D’s——聖なる歯車   作:グレン×グレン

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 はいどうもー! 今日も今日とて頑張って予約投稿をしているグレン×グレンでっす!

 それはそれとして、今回も揺れる話だぜぃ!


第二話 傀儡政権は傀儡の神輿がないとまとまらない時には有効である

—月崎光也—

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日。一通りの基本的マナーは何とか付け焼刃で身に着けたと思えた時期。

 

 お嬢に連れられ、俺達は若手悪魔の会合に出席することになった。

 

「イッセー君とアーシアちゃんは気をつけようね? 多分だけど、古い貴族とかは俺達のことを「主が飼っている喋れる家畜」とか思ってる人も多いだろうし」

 

「下手に歯向かったりするとその場で眷属に処刑させかねないわよ? そうでなくても、お嬢の管理責任が問われるわね」

 

「う、うっす! 気を付けます!」

 

 俺も光希もそれなりの知識はあるから、その辺りの釘は刺しておいた。

 

 イッセー君はフランクな上役とよく会っているから、感覚がずれている可能性がある。

 

 ただ、うるさい手合いはどこにでもいるんだ。むしろフランクであることが悪徳になりかねない業界はいくらでもある。貴族社会なんて、本来そういうものだろう。

 

 如何に赤龍帝を宿しているとはいえ、他種族から転生した下級悪魔は流石にうかつに発言しない方がいいだろう。その辺はしっかり釘を刺しておかないとね。

 

「これは経験則だけど、異形社会の上役はビバ自由かザ・老害の二択よ。ペーペーのまがい物悪魔がうかつな口きいたら、主のお嬢に責任が向きつつ駆除されると思いなさい。とにかく基本的に黙っとくこと」

 

「は、はい! お口チャックですね?」

 

 アーシアちゃんにも念押ししている光希を見てから、俺は一応周囲を確認する。

 

 ……意外と近代的だね。この辺り、サーゼクス様達の感覚に引っ張られているのかもしれない。

 

 ただ、既得権益を独占できている側がうるさいパターンは大きいだろう。それに警戒するべきこともあるしね。

 

 なんでも、ここ半世紀で悪魔側の出生率が一気に伸びている。というより、人工授精技術を確立させ、それを受けたものが出産したら手当をもらえるという政策を大王派が取ったらしい。

 

 半ば強引に可決して大王は主体で進んだ結果、冥界の出生率は大きく向上。その結果として、民衆の人気では魔王派の独壇場よりだったのに、結構食らいついてきているとか。

 

 確か大王派側のアスタロト家だったっけ。現ベルゼブブを輩出している家だったね。

 

 ……さて、ここで変な内輪もめをするほど馬鹿なことはしないだろうけど。何かしらの牽制球は投げてくるかもしれない。

 

「気を付けてね。変な挑発をしてくる者もいるでしょうけど、喧嘩をしたら駄目よ?」

 

 リアスのお嬢が念押ししたうえで、俺達は止まったエレベーターから会合が行われる階に入る。

 

 と、そこに鍛え上げられた男が一人いた。

 

「リアスか! 久しいな!」

 

「……ええ、久しぶりねサイラオーグ」

 

 朗らかに挨拶する男の人に、お嬢はちょっとためらいがちに挨拶をする。

 

 というより、言葉を選ぼうとしている感じだろうか。何を言っていいか分からないと言いたい感じかもしれない。

 

 ちょっと困惑していると、サイラオーグと呼ばれた男は苦笑していた。

 

「気遣わせてしまったな。気にするな、また同じ場所に戻っただけ……いや」

 

 サイラオーグという人は、少し言い換えるように首を振った。

 

「ヴァプラの人達はよくしてくれている。だとするなら、再出発は遥かに容易いだろうさ」

 

「……本当に、貴方は強いわね」

 

 お嬢は苦笑すると切り替えたのか、俺たちのほうを振り返った。

 

「紹介するわ。私の母方の従兄弟、サイラオーグ・ヴァプラよ」

 

「これはどうも、初めまして」

 

 俺はすぐに挨拶するけど、逆に光希は首を傾げていた。

 

「……あれ? 確かヴェネラナ様はバアルの出では?」

 

 あれ、そうなの?

