星月が帰った後のことはよく覚えていない。
何をしたのか、何処にいたのか、誰と会話をしていたのか。
まるで虚ろになったかのように暫くの間の記憶が全て抜け落ちている。
ハタ「くっそ…」
寝ても覚めても抜け落ちた記憶のことが気がかりで全くと言っていいほど眠れない。
三狐神「どした?クマスゴいことなってるけど。」
ハタ「あぁ…」
三狐神にこれまでのことを全て話した。
三狐神「多分ボクのせいかも。」
ハタ「え?」
三狐神「まずボクの能力から話しておこうかな。」
ハタ「ちょっと待って、今『能力』って…。」
三狐神「この世界ではとても珍しいようだね、『能力持ち』と呼ばれる人たちは。」
この世界には少なからずとも「能力持ち」と呼ばれる人がいる。
例えば『炎を起こす能力』であったり『水を自由自在に操れる能力』。
そういった能力者はとても重宝され、良くも悪くもその恩恵を受けるらしい。
三狐神「人間がそういった能力を持っているのは珍しい話だけども、それが妖怪や或いは神であれば全く違う世界線の話になる。」
三狐神は名前にもあるように『神様』なのだ。
そうとなれば能力を持っていても珍しくなどない。
三狐神「ボクの能力は『ありとあらゆる次元にアクセスできる能力』とでも言っておこうかな。」
次元と一括りにしても内容は様々で、空間、時間、宇宙、瞬間移動、時間移動、誕生、進化、記憶、生命、自由と、軽くまとめてもこれだけあるのだ。
ハタ「…話のスケールがデカすぎてうまく頭に入ってこないんだけど。」
三狐神「簡単に言えば星月…彼女が帰った後ボクはハタの『記憶の次元』にアクセスした。」
そこで何らかの不具合が生じてしまい記憶が抜け落ちてしまったのではとのこと。
通常ではこんなことは起こらないとのこと。
ハタ「…というか自分の記憶勝手に見たの!?」
三狐神「いや?あくまでもアクセスしただけで記憶自体を見てはないよ。」
次元とはPCでいうファイルに近いものだと言う。
まずアクセスしたいファイル(次元)を開き、次に見たいモノをそこから見ることができるという。
三狐神「だからその気になれば歴史の改変もこの宇宙がなかった世界線だって創れる。疲れるからやんないけど。」
そう、結局はPCと変わらないのだ。
いらないファイルがあれば消す、メモリが残り少なくなってきたら増やす。
三狐神はこうして知らないところで次元の崩壊を防いでいるのだ。
三狐神「これアマテラスにも言ってないんだよ?」
どうやらとんでもない情報を聞き出してしまったらしい。
ハタ「…そういえば星月さんに助手がいるって聞いたんだけど。」
三狐神「ああ、人前には滅多に姿を見せないからね、君と同じ施設で育ったらしいよ。」
ハタ「あの人の助手だからとんでもない才能持ってそうだけど。」
三狐神「まぁ、世間では『大口真神』と呼ばれるくらいには才能じゃないけど信仰は持ってるね。」
◯
星月「改めてだけど、あの白髪の狐をどう思う?」
オオカミ「俺からすれば『アレ』は危険すぎる、能力が一番厄介と考えた。」
星月「じゃあそんな『厄介者』とずっと関わりを持ってる私のことはどう思ってるんだい?」
オオカミ「めんどくさいドクター。」
星月「正直で非常に宜しい。」
この後無理矢理得体の知れない薬を投与されたのはここだけの話。