D’s——聖なる歯車   作:グレン×グレン

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 はいどうもー! 今週は月曜から比較的調子が良かったグレン×グレンでっす!!

 さて、ここからがこの物語の本番ですよぉ~!


第八話 悪夢の幕開け

—月崎光也—

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 心臓がばっくんばっくんとなっている。

 

 停止される感覚。それに対して反射レベルで護符を大量生産し出来たのは、最近停止されなれているおかげかもしれない。

 

 危なかった。本当に危なかった。

 

 それなりに護符は作って持っていたからこそ、対処が間に合った。

 

 そして我に返って周囲を確認すると、かなりまずいね。

 

「……ん? あれ? なんかドッキリ!?」

 

「デュリオ、とりあえず起きてくださいね?」

 

 デュリオは起きてくれたけど、問題は功希さんが固まっている。イリナは……無事か。

 

 功希さんも俺と大体似たようなことができるはずだけど、あくまで後方側だしね。ある程度のインターバルがあるならともかく、現場レベルの瞬間判断ではどうしても劣るか。

 

 堕天使側を振り向いてみると、アザゼル総督とヴァーリが動いているけど、才華とエルカの二人は固まっている。

 

 そしてこちらを振り返れば、朱乃ちゃんに小猫ちゃんにアーシアちゃん。そしてソーナ殿と副会長が固まっていた。

 

 結構やられてるね。

 

「……危なかった。最近ちょくちょく止まるから、クロスカリバーの開放で吹っ飛ばせるようにしててよかったぁ……」

 

 光希はぎりぎりで迎撃できたようだ。相変わらず要領がいい。

 

 リアスちゃんは地力、祐斗君も聖魔剣に到達した力で乗り越えたようだ。となると、紫藤イリナは強化装備付きのエクスカリバーで乗り越えた形か。

 

 そして当然そうなると、赤龍帝のイッセー君も耐えられる……けど。

 

「……な、ななななんだこりゃ!?」

 

 イッセー君が思わずパニックになっている。いや、気持ちはとっても分かる。

 

 気づいた時にはこれだけの人数が動かなくなっている。それも殺されたとか気絶したとかではなく、目を見開いたまま微動だにしない。

 

 というかこれは―

 

「感覚的にギャスパー君の邪眼に近いですね。部長、彼と連絡は?」

 

「……ギャスパーが? いえ、連絡は……つかないわね」

 

 お嬢が確認しているけど、一切返答がないらしい。

 

「こっちにも連絡は来てないわ。あと、外も似たような状態ね」

 

「各勢力、全員時が止まってますね。ここまでの広範囲はギャスパー君にはまだ出せないはずです」

 

 外を確認していた光希と祐斗君が言う通り、見える範囲で外の警備も止められている。

 

 ちょっと、これはまずいんじゃないかな?

 

「え、これってどういうことなんですか!?」

 

 紫藤イリナも困惑しているけど、それに対してトップの方々はどこか落ち着いている。

 

「……可能性はあった。だが、本当に起こるとはね」

 

「なんだ。そっちも掴んでたのか」

 

 サーゼクス様とアザゼル総督が何か心当たりがある風なことを言っている。

 

「……知っているのですか?」

 

 ミカエル様が促すと、お二人はすぐに頷いていた。

 

「身内の恥をさらすが、旧魔王血族は神器が大量発生し始めた時期から妙な連中と繋がっていたらしい。もっとも、その情報を掴んだのははごく最近、大王派側の情報提供だがね」

 

「……あ、すまん。旧魔王の連中は絡んでるだろうが俺の心当たりは別件だなそいつら」

 

 そしてなんか急にかみ合ってない。

 

 サーゼクス様の説明にちょっと目をぱちくりさせていたアザゼル総督は、そのうえでこっちを見渡した。

 

「俺らが掴んでるのは、世界最強の存在をトップに据えた各勢力のはぐれ者達の集団だ。もっとも、旧魔王の連中共もつるんでるみたいだがな」

 

 ……それって、まずくない?