 

「確か亜麻髪の絶滅淑女(マダム・ザ・エクスティンクト)とかいう、二つ名持ちでバアル出身でも有数の女傑だって、神の子を見張る者の資料で見た記憶があるけど?」

 

 け、結構物騒な二つ名だね。

 

 あ、でもお嬢も滅殺姫とか言われてたかも。物騒な二つ名なのは武闘派の証かな?

 

 ただそう言われると確かに気になる。

 

 ちょっと視線にそれが乗っていると、サイラオーグ氏は少し苦笑した。

 

「先日妹との決闘に負け、次期党首の座どころかバアルから廃嫡されてな。今は母方の家であるヴァプラ家に世話になっている」

 

 ………。

 

「誠に申し訳ありませんでいた!」

 

 速攻で謝罪に入ったね光希!

 

 いや、確かにうかつにつついてはならないところだったと思うけど。

 

 あれ、これフォローした方がいい流れかな!?

 

 ちょっとドキドキびくびく案件だけど、サイラオーグ殿は気にしてないようだった。

 

「気にするな。元々弟から次期当主の座を拳で奪い取ったのでな。やり返されて文句を言う資格はないさ」

 

「すいません。それ俺達下僕悪魔が聞いていいことですか? 機密的な要素とかないですか?」

 

 なんか処刑されそうな気がして怖い禁忌を聞いた気がするんだけど!?

 

 思わず怖くなって問い質すけど、サイラオーグ殿は軽く笑って肩まですくめた。

 

「安心しろ。この話は比較的有名でな。……なにぶん俺は、純血悪魔にも関わらず魔力を一切持たないのでな」

 

「……え?」

 

 思わずお嬢のほうを見ると、お嬢も苦笑いを浮かべながら頷いていた。

 

「ええ。サイラオーグはバアルの特性である「消滅」はおろか、魔力を一切持たないで生まれた異端児なの」

 

「大丈夫ですか其れ!? 名門貴族でそれとか、真面目に居なかったとか死産ってことにされたりしそうですけど!?」

 

 光希が割とビビり気味だけど、サイラオーグ殿はさほど気にしてない風だった。

 

「そこまではされなかったがな。まぁ、元々それが理由で母ごと追放された上、俺だけは欠陥品なのでヴァプラに連れていくことができなかったりはしたが。……いい思い出ではないが、今更だろう」

 

「た、大変だったんですね……」

 

 イッセー君もかなり悲しそうになっているけど、確かに大変すぎる。

 

 ただ、其れだとするとちょっと気になる気がするけど。

 

 なんで今回に限って追放を選んだんだろうか。……妙に気になるけど、うかつにはつつけないか。

 

 そう思っていると、なんか微妙にピリピリとした雰囲気が向こうからしているね。

 

「……で、一体どうしたの?」

 

「ああ。今回が豊作なこともあり、ついてないことにあいつと顔を合わせることになるからな。流石に一戦交えるわけにもいかんので、少し外の空気を吸っていたんだ」

 

 お嬢に答えるサイラオーグ殿は、どうも複雑そうな表情だった。

 

 そしてお嬢も理由を悟っているようで、これまた複雑そうな顔になっている。

 

「……おや、リアスにサイラオーグも。どうしましたか?」

 

 その声に振り返ると、そこにはソーナ殿達がいた。

 

「どうした兵藤? なんか微妙な顔だけど」

 

「匙か。いや、ちょっとよく分かんないことになっててさ」

 

 匙君がイッセー君と話しているけど、さてどうしたものかな。

 

 このままここにいるのもあれだろうし、さっさと入るのも手なんだろうけど。

 

 ただ、下手をするとややこしいことになるのかもしれない。うかつにはつつけないかな。

 

 そう思って困っていると、待合室の方から声がかかった。

 

「そろそろ入ってきたらどうだ、()()。そんなところを渋滞にするべきではないだろう」

 

 凛とした女性の声が響き、そして苦笑しながら顔を見せる。

 

 そして一目見た瞬間、ややこしいことになっている理由を何となく悟った。

 

