アルシャードセイヴァー・リプレイ ノベル・レイアース+a 作:椎名真白
「ママは東京の一番高い塔で、ルーテシアに会ったってゆっとった! つまり! ここやな!!」
香は母親からの情報を元に東京で一番高い場所……スカイツリーにやって来た!
2013年現在、確かに一番高いのはスカイツリーだが……香の母、
「ルーテシアっぽい子はおるかな~」
ときょろきょろ見回す香。
「…だれが東京タワーになんかいくか…」
正確な情報を得ていた颯もまた、ちょっとした親への反抗心からスカイツリーに来ていた。
「えーと……青髪おさげで眼鏡な中学生ちゃんは…………あれ、でもママが出会ったときより成長しとらんとおかしいか?」
年齢で言えば母親と同じ年ごろだろうルーテシアを探す香。眼下を見下ろしながら探していると、街中に突如眩い光が生まれた。
その光はやがて、人の形を取り動き出す。
「今なんか見えた!? ユーレイ!? 白昼夢!?」
「…なんか見えるな、なんだあれ…」
「ルーテシアが異世界からこっち来たんかもしれん!! すぐに行かないとー!!」
たったったと、迷うことなく猛然とダッシュ。光ー!!*1 叫びながら走る姿はかなり注目を浴びるもので、偶然同じ場所に居合わせていた颯の目に入る。
「あ、なんか誰か向かっていったぞ…しょうがない」
スカイツリーを降りて走っていく香を、地上にいた颯が同じく追う。
「あれは……迷子やろーか!」
その光はやがて少女の姿を取る。金髪碧眼、どこかの国のお姫様とも言うべき姿は思わず惹きつけられる美しさを持っていた。
「あのー、大丈夫です?」
ぱぱーっと駆け寄って声を掛ける。
「…予想以上に速いんだが…ってあれか?」
遅れて颯が合流する中、少女、薄暮の君はきょとんと首をかしげる。
「きょろきょろしとるから、迷子かなぁと思って!」
「ここは……どこでしょう? それから私は、誰なのでしょうか」
「…………えっ」
「いっ」
「うっ……じゃなくて、も、もしかしてアレかな。記憶喪失ってやつ?」
「そう……なのでしょうか?」
「ごめんなさい。よく分かりません」
「えぇー、どうしよう!」
その行く末を見守っていた颯だが、一向に話が進む気配が無い為仕方なく出て来る。
「…あー…なにしてるんだ?」
「なんか手掛かりになりそうなものとか持ってないー? あ、颯ちゃん!」
「おう…獅子舞…どういう状況だこれ」
「獅子原って言ってるでしょーー!? そ、それより颯ちゃん! こちらのキレーなお人が記憶喪失っぽくて困ってるみたいで!」
「ししまい?」
「シシハラ!! うち、獅子原香!!」
初対面の人にまで名前を間違えられそうと慌てて訂正する香。あまりの勢いに颯は若干圧倒される。
「お。おう…わりぃ…でなんだって? 記憶喪失?」
「えーっと、香様に……颯様ですね」
薄暮の君は香を見てから、凄く良い笑顔で颯を睨んだ。
何で睨まれたのかは分からないが、薄暮の君の姫様然とした格好を見て颯は余計に混乱する。
「で、なんか手掛かりになりそうなものとか持ってないかなーって思ってたとこ!」
「手掛かり……」
「…お、おう…コスプレってやつかそれ」
「こすぷれ?」
きょとんとしながら香が薄暮の君を見る。
「……言われてみればお姫様ーって感じのカッコーやな! 東京*2見慣れとるせいか、全然気づかんかった!」
「ほ、ほー…都会人だな獅子原」
薄暮の君は手がかりになる物……と少し考えてから、二人が自分の服を見ていることに気づき、それを脱ごうとする。
「わーー!?」
「脱ぐなー!?」
「?」
「すとっぷすとっぷすとっぷすとっぷ!!!!」
「他は…………」
がさごそと、自分の体を漁ると、足元に何かが落ちる。薄暮の君はそれを拾い上げると、香たちの前に差し出した。
「これは、鍵……?」
光を象徴する形をした、不思議な鍵だ。
光の鍵、と言ったところか。
「…鍵か…家のか?」*3
「……はっ、そうやん! お姫様、光の中からぱーって現れたやん!? あれやないと、異世界転移ってやつやないと、ひょっとして!? ママたