デート・ア・ガッチャード 〜CONNECT HEARTS〜 作:エルミン
書き直しを中断して、非公開を解除してから間が空いてしまいましたが更新を再開いたします。
第一話 氷の精霊とサボテン
五月上旬のある日、雨が振り続ける中で一人の女の子が傘もささず歩き続けていた。
最近良く訪れる神社の境内に入り、今日もそこで時間が過ぎるのを待とうとしたが・・・。
「サボ〜・・・」
「え・・・・・・?」
小さいながらも何かの声が聞こえ、周りを見渡すと木の陰からこちらを覗く何かが見えた。
それは、サボテンであった。植木鉢に入ったサボテンが動き、女の子の様子を見ていたのだ。
「サボー!」
サボテン・・・否、サボテンのケミーは女の子の下へ向かう。女の子も、自然とサボテンのケミーの元に向かい手に持つ。
「あなたも・・・ひとり・・・なの?」
「サボー・・・」
辿々しく語りかける女の子に、サボテンのケミーは寂しそうな声色で答えた。
女の子はその寂しげな声を聞いて・・・サボテンのケミーをそっと、優しく抱きしめた。
ーーーーーーーーーー
同時刻、来禅高校にて。
「シドー!クッキィというのを作ったぞ!」
「クッキーを?・・・あぁ、調理実習か」
「うむ、シドーの為に作ったのだ!」
十香の持っている箱の中には、手作りのクッキーが作られていた。
形は少々良くないが、十香は士道の事を想って作ったのだ。
絶世の美少女である十香が、士道の為を想い作ったという事に、士道はかなりドキッとしていた。
嬉しいに決まっている、食べない事はあり得ない。
「士道、私が作ったのも食べてほしい」
「当然、私のもあるよ♪」
十香の後ろから、折紙と栞が出て来て十香の隣に並ぶ。
二人も調理実習で作ったクッキーが入っている箱を持っている。十香と違い形が綺麗に整っている。
折紙と栞も、十香に匹敵するほどのかわいい美少女。
三人の美少女が一人の男の為にクッキーを作ってプレゼントする。
少し恥ずかしいが、嬉しい気持ちの方が大きい士道は、一人一人にお礼を言って受け取る。
十香達から受け取ったクッキーを食べる士道。
それぞれはちゃんと美味しく出来ていて、士道は三人のクッキーの出来の良さを誉め、少女達は喜んだ。
来禅高校の三大美少女(士道以外の男子陣命名)である三人の愛情を独り占めしている士道。
他の女子は、五河のどこがそんなに良いの?と疑問に思っており、男子は・・・。
「「「「「ウラヤマシイ、ネタマシイ・・・ウラヤマシイ、ネタマシイ・・・ウラヤマシイ、ネタマシイ・・・ウラヤマシイ、ネタマシイ・・・ウラヤマシイ、ネタマシイ・・・ウラヤマシイ、ネタマシイ・・・」」」」」
嫉妬に狂い、黒いオーラを纏って士道を睨んでいた。視線だけで人を殺せる勢いで。
その中には、士道の友である殿町 広人も含まれていた。
しかしその殺意の波動は、十香達三人の桃色オーラによって防がれ士道には全く届いていない。士道は十香達によって守られていた。
すると、美九からメールが届く。
『だーりん!今日、調理実習でクッキーを作ったので、放課後は一緒にお茶にしませんか?美味しい紅茶もありますよぉ』
(・・・・・・今日はクッキー尽くしだな)
士道は十香達に美九がお茶会をしたがっている事を話すと、皆が賛成したので美九に賛成の返事を送り、お茶会の知らせを琴里にも知らせた。
琴里もお茶会に賛成したため、開催は確定した。
ーーーーーーーーーー
放課後。士道は食材の買い出しの為にスーパーへ。女子達はお茶会準備のために一足先に五河家に集合している。
そんな士道だが、帰り道の途中で突然雨が降りだしたのだ。傘を持っていなかったので、手でガードしながら走る。
(最近の天気予報は外れてばかり・・・よく降るな最近)
士道がそんなことを思っていた時だった。
「受け取るといいワケだ、士道」
「うわっ!?」
すると、正面から声がかかり折りたたみ傘が投げられたので上手くキャッチする。
投げたのは、プレラーティだった。左手に持っている傘をさしながらのためか、カエルのヌイグルミはカバンにしまっているが顔だけ出ているのが見える。
「プ、プレラーティさん!?」
「ケミー探しの仕事中なワケだ。サンジェルマンとカリオストロは他の仕事で忙しいからな」
「そうですか・・あ、傘ありがとうございます」
「構わないワケだ」
士道が折りたたみ傘をさすと、プレラーティの空いている右手に持っているケミーライザーが、ケミーの反応を知らせる。
