D’s——聖なる歯車   作:グレン×グレン

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 とりあえず、本格的に始まるまでは巻いていきます。それまで見捨てないでね?


序章—再開—
第一話 思わぬ三勢力共闘


—月宮光也—

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 胃と頭が痛い事態となった。俺はバイクで駒王町に向かいながら、ため息を改めてついた。

 

 堕天使コカビエル。堕天使辰を統括する大型組織「神の子を見張る者(グリゴリ)」の最高幹部。運営に関与する立場であり、千年以上前から戦いを経験した実力者。

 

 かつて教会でも最強の聖剣使いと呼ばれた者が、追い込みながらも取り逃がした存在だ。教会や天界(こちら側)で例えるなら、枢機卿やセラフの天使に準じる立場といえるだろう。

 

 その彼が、エクスカリバーを複数本強奪した。これがまず問題だ。

 

 アーサー王伝説という伝承に名を遺す剣の名称の一つ。その名を冠した聖剣は、紆余曲折あって七つに砕かれそれぞれが聖剣として作り直された。一本が行方不明になっているが、それ以外は教会が保有している。

 

 聖剣は基本的に所有者を選ぶ。伝説クラスとなるとその敷居も高く、保有していても使い手を全員分用意できないなんてことは数多い。

 

 昨今は研究によって人工的にエクスカリバーの使い手すら見繕えるようになった。ただし当時の研究員がかなり非人道的な手段を取るばかりか、被験者の処分を独断で行っており、そういう意味では負の歴史だ。当事者は追放処分にあったと聞いている。

 

 コカビエルを追い込んだ悪魔祓いも、天然物の聖剣使いだ。本来の合一化されたエクスカリバーと並び立つ、聖剣デュランダルを用いて彼を追い込んだと教えられている。

 

 ……仮説だが、それもあってコカビエルは聖剣に興味があったのだろう。そしてそれを強奪した。

 

 この時点で天界や教会相手に、神の子を見張る者が全面戦争を仕掛けてきたと取られておかしくない。タカ派はほぼそういった認識であり、かなり積極的に反撃をするべきだと主張しているようだ。

 

 そしてもう一つの問題は、そのコカビエル達が悪魔の縄張りに逃げ込んだということ。

 

 伝承では同一視されることもある堕天使と悪魔だけど、現実においては別の種族だ。共に冥界を縄張りとしているけれど、互いで線引きをしている。

 

 そして悪魔は人間界の町を市政と話を通したうえで縄張りとしているけれど、今回逃げ込んだ縄張りの主はリアス・グレモリー。

 

 万年生きれる悪魔社会で、まだ二十歳にもなってないのに現役の上級悪魔クラスのポテンシャルを持つ若手上級悪魔。しかも悪魔の政治を運営している名門貴族の一角、グレモリー家の本家次期当主だ。

 

 とどめに襲名の形で悪魔のトップを務める、現魔王の一人がお兄さん。

 

 ……分かったうえで他勢力が下手につつくと、その瞬間にその勢力は悪魔と戦争することになるだろう。こちら側としても、分かっている状態でうかつにつついてはあれなので、タカ派が余計なちょっかいを駆けないように気をもんでいる辺りになっている。

 

 そんな彼女が担当する駒王町。そこに逃げ込んだらしい。

 

 最悪のパターンとしては、堕天使と悪魔が手を組み、まず聖書の神とその配下を潰そうとしている。伝承で同一視され冥界に住まう者同士だし、敵対している教会の者としては真っ先に思いつく可能性だ。

 

 もしそうでないとしても、かなり厳しいことになるだろう。今回の事件でタカ派がかなりの戦力を送り込むらしいし、タカ派の中には司教枢機卿*1が動いているから、転び方によっては三大勢力の三つ巴が激化する。最悪は全面戦争の再開だ。

 