 

 世界最強の存在。この世界でそう定義されるのは二つ。

 

 どちらも、それ以外を圧倒的に引き離す性能を誇る化け物。各勢力が基本的に不干渉を選ぶほどの、圧倒的脅威だ。

 

 そんな存在のどちらかがトップになっている、危険因子の集まり。一言で言って最悪にまずい。

 

「……そんな組織がいたのですか。これは、本当に三大勢力が戦争と言っている場合ではありませんね」

 

「そうなのよねん。ただ、ここまでのテロを起こせるとは思ってなかったわぁ」

 

 ミカエル様とセラフォルー様がため息をつきそうになっているけど、確かに危険だ。

 

「……こちらが掴んでいる組織名は、ディーザストラ。アザゼル、聞き覚えは?」

 

「悪いがないな。こっちが掴んでる組織の名は、禍の団(カオス・ブリゲート)だ」

 

 サーゼクス様とアザゼル総督はそういうけど、つまるところ最悪だ。

 

「つまり、謎の勢力まで参加したテロ組織がいると。……今回の下手人もそれなんですか?」

 

 光希が話を振ると、アザゼル総督は頷いている。

 

「確証はないがほぼ確実だろ。おそらくだが、ハーフヴァンパイアの坊主を捕まえて神器を暴走させてるな。疑似的な禁手に近いが、長続きすれば俺達も止められかねない代わりに坊主が死ぬ可能性もある」

 

「……最悪だわ。すぐにでも助けないと―」

 

 リアスのお嬢がそう言いかけた時、外が光っている。

 

 見れば転送の魔方陣が展開され、なんか人型の存在が姿を現した。

 

 見る限りはディーバインだね。それも、かなり数が多いけど同型タイプ。

 

 それらが両手からオーラのような砲弾を放ってこちらを攻撃してくる。

 

 ただし、この部屋は揺れることがあっても壊れていない。また次の瞬間、トップ陣の攻撃が放たれてディーバイン達がもうあっさりと吹っ飛んでいく。

 

 無双系のゲームを思い出したけど、あっさり追加が来た。

 

 これ、まずくない?

 

「どうします? 一旦撤退がセオリーだと思いますが」

 

 身もふたもないけれど、ここはわき目も降らずに逃げに徹するのも手だ。

 

 何せトップが集ってるからね。万が一があったらかなり混乱が起きるだろう。

 

 ただ、トップ人は誰一人としてその選択肢を取る気はなさそうだ。

 

「いや、それをやると人間側の余計な被害が出るだろうさ。この結界内部で粘って、本命を釣る方がいいだろうさ」

 

 アザゼル総督はそう言うと、そのうえで首を少し捻っている。

 

「だがこの停止空間がネックだな。あんまり長続きしていると、俺達が止まる可能性やハーフヴァンパイアが死ぬ可能性があるのは言った通りだ。何とかすれば状況も大きく動くだろうがな」

 

「なら、俺が旧校舎事吹き飛ばそうか?」

 

 容赦ないことをヴァーリがアザゼル総督に言うけど、勘弁してほしい。

 

 お嬢達側から殺気が飛びそうになるけど、そこでデュリオがヴァーリの肩に手を回す。

 

「いやいや、それは最終手段でしょ? いきなりそんなことしたら、グレモリーの子も怒るよ?」

 

「正直退屈でね。さっさと終わらせられるに越したことはないだろう?」

 

 ええいもう。最終手段で速攻片付けようとするのはよくないってのに。

 

「なら外の連中を相手してろよ。暇潰しにはなるだろうさ」

 

「弱い者いじめは趣味じゃないんだけどね。まぁ、暇潰しにはなるな」

 

「じゃ、俺も出るかな。こういうのは得意だしね?」

 

 デュリオがヴァーリに続いて外に出る体制に入るけど、ちらりとこっちを見た。

 

「……念の為、頼んだよ」

 

 ……なるほど。

 

「分かりましたよ、デュリオ。こちらは任せてください」

 

 どうやら、警戒の必要は大きそうだね。

 

 というか、凄い一方的な戦いが発生している。

 

 目の前で、圧倒的な戦闘が繰り広げられている。

 

 白龍皇ヴァーリが鎧袖一触でディーバイン達を薙ぎ払い、デュリオ・ジュズアルドは多種多様な攻撃でディーバインを一掃する。ディーバイン側がわんこそばもかくやの補充なので戦線が膠着気味だけど、これはやばい。

 

 まぁ、神滅具保有者ならあれぐらいできてもおかしくない。特にヴァーリは至らせてるし、デュリオだって上位神滅具保有者だしね。

 