 というか、明らかにサイラオーグ氏の親族と判断できるぐらい雰囲気が似ている。言い分からしても、おそらく血を分けているんだろう。

 

「……いや、私が家から追放したのだ。兄上と呼ぶのは失礼だな、……サイラオーグ殿」

 

「いや、お前が俺を兄と思っているのなら、うるさいものがいないところでぐらいそう呼んでもいいさ」

 

 サイラオーグ殿は、ちょっと困り顔になりながらもそう答える。

 

「そういえば、マグダランはどうだ?」

 

「今は私の補佐……というより、農作物の育成形式見直し計画の代表につけている。あちらの兄上も貴殿と同じで、才覚と立ち位置がかみ合ってなかったところがあるしな。せめて趣味に近い仕事を渡した方が気が楽だろう?」

 

「そうだな。あいつの研究はバアル領にとっても益になる。貢献できるならその方がいいだろう」

 

 互いに複雑そうな表情だけど、割と会話は進んでるね。

 

「……さて、ここで会話をするのもなんだ。リアス殿もいるし自己紹介をしておこうか、眷属諸君」

 

 そう言って話を切り上げたその女の子は、俺達を見渡してから小さく笑う。

 

「そこのサイラオーグを決闘の果てに追放した、現バアル次期当主。ナーダレイア・バアルという。お見知りおきを、将来の好敵手諸君?」

 

 また、これは色々と大変そうだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—月宮光希—

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、主達同士で軽いお茶会が開かれてから会合になる。

 

 ま、私達下僕は下手に口を挟まないのが有効策だから喋ってないけど。貴族社会だとうるさい奴もいるでしょうし、お嬢の面子を保つ意味でも沈黙は金ね。

 

 とはいえ、今回の会合は中々に異例みたいね。

 

「はっはっは。この会合でここまで有望な若手が集まるとは思わなんだ」

 

「会合が繰り返されてきた中では異例だろう。有望な若手がこうも増えるとはな」

 

 なんてことを言っているお偉いさんもいるもの。

 

 ついでに言うと、相当多いからということか眷属は離れたところで待機になっている。

 

 ……あの部屋の広さだと、ちょっと人口密度が高くなりそうだものね。流石出生率が低いうえに種族の個体数も人間より遥かに低い悪魔業界だわ。

 

 とはいえ、かなり興味を持たれているようね。

 

 我らがお嬢、リアス・グレモリー様と並び立つ同期は、総勢九名。

 

 現魔王を輩出した四家。ゲームが始まってから成りあがっているフェニックスの分家。レーティングゲーム不動のチャンプを輩出したベリアルからも分家。そして家柄に限定すればトップの大王バアル家に、現魔王と大王の折衝を担う大公アガレス家。最後にサイラオーグ殿がいるヴァプラ家。

 

 若手の有望で、多少年齢にずれがあるのにこの人数。これで多いってのもどうなのかと思うわね。

 

 ……とはいえ、確かに有望でしょう。

 

 お嬢も大概だけれど、サイラオーグ殿にベリアル分家の男、そしてナーダレイアとかいうサイラオーグ殿の妹さんは別格ね。次点がお嬢とアガレスの次期当主かしら。

 

 あとなんか、アスタロト家のお坊ちゃんになんか嫌な感じを覚えるのよね。典型的な悪魔の貴族主義者ってところかもしれないけれど、アーシアの方になんか視線を向けてた気もするし。

 

 ん~……何かしらね、これ。

 

 ただまぁ、身内だからって完全に油断していいわけでもないでしょう。政治的な対立はあるみたいだし、お嬢達リベラル側と貴族主義って相性悪いでしょうし。

 

 事実、ナーダレイアの眷属含め、フードを被って姿を隠している手合いは少なからずいる。その辺りの情報戦略と考えるべきかしらね。

 

 ただし。

 

「……っ」

 

 約一名、私と光也をチラチラ見ている奴がいるんだけど。

 

 体格と雰囲気から見て、イッセー達と同年代の女ってこところね。光也も見返しては首を傾げているけれど、一体誰かしら。フードを被ってる所為で顔がよく見えないわ。

 

 そう思っていると、会合もだいぶ終わり気味になっていた。

 