 少なくとも、僕の上役であるデュリオが属しているハト派としては「戦争の再開は愚策」でまとまっている。だがタカ派は近年の神器保有者増大による悪魔祓いの底上げ*2ことから「悪魔に人類を改造されたり、堕天使にかどわかされる前に彼らを殲滅すべし」という意見も多い。

 

 教皇猊下や天界全体の意向としてはハト派よりであり、ガス抜きをいくつか用意したこともあって今は抑えられている。それがコカビエルが馬鹿をやった所為で一気に悪化だ。

 

 ……しかもエクスカリバー関連の新技術をタカ派のガス抜きでやったら成功してしまったわけで。必然的にタカ派が先手を打って行動しているわけで。

 

 幸い、まずは牽制球としてリアス・グレモリーに接触するとは聞いている。その辺りで何とか食い込まないと後がまずい。

 

 と、いうわけで。駒王町ギリギリの所で、俺はバイクを降りて喫茶店に入る。

 

「あ、すいません。シスコンスイーツパラダイスっていうのがここにあるって伺ったんですが」

 

「かしこまりました。あちらの席でお待ちください」

 

 前もって告げておいた合言葉を告げると、店員さんが人から離れた席に連れて行ってくれる。なんでも悪魔稼業でお得意様らしく、ある程度の事情を察してくれる人がいるお店らしい。

 

 ……今回、タカ派は枢機卿の名代としても活動している正規の聖職者だ。

 

 それに対し、こちらは外注。俺自身は信仰心を持っていない以上、うかつに介入を試みても邪推される可能性がある。

 

 そこで、前もって悪魔関係者に話を通し、面談的な形になっている。

 

 なるべく早く成立させて入らないとね。どうもタカ派も接触準備ができており、今日中に接触するらしいから、可能な限り手早く事情を理解してもらわないと。

 

 とりあえず気分を落ち着ける為にサンドイッチと紅茶を頼んで待っていると、少ししてから三人ほど来てくれた。

 

 ……眼鏡をかけたボブカットぐらいの女の子を筆頭に、同じく眼鏡をかけたロングヘアーの女の子と、明るい茶髪の男の子を連れている。服装は同じ学校の者と思われる制服だ。

 

「初めまして。教皇からの使者の代理さん。私はソーナ・シトリー。隣は眷属です」

 

「初めまして。PMCロザリオの月宮光也と言います。申し訳ありませんが、事態は一刻を争うので、すぐにでも事情の説明から」

 

 割と本気で忙しいので、僕はすぐにでも事情を簡潔かつ分かりやすく説明する。

 

 そして話を聞いてくれたソーナ・シトリーは、眉間にしわを寄せていた。

 

「……なるほど。どうやら事態は想像以上にまずいようですね」

 

 そうなんだよ。本当にそうなんだよ。

 

 この業界に入ってからまだ数年。勘弁してほしいレベルの重大案件で胃が痛くなりそうだったりするね。

 

 そんな気持ちを改めて感じていると、ソーナ・シトリーはこちらを探るように見る。

 

「ちなみに、先日教会からリアス・グレモリーに接触を求めた者達がいましたが……彼らがタカ派であると?」

 

「詳しいことは派閥争いで俺も把握しきれていません。ただタカ派が相応の人材を送り込んだことは確実で、彼らに主導権を握られるとそちらにご迷惑をかける可能性が高いと、天使長様と教皇猊下が判断なされました」

 

 といっても、こっちも忙しくてまずいんだけどね。

 

「本来は俺の直属といえる悪魔祓いが来るんだけど、間に合わないと判断されてね。とりあえず名代として俺が派遣された形になります」

 

「……そちらも大変ですね」

 

 気遣われるとは思わなかったよ。

 

「悪魔も魔王派と大王派の諍いは珍しくなく、対外的には一枚岩に近い状況でも、旧魔王派の横やりが予想される為頭が痛い状態です。……堕天使も同じで、これがコカビエルの独断なら話が早いのですが」

 

 そうだといいねー。それならまだましだよねー。

 

 これで堕天使側の総意で動かれていたら、ちょっとマジでどうしようもないからねー。

 

 ああ、胃が痛くなりそう。

 

 本能的におなかをさすっていると、そのうえで彼女はため息をついた。

 

「とはいえ、最悪の事態は避けれる可能性は十分あります」

 

 え?

