障碍者なのはもうマイページで公言しておりますが、今年の春からA型の事業所ではなく障碍者雇用枠に滑り込みましてなぁ。先日ボーナスが入ったのはいいのですが、まぁこれが結構大変だったり朝が早くなったり
—月崎光也—
翌日。社交パーティに出ることになった俺達はその準備をすることになっている。
イッセー君がタンニーン殿と話をした流れで、彼の背中に乗って飛んでいくということができるらしい。気の良い人で良かったけど、後でお礼の一言でも言った方がいいかもしれないね。ちなみにソーナ殿達シトリー眷属も一緒に行く流れになっている。
そういうわけで、パーティ用の服に着替えている女性陣を置いて、俺とイッセー君は既に着替えている。
俺はまぁ、そういう所での護衛任務が来る時もあったりするので、パーティ用のタキシードはそれなりのを持っている。経費で落ちたのでちょっと恐縮した記憶があるよ。
逆にイッセー君達は学生服。まぁ学生が学生服で冠婚葬祭を対応するのはおかしなことでもないしね。というより、駒王学園はレベルが高いから普通に行けそうだよ。
ただし、女性陣はドレスらしい。まぁ言いたいことも気持ちも分かるけど、ちょっとずるくない?
「……祐斗君とギャスパー君は遅いね」
「そうですね。……お、匙じゃん」
ちょっとイッセー君と話していると、イッセー君が匙君を発見した。
匙君も同じように制服を着ているけど、結構鍛え直しているのが見てるだけで分かる。
体つき、そして動きが明確に違う。これは間違いなく成長しているし、相当ハードな訓練を遂げているみたいだね。
感心していると、匙君は俺達に近づいて拳を握って見せる。
「よう、兵藤に月崎さん。……この一か月ほど、俺も結構鍛えてきたぜ」
「お前もか。俺も元龍王のおっさんにしごかれたぜ」
イッセー君がそう答えると、匙君はちょっと引いた。
分かる分かる。冷静に後から振り返ると、成り立ての転生悪魔の為に元龍王が自分の眷属でもないのにマンツーマンでコーチとか、信じられないよね。
ちなみにろくな装備もなく山籠もりまでされたのは黙っておこう。多分だけど、イッセー君に比べるとハードルは低い特訓だろうしね。差がありすぎるとへこむかもしれない。
「……なぁ、兵藤。月崎さんもだけど、会合の時のことを覚えてるか?」
と、匙君は複雑な顔をになってそう言う。
まぁ、あまりいい気分にはならなかったのは当然だしね。
「ソーナ殿の夢は、まぁ確かにちょっと難易度が高いのは事実だけどね。批判するにしても言い方に悪意があると思うよ」
その辺りに関しては俺も同感だ。
「階級社会で誰もが無条件で通える学校。実際に貴族専門学校があることを考えると、どうしても入学者の方よりは下級中級が大きくなるしね。そういう意味では現実的にハードルが問題点がないとは言わないけど、さ」
「……そういうことじゃないんですよ」
俺がその辺りを指摘すると、匙君はしかし反論があるようだ。
とりあえず、まずは聞こう。相手の言い分を一切聞かないで全否定というのも、問題は多いしね。
否定するにしても苦言を呈するにしても、とりあえず聞いてから。俺のその意志を感じたのか、匙君は向き直った。
「確かに貴族には貴族の専門学校があります。でも、貴族なら誰もが問題なく通えるわけでもないんですよ。魔力の量が下級や中級レベルだと、明らかに冷遇されて入れなくなることもあるそうです」
なるほどね。
まぁ、悪魔にとって魔力は自身の持ち味。貴族ともなれば家に伝わる特性を宿すことも間々あるし、そういう思想が蔓延することはあるだろう。
そして、そういう環境では派閥の形成も起きうるし、貴族だからこそのぎすぎすしたところもあるってことだろうね。どこにでもあるさ、そういうのは。