「さて、最後に君達の今後の目的について聞かせてほしい」

 

 それに対し、最初に名乗りをげるのはサイラオーグ殿だ。

 

「俺の目標は魔王になることです」

 

「ほぉ?」

 

 老いた悪魔の一人が、興味深そうな表情を浮かべる。

 

 同じように興味を示す者が多いけれど、一部はあざけるような様子を見せる者もいる。

 

「如何に強いとはいえ、バアルを追放された者が魔王になれると思うかね?」

 

「俺が魔王になるしかないと、冥界の民が思うようになればなれるでしょう」

 

 いうわね、あの御仁。

 

 とはいえ間違いなくただ物ではない。力量に限定すればあの場でも最強格である以上、数百年後にはあるいはと思わせるわね。

 

 ただ、追放した妹のナーダレイア。ぎょっとした顔でサイラオーグを見ていたけど何かあったのかしら?

 

「私は各種レーティングゲームの大会で優勝することが目標です。……その為にも、ゲームの積極的開催を阻害する禍の団も討伐したいです」

 

 お嬢はお嬢で武闘派発言ね。そうとうキテると見たわ。

 

 そして他の悪魔も次々と夢を語るけれど、それがソーナ殿に回ってきたときにちょっと何か起きたわね。

 

「私の夢は、下級中級上級の区別なく通うことができるレーティングゲームの専門学校を建てることです」

 

 間違いなく真剣なその発言。ただ、上役の多くはそれを聞いて呆れやあざけるの表情を浮かべている。

 

 一部上役にはそれを面白くなさそうにしている者もいるようだけど、これはまぁ、貴族主義の悪い面が出ているというか。

 

 おっと、まずいわね。

 

「落ち着きなさい、匙」

 

「へばぁっ!?」

 

 匙が食って掛かりそうになってたので、とりあえず神器を具現化してそのまま裏手でシールドバッシュ。

 

 聖なるオーラを纏った硬い物体で殴られて、匙はもんどりうって倒れたわね。

 

「アンタねぇ。あの手の貴族に、なりたての下級悪魔が食って掛かるとかほぼ確実に処刑コースよ? 良くてもソーナ殿が管理不行き届きでぼろっかすに言われるんだから抑えなさい」

 

「で、でも……あの爺ども……」

 

 根性あるのかすぐ立ちそうだけど、とりあえず関節を極めて取り押さえておくわ。

 

 ほら、貴族主義っぽい奴の眷属とか呆れてるし。

 

「とにかく抑えなさい。ああいう輩にとって、下級中級なんてあれよ? 言葉が通じるから命令を伝えるのにかなり楽な家畜とかそういう感じ。反抗的な態度をとるならさっさと駆除するかで終わりかねないのを、サーゼクス様達が抑えてるだけとも言えるんだから」

 

「ま、確かにアイツらはそういう連中だな。よく分かってるな、アンタ」

 

 サイラオーグ殿の眷属が助け舟を出してくれるので、私はとりあえずクロスカリバーの擬態で匙をしばって置く。

 

「下僕は主の力になりつつ、ダメなことしそうなときは体張って止めて、足を引っ張らないように立ち回るのが役目。イッセーに対してもそうだけど、個人的な義憤で動くのが毒にしかならない世界ってあるんだから落ち着きなさい」

 

 少なくとも、あの手の奴らに何を言っても無駄でしょう。

 

 革命で滅びた王家とか貴族とかの典型例。ただし年期が違い性能も高いから、そう簡単にいかないのが厄介ね。

 

 さて、とりあえず後でソーナ殿との愚痴にでも付き合えば―

 

「―まったくもってその通り。ソーナ殿、その愚行は断じて無視できぬな」

 

 ―その時、ナーダレイアがそう言い切った。

 

 ちょっと流れが変わって、私達も思わずそっちを向く。

 

 あからさまに失望と示しながら、ナーダレイアはむしろ敵意すら視線に乗せている。

 

「レーティングゲームは競技が主体とはいえ、主たる王が率いる戦力たる、眷属悪魔によって行われる模擬戦闘でもある。そんなものを下僕ですらない下級中級に行わせるなど、造反の下地を整える狂気の沙汰だ。貴殿は教師になる前に病院に行くべきだろう」