 

 俺がきょとんとしていると、ソーナ・シトリーは複雑そうな表情になっていた。

 

「実は先日、神の子を見張る者からもリアス・グレモリーとの接触を試みる者がいまして。堕天使総督アザゼルの名代……とのことでした」

 

 と、いうことは。

 

「少なくとも、総督アザゼルの意思による可能性は低いと?」

 

「そうでしょう。当然、私達悪魔側も魔王様達上役から、コカビエルと連携を取れなどとは言われてませんから」

 

 俺にそう返したソーナ・シトリーは、眼鏡をクイっと持ち上げる。

 

「可能性としてはコカビエルの独断でしょう。最悪でも神の子を見張る者の派閥がいくつかであり、総意にはなってない。ならば、連携を取って対応することは不可能ではありません」

 

 そうだといいね。

 

「もっともその場合、それでも起こせる可能性を踏まえていると思いますが。おそらく旧魔王派の者達には情報を伝えているでしょうね」

 

「あ、なるほど。魔王の妹が害されたタイミングで、クーデターをそそのかしていると」

 

 となると、教会にも似たような手合いはいるんだろうなぁ。考えるだけで頭が痛くなりそう。

 

 と、なるとだ。

 

「とりあえず、タカ派の牽制を入れさせてください。なるべく速やかに」

 

「もちろんです。今すぐ向かいましょう」

 

 助かった。理解がある人で助かった。

 

 あとでお礼に菓子折り持っていこう、そうしよう!

 

 俺はそう決意すると、すぐに向かうべく立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—兵藤一誠—

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は兵藤一誠。ハーレム王を目指し、上級悪魔になるべく毎日頑張っているスケベな高校生だ。

 

 神や魔王すら殺しうる最強の神器。神滅具の一角である赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の宿主だ。三大勢力が戦争中に共闘する必要になるほど強い龍、二天龍の片割れである赤龍帝ドライグが封印されている。

 

 上級悪魔に昇格することができれば、ハーレムが作れる。少なくとも、ハーレムを作っている上級悪魔は実在する。

 

 ドラゴンは異性を引き付ける。ドライグ曰く、歴代の赤龍帝の籠手保有者は、基本的に異性に困らなかったそうだ。

 

 つまり、俺もハーレム王になれる可能性がある! 最高だぜ悪魔でドラゴン!

 

 ま、その神滅具を宿してた所為で堕天使に殺されたけどね! リアス部長が悪魔の駒で転生させてくれなかったら、夢半ばかつ童貞のまま死ぬところだったぜ……っ

 

 で、それはそれとしてだ。

 

「……姉貴……光也……っ」

 

「……もう、マジで勘弁して……っ」

 

 ついさっきまで俺を睨んでいた二人が、後ろを見て複雑な表情を浮かべてる。

 

 いや、女の人が複雑な表情を浮かべていて、男の方は嫌悪とか怒りって感じだな。

 

 で、その視線の先。ソーナ会長に連れられて入ってきた人は―

 

「……光希(みつき)……久しぶりだね……っ」

 

 ―これまた、すっごく複雑そうな表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—木場祐斗—

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっさと交渉が決裂してほしかったんだけどね。

 

 そう思いながら、僕は状況が流転している現状を踏まえ、かろうじて剣を抜くことだけは控えていた。

 

 さっきのタイミングなら切りかかっても問題ないかもしれなかったけれど、状況が変わっているからね。

 

「……リアス。状況がさっぱり分からないのだけれど」

 

「ごめんなさい。状況が思った以上にややこしくなっているのよ」

 

