D’s——聖なる歯車   作:グレン×グレン

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 はいどうもー! 結局心療内科の空きが合わなかったので、いつも通りの診断日に相談しようと思っているグレン×グレンです!

 う~ん。次はもうちょっと早い時期取っておくぐらいでいいだろうか。そんなことを思ってしまう今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?

 それはそれとして、今日も投稿します!!


第四話 無償の奉仕を当然と思ってはならない

—月宮光希—

 

 

 

 

 

 

 

 

 吸血鬼。異形関係ではメジャーな存在で、当然実在する異形だ。

 

 

 悪魔なんか目じゃないレベルで貴族主義の純血主義。排他的かつ鎖国的で、追放されたはぐれ吸血鬼が下りてきた場合、並のはぐれ悪魔が目じゃない規模の騒ぎを起こすなんてざらじゃない。

 

 そんな業界でハーフが生まれれば、例え実の子供だろうと軽く扱うのは当然想定できる。

 

 そんな冷遇を約束されたようなギャスパー・ヴラディは、更についてないことに神器を宿していた。

 

 停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)。視界に入ったものを任意で停止させる神器。この子はこれを持っていたうえ、その制御が困難だった。

 

 神の子を見張る者なら、封印用の道具なりある程度の制御器具なり用意できただろう。だが吸血鬼は鎖国的で排他的だから、堕天使と交流なんて一切持ってない。

 

 そしてこの子は冷遇されたうえで追放され、ヴァンパイアハンターに致命傷を負わされたところをリアスのお嬢に助けられて眷属になった。

 

 恐るべきはそのポテンシャルの高さだろう。準神滅具一歩手前レベルだろう神器を持ち、高位の吸血鬼の血筋を持つ。加えて魔法の心得なども多く、才覚だけなら神滅具保有者とはいえそれだけのイッセーに準じる。少なくとも、私が逆立ちしても追いつけない才能の塊だ。

 

 その証拠に、彼の転生には変異の駒が使われている。

 

 悪魔の駒においてたまにある、ランダム発生する上位モデル。普通は平等性にかけるとして廃止されてもいいけど、契約で「人は平等でない」を専用機材で測定できる悪魔社会では一興としてそのまま採用されているらしい。

 

 ……だが、色々な来歴が集まって引き籠りになっている。

 

 かといって、リアス・グレモリー眷属として封印も解除された以上、今後も引き籠りのままではいられないだろう。

 

 と、いうわけで少しずつならす方向にした。

 

「大丈夫、人のいないところまで来たからね? とりあえず座ろうか?」

 

「は、はい~。その、怖くないですか?」

 

 と、光也に背負われたギャスパーは恐る恐る訪ねている。

 

 色々考えた結果、私の「とりあえず目隠しをして外に出るという点から始めつつ、直接目に映らない位置でカウンセリングやセラピストを頼む」作戦をとることが決定。

 

 まぁそれはそうなのよ。そもそもこのレベルのトラウマを、専門知識がない手合いに解決しろというほうが無理難題。

 

 餅は餅屋。専門分野は専門家を呼ぶ。それが人間社会発展の要因の一つ。

 

 異形についてそれなりの知識や経験があるうえで、セラピストやカウンセラーをやっている人を探し、まず相談する。専門的事業の悩みは専門家に頼るのがベターというものだわ。

 

 とはいえ、其れだけというのもあれなので、光也の発案で目隠しによる外出慣れというサブプランも出てきた。

 

 視界に移ったものを停止させるのなら、そもそも目で物を見ない状態にすればいい。単純だけど最適な対処法ね。

 

「じゃ、とりあえず人がいない方を向けて外すからね? 目を開けても大丈夫」

 

 そうなだめながら、光也がギャスパーにつけたアイマスクを外す。

 

「……うぅ……日光がまぶしぃ……」

 

 ま、多分数年ぶりレベルの外だからこれはいいとして。

 

 デイライトウォーカーでハーフだから、日光を浴びても問題はさほどないのはいいことだわ。

 

「とりあえず、今日は日向ぼっこになれるところから始めようか。人払いはしているから、来たとしても関係者だし大丈夫だよ?」

 

「は、はい! ありがとうございますぅ~」

 

 ……創造系の準神滅具による防護系魔道具ごり押しで停止を防げるから、割と懐かれているわね。

 

 こりゃ、勝手に止めてしまうのが相当トラウマになってるわね。ま、それが原因で色々と酷い目にあっているんだから当然か。

 