 

「……言ってくれますね。レーティングゲームは本来、魔王様の名の元に悪魔なら誰もが参加できるとのお言葉が下されているはずですが?」

 

 ソーナ殿も言い返すけど、ナーダレイアは肩をすくめた。

 

「まったく困った発言だ。私としては早いうちに撤回と誤解を招いた謝罪をするべきだと思うがね」

 

 ……空気が、明らかに変わった。

 

「ナーダレイア嬢! 流石にそれは不敬ですぞ!?」

 

「魔王様のお言葉に対して、なんだその口の利き方は!!」

 

 カッとなる上役の一部に対し、ナーダレイアはしかし臆していない。

 

 むしろ堂々と胸を張って、真っ向からそれに向き合った。

 

「そう申されましてもな。まだ言ってませんでしたが、私の夢は四大魔王の完全な象徴化であります故、手綱を握れないと困るのですがね」

 

 ……お~。そう来たか。

 

 私が何となく、かなりやばいことを言っていることに気づくと、ナーダレイアはソーナ殿やお嬢に向き直った。

 

「日本歴の長い二人は知っているだろうが、一部国家は君主を擁しながら実権を放棄する政策をとっている。君臨すれども統治せず、象徴性君主主義というものだ。……もっとも、最近回帰しようとしている動きがあるが」

 

 ため息交じりにそういったうえで、ナーダレイアは大仰に手を広げる。

 

「そもそも! 悪魔全てを滅ぼしかねない愚者ばかりになった魔王血族を放逐しながら、いつまでも四大魔王の名に実権を与えるのも問題でしょう? 内乱直後ならともかく、数百年も経っているのなら権威を我ら政を司るべき貴族に移すことはできたはずです!」

 

 その場の全員に聞かせるように、ナーダレイアは堂々と宣言する。

 

「むしろ、それを怠ったがゆえに勘違いし続けた旧王族のテロリスト化すら招いている! いい機会です、名実ともに魔王という概念から実権を消し去るべきでしょう!」

 

 そう言い切ったナーダレイアは、笑顔すら見せて四大魔王に向き合った。

 

「貴方方も、実家の字を名乗れないのは不本意でしょう? どうです、サーゼクス様。息子と同じ家名を名乗って、重荷から解き放たれたうえで共に政治に参画するというのは」

 

「……なるほど。それは確かに興味深い」

 

 意外なことに、サーゼクス様はそう仰られた。

 

 そして同時に、かなりの上役が好意的な表情を浮かべていた。

 

 ……これ、事前に相応の根回しはしていたわね。

 

 大半はソーナ殿を笑った上役。ただ、笑ってない上役にも好意的な表情を浮かべている者はいる。総数が多いうえ、サーゼクス様まで肯定的に受け取れる反応を示している。

 

 旧魔王血族がテロリストに成り下がり、そのテロ組織が無視できるわけがない大被害をもたらした。更に目的が魔王の名の有名無実化であり、現魔王様方の政治介入そのものは「実家の名前で」やることは止めてない。この所為で、大王派だけでなく魔王派の上役も肯定的に受け取りやすいところはある。

 

 実際、拍手を鳴らす者も少なからずいるわ。

 

「素晴らしい! 確かに、旧魔王派の狼藉を考えれば魔王の字から権勢を完全にはく奪するのは理に適ってますな」

 

「サーゼクス様は本来グレモリーの本家嫡男。このお方の素晴らしさは、ルシファーの称号などなくても我らを導くに問題ありませんしなぁ」

 

 大王派と魔王派の区別なく、肯定的な意見が少なからず向けられる。

 

 これ以上変なことを言われる前に、さっさと名実ともに「昔の王族」に四大魔王の名が持つ価値を下げておく。一つの手ではあるから肯定的に受け取れるものは多いと。

 

 しかし、その流れに待ったをかけるように片手を掲げたのはまたサーゼクス様だった。

 

「だが、その方法は今の冥界ではいくつものハードルがある。それを理解しているかね?」

 

 その切り返しに、ナーダレイアは頷いた。

 

 ま、そうでしょうね。

 

 いまだに悪魔社会は、四大魔王が政治のトップだ。実態としては絶対君主制のトップダウン型から各貴族に権限の多くが分配された合議制になっているけれど、実権を持った状態で魔王が長という形にはなっている。

 

 それほどまでに、悪魔にとって四大魔王という存在は重い。いわば悪魔にとっての国教と言ってもいい。

 

 それをいきなりどうにかするなど困難。まして、旧王族がテロリストになって敵対までしている以上は、象徴としてのこちら側の四大魔王を用意した方が抑止力になる。

 

 それが分かったうえで、ナーダレイアは此処でそれを言った。

 

 それをする。つまり、それができるだけの切り札を持っているということになるのかしらね。

 

 ナーダレイアは、右手を掲げると指を鳴らした。

 

 すると、ナーダレイアの眷属であるフードを被った少女が前に出る。

 

 私は止めようとしたけれど、それを止めるつもり満々でナーダレイアの眷属が動いて止められる。

 

 いや、更にベリアルやフェニックス、グラシャラボラスの眷属もカバーに入っている。

 

 ……ナーダレイアの奴、根回しが良すぎない?

 

 そして私達に止められることなく、フードを被った眷属が会合の場に現れる。

 

「単刀直入に申します。我々は……いえ、()()は魔王の血筋を持つ者を探し出し、お飾りの象徴として飾るべく苦心を続けていました。そしてその一人を私は眷属とし、配下として従えております」

 

 ナーダレイアのその宣言に、サーゼクス様ですら表情を強張らせる。

 

 先生ってのが誰かは知らないけれど、とんでもないことをしていたわね。

 

 ……これは確かに、現政権から旧魔王血族の影響を切り捨てるに値する布石だ。

 

 魔王の名を政治の運営者から排し、更に大王バアルの次期当主の眷属にする。これが成立すれば、今すぐにとはいかなくとも魔王の価値から政治的要素が大いに減衰される。

 

 そしてその根幹となる眷属は、フードを外し―

 

「「……は?」」

 

 ―その、銀が混じった赤茶の髪を見て私と光也は固まった。

 

「お初にお目にかかります。偉大なる悪魔の担い手様方」

 

 一礼した少女は、そのうえでもの凄くいたたまれない表情だった。

 

 当然だろう。私が彼女の立場でも、いたたまれなくなるというか殺されるんじゃないかとすら思うはずだ。

 

 だって―

 

「姉が、明日香が冥界にかけたご迷惑をこの人生をかけて償わせてください。……私、地崎夜明(ちざき よあけ)は、ナーダレイア様の女王(クイーン)として、粉骨砕身の意思で傀儡の象徴を務めさせていただきます……っ」

 

 ―明日香の、妹だもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—Other—

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

「どうしましたか? お茶会が終わったとはいえ、気を緩めるなどカーミラの下僕にあるまじき狼藉です」

 

「申し訳ありません、エルメンヒルデ様。体調管理が至らなかったようです」

 

「……まぁいいでしょう。妹がテロリストになって三大勢力と敵対したという話ですし、多少は気に病んでもおかしくはないですわ」

 

「それでもです。偉大なるカーミラの姫君と会談したというのに、粗相をしていたかもしれないのですから」

 

「そちらは完ぺきにこなせていたのでかまいません。それに、我がエルメンヒルデ家にとってもあなたの存在は貴重です」

 

「……恐悦至極。使えるべき主となってくださった御恩、魔王ルシファーの血と人として宿した神器をもって返す所存です」

 

「当然です。……どうも最近ツェペシュが妙な相手と繋がっているようですが、我らカーミラの吸血鬼は貴女がいるのなら悪魔達を利用できますからね」

 

 

 

 

 

 

 

「……期待してますよ、夜露?」

 

「無論です主。誠心誠意貢献させていただきます」

 




 ……というわけで、今回もグレン×グレン、大王派にキレッキレの連中を捧げましたでございます。

 そして傀儡の魔王として、明日香の妹登場。また誰も知らない視点で魔王血族が吸血鬼の従僕になっているというトンデモ地雷もセット。

 彼女たちの出番が本格的に出せる時期まで続けたいところだぜぃ!
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