキヴォトスは。

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