「……すげぇ……」

 

 同じ神滅具保有者であるイッセー君は絶句している。

 

 まぁ、今の自分で同じことができるわけがないのならそうだろう。才能もあるだろうけど、経験値や鍛錬も違いすぎるしね。

 

「イッセー。あの二人は経験豊富で鍛え上げられた天才だってこと忘れないように。目標に据えてもいいけれど、生涯頑張っても追いつけるか分からない高みを上り続けてるわよ?」

 

「あ、はい!」

 

 光希がそれとなく釘を刺して、イッセー君も頷いていた。

 

 まぁ実際、あの二人は教会と神の子が見張る者の神器保有者では最高峰だろう。指折りレベルといってもいいだろうしね。訓練も経験も積んでいると考えるべきだし。

 

 対してイッセー君は、戦闘という業界に入って日が浅い。訓練も経験も少ないのだから、比較対象にする方が論外だろう。

 

 と、イッセー君がハっとなった。

 

「そうだギャスパー! 何とかして助けに行かないと」

 

「それはそうだけど、向こうだって作戦の要をやすやす渡すわけがないよ。無策は駄目だ」

 

 はやるイッセー君をなだめるけど、さてどうしたものか。

 

 今回の作戦でギャスパー君がキーになっている以上、敵だってやすやす奪われたがるわけがない。

 

 警備は厳重にしているだろうし、相応に結界の類も張っている。強引な突破は死人が出かねな

 

 光希やお嬢も考え中だ。さて、どうしたものか。

 

「相手の虚をつくような抜け道があればいいんですけど。お嬢、普段悪魔稼業で使ってる転移って、逆利用できません?」

 

「それだとまず、結界の外に出る必要があるわ。とはいえ強行突破はリスクが大きいし……」

 

 う~ん。こういう時、もしかしてかなりやばい気が……ん?

 

 そうだ、いいことを思いついた。

 

「お嬢、一つ手を思いつきました」

 

 俺はそのアイディアを提案し、周囲からの注目を集めた。

 

 特に神器を研究しているアザゼル総督は乗り気のようだ。かなり感心しているしね。

 

「なるほどな。確かにその方法ならいけるだろうさ。よし、ならこいつを持って行け」

 

 と、懐から大きめのリングを二つ取り出した。

 

「神の子を見張る者が開発した特注の制御装置だ。ハーフヴァンパイアの坊主につければ神器の暴走は収まるだろうし、赤龍帝が使えば一時的に疑似的な禁手になれる。坊主用と非常用に持っとけ」

 

 な、なんという凄い物を。

 

 俺達全員が感心していると、総督は念入りな顔つきになった。

 

「言っとくが、金も時間もアホほどかけないとできねえからな? 変なことに使うんじゃねえぞ? ……で、準備はいいか」

 

 総督はこっちに視線を向けてくるけど、そこはご安心を。

 

「大丈夫。物はすぐに用意できます。あとは投げる方を調整しますので」

 

「では、術式をかけてこちらが制御します。それまでお待ちください」

 

 グレイフィアさんがすぐに術式の準備をしてくれている。

 

 よし、これならいけるか。

 

「……とはいえ、だ。結界を張っているとはいえ、規模が大きくなればこの町に被害が出るかもしれない。その点は遺憾だね」

 

「流石にこの規模の襲撃は想定してねえしな。ま、これだけの事態になればどこでやっても同じだし、気にしすぎんな」

 

 サーゼクス様が瞑目しているのをアザゼル総督がフォローして、そのうえでため息をついた。

 

「もっとも、これだけの規模で動くとはな。ま、和平なんてなれば嫌がる連中は出てくるものか」

 

「それにしてもです。禍の団、オーフィスを象徴に据えているだけのことはあるでしょう」

 

 ミカエル様も嘆息しているけど、本当にそれだ。

 

 というか、流石に手際が良すぎないだろうか?