そして、匙君は悔しそうに拳を握る。
「逆に下級中級は、高い能力があってもそれを伸ばせる教育を受けるには、眷属になるっていう狭いハードルが必要になる。俺も悪魔になる前は考えてもなかったけど、日本の教育は本当に凄いんだ」
なるほど確かに。
俺もPMCロザリオの関係で、時折海外に行くことはあった。
そこで思い知ったのは、日本は本当に恵まれているという点だ。
教育にしろ社会保障にしろ、日本は世界でトップとまでは言わないが、色々なものが高水準だ。単一民族国家で独特な文化を形成している点もあるけれど、総合的に見て世界でも有数の過ごしやすい国といえるだろう。
問題がないとは言わないけれど、良いところだって多い。世の日本人は自国をけなすことに苦心するより、少しは世界と比較していいところを探すべきだと思う。いや本当に。
そしてまぁ、教育面でもその通りだろう。
試験で合格したり学費をきちんと払えるという条件があることもあるけれど、余程のことがなければ義務教育を何年も受けることができる。それすらできない国がどれだけあることか。
ソーナ殿はその観点を持っている。そして、それを冥界に照らし合わせてもいるようだ。
「そもそもゲームは悪魔にとって平等だっていうのが魔王様の提唱した理念だ。会長はそれも含めてもっと平等な冥界を作りたいと願っている。その為の学園なんだ。……俺も、そこで教師になりたい」
匙君はそう言うと、俺達を真っ直ぐ見据えた。
「ゲームになったら覚悟しな。俺達は、絶対にお前達に勝つ!」
「そうはいかない。俺だって、部長に勝利を捧げて見せる!」
同年代の少年同士が、敬愛と夢を持って睨み合う。
健全なライバル関係と言っていいんだろうか。ちょっと口を挟むのは野暮かな。
と思っていたら、匙君はなんか別の状態になっていた。
「そもそも俺は、いまだに会長と手だって握れないんだからな。リアス先輩の裸婦像を作れる奴なんぞに負けられるか!!」
凄い嫉妬の炎だ!?
「いやいや、俺だっていつもいつもってわけじゃねえよ? お風呂に入るのも一緒に寝るのも、たまにできない時だって多いからな」
「イッセー君それ弁解になってない!?」
思わず口を挟んだけど、時既に遅し。
……匙君は、崩れ落ちた。
あ~。これはキッツい。
「イッセー君。年頃の男にとってそれは、勝利宣言をされるに等しいからね? 俺も君達ぐらいの時にそんなこと聞いたら、殺意か失意のどっちかが湧いたよ、マジで」
思えば、光希に誘いを駆けられた時の精神状態が近いかもね。
明日香が有村の……を胸で挟んだり入れられたりしている映像を見た時の、あのメンタルが何とも言えない状態を思い出す。
とても冷静ではいられなかった。なんていうか、心のどこかが徹底的に貫かれてえぐられているのに、その光景を自分に当てはめる興奮状態。……鬱になりそうなのに性欲が燃えているあの感覚は、正直あまり経験したくない。
うん。それに比べればマシととはいえ、匙君のショックは大きいだろう。これは流石にいただけない。
俺はイッセー君の肩を力強く掴み、軽くゆすりながら言い聞かせることにする。
「君は性的にとても恵まれている。それを自覚するんだ……というか、本当に自覚した方が殺される可能性は減るよ?」
このままだと、何かの拍子に日常が知られた時点で駒王学園生が大量に殺人鬼になりかねない。ディーバギアが流通したら反射で使いそうなレベルでだ。
昨今本当に世界情勢は悪化しているんだから、マジで気を付けよう。
「……え、俺が、性的に恵まれてる? 何の冗談っすか!?」
本気でびっくりしないでくれないかな!?