 生徒会長にリアス部長が困った顔を向けるけど、そこで会長に連れられた男が手を上げる。

 

「申し訳ないが、リアス・グレモリー。先に身内の問題を解決したい」

 

「……身内ね。この場でいいのかしらね」

 

 リアス部長はそう牽制気味に言うけど、流した男の人は懐から書状を取り出すと広げ、教会の戦士達に向かった。

 

 その全員が聖剣を持ち、うち二人はエクスカリバーの持ち主。正直、殺し合いになってくれた方がありがたい。

 

 だがしかし、その来訪者は彼らに対して向き直った。

 

「教皇猊下及び、天使長ミカエル様。主の代弁者としてお二人が連名したことにより、今回の事態は我が上官であるデュリオ・ジュズアルドが対応部隊の指揮権を握ることになった。任務中故すぐには来れないが、その間は名代としてこの私、PMCロザリオの月宮光也(つきみや みつや)が指揮権を一任されている」

 

 ……へぇ。

 

 どうやら教会も一枚岩ではないらしい。しかもミカエルとなれば、天使達の長であり、神に次ぐ立場にいる者だ。

 

 その連名で名代を送り込むとは、目の前の連中は派閥が違うのだろう。僕たち悪魔にも魔王派や大王派がいるからまぁわかる。

 

「何があったかは知らないが、デュリオより「コカビエル以外の手合いと喧嘩しないように」と言われている。臨戦態勢を今すぐ収めてくれ」

 

 そう宣言する光也という青年だけど、同時に表情が諦め気味だ。

 

 実際、二人は不満顔だしね。

 

「どういうことだ? 今回の一件、枢機卿の方々より私達三人が共同責任者として全権を委任されている。いきなりそんなことを伝えられてもね」

 

「まったくだ。如何に天使長と猊下の勅命とはいえ、デュリオ本人ならともかく外注でしかないPMCロザリオに預けられるのは納得しかねるな」

 

 女の方、ゼノヴィアという聖剣使いに続いて、名乗らなかった男の方が不満顔を向ける。

 

 いや、個人的に敵視している雰囲気が丸分かりだ。

 

「つーか、あんたの指揮下なんて納得できるわけがないだろう! 分かってんじゃねえか、ア!?」

 

 相当腹に据えかねているようだ。個人的な敵意が見え隠れしているね。

 

 それに対し、光也という青年も押し切れない内容だ。後ろめたいところがあるようで、それがあるのだろう。

 

 ……しかし、上層部の命令に反対するというなら好都合だ。

 

「どうするんだい? ここで身内の癌だと認定してくれるのなら、まず彼らを排除することで進められそうだけどね?」

 

 僕は魔剣を創り出しながら、そう話を振る。

 

 魔剣創造(ソード・バース)。イメージした魔剣を創り出す創造系神器。

 

 仲間達が僕に託してくれた想い。それが力を引き出してくれた。

 

 この力をもって、名のある聖剣使いを打倒するのは僕の使命だ。教会側が了解してくれるのなら好都合なんだけどね。

 

「祐斗! この場は控えなさい!」

 

 リアス部長は止めるけれど、別に問題ない気がするよ。

 

 というよりこちらも我慢の限界が近い。いら立ちが強くて困ってるぐらいでね。

 

 主に歯向かうのはおろかだけど、忍耐力もそろそろつきそうなんだ。

 

 ただ、そこで割って入る奴が一人。

 

「その辺にしてもらえる? というか、余計な揉め事を起こさないでほしいわ」

 

「光希、どういう状況なんだ……というか、堕天使からの使者って君だったの?」

 

 困惑している光也という青年だけど、やはり光希と呼ばれた堕天使の使者と知り合いらしい。必然、敵意を向けている少年が彼女の弟だからこれまた知り合いなんだろう。

 

 さて、後で話を聞く予定で待ってもらっていたけど、荒事になりかけた気配を察知して割って入った彼女だ。まだ話を聞いてないんだよね。

 