「とりあえず小猫はニンニクしまう。あとで鶏肉買ってアヒージョ作ってあげるから」

 

「……はい」

 

 すっごく躊躇した小猫を止めつつ、私はどうしたもんかと考える。

 

 やっぱりカウンセラーかセラピスト待ちよね。これ、PTSDとかそういう類だから素人でどうにかできるとは思えないし。

 

「……うぅ。同じ僧侶なのに目を合わせてももらえません」

 

「頑張れアーシア。大丈夫、アーシアの優しさなら分かってくれるさ」

 

「あ、兵藤? そういえばお前のところで眷属が一人解禁されたって聞いたんだけどよ」

 

 アーシアを慰めているイッセーを見つけて匙まで来たけど、どうしたものかしらね。

 

 そう思った時、視界に面倒なのが映った。

 

 一回目を疑って、目元をもんで確認。

 

 あ、やっぱり。

 

「何やってるんですか総督」

 

「あ、ばらすんじゃねえよ! 驚かせたかったのに!」

 

 そういうボケいらないから!

 

「……総督? 月宮さんが総督って……堕天使総督!?」

 

「やべ、マジでアザゼルじゃねえか!? 何しにきやがった!?」

 

 ああもう。気づいたみんなが警戒態勢だし。

 

「はいはいストップストップ! この人悪戯好きなだけでテロリストじゃないから、流石に戦闘はないからストップ!」

 

「お前、俺の扱い悪くねえか?」

 

 落ち着かせたのになんてことを言うのかしらね、この総督は。

 

 と、いうかね?

 

「「お前男関連でトラウマあるなら、男の気持ちを実感すりゃいいんじゃね」なんて適当100%で作った性別変換光線銃なんて向けられたら、適当に扱いたくもなりますよ」

 

 別の意味でトラウマになりそうになったって―の。

 

 いやホント、このトラブルメーカーは本当に。

 

 黙って駒王町に入ってイッセーにちょっかいかけてたと思ったら、今度は堂々と駒王学園?

 

 ヴァーリの育ての親って話だけど、嫌なところでそっくりなのやめてほしいんですけど。

 

 ま、それはともかく。

 

「まったく。変なちょっかいを駆けるなら迷惑料ぐらい払ってください。具体的にはこの子にアドバイスとか不思議道具とか」

 

 ちょうどいいからギャスパーにアドバイスでも向けてやるべきね。

 

「ひぃいいいいい!? 待ってくださいぃいいいいいい!?」

 

「大丈夫大丈夫。マッドだけどダークじゃないから。イッセーに対しても自発的にぼったくられてくれるぐらいには払いもいいから」

 

「……あ~。確かにめっちゃ高かったよなぁ、あの報酬」

 

 イッセーも納得しているから、とりあえず震えるギャスパーをそれとなく抱えて総督に見せる。

 

 そして総督も、さらりとギャスパーの方を見た。

 

「あ~。停止世界の邪眼か。制御できてないのに補正具無したぁ大変だな。技術が遅れてるとこういう時困るよなぁ」

 

 ほら、こういう時頼りになる。

 

 一発で神器まで見抜いてくれるから頼れるわね。流石専門家。

 

 そして神の子を見張る者なら補正具は簡単にできると。流石研究の第一人者。

 

 なら、和平が正式に結ばれたらせびった方がいいかしら。私とお嬢がせびれば、コネで優先供給ぐらいできるかもしれないわね。

 

 そう思ってると、総督は匙の方を向いてるわね。

 

 そんなに興味がわく神器でも持っているのかと思ったけど、そうでもないらしい。

 

「おい、そこの悪魔くん。お前さんの黒い龍脈(アブソーション・ライン)をこいつに繋げりゃ、力を吸い取れる。それで邪眼の方も少しは制御できるようになるだろうさ」

 

 あら、そんな便利なのがあったの。

 

「え、そんなことできんの!?」

 

「……は~。最近の神器保有者は、もうちょっと何ができるのかを探ろうとしろよな」

 

 あらあら。ため息までつくとは、総督的には宝の持ち腐れみたいね。

 

「神器をあまり舐めんじゃねえぞ? 例えば光希の贖罪の守護戦士は、出力そのものは低い。それを光希は自分で色々試したり俺らに調べさせた結果、聖剣の出力を神器に流すことで底上げするって真似ができるようになってんだ」

 

「すいません総督。いちいち言わなくていいです」

 

 ちょっと恥ずかしくなるんで文句を言うけど、総督は華麗にスルー。

 

「それにそっちの光希の幼馴染もだな。創造系神器は手札の数が本質的に売りだが、コカビエルとの戦いじゃぁ物量戦術による圧殺で競り合った。こっちは裏技に近いが、色々と自分なりに探ったからこその手札って奴だ」

 

「分かってるじゃないですか総督!」

 

「光希? たぶん手のひらグルんグルン回してるよね?」

 

 いいじゃない光也。事実だし。

 

 となると、やっぱり色々と調べてもらった方がいいかも―

 

「……ぁ~……」

 

 ―ん?

 

「見つけましたお姉さまぁ~っ!!」

 

「ぐはぁ!?」

 

 なんか不意打ち!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—月崎光也—

 

 

 

 

 

 

 殺気がないのでスルーしたけど、光希を思うのなら止めた方がよかったのかな?

 

 そう思いながら、光希に抱き着きという名のタックルをかました子に、俺は一応言っておこうと判断した。

 

「みぞおちに入ったから謝った方がいいよ?」

 

「え、そうなの!? 教えてくれてありがとうございます、そしてごめんなさいお姉様!」

 

「……やってくれるわね、才華……っ」

 

 ため息をつきながら光希は起き上がると、そのままタックルをかました子のこめかみをぐりぐりと。

 

「精神年齢が低すぎなのよアンタはも~」

 

「きゃ~お姉さまでも折檻はいや~ん」

 

 年頃のじゃれあいみたいなので、スルーしてもいいんだろうか。

 

 えっと、濃いめの茶髪をポニーテールにしている、地毛で金色のメッシュが入った特殊な女の子だ。

 

 おそらく堕天使だと思うけど、どういうこと何だか。

 

「あらあら。才華はこういう時でも元気いっぱいですね」

 

 と、後ろからおっとりと追いかけてきたのは、薄紫のウェーブヘアーなボブカットのお姉さん。

 

 年は俺より低い感じだけど、雰囲気が大人びているな。

 

「だってさぁ、エルカ。お姉様が仕事だらけで最近会えてないもん。甘えたいよ、本気でさぁ」

 

 そう返す才華と呼ばれた女の子は、そのうえできょろきょろと俺達を見る。

 

 それはともかく、一体誰なのやら。

 

 いや、ちょっと待とう。

 

 髪の感じは、すっごい似ている人が近くにいた。

 

 というか、アザゼルと似た感じの髪だ。

 

 ……まさかね。そんなピンポイントな展開はないだろう。

 

「おいおい。それならご先祖様に甘えてくれよ、子孫君」

 

 ピンポイントだった!

 

「うっかりミスで生まれた子孫としては、お姉さまの方が甘えたいです!」

 

 そして何やってんのこの堕天使!

 

 思わぬ発言の連続に、どこから突っ込んだらいいのかさっぱりだ。

 

 ただ、この空気に思うところがあったのかアザゼルの方が軽くため息をついた。

 

「百年ぐらい前に日本の遊女と遊んだことがあったんだがよ? 見受け元まで見繕ってやったらよっぽど感激してたのか、奇跡的にできてた子供を産んで育てたみたいでなぁ。少し前の部下に子孫がいた騒動で調べたら、マジでいてビビったもんだぜ」

 

「懐かしいです。当時ストレスが溜まっていた私が保護の任務に参加した時、堕天使嫌いの勢力が討伐作戦を決行して死にかけました。光希がいなければ増援が間に合ってませんでしたね」

 

「エルカも含めて命の恩人です! 倒された聖剣使いの聖剣を握って孤軍奮闘、その決意で神器に選ばれた姿はもう感謝感激雨あられ!!」

 

 ……なるほど。

 

 三者三葉の説明に、俺は大体を理解した。

 

 と、いうかだ。

 

「光希さん、正義感強かったんですね!」

 

「それはそうだよ。俺が幼い頃虐められた時、飛び蹴りかまして助けてくれたしね」

 

 イッセー君は理解が早くて助かるね。

 

「……あ~……。あの時は、その頃を思い出したのもあって半分ヤケでやっただけだし。自己満足100%だから、あまり感謝されても、そのね?」

 

 光希は顔真っ赤でそう反論するけど、その後ろに回り込んだアザゼルがでっかい×マークを作っている。

 

「はい嘘で~す! 贖罪の守護戦士(リグレット・レスキュー)は強い贖罪意識を持つ者を選んで宿主を渡り歩く神器だからな。それだけじゃ宿主には選ばれねえよ」

 

 専門知識によって逃げ道を塞がれ、光希は思いっきり天を仰いで沈黙するしかなかった。

 

 そっか。そっかぁ。

 

「……こういう言い方はアレだけど、助けられてくれてありがとう」

 

 俺は心からこみ上げるものがあって、才華と呼ばれた子にそう告げる。

 

 困惑されるし、助けられてくれたことを感謝するのもあれだろう。受け取り方によっては「殺されるような目にあってくれたことを感謝している」みたいだしね。いい気分になることでもない。

 

 ただ、心からの本音だ。ちょっと目頭が熱くなるぐらいには、感謝している。

 

「君達を助けられたことは、きっと光希にとっていい影響を与えてくれたんだと思う。大事な幼馴染にいい影響を与えてくれたことを、心から感謝させてほしい」

 

 人は、過去の経験が人格に与える影響を無視できない存在だ。

 

 悪い経験ばかりすると悪い方向に転がりやすくなる。いい方向に作用する経験も、忘れてしまえば迷走してしまう。

 

 なら、いい経験を積むことが、人生をいい方向に進めようとするきっかけになることは十分にある。

 

 詳しくは知らない。だけど、この経験はきっと光希にとっていい方向に進めようとする容易になっているんだろう。

 

 俺もそうだ。いくつかのきっかけがあって、だからこそいい方向を選ぼうとする意志が生まれた。

 

 だから―

 

「本当にありがとう。何か困りごとがあったら言ってくれ、できる範囲で力になるよ」

 

 ―恩人に感謝し、それに何かを返そうとするぐらいはしていいはずだ。

 

「あ、じゃ●ン〇を今夜貸してくれません?」

 

「あ、それはいいですね。最近ご無沙汰でした」

 

 ………。

 

「あ、御免。どうも精神面で調子が悪いみたいだ。幻聴が聞こえたかな?」

 

「いや、俺もしっかりチ〇●って聞こえました」

 

「めっちゃはっきり●〇ポって言ったな」

 

 匙君とイッセー君は、少しでいいから逃避させてくれないかな?

 

「言い忘れてたけど、そいつら性に奔放すぎるレベルよ。全身〇ー●ンシャワーとか本当にやる為に男をかき集める業の者よ」

 

 もっと早く言ってほしかったよ光希!?

 

「あったりまえですよお姉様! 女の穴は男の竿を入れる為に存在するんです! 有効活用したいじゃないですか!」

 

「まったくです。あ、避妊と性病対策はきちんとする主義なので、とりあえず血液検査をしてもらっていいですか?」

 

 ……ヤバイ。なんかヤバイ。

 

「イッセー君、今度教会暗部のハニートラップ専門部隊の座学講習ビデオを取り寄せようかと思うんだけど、代わってくれない!?」

 

 咄嗟に需要と供給が一致する相手を紹介する方向にシフトを試みるけど、小猫ちゃんが首を横に振った。

 

「……それをするとリアス部長に殺されます」

 

「そうだったね!? ゴメン忘れてイッセー君!!」

 

「酷いですよ!!」

 

 ゴメンイッセー君。俺がリアスのお嬢の眷属やってるのは和平の為だから、ここで不興を買って追放されるわけにはいかないんだ!

 

 あと冷静に考えると確かに。これはお嬢とアーシアちゃんと朱乃ちゃんに悪い。動揺しすぎて己の悪行を似た形で繰り返すところだった。冷静にならないと。

 

「そういうことなら二人ほど紹介できるわよ? 性欲をバネに偏差値高い駒王学園(ここ)に受かったエロの権化達」

 

「光希さんは別の意味で酷い!? なんで俺を二人の後にするんですか!?」

 

 光希の援護射撃にイッセー君が待ったをかける。

 

 ただ、ねぇ?

 

「アンタは自分の恵まれっぷりをきちんと認識して自覚しなさい。童貞卒業するのはそこからあとよ」

 

 呆れた光希の意見に、イッセー君は助けを求めるように俺達を見る。

 

 ただ、答えは決まり切っている。

 

「動揺してなければ俺もその判断ができる程度には幸運だよ? 早めに自覚しておかないとこっちのフォローやカバーも限界があるからね?」

 

「……見ていて部長達がお労しいですからね、イッセー先輩」

 

「……イッセーさん、酷いです……」

 

「兵藤、俺はお前を殴りたい!」

 

 俺も小猫ちゃんもアーシアちゃんも匙君も、もれなくこの場合においては君の味方はできないんだよ。

 

「え、えっと……何が起きたんですか?」

 

 ギャスパー君は知らなくて当然だね。あとですぐに分かるよ?

 

「はっはっは! なんだかんだでお前さんも赤龍帝ってわけか! いいねぇ、見ていて青いってのはよ!」

 

 アザゼルはそう言いながらからからと笑うと、軽く肩をすくめて振り返る。

 

「どうやら聖魔剣の坊主はいないみたいだし、今日のところ帰るわ。お前らも俺を連れ帰りに来たんだろ? 手間賃代わりにパフェ奢ってやるから帰るぞ~」

 

「総督? 分かっているならもうちょっと抑えてくださいね? うるさい人とかいるんですから」

 

「そうですよご先祖様~。あまりふざけてると、シェムハザ副総督辺りがマジぎれしますからねー」

 

 そう言いながら、とりあえず満足したのか三人は去っていく。

 

「おっといい忘れてた。そのハーフヴァンパイアの神器を制御するなら、伝説のドラゴンの血とかを吸わせるのが手っ取り早い。封印系でも対処できるから、赤龍帝の小僧で十分足りるぜ?」

 

 あら、思った以上にアドバイスをくれたね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—木場祐斗—

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数日、ギャスパー君の復帰活動は少しずつだけど進んでいる。

 

 堕天使総督のアザゼルがもたらした助言に従い、匙君の神器でギャスパー君の力を吸い取る。これが上手くいき、多少なりとも制御の余地が見えるようになっている。

 

 同時に事前準備があればギャスパー君の停止を凌げる光也さんがフォローをする形で、ある程度は対処できるようになった。

 

 光希さんもそれなりに意見を提示しており、「とりあえずアイマスクをつけて外を歩くことだけに慣れさせる」というプランがある程度上手くいったようだ。そこから慣れてきたのか、「人払いがされている空間を一人で散歩する」程度の方法も上手くいっている。

 

 そしてイッセー君が結構親身なのはいいね。小猫ちゃんも同年代だから、遠慮はないけど気には掛けているし。

 

 そんな少しずつの好調が見えていたので、それとなく更なる対応を進めることになった。

 

「イッセーの悪魔稼業の補佐をさせる? 少し性急では、お嬢」

 

「そうかしら? イッセーのお得意様は気のいい人が多いし、問題は薄い気がするけれど」

 

 光希さんの反論にリアス部長はそう返すけど、光希さんもそこは引く姿勢を見せていない。

 

 ただ、悪くないアイディアだとは思うけどね。

 

 イッセー君のお得意様は、なんというか本人達も変人寄りだ。だからこそ器が大きいところもあるし、割と大丈夫な気がする。

 

 特に今回のは小猫ちゃんのお得意様でもある。双方の経験からギャスパー君相手でも悪い扱いをする可能性は低いと思うから、僕も大丈夫だと思うけどね。

 

 ただ、光希さんは違う意見だった。

 

「この手のトラブルは素人が下手に急進的な手段をとるべきではないと思います。それに話に聞いただけですけど、イッセーのお得意様って変態が多いわけですし。うっかり女装少年にクリティカルヒットするタイプだったなんて落ちがあってみたら、今までの稼いできたポイント全部吹き飛ぶショックになりかねませんよ?」

 

「……言われてみるとそうね。その可能性は抜けていたわ」

 

 即座に手のひらを反すぐらいには、リアス部長にも分かり易い反論だった。

 

 確かにその可能性はある。イッセー君と小猫ちゃんではその性癖がある相手であっても刺激されない。しかしギャスパー君は間違いなくその性癖が刺さるタイプの子だ。

 

 そうなると、ギャスパー君が怯える可能性は非常に高い。

 

 あ、これまずいかも。

 

「分かったわ。とりあえずイッセーを呼び戻すから、彼のところには小猫が代理で言ってちょうだい」

 

「かしこまりました、部長」

 

 素早い対応がなされる中、今度は通信が繋がった。

 

『お嬢、仕事が終わりましたが少し問題が』

 

「どうしたの、光也?」

 

 リアス部長が促すと、通信越しの光也さんはかなり困っている様子だった。

 

『それが依頼人と話していたら、どうもディーバギアを持っていると思える不良がこの町にいるみたいなんですよ。それも夜中にバイクで走りだすようなタイプでして。……念の為探りを入れてきてもいいですか? 事件にでもなるようなら警察が対応できる技術でもありませんし』

 

 それは確かに。

 

「かまわないわ。気を付けて頂戴ね」

 

 リアス部長はそう言うと、光希さんの方に振り向いた。

 

「光希。そういえばディーバギアについては悪魔側はそこまで詳しく知らないのだけれど、詳しい説明ができるかしら?」

 

「こちらもできることには限度がありますが、まぁある程度は」

 

 確かに、それはとても重要だろうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時、僕達はうっかりしていた。

 

 既に自転車で出発しているイッセー君達。

 

 夜中に飛行を繰り返す不良のディーバギア保有者。

 

 この組合わせで、リスクを感じるべきだということを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—兵藤一誠—

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、一旦中断ですか?」

 

 リアス部長から連絡を受けて、俺はちょっと困惑した。

 

 う~ん。あの人なら大きな問題にはならないと思うんだけどなぁ。

 

『念の為の対応と考えて頂戴。その、イッセーのお得意様って色々と特殊な人が多いじゃない?』

 

 ……確かに。

 

 ミルたんとかスーザンさんとか、凄い変態がよく出てくるからなぁ。

 

 もしかすると、男の娘萌えとか女装男子サイコー! とかいう地雷が出てくる可能性はあるかも。

 

 よし、ここは素直に納得しておこう!

 

「分かりました! で、俺はすぐに帰れば?」

 

『いいえ。いい機会だし、ギャスパーに外の空気だけでも感じさせて頂戴。その間にお茶の用意でもしておくわ』

 

「分かりました!」

 

 俺は返事をしてから通信を切って、ギャスパーに振り返る。

 

「そういうわけで、一旦今回のお仕事は中止だぜ、ギャスパー」

 

「……ごめんなさい。僕に気を使わせてしまって」

 

 ギャスパーはなんか落ち込むけど、そんなに気にしなくていいってのにな。

 

 酷い経験で引き籠りになったっていうなら、それはまぁ大変だろう。光希さん達も気を使ってるし、俺が思っているよりきついってこともあるんだろうさ。

 

 でもまぁ、そんなに落ち込まなくていいと思うけどな。

 

「こんな神器がなければいいのに。……勝手に人を止める力なんて―」

 

「―え? めっちゃくちゃ羨ましいけどなぁ、俺」

 

 そんなもったいないこと言うのか?

 

 なんかギャスパーがすっごいぎょっとしているけど、俺の本音だぜ?

 

 だって時を止めるとか、確かにされると怖いけどできると夢が広がるだろ?

 

「エロに生きる俺としては、時間停止プレイがマジでできる力なんて憧れるけどなー。いやまぁ、最近は自粛しようと思ってるけど」

 

 本当にやったら顰蹙じゃすまないって、今はもう分かるからな。

 

 光希さんがマジ切れしそうだし。俺もまぁ、ちょっと気おくれするし。

 

 いや、でも待てよ?

 

「敵の女なら止めても問題ないな。……ちょっとぐらい、ちょっとぐらいスカートの内側を覗いたりおっぱい問題利しても……ぐへへ」

 

 洋服崩壊も確実に当てれるもんな。夢が本当に広がるぜ。

 

 ああ、俺も時間停止能力が欲しかった! でも多分持ってたら怒られる!!

 

 いや、でも敵が相手なら大丈夫かもしれない。ちょっとぐらい触ってもいいかもしれない。

 

 俺が光希さんが教えてくれた現実と欲望の折り合いをつけようとしていると、ギャスパーがクスリと笑っていた。

 

「イッセー先輩って、凄い前向きですよね」

 

「お、そうか?」

 

 ま、スケベ根性と赤龍帝の籠手ぐらいしかとりえないけどな。

 

 だったらもう頑張るしかないじゃん。悩んでたり落ち込んだりする時もあるけど、一歩一歩前に進まないと結局そのままだし。

 

「僕が心から悩んでいた力を、そんなスケベなことにばかり考えられるなんて。イッセー先輩のいやらしさは凄いです」

 

 そっかそっか。後輩に褒められると嬉しいぜ。

 

 ただなんでだろう。褒められたはずなのになにかおかしいような気がするのは。

 

 スケベ根性は俺の自慢のはずなんだけどな?

 

 そんなこと思っているけど、とりあえずギャスパーが元気になってくれてよかったよかった。

 

 じゃ、とりあえずそろそろ遠回りをしながら帰るか。

 

 そう思った時、足音が響いた。

 

 ふと振り返ると、そこには数人の男がいる。

 

 なんつーか、明らかに不良だよな。性格が悪そう。

 

「……ん~? こんなところで何してんのかなぁ、学生君?」

 

「へへっ。こんなところで逢引かよ? ダメだぜぇ?」

 

「そ~そ~。俺達みたいな悪い狼の格好の獲物だからなぁ?」

 

 うわぁ。いきなり俺達相手に何かする気だよ。

 

「ひぃいいいいい! 怖い人達ですぅ!!」

 

 ギャスパーが震えているし、ここで引くわけにはいかないな。

 

 ……いや、多分ギャスパーなら一発で止められる気がするけど。

 

「真面目な話だけどさ、自力で止めてみたらどうだ? 意識して使ってみたらコツが掴めるかもよ?」

 

「え? で、でもそんなことをしていいんですか?」

 

 震えながらギャスパーはそう言うけど、別にいいような気がするけどな。

 

 もう俺達に何かする気満々だし。時間停止しても正当防衛になるだろ。

 

 いやまぁ、今の俺でも籠手を出せれば問題なく倒せる気はするけど。

 

『それはそうだな。俺の力を振るえば基本性能が違いすぎる。そもそも転生悪魔の身体能力だけでも戦えるんじゃないか?』

 

 異形になるって凄いよなぁ。なんか、あんまり危機感感じないっていうか。

 

 ただそんな俺達の様子に苛立ったのか、不良の一人がこっちを睨んでくる。

 

「おいおい坊主ども。まさか、俺らに小遣いもくれずに帰れると思ってんのかぁ?」

 

 ……悪魔の力をただの人間に振るうのもなんだけど、なんかいらってくるな。

 

 っていうか、こういうのっていやだよな。

 

「やなこった。ってか、俺の後輩に手を出すならぶっ飛ばすぞ?」

 

 ギャスパーは残念なことに男だけど、それでも俺の後輩だ。

 

 多分喧嘩になっても勝てるだろうけど、そういうのがまず嫌いっぽいしな。なら俺が出張るしかない。

 

 見る限り、特に武術や殺し合いの経験はなさそうだしな。これぐらいでいちいちビビってたら、リアス・グレモリー眷属なんてやってられない。

 

 俺が相手をする気になっているのに気づいたのか、不良共は更に不愉快になってるみたいだ。

 

 不愉快なのはこっちも同じだ、やるってなら―

 

「じゃ、盛大にビビらせてやるぜ!」

 

『スナイパー!』

 

 ―え?

 

「お、なら俺らもやってビビらせるか!」

 

『コマンダー!』

 

『ドラゴン!』

 

 あ、あの歯車は……っ

 

 俺がちょっと面食らってると、そいつらは揃って歯車の音声を思わせる姿のディーバインに!

 

 マジかよ。こいつら全員ディーバギア持ちか!!

 

 ドライグ! なんか相手が調子に乗ってる間に倍化の準備を!

 

『そうだな……いや、待て。あいつらまさか……?』

 

 なんかドライグが躊躇ってるけど、そういうわけにはいかない。

 

 光也さんや光希さん。二人が変化したディーバインは、準神滅具と聖剣を併せ持つフリードや、最上級堕天使のコカビエルにも戦える強さがあった。

 

 二人が元々強いこともあるけど、それでもかなり強くなるんだ。

 

 なら俺もなりふり構ってる場合じゃない。最悪代償を払って禁手に至るぐらいしてもいいぐらいだ。

 

 そして最後の一人も歯車を手にして―

 

「はいストップ!」

 

「ふぎゃ!?」

 

 ―と思ったら、光也さんがそいつを後ろから蹴り飛ばした!

 

 おお! 来てくれたんですか!? でも呼んでないはずだけど。

 

 俺が困惑していると、光也さんもなんか困惑していた。

 

「なんでイッセー達がここにいるのさ?」

 

 なんか別件だった!?

 




 今日は切どころが見極められず、結構長くなってしまいました。
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