某、槍のヒーロー、でござる   作:テムテムLvMAX

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おっしゃオタクくん修行編


ヤリやり槍ヤーその2

「3桁は届いただろぞ!」

 

 

 夜の森の中、ひっそりと修行をスタートさせた某は早速壁にぶち当たり跳ね返って転がり落ちていた。

 

 

「ダメだ、全然強度が上がらない」

 

 そう! 召喚速度とかバリエーションとか言う前に物として弱い! 脆弱! 惰弱! 無駄無駄無駄ァ!!! 

 

 

「そのへんのバット買うほうがマシ、でござる」

 

 

 今の所槍の形をしたピコピコハンマーとか玩具の槍とか言われたほうがしっくり来るので、なんとかしたい。なんとかなれ。あはれ。

 

 この槍を作る、生み出すというプロセスを見直す必要があると言うことか、なら参考にするべき手本は誰かな? 

 

 

「そう、父上である」

 

「お前もその壁に当たったか、影新」

 

 

 身体武器化の父上もやはり同じ壁を経験していた様子、父上も体のパーツを武器にする性質上、強度問題に悩んだはずでござるからな

 

 

「ではお父さん、答えを教えちゃうぞって言う前にヒントをやる。辿り着いてみせろ」

 

「某をお試しになるか、それも一興」

 

「まず、物を個性で作る時、何を考えてる?」

 

「それは作りたい物の形や質感、細部までこだわったデザインとかでござる」

 

「そうだね、鉄をイメージしたら鉄、木なら木だ。でも実際は弱い」

 

「そうだ……なぜだ? 素材はきっちりしているのに」

 

「素材も揃ってる、形も素晴らしい、なのに弱い……何処に不備があるかな?」

 

 

 うむ……父上の言う通り素材、造形、共に完璧と自負している。蜻蛉切や日本号は御手杵は完璧な仕上がりだと父上からもお褒め頂いた。

 ならば不備……いや、揃ってると思っていたのはただの勘違い、足りないのだ、だとしたら何が足りない……某の造形に何が足りない

 

 __ハッ?! 

 

 

「本物を知らないでござる、手で持った事も触れたこともない、空想を形にした物だから……でござろうか」

 

「流石頭の切れる子だ、そうだ、武器というのは武骨に見えて繊細なものでバランスや構造にいくつもの工夫がされている。いくら質感や色、形を完璧にしたところで本物には遠く及ばない」

 

「ならそこを意識した造形を心掛ければ良いのですか 

 

「流石に国宝級のお宝を触れとは言えないからな、お前も形に凝るだけでなく中の構造や材質の組み合わせを試すんだ」

 

 

 ふむ、やはり父上は流石でござった。

 この事を念頭に置き直ぐ様修行に取り入れよう、なに、下手な槍も数をこなせば上手くなるはずでござる! 

 

 

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 

 

 

 そして例の夜の森、槍を作りに来た。

 

 

「そうだ、意識を構造に、材質もよりしっかりイメージして、全体を一個のまとまりではなく、一つ一つこだわり抜いた上で一つに完成するものとせよ……」

 

 

 さぁ、行くぞ……某の中にあるイメージを洗練し、精査し、キメ細かな一つ一つの部品を想像し、あぁ今わかった、某は今トレース・オンして無限の剣製しちゃうやつでござる。やってることまるきり一緒でござる

 

 

「あ、雑念が混じったせいでねじれたでござる……これはこれで味がって良いでござるな」

 

 

 ねじれていては槍ではないのでもう一度、今度は心頭滅却、槍のみを思考するのだ

 

 

 槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍檜槍槍槍檜檜

 

 

「あ、間違えてヒノキになったのだ……これも槍と檜の漢字が似ているせいでござる!」

 

 

 3度目の正直! 

 イメージしろ、某の最高の槍、天下に驚く名槍達を! 幾度となく鍛えられた鋼鉄が鋭い穂先となり研がれ磨き上げられ、それに相応しい柄が作られ一体となる。石突一つとして無駄ではなく、バランスを取ることも考えたらバカに出来ない。

 

 

「そして出来上がった物がこちらになります」

 

 

 出来たぞ、蜻蛉切。以前からと比べてずっしり重く、重心のバランスも地上で使いやすく本家のものからカスタムした。

 試し切りをしてみるでござる、以前とは比べ物にならん切れ味を感じているでござる

 

 

「正面に捉えましたるは巨木、幾年月を重ねた杉」

 

 

 幹が丸々と大きく太い杉、これに対し薙ぐように蜻蛉切を振り回す。大きく重いがこの蜻蛉切が某の個性の範疇に収まっている限り使えないということはない。

 

 重いのは重い、しかしその振るう様は軽い枝を振り回すがごとく。

 

 太い幹を三度薙ぎ、三度とも木を輪切りにすることが出来た。本来、突くことを想定された槍という武器でここまで出来たなら某の槍も上出来であろう。輪切りにした杉は切れ味が良かったのか断面がまたくっついて一つとなっていた。

 

 

「御手杵も試すか」

 

 

 蜻蛉切の成功例があるからして、こっちはスムーズに生成出来た。これも同じようにして、切ることが出来た。

 

 

「次、日本号!」

 

 

 抜けば玉散る氷の刃かな。問答無用で杉を縦に一刀両断出来た、素晴らしい切れ味である、これ自分でやったのかと驚きが隠せない。

 

 

「ただ一本一本を作るのに1時間かかるのは課題でござるな」

 

 

 出来が良くなった分時間がかかるようになってしまった、タイムイズクオリティであるからしてそうそう短縮できるとは思えないが、やるだけやろう。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 

「最近しんちゃんが頑張ってるって聞いて、お母さんも手伝おっかなぁって!」

 

 

 こっそり修行を始めてから3ヶ月過ぎた頃、母上から提案があった。なんでも記憶を鮮明にかつ短期で覚えすぐに引き出せるようになる方法を教えてくれるらしい、某の母上凄い。

 

 

「いい? 記憶って脳の使い方を変えれば自在に覚えられるのよ」

 

「ほう」

 

「お母さんの血を引くしんちゃんなら普通の人とは違う脳の使い方、出来るわよね」

 

 

 無論、現にその恩恵に預かっているので。学業を片手間に出来るのはそれのおかげある。

 

「じゃあ今から言うことをよく聞いてね? 覚えたい事があったらこめかみに指を当てて念じるの、覚えろって」

 

「それは母上の個性発動の合図では?」

 

「そうよ、でもね、個性が無くとも脳は外的刺激を合図に記憶しようとするの、パブロフの犬ってやつ?」

 

 

 言わんとすることが大体わかったでござる、とにかくこめかみを抑えた時強く記憶できるように訓練する。ということですな。記憶力が高まれば自ずと槍を作るイメージもよりはっきり洗練されたものになり、ヒーローとして活躍するときにはヴィランの情報を余すとこなく伝えられる……

 

 

 

 

 雄英高校、これでも受かるとは思わないでおこう。

 




筆が進むうちにしたためる
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