 そして、光希と呼ばれた彼女はストレスが溜まっているのか額に手を当てながらこちらを見渡す。

 

「もう単刀直入に言います! この度、我々神の子を見張る者のコカビエルが、勝手に手勢を連れて教会を襲撃してエクスカリバーを吸う本強奪した挙句、こっそりリアス・グレモリーの縄張りに侵入する騒ぎを犯してごめんなさい! こちらとしても困っているのですが、対応できる人員が色々手一杯なので現場の時間稼ぎ役として派遣された月崎光希(つきざき みつき)ですよろしく!!」

 

 やけくそ気味に言い切ったね。

 

 そのやけくそっぷりに、こちらはちょっと気勢がそがれるよ。

 

 ……というか、コカビエルの独断なのかい?

 

「あらあら。堕天使風情の飼い犬の言い分なんて、そう簡単に信用されると思いますか?」

 

 堕天使に思うところがある、僕の仲間でもある朱乃さんが白い目を向けるけど、月崎光希は真っ直ぐに目を見て向き直る。

 

「真実よ。こちらとしても寝耳に水で、たまたま手が空いていて近くにいたエージェントの私が派遣されたってわけ。……一応、教会側には釈明の書状も送っているんだけど―」

 

 そう言っていた時、今度は光也という教会から派遣された男の懐から電子音が響く。

 

 おや、この時期にスマートフォンをもう持っているなんてね*3。仕事上必要なのだろうか。

 

 そう思っていると、もの凄いぎょっとした表情になった光也氏は、慌てて持ってきていた機材を下ろすと操作する。

 

 慌てっぷりに思わず見過ごしていたけど、何かの新兵器かもしれないし止めた方がいいのだろうか?

 

 ただすぐに何かが光ると、そこから人が映し出される。

 

 立体映像で映し出されるのは、疲れた表情を浮かべる、三十手前の男性だった。

 

 教会で司祭以上が保有する司教杖を持っているが、服装そのものはラフよりだ。こちらを警戒させないためわざとそうしているのだろうか?

 

 ただ、その姿を見た堕天使側から派遣された光希と、教会から派遣された少年が唖然とする。

 

「兄さんっ!?」

 

「……兄上……っ」

 

 ……いや、ちょっと待ってほしい。

 

 今更ながらに思考が追いついたけど、これかなりややこしいことになってないだろうか。

 

 なんで三人の家族が、教会の大司教・堕天使の使い・教会の聖剣使いに分かれているんだ? 思わず激情が一旦収まるぐらい、困惑している。

 

『お初にお目にかかる、リアス・グレモリー。私はバチカンの先進武装開発局副長官として、大司教を称号として授与された司教。月崎(つきざき)・トバル・功希(こうき)というものだ』

 

 ……大司教が本当に出てきた。

 

『先に身内に指示を伝える。……この度、バチカン全体がセラフと協議した結果、コカビエルの一件はデュリオ預かりが正式に決定された。これは急進派も容認しており、決定事項だ』

 

 そう告げた後、そのうえで大司教は肩をすくめた。

 

『だが代理の名代が光也君では、達希が納得するわけがないだろうからな。デュリオと通信で協議した結果、光也君はリアス・グレモリーの牽制役に徹し、「積極的敵対の必要がない」と彼が判断している間はリアス・グレモリー及び眷属、そして駒王町の異形や異能に対する自衛以上の戦闘行為は原則禁止。ただしコカビエルに対する捜索においては、デュリオが到着するまでは独自裁量で許可する。このような形になった』

 

 また、ややこしくなっているね。

 

 とはいえ、その必要がある事態なんだろう。それは分かった。

 

「……分かった、いや分かりました大司教。ならもうここにいる必要もないだろう。ゼノヴィア、むかつくだろうが一旦矛を収めるぞ」

 

「……仕方あるまい。アーシア・アルジェントの件はまた後で話すとするか」

 