 

 普通に考えて、ギャスパー君を使って俺達を止めるなんて発想がまず出てこないだろう。こっちだって警備をしているのだから、難易度だって高い。

 

 となるとやはり、内通者か。

 

 まぁ、これだけいるなら一人ぐらいいてもおかしくないけど。それにしてもいったい誰が……ね。

 

 俺がそんなことを考えつつ、グレイフィアさんと詰めの体勢に入っていると総督は外を見て眉間にしわを寄せる。

 

 そこには更に百体以上のディーバインが召喚され、デュリオとヴァーリ相手に果敢に攻め立てている光景が映っていた。

 

「それにしても、ここまでの数のディーバインを用意するとはな」

 

「そうねぇ。裏社会でもそんなにたくさん一気に出てくることがなかったのよねん? ……つまり、禍の団にディーバギアの製造元が絡んでいるのかしら?」

 

 そう、セラフォルー様が呟いた時だった。

 

『その通り。おかげでこちらもかなり動きやすくなりました』

 

『まったくですなぁ。まさかここまでできるとは、流石に思っていませんでしたよ』

 

 そんな声が響き、魔方陣が浮かび上がる。

 

「あの魔方陣、レヴィアタンの……本家!?」

 

 光希が素っ頓狂な声を上げるけど、其れってまずいだろ。

 

 確か、旧魔王レヴィアタンの末裔は禍の団やディーザストラと繋がってるって話だよ!?

 

「そういうことか! グレイフィア、光也君! リアスとイッセー君を!」

 

 サーゼクス様が声を荒げる事態か。

 

 ああ糞、間に合え!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—兵藤一誠—

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんか事態が急に動いた瞬間、俺達は飛ばされた。

 

 時間は三秒ぐらい。そして衝撃が響き渡って俺達は外に飛び出す。

 

「な、リアス・グレモリーに赤龍帝―」

 

「邪魔よ!」

 

 動揺するローブの女を吹き飛ばし、リアス部長は振り替えった。

 

 ……光也さんの提出した作戦は、光也さんが使える創造系の道具を使った移動だ。

 

 なんでも封印系神器を参考に、物や人を格納できるアイテムを用意できるらしい。元々物資運搬とか、捕まえた人の移動とかに使ってたとか。

 

 で、それを槍に組み込んで飛ばすことで、奇襲攻撃と見せかけた転移を行うって作戦だ。

 

 グレイフィアさんやアザゼルが協力してくれたおかげで何とかなったけど、また強引だな。

 

 っていうか、振り返ると校舎の方が結構壊れてるし!?

 

 ちょっとこの学園、色々壊されすぎてない!?

 

「……皆、無事でいて頂戴……っ」

 

 リアス部長はすっごく気にしていたけど、すぐに首を振ると歩き出す。

 

「まずはギャスパーを助け出して、そのあと合流するわ。手伝って、イッセー!」

 

「もちろんです!」

 

 めちゃくちゃ心配だけど、乗り切ってくれよ皆。

 

 俺も、絶対ギャスパーを助け出すからさ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—月宮光希—

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こっちのプランはぎりぎりセーフね。とりあえず間に合ってよかったわ。

 

 そして同時に、こっちは大ピンチでしょうけど。

 

 攻撃は総督たちが防いでくれたけれど、余波で校舎が結構大破しているわね。異形パワーなら直し用はいくらでもあるでしょうけれど、それでも手間にはなること間違いなし。

 

 そして、それを成したのは一人の悪魔。

 

 後ろに妙な男が二人ほどいるけど、違和感が大きいわね。

 

 人型の存在だけど、今まで見てきたどの異形とも違う雰囲気がある。というか、妙な雰囲気が強いわね。

 

「久しぶりですね、サーゼクス。まさか和平などというものを選ぶとは……残念です」

 

 そうため息をつく先頭の女。どうも力量は割と高い部類ね。

 

 最上級悪魔にはなっているでしょう。最も、総督達なら油断しなければどうにかできるでしょうけれど。

 

 そしてさっきのは資料で見たことがある本来のレヴィアタンの紋章。

 

 つまり、目の前の女はレヴィアタンということかしらね。

 

「久しぶりだ。初代レヴィアタンの末裔、カテレア・レヴィアタン」

 

 サーゼクス様が残念そうに言うけれど、当たりのようね。

 

 初代四大魔王が聖書の神と相打ちになった後のこと。悪魔側の冥界は大きく揺れたと聞いている。

 

 初代四大魔王の血筋はその殆どが戦争を継続しようとしたが、種の存続が危ういと判断した多くの悪魔はそれに対して犯行を決意。大規模な内乱をへて、旧魔王血族とそのシンパは辺境に追いやられたと聞いている。

 