《ケミーヒット!プラントケミー!》
サーチカードにケミーの反応があった場所が表示されるが、その場所は二人がいる場所から近い神社境内であった。
「おや、近いな。士道、一緒に行くワケだ」
「は、はい!」
二人が神社境内に入ると、バシャッっと水しぶきが飛び散る音が聞こえ、そちらの方に視線を送る。
「・・・女の子?」
士道の目に写っていたのは、可愛いらしい意匠に身を包んだ小柄な少女だった。意匠の頭にはウサギの耳のようなのもついていた。
フードを深く被っているが、水色の長い髪と綺麗な瞳が見える。
そして、もう一つの大きな特徴は左手。
眼帯のようなものをつけたウサギのパペットを彼女は左手につけていた。
そして、女の子の周りをサボテンのケミーが楽しそうに飛び跳ねている。
少女は誰もいない神社で楽しそうに跳ねていた。この雨の中なのに傘をささずに遊んでいる。
「ふむ、あのケミーは”サボニードル”なワケだ。そしてあの少女は─」
「精霊、ですよね」
少女・・・精霊と一緒にいるケミーは、プラント属性レベル4・サボニードルと断定したプレラーティ。
すると、少女が水たまりを踏んだ時に泥に足を取られたのか盛大に転ぶ・・・前に士道は慌てて折りたたみ傘を投げ捨てて少女に駆け寄り、素早く抱き抱える。
「大丈夫か!?」
「サボー!」
士道が抱き抱えた少女が顔を上げる。そこで少女の顔が見えた。
ふわふわした青い髪に桜色の唇、透き通った蒼を思わせるような綺麗な瞳だ。
「・・・・・・!」
少女は士道に目を合わす。特に怪我をしている様子も無い。
「大丈夫みたいだな。ほら、立てるか?」
士道は優しく言い、そっと地に下ろす。
「は・・・い・・・・・・ありがとう、ございます・・・」
少女は細く小さく、しかしハッキリと感謝の言葉を言った。
「サボー!」
「えっと、サボニードルも大丈夫って聞いてるぞ」
「サボ・・・ニードル・・・?」
「このサボテンの名前だ。お前はこの子の友達か?」
「サボ!」
士道の問いに、サボニードルは頷く。
「そうか・・・俺の名前は─」
士道も自己紹介しようとしたその時、今度は・・・。
「いやあ!ゴメンねお兄さん、助かったよ」
「しゃっ、喋ったぁ!?」
少女の手に付いているパペットが喋り出した。少女とは違い、大きくハッキリとした声だった。
士道はパペットが喋った事に驚いた。少女ではなくパペットが士道に告げる。
「んじゃあお兄さん、バイバーイ!」
「え、あ、ちょっと君!?」
少女とパペットは、サボニードルを片手に抱きかかえて一緒に去って行く。
士道が少し遅れて少女の走っていった方向へ向かったが、少女の姿は無かった。
プレラーティの持つケミーライザーも、サボニードルの反応を捉えられていない。
「パペットが無いと喋れないってことは無いよな・・・」
「精霊とはあぁいうのもいるワケか、ホレ」
「あ、ありがとうございます」
士道はプレラーティから投げ捨てた傘を受け取る。あの少女に少し思うことがあったが、いない以上聞くことも出来ない。
そして一旦家に帰る事に。士道の家の前まで一緒に歩き、玄関前で傘を返した。
「あの、これから十香達とクッキーを食べながらお茶会する予定なんですが、よかったらプレラーティさんも一緒にどうですか?」
「ほぉ、それは魅力的なお誘いであるワケだが・・・一緒にいる女の数を増やしたいワケだな、女たらしめ」
「えっ!?いや、そういうつもりじゃ・・・!」
慌てる士道に、プレラーティはクスクスと笑う。
「冗談だよ、お前は面白い奴だ・・・誘いは魅力的だが遠慮しておくワケだ。
サボニードルが精霊と一緒にいる事について、サンジェルマン達に報告しておかないといけないからな」
「そうですか・・・その事は俺も琴里に報告しておきます」
「あぁ、私達もサポートするから遠慮なく頼って良いワケだ」
「わかりました、その時はお願いします」
「あぁ・・・ではな」
プレラーティが帰っていくのを確認した士道は、自身も家に入る。
士道が家に入ると既に家の中には十香、折紙、琴里(黒リボン)、美九、栞と女子陣が全員揃ってお茶会の準備を終えていた。
全員、学校から直接五河家に寄ったため制服姿だ。
ちなみに、琴里は令音にも声をかけたが、ラタトスクでの仕事が忙しいため、皆より遅れて合流する事になるそうだ。
「ただいま、遅くなってごめん」
「おぉ、お帰りなさいだシドー!」
「じゃあ、士道が来たから今からお湯を沸かすね」
「茶葉は皆さんで決めましたよー」