 そう言うと、達希と呼ばれた少年及びゼノヴィアはしぶしぶ矛を収める。

 

『後の話し合いはこちらでする。お前達は直下の従士隊を率いて捜索を開始しろ。その方が楽だろうさ』

 

「そうさせていただきます。……じゃぁな」

 

 兄である大司教には恭しくしながら、達希は光也と光希の二人に吐き捨てるように言い捨て、そのまま荒々しく部屋を出ていく。

 

「仕方あるまい。まずはコカビエルだ」

 

「あ、待ってよ二人とも! ……じゃ、イッセー君はまたね? 悔い改めるなら受け付けるわ♪」

 

 イッセー君の幼馴染らしい、紫藤イリナという聖剣使いも挨拶をしてから去っていく。

 

 ……残念だね。聖剣使いを倒す機会を失うなんてさ。

 

「それで、大司教? あなたが話を進めることでいいのかしら?」

 

『ああ。堕天使側から……というより、そこの愚妹がいきなり送ってきた手紙の所為でな。私が準責任者の立場になってしまったといった方が近い。要は本部で対応する管理職と思ってくれ』

 

 大司教の功希という人はそう言うと、呆れた視線を光希及び光也という二人に向ける。

 

 その目は多少冷めているが、身内の不祥事に苦笑いをしている雰囲気だった。

 

『七年ぶりだな、光希。そして光也君には会うのが遅れてすまない。……デュリオから話は聞いていたのだが、会うべきかどうか悩んでいてな』

 

 その複雑な表情に、二人もまた複雑な表情を浮かべている。

 

「いえ。俺がした所業を考えれば、穏やかな会話ができるとは思えませんから。というか、達希君込みで教会の重要人物だったんですね」

 

「ごめんなさい。私が接触すると立場が悪くなるとは思ってたけど、今回の事態を何とかするにはこれぐらいしか思いつかなくて」

 

 二人揃って後ろめたいものを感じさせる対応だった。そして、功希大司教もまた、複雑な表情を浮かべている。

 

 困ったね。ちょっと話が進まないけど。

 

 そう、思った時だ。

 

「とりあえず! 俺達はコカビエルをどうにかする為に協力する! それでいいんですか?」

 

 イッセー君が手を挙げながら、そう言い出した。

 

 思わず僕達全員の視線が集まるけど、大司教は困惑しながらも頷いた。

 

『現状ではな。少なくとも、コカビエルを何とかするまでは共闘した方がいいというのが状況だろう』

 

「分かりました! そういうことなら、まずはその為に頑張ります!!」

 

 イッセー君は元気よく答え、思わず大司教はぽかんとなる。

 

 ただ、イッセー君は本心からの言葉だった。

 

「アーシアの件で教会や堕天使には色々思ってますけど、とりあえずここの人達は協力しようとしてくれてますから! 言うだけ言ってちょっとすっきりしましたし、リアス部長が手を組むと決めたのならやるだけです!!」

 

 真っ直ぐな目で、真っ直ぐな言葉。

 

 まだ短い付き合いだけど、彼はそういう男だということはよく分かっている。

 

 そんなイッセー君の言葉に、リアス部長は微笑んだ。

 

「……ええ。まずは私の縄張りでの問題を解決しないと。仕事*4をするわけでもなく余計な揉め事を持ち込んだのなら、容赦をする理由は全くないわ」

 

 ……これは、僕も付き合うしかないようだね。

 

 ただ、ちらりとこちらを見てくる光也と光希という二人の視線が気になるけれど、ね。

 

 

*1
教会で二番目にえらい階級の人たちと考えればよい

*2
人類全体での保有者増大に伴い、悪魔祓い希望者の保有率も上がっている

*3
日本での普及率は2013年において20%代

*4
神器関係での危険因子の排除といった、各勢力が容認している各種事業




 頑張って巻いていくぜぇええええええええっ!!!!
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