—月宮光希—
なんか男衆が騒いでいたけれど、それはそれとして滞りなく準備終了。
女性陣の殆どがドレスを着て、私達はパーティ会場に向かっていた。
ちなみに私は、万が一の戦闘を考慮して動きやすい丈かつ比較的安いドレスにしてもらっている。
流石に大丈夫だとは思うけれど、ある意味テロの狙いどころだしね。お嬢達のカバーを考えると動きやすさ重視でお願いしたわ。タキシードの方がいいかと思ったけどそこは押し切られたわね。
で、私達は今物見遊山でタンニーン殿の頭の辺りでイッセーと共に風景を眺めている。
「なんていうか、ちょっとテンション上がるわね。ありがとうございます、タンニーン殿」
「すっごい同感。なんていうか、精神年齢が下がるっていうか」
光也と一緒に子供心を思い出していると、タンニーン殿はイッセーと話し合っている。
「そういや、なんでオッサンは転生悪魔になったんだ?」
……相当打ち解けているわね。イッセーって、結構礼儀正しいところもあるけど時折態度がフランクにもなるというか。
礼節を向けるべき相手と、良くも悪くも遠慮をしなくていい相手と判断したらフランクになるというか。
でもまぁ、確かにちょっと気になるわね。
五大龍王。かつて存在したドラゴンの中でも、神や魔王に届くだけの余地を持つ存在の称号。厳密には他にもいくらかいるけれど、それらの手合いは凶悪すぎて認定される前に討伐されたとかなんとか。
シュメール神話で地母神として名高いティアマト。西遊記にも縁ある
そしてかつては聖書に記されし龍であるタンニーン殿を含めて六大龍王だった。そのタンニーン殿が転生悪魔になったことで減ったという形になる。
その辺り、割と本気で気になったのでちょっと耳を澄ませてみる。
『ゲームに参加することで問題を起こさず強者と戦えることが一つ。もう一つは、ドラゴンアップルという果実を得る為だ』
ドラゴンアップル。ドラゴンが好んで食す果実であり、一部の龍にはこれしか食べられないという者もいる。
確か、人間界では環境の変化で絶滅したらしいわね。
『今では冥界でしか実らなくてな。そこで俺が悪魔に転生する代わりに、ドラゴンアップルを得る契約を交わしたようなものだ。今では生息地を領地にもらい、人工的に生育する研究なども行わせている』
「……貴方がそうというわけでもないでしょうに。立派といいますか、大変といいますか」
光也がそう言うけれど、確かにね。
……良くも悪くもヴァーリの荒れっぷりを見ているせいか、もはや聖人に見えてきたわ。
「オッサン、いいドラゴンだったんだな!」
イッセーが凄く感心しているわね。しごきの所為で悪印象がぬぐえてないのかしら。
ちょっと呆れていると、タンニーン殿は豪快に笑い飛ばしてくれる。
『ガッハッハ! 赤龍帝からの賛辞はありがたいが、同族を守りたいと思うやつはどの種族にもいるだろう? さほど珍しいことではなく、ただ俺がそれを成せる力を持っていたにすぎんさ』
「いえいえ。そういうノーブレス・オブリージュは大切だと思いますよ?」
私は謙遜するタンニーン殿にそう返す。
確かに、悪魔社会を考えると相応の強さがなければできないことだ。
だけど、強いからそれをする選択が取れるかと言われればそうでもない。
高い地位にいる物は相応の責任を負わねばならないという、ノーブレス・オブリージュという思想。これを体現することができるものは意外と少なく、多くの国家で貴族制が失われていくのはそれがあるだろう。
力があるから何をしてもいい。そういう考えはどうしてもはびこりやすい。だけど同時に、力に基づく選択には、その結果に向き合う責任があるべきだ。
そうでなければ、世界は弱肉強食がはびこってしまう。それを条件付きとはいえ否定する動きこそ、人間社会の美徳だと思う。
まぁ、生まれつき強大な力の差が出やすい悪魔業界では根付きにくいしそうでしょうけれどね。
「……やはり褒められるべき美徳の持ち主ですよ、タンニーン殿。かつての私がそういう考えを持ち得たのなら、きっと……」
「……そうだね。俺も含めて、きっと……ね」
「二人とも。おっさんが困るって……いや、本当に大変でしょうけど」
イッセーにたしなめられるけど、私も光也もそこはね。
背負えばいいってものでもないでしょうけど、吹っ切りすぎるのもどうかと思うことだもの。こればっかりは譲れないわ。
思わずため息をつきたくなるぐらいの、私達の業。特に私は、光也にそれを背負わせた分更に重い。
『……まぁ、若い時は多くの過ちを犯すものだ。特に雄となれば雌を欲すのも必定……いや、本能だろう。それそのものは断じて悪ではない』
タンニーン殿が、そう切り込むように告げる。
『だが、そこで終わるのはもったいないだろう。兵藤一誠のようにハーレムを作るだけというのもそうだが、お前達のように罪を償うだけというのもだ』