「余った分の茶葉は譲ってくれるそうよ。太っ腹ね」
「えっへん。家はお金持ちですし、アイドル業で稼いでますからねー」
「シドーの席は、私と栞の間だぞ!」
「ジャンケンで決めたんだよ」
「・・・あそこでチョキを出さなかった自分を恨む」
士道は一旦自室に戻り通学用の鞄を置いてから、十香がポンポンと叩く椅子に座った。
すると、チャイムが鳴ったので士道が出ると、令音が立っていた。
「・・・仕事が終わったから来たよ。私が加わってもいいかな?」
「もちろんですよ。さぁ、どうぞ」
士道は快く迎え入れた。紅茶も用意して、これで誘った人数は全員揃ったので、お茶会を開始する。
始まったお茶会は、個人が作ったクッキーの感想を言い合ったり、紅茶を楽しんだり、美九がお茶を楽しむ女子を見てニコニコしていたり。
それからしばらくして、美九が帰る時間になったので先に帰宅していく。
「だーりん、皆さん、またお茶会しましょうねー!」
美九が帰宅してから残った皆にプレラーティと一緒になったところで神社にて精霊とケミー・・・サボニードルに出会った事を話した。
ちなみに、美九がいる時に話さなかったのは美九はケミーや仮面ライダーの事は知っているが、精霊の事は秘密にしているためである。
折紙と栞は錬金連合とラタトスク機関が同盟を組んだ際に、精霊やラタトスク機関について説明を受けていた。
「・・・という事があったんだけどさ。あの女の子はやっぱり・・・」
「精霊ね」
琴里は断言した。
「士道の話と特徴が一致する精霊がいるの。その精霊は"ハーミット"よ」
「ハーミット?」
「極めて大人しい性格の子よ。ASTに攻撃されても一切反撃せず常に逃げ回っているみたい」
「・・・現界数こそ多いものの危険度は比較的小さい。だが精霊である以上は排除しないといけない、と言われている」
琴里と令音の話を聞いて、士道は険しい表情になる。
「・・・十香の時と同じじゃねぇか。空間震を自分の意思で起こしている訳でもない。なのに人間の都合で勝手に悪者扱いされて、攻撃されている・・・」
「シドー・・・・・・私はシドーに会えて、助けてもらえて、本当に嬉しく思う。だからシドー、そのハーミットという精霊も・・・」
「もちろんだ、必ず助ける」
十香の言葉に頷く士道。そんな士道を少女達は嬉しく、また好ましく思っていた。
「丁度良いから聞こうと思う。琴里、令音さん。ラタトスク機関について、詳しく教えて欲しい」
この問いに皆が驚いたが、同時に納得した。
士道はラタトスクの他にも、なぜ琴里が秘密結社の司令を務めているのかが気になっていたのだ。
士道の問いに琴里は頷いてから、紅茶を一口飲んで、喉を潤してから話始めた。
「わかった、話すわね。ラタトスク機関は簡単に言えば一種の保護団体みたいなもの。秘密結社だから世間には公表されていないけど」
「保護団体なのに秘密結社?」
「・・・十香のような"精霊"という存在自体が極秘事項だからね。
それ故にそれを保護し、一般の生活を送らせるということが存在理由なら、尚のこと世間に知れた企業では色々と不味いんだ」
「成る程・・・。それで、琴里はいつから司令官に?」
「私がラタトスク機関に加入したのは、五年前。そこからの五年間は研修みたいなものだったから司令官になったのは最近なの。
五年前のことは私も記憶がほとんど無いけど、私がラタトスク機関を知ったのも、同じく五年前」
五年前の事については、士道も琴里も記憶がハッキリしないのだ。
「俺は、いつ精霊の霊力を封印する力を身につけた?」
「士道はキスをすることで精霊の霊力を封印する力がある。
この事は士道を保護した時に観測機で検査をしてわかった事。でも、どうして士道にそんな力があるのかはわからないの」
「そっか・・・ラタトスクでもわからないか」
「えぇ、ごめんなさい。今後も調査は継続するわ、協力してもらえる?」
「OKだ、わからないままであるよりはマシだ」
「・・・さて、話はこれで終わりかな?」
「今のところは。今後わからない事があったら、その時に聞きます」
「・・・わかった、その時は遠慮なく聞いてくれ」
そして、琴里は十香達にラタトスクの事を口外しないように念を押して、ラタトスクについての説明は終わった。
士道は心の中で今日出会った精霊、ハーミットについて考えていた。
次回予告
士道は”ハーミット”とサボニードルに接触しようとするが、同じく両者を狙う新パヴァリアのマルガムと対峙する。
【第二話 グレイトなトンボ】