 そしてそのほとんどはそれを経験したまま現役だったのでしょう。恨みを忘れず、こうしてテロに走ったというわけね。

 

「カテレアちゃん、なんで……」

 

「忌々しい。本来のレヴィアタンである私を差し置き、レヴィアタンを僭称する狼藉者め。気安く私の名を呼ばないでもらいましょうか……!」

 

 セラフォルー様に対して相当苛立っているわね、カテレア・レヴィアタン。

 

「カテレア・レヴィアタン。一体何を考えているのですか!」

 

「知れたことですよ、ミカエル。貴方達と真逆の結論に至ったまでのこと」

 

 カテレア・レヴィアタンはミカエル様に対して嘲笑すら浮かべると、両手を広げて得意げな表情になる。

 

「神がいない世界を存続させるのではなく、一度破壊して私達に都合のいい形に再編する。それが私達の結論です」

 

「その過程でどれだけの被害が出ると思っている。……本気か、カテレア」

 

 サーゼクス様は鋭い視線をしながらも悲しげだけれど、カテレアは鼻でそれを笑う。

 

「忌々しいですがあなたは優秀な魔王でした。……が、最高ではない。私達は私達の冥界を創造します」

 

「その通り。そしてその方が都合がいいので、こうして我々も参加させていただきました」

 

 そう繋げながら、後ろの男が一人前に出る。

 

 口調は丁寧だけど、こちらを馬鹿にしているような雰囲気を見せている。慇懃無礼を絵に描いたような奴ね。

 

「お初にお目にかかります、三大勢力の盟主の皆様。私、禍の団の派閥が一つ、ディーザストラの諜報工作部隊所属、チークタックと申します」

 

 優雅に一礼するそいつは、頭を上げると共に手に一つの物体を持っていた。

 

 ……金色の輝く、ディーバギアを。

 

 思わず私は目を見開くけど、総督が納得した感じでため息をついた。

 

「なるほどな。お前さん達がディーバギアの元締めってことか」

 

 なるほど、確かにそういうことね。

 

 黄金は、普通は銀色より価値があるとされている。当然、ディーバギアに使っているなら私や光也の持っているディーバギアより価値があるとみなされた仕様なんでしょう。

 

 そしてそんなものを持っているということは、少なくとも流通している一般的なディーバギアを持ってるやつより重要な奴ってことなんでしょう。

 

 ……問題はその中でどの地位にいるかってことね。

 

「個人的には興味深いと思ってたんだが、そのトンでも技術をろくでもない民間人に流すのは感心しねえな。頭のねじが外れてんのか?」

 

「これはご冗談を。あの程度でとは、了見が狭いとはこのことですなぁ」

 

 総督のカマかけに嘲笑を浮かべ、チークタックは小さく微笑む。

 

「まさか、この期に及んであんな程度で済ますとでも? 本番は此処からです」

 

 その言葉に、私達は寒気を覚えた。少なくとも私は覚えた。

 

 何かが、決定的にまずい。

 

 そしてそれは、小さな揺れをもってあらわになる。

 

 ……地震? このタイミングで?

 

 小さく、しかししっかりと揺れた振動を感じる中、カテレアは呆れ顔になった。

 

「ここまで揺れますか。どれだけ仕掛けたのですか?」

 

「東京は人口密集区ですからねぇ。まぁ時間帯もありますし、百万人超えればいい所でしょう」

 

 チークタックの返答に、私達は背筋が寒くなった。

 

 今、奴はなんていった……?

 

「……聞きたいが、君達は今何をした?」

 

 サーゼクス様の言葉に、チークタックは指でテレビを指した。

 

「今なら繋がってますので、ご自分でお確かめください」

 

 いら立つけれど、それを気にしている余裕もない。

 

 近くにいたグレイフィアさんがリモコンを操作し、テレビをつける。

 

 ……そこには、地獄が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—Other—

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……信じられません。信じられません!?」

 

 その映像を奇跡的に流していたのは、一つの報道ヘリだった。

 

 東京都心から少し離れたところにある、イベント会場。

 

 そのイベントのフィナーレを映していた報道陣は、それを見た。

 

「東京に、東京に隕石が墜落しました……それも、たくさん……たくさん!?」

 

 自分の言うことを否定してほしがっているキャスターは、しかしそれがなされないことに絶望する。

 