タンニーン殿は、そう言い切った。
『お前達は転生悪魔になって、永い年月を生きれるようになった。それに社会というものは、余程のことがない限り罪を償った者に再起することを認めている。それだけを最終目標にするのはもったいないぞ? 雌を囲い、罪を償い、その先をいつかは考えた方がいいものだ』
……その言葉は、心からのものだったからこそ染み入った。
……ええ、まったくその通り。
「そうですね。まだすぐには無理でしょうが、心にとめさせてもらいます」
これは、本当に大事なことでしょうしね。
—月崎光也—
パーティ会場に到達してからは、ちょっと騒がしい状態だったね。
若手悪魔を主役とするパーティという名目だったけど、それを名目に大人が楽しむのが本命らしい。まぁ、貴族となると羽を伸ばす機会も少ないだろうしね。
あとイッセーは特に注目される赤龍帝だったこともあり、お嬢に連れられて挨拶回りだ。俺達は俺達で興味を持たれた貴族に話しかけられたりもした。
……うん、疲れる。
教会の外注として、それなりの礼儀作法も教わっていてよかった。冥界流は短期的なものだったけれど、和平を結べたことで「あ、冥界だとそういう作法なのですね。教会では違いました」が言い訳として通じたからだ。
ただし、俺と光希はイッセー達を逸れてしまった。
「……どうしたものかな、これは?」
「……とりあえず息を潜めましょう」
こっそり話し合い、光希の提案に乗って息を潜める。
冥界流の礼儀作法は完璧では断じてない。教会式はこうだと言い続けるのも、限度はあるだろう。
というわけで、こっそり酒と食べ物を調達して、俺達は隅でこそこそとすることにする。
こういう時に創造系神器があるのはいい。テーブルをカーテンの隅に創造して、そこでちびちびとお酒を飲みながら話すことができるしね。
「……光也。さっきのタンニーン殿の話、どう思った?」
「……正論だよね。実際、俺達は償った後がかなり長いだろうし」
悪魔は、永遠に近い生を生きれるとされている。
少なくとも、寿命なら数千年はあるだろう。病死や戦死などのリスクは大きいだろうけれど、それでもかみ合えば数百年は確実に生きるでしょう。
その人生を、ただ罪を償い続けるだけでいいのか。そもそも、罪を償い終えた後のことを考えているのか。
……俺達はまだ、そこまで考えられない。
そもそもだ。俺達はどうやって償えばいいのだろうか。
真っ先に償うべき明日香があんなことになっている以上、そもそもの根源が宙ぶらりんになっているところもある。
なんというか、考えるだけで気が滅入ってきそうだけど考えないわけにもいかない内容だろう。
「仮定の話よ? 私達は罪を償ったとして、その先の人生をどう生きるのか。確かにそこは、私は全く考えてなかったわね」
「俺は……少しあるかな。もっとも、ほんのちっぽけにしか考えてなかったけど」
ただ、本当にほんのかすかなことだ。それ以上は存在しない。
ただ、それでも思い出す。
「俺がデュリオ達と出会ってPMCロザリオに入る前、実は告白されたことがあるんだよ」
「……え、そうなの!?」
愕然とされると流石にへこむよ。
まぁ、流石にあれは特殊だったけどね。
「ちょっと人助けをすることになって、その時の女の子にね。とりあえずその時は「俺が如何に罪深いか」を遠回しに説明したうえで、「今はそういうことを考えられないし、考えられるようになるかも分からない」と言って断った。……ただ」
ただ、その時の返事が凄かったね。
「なら、私が罪を償う手伝いができるようになってからまた来ます。そう言われたね」
ま、小さい子供の言葉だしね。
むしろ酷い目に遭いかけていたわけだし、忘れていい方向に行ってくれたらいいとは思うけどさ。
「思えば、あれがあったからこそPMCロザリオに入るような流れになったのかもね」
「そっか。なら、それは良い事よね」
光希は微笑んでくれるけど、まぁ良い思い出にはなっているか。
そういえば、今頃はイッセー君と同じぐらいだろうか。……今はどうしているんだろう。
そう思った時、視界に映る人がいた。
……表情が強張っている小猫ちゃんが、急に駆け出している。あと、イッセー君が追いかけていくのも見えた。
「……光希」
「分かってる」
念の為に向かうべきだろうね。
そろそろパーティが本番になり挨拶とかが始まるタイミングだ。なんというか、胸騒ぎぐらいはするだろう。
さて、手早く行って終わらせたい……ね。
一応ハーレム作品であるD×Dを原作としているからか、どうしてもオリ主もハーレム傾向になりやすいグレン×グレン作品です。
なのでサブヒロイン関連は設定しておりましたが、いろいろと先を踏まえた指摘もあったのでかなり後半(原作的にイッセー三年生から)ぐらいを想定していたヒロインの設計をここで小出しにしてみました。