朝がだいぶ早くなっているのがまだ慣れないのかなぁ。どうも睡眠不足だと設定はともかく物語が書きづらいので、投稿速度は遅くなりそうです。申し訳ない。
—月崎光也—
「……よし。いい感じだ」
俺は最後の製造品のテストを行い、第一段階をクリアーしたと確信した。
アザゼル先生から渡された各種魔器のデータをもとに、それを創造。十全な性能を発揮させることに成功した。
色々と参考にはなったね。後は、この経験をもとに新しい手段を確立するだけだ。
最も数は絞らないとね。手札を多くしすぎても、それを適切に使いこなせる自信はない。
やるとするならば、複数の基本形にそれぞれ派生型を用意するってところだろう。
そちらの方も並行して進めており、ある程度は形になったと思う。またバンカーハンマーやジャベリンも、だいぶ見直して洗練できたと思っている。
とりあえず、この数十日でできるだけのことはできた。あとは、それを実践でも生かすようにするだけだ。
というわけで、とりあえずシャワーを浴びて汗を流そう。
今日はメンバーで合流する、いうなれば特訓の終了日。
さて、いい報告ができるだけましかな?
「ひでぇえええええええ! 本当にひでぇえええええええっ!!」
イッセー君が号泣することになった。
というより、山籠もりを逃げ帰らずに達成したことにアザゼル先生が引いているのにショックを受けたそうだ。
いや、確かに酷い状況だとは思うよ? 思うけど途中で逃げ帰ること前提でやるとかなんだろうかそれ。
「総督、マジで謝ってください。というかお嬢、その辺りのフォロー全くしてなかったんですか!? 鬼!?」
「えー? そりゃ完遂する前に死ぬようなメニューだが、あれでも足りないぐらいなんだぞー?」
「失礼ね。コカビエルやヴァーリ・ルシファーすら乗り切ったのに、今更山籠もり程度でイッセーが死ぬと思っているの?」
光希が鋭い発言をするけど、先生もお嬢も反論してきた。
それに対し、光希は天を仰ぐと盛大にため息をつく。
「総督? 人っていうのはできないものはできないし、できるにしても段階踏まないといけないのが大多数ですよ? あとお嬢、サバイバルに必須な技能もなく、戦闘ができるだけで判断しないでください」
はっきりとそう言ってから、光希は泣きじゃくっているイッセーの肩をポンポンと叩く。
お前本当に大変だったなぁ。そう態度で雄弁に語っていた。
いやまぁ確かに、本当に酷かった。俺がいなけりゃ一人だけ生活拠点無しでサバイバル生活になってたしね。いや、本当に大変だったでしょあれは。
次からもうちょっとイッセー君のことは気にかけよう。当人もあれだけど、周りの天然やアレっぷりに振り回される苦労人属性と見た。
「……ま、それだけこなせただけあり、基礎的な部分はだいぶ伸びただろ。禁手に至れなかったのは残念だが、そもそも禁手に到達できるだけの劇的な変化なんてそうはねえしな」
先生はそう言うけれど、まぁ確かにそうだよね。
教会にもPMCロザリオにも暗部部隊のプルガトリオ部隊にも、神器保有者は相応にいる。ただ同時に、至っているメンバーは全体のごく僅かだ。
神器がどういう物かを知り、意識的に鍛えられ、更に到達点も分かっている。それだけの環境ですら、至っている者はごく僅か。生涯至ることなく人生を終える神器保有者の方が圧倒的多数派だ。
神器に目覚めたてのイッセー君を、ひと月そこらで至らせる方が無理筋だろう。これはもう仕方がない。
「……というより、光也さんのフォローがあって良かったねイッセー君。というか光也さん、アウトドアというよりサバイバルのレベルでは無いですか?」
祐斗君にも感心されているけど、まぁ確かにね。
身もふたもないけど、サバイバル適性が高いと言われたらまぁそうなる。
といより、半分ぐらいしていたというかなんというか。
「……放浪してた時は、基本的に山中に籠ってたんだよ。宿代を稼ぐのもあれだし、なんというか人に会おうという気がしなかったこともあって」
おかげでだいぶ鍛えられました。
まぁ、ショックが酷かったのは事実だけど、其れだけだからね。まだ自殺をしたいとかそういう感覚はなかったし、それもあってサバイバル技術が磨かれる磨かれる。