 その場にいる者たち全員が、あり得ないものを見るようにその光景を見ていた。

 

 本来ならまだまだ明るいだろう東京都心が、突如として真っ暗になる。それも、高層ビルが消え去ってだ。

 

 ほんの一瞬の出来事だった。いくつもの隕石が落ちるその瞬間を、数十キロ離れたビルの高層階から目撃した。

 

 衝撃でいくたものビルが倒れていき、土煙はキノコ雲となる。

 

 その光景を見ながら、キャスターは絶叫も同然の声を上げるしかない。

 

「これは世界の終わりなのでしょうか? ……総理大臣、天皇陛下……ぁああああああああっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『番組の途中ですが、緊急放送です!』

 

 突如としてバラエティ番組が中断され、一人のアナウンサーが泡を食った表情でその情報を発信する。

 

『我がアメリカ合衆国のつい十五分前。ホワイトハウスに隕石が墜落したとの情報が届きました。先ほど発生した地震はその衝撃によるものと思われます』

 

 その言葉を、テレビの前の者たちは信じようとしなかった。

 

 だがしかし、映像が切り替わるとそれを受け入れるほかなくなっていく。

 

『奇跡です。私たちは奇跡的に、この惨劇に巻き込まれませんでした……この、悪夢のような光景の一部になりませんでした!!』

 

 ……ヘリコプターが映し出す映像は、ホワイトハウス周辺数十キロが破壊されている映像。

 

 隕石墜落の衝撃で地面は巻き返り、建物は倒れて埋もれている。

 

 生存者など絶望的なその光景。そこに、信じられないものが乱立している。

 

『なんでしょうかあれは!? まるでオベリクスのようにそびえたつ岩山です! いくつも……いくつも乱立しています!?』

 

 それはまるで、墓標の群れ。

 

 生存者がいることが絶望的であろう、破砕された地面による砂の中。

 

 そこに立つ、謎のいくつもの岩山。

 

 この世の者とは思えない光景。それも、つい先ほどまでホワイトハウスがあった周辺にあるという、悪夢。

 

 キャスターが報道することを忘れ、絶句する。

 

 この日、アメリカ合衆国は未曽有の混乱に叩き落されることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……この日、人類は信じられない地獄を体験することとなる。

 

 あらゆる宇宙機関や民間が一切発見できないまま発生した同時多発隕石墜落。

 

 そう、思われていたものは実は違う。

 

 落ちてきたのは巨大な杭。それも、高度を取った状態であえて拡散するようになっている明らかな人工物。

 

 さらに、杭をつなぎとめていた物体は結界を張り、墜落によって発生する大量の粉塵を制御。岩山へと加工することで核の冬を食い止めた*1

 

 だがそれはすなわち、世界において信じられない悪夢が、信じられない現象をともに起きたことを意味する。

 

 人類こそ霊長の長。科学で解明できないことはこの世にない。人々の多くがそう思い込んでいる。

 

 だが、宇宙の片隅でしか活動していない人間の文明が、今全てを知っているなどということはあり得ない。

 

 そして、彼らは空を見上げて絶望すら覚える。

 

―地球人類よ、これこそ貴様たち下等民族を超えるものたちの偉業―

 

―我らが参加に下りし者に、黙して従え。さもなくば絶望あるのみ―

 

―我らの従者たる価値を示した物には幸福を。我らが意思に従うものには生活を。それ以外には絶望を与えん―

 

 あらゆる言語で浮かび上がるその文字に、人々は人知を超えた存在の侵略を悟り絶望する。

 

 そして同時に、まさにこのタイミングを狙ったかのように軍事蜂起が世界各国で同時多発的に発生。

 

 人類史は此処に、大いなる暗黒期を迎えようとしていた。

 

*1
核の冬:厳密には「核戦争クラスの大規模破壊によっておこる気温低下を含める各種人災」。米露で核戦争が起これば十年ほど低下し人口の半分近くが死亡する事態になるといわれている




 派手にいくぜ、この展開を!!

 この作品は大筋は原作の各巻を参考にしつつ、かなりの改変などもちょくちょく入れておこうかと思っております。そういう意味では拙作「ロンギヌスイレギュラーず」の類に近いかもしれません。あれよりオリジナル要素を多めにしたいとは思っていますけど。

 さあ、ここからが本番だ!!
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