人里に下りたのは、基本的に冬だったね。冬になると生活的に困るし、最低限栄養サプリぐらいは買っておかないとって感じになったし。服とかの替えも、その時に買い集めてた感じになるかな。
ちなみに、自分の神器に気づいたのもこの頃だったり。おかげで道具代が浮きました。そのおかげで数年間も子も立派な品生活を送っていたわけだけど。
……ま、色々と出会いもあったりはしたけどね。それはそれで置いといて。
「俺からの指摘だけど、そういうのって戦闘能力とは別のところに比重があるからイッセー君だけだと本当に大変だよ? むしろ俺が見に行くまでどうにかしてたイッセー君が怖いぐらいだね」
色々とやばいというか、よくあんな特訓ができる体力が残ってたというか。タンニーン殿のサポートもあったんだろうけど、イッセー君って意外なところに才能が眠ってるよね。
「お嬢の裸婦像に万単位の金を出す奴がいたっていうし、あんた異形界隈以外の才能豊富なんじゃない?」
「駒王学園って偏差値高いしね。一発合格できるだけでも頭は良い方だと思うよ?」
光希に乗っかって俺も言うけど、いや本当にそう思うね。
テスト問題を見せてもらった時とか、本当の本当にそう思ったよ。
あれ、現役高校二年生だった時期でも合格点が取れる気がしない。
「……ちょっと、真剣に勉強し直そう」
「……同感。本当に同感だわ」
光希と一緒に気持ち落ち込んだね。比較的時間に自由がある昼間だし、後で真剣に勉強を見てもらおう。
あ、空気がなんか微妙になったかも。
「ゴホン! とりあえず、今日で特訓は終了。明日は若手悪魔を祝うパーティがあるから、皆も準備をして頂戴ね?」
お嬢がそうまとめるけど、パーティか。
貴族が集まるパーティとか、全く経験がないんだけど。
「……ちょっと社交パーティのマナーを一夜漬けで覚えた方がいい気がしてきた」
「落ち着きなさい。一夜漬けは本番の効率が悪いわ。お嬢、今からと明日に一時間ずつ程、マナー講座の手配をお願いします」
俺と光希は互いに頷き合うと、イッセー君の方を向く。
イッセー君も平民上がり。やはり慣れてないと思うからね。
ただ、イッセー君は困惑しながらも手を横に振った。
「あ、俺は少し前に部長のお母さんから教えてもらってるんで」
……俺と光希は顔を見合わせ、そしてメンバー全員の方を見る。
―そろそろ気づかない?
大体、これで心が一つになった感じがするね。
—月宮光希—
パーティ前夜、私は一人厨房へと向かっていた。
ちょっと眠れなかったので、何か貰おうと思ったからね。こういう時は一旦部屋を出て気分を切り替えたり、軽く何かを食べる方が眠りやすくなるものだから。
と、そこで小猫と出くわした。
「……表情暗いわね。やっぱり、今回の特訓は芳しくないのかしら?」
「……そうですが、なにか?」
結構当人も気にしているのか、ピリピリした雰囲気で返されたわね。
とはいえ、どうしたものかしらね。
別に私は、総督の言う通り「持っている力をまず引き出せ」とかいうつもりはない。
総督は私ができる範囲内で持てる力を引き出しきったと判断したから上乗せを主軸にしているけれど、別にそうでなくてもいいだろう。
持てる力が嫌いだったり、自分の持つ力を引き出している時間を無駄に思ったり。まぁ理由はそれぞれあるでしょうけど、自分にない力を別個で用意することそのものは悪じゃない。
競技試合とかならルール違反だけど、ルールに反しない範囲なら問題ないでしょう。というか、聖剣を扱える適性があるとはいえ聖剣という武器で上乗せしているって、私の場合は受け取られるわけでしょうし。
人間の力が何かといえば、歴史を参考にして行動を洗練させることと、自分以外によって己を拡張することでしょう。知的生命体がそうでない存在より発展していってるのは、ひとえにそれが理由と言ってもいい。
家畜の使役でもいい。道具の調達でもいい。極論すれば、他者に助けを求める行為も「自分以外の要素」ではあるのだから。むしろ人間はそれがなければ脆弱さが強すぎるし。
そしてそれらを過去の情報から「自分ならどうすればいいか」の判断材料にもする。これが知的生命体の強さでなくて何だというのか。
……だからまぁ、私みたいに自家中毒じみた暴走をするよりは、ルールの範囲内で自分以外で拡張するのは良い事でしょう
とはいえ、そうする前の判断材料はあるでしょうしね。
「ちょうどいいから、夜食に付き合ってちょうだい。ついでに愚痴ぐらいは聞くわよ?」
そう言って、私は小猫を厨房に連れ出した。
夜更けに明日の朝食の下ごしらえをしていた人に相談すると、簡単な夜食を用意してもらえた。名前と顔は覚えたので、後でお嬢に伝えて覚えをよくしてあげるとしましょう。
で、軽くつまみながら私は小猫に話を振る。
「猫魈っていうと、猫股でも希少種で術関係だとやばいって聞いたことがあるわ。仙術ってのが超希少技能だってこともね」
その辺りはある程度把握している。
もっとも、業界に入ってから数年ではある程度しかわからない。
「何かしらのデメリットでもあるのかしら? 使いたくないっていうなら、使いたくないって理由をまず聞かせて。……その内容次第じゃ、私から人工神器研究の伝手に当たってもいいわ」
そこはまず把握しておきたい。っていうか最重要でしょうしね。
小猫は言いたいことを理解してくれたのか、少し俯き気味だったけど意を決したらしい。
「私は、黒歌姉様のようになりたくないんです」
……とりあえず、話を要約するとこうなる。
両親を何らかの事故で失った小猫は、姉の黒歌が悪魔にスカウトされる形でその上級悪魔に保護される。
黒歌は僧侶の駒を二つ使用するほどの才覚を発揮し、めきめきと成長。仙術も使いこなす凄腕の転生悪魔になった。
だが数年前、突如として主を殺して脱走。その才覚で追っ手を返り討ちにしたことで警戒心が出すぎたのか、妹である小猫まで処分する話が出るほどになる。それをサーゼクス様が押しとどめ、お嬢に保護させたのが彼女の流れ。
仙術は万物の気を吸収したり操る力であり、それゆえの強みも持つがリスクも保有する。その一つが「悪い気を取り込むことで性格まで悪しき者になる」という点である。
要は使い方を誤ると中毒症状を起こし、それが精神性に悪影響を与えてしまう。それを姉という身近なケースで知り、己まで危険視されているからこそ使いたくないと。
「難しい問題ね。要は薬の取り扱いを間違えて中毒症状を起こすようなものだし、こればっかりは心構えじゃなくて技術の問題だもの」
強く心持っているのなら薬物中毒にならないなんて言う理屈はない。プラシーボ効果{思い込みが本当に体調に変化を与える通例。「薬を飲んだ」という思い込みで症状が緩和されるなどの+作用であり、逆に「病気になった」という思い込みで体調が悪化することをノーシーボ効果という}にも限度はある。
こればっかりは、先達の言うことを聞いて技術を磨くか、本当に少しずつ練習して少しずつ可能にしていくかしかない。どちらにしても、リスクは伴うだろう。
しかも身内が悪いパターンに陥っているから、なおのことしり込みすると。まぁ確かにデメリットはあるんだし、それは仕方ないわね。
「……事情は分かったわ。周囲を害するリスクは可能な限り避けたいってのはまぁまともな意見だし、私の伝手で回せないか聞いておく。先生には止められるだろうから事後承諾ってことで通すわよ」
こればっかりは確かにそうだ。
デメリットがある以上使わないという選択肢はある。かといって放置しておくと、かつての私のように歪んでしまうかもしれない。
なら、私はそうするほかないでしょう。
といっても、完全個人用に一から設計するタイプでないと、拡張型人工神器レベルが限界だしね。仙術はともかく猫又用という設計にはなるかもしれないけど。
……ま、あと一つ失念してることは伝えてもいいでしょうね。
「ただ一つ、安心させることを言っておくわ」
私は立ち上がると、小猫の頭をちょっと強めになでる。
「私も含め、グレモリー眷属は身内が道を踏み外すようなら止めるわよ。イッセーとかは確実にね?」
「……はい。分かってます」
ならよし。
「総督の方もこっちで抑えとくから、研究施設に話は通しておくわ。「拡張型人工神器の発展形って形で、転生悪魔専用装備を作れないか」って感じでね」
ま、私にできるのはこれぐらいか。
使う使わない。そもそもどっちか。それは私では強く言えない。
ま、選択肢はくれてやったから安心しなさい。
デメリットや自家中毒には優しいわよ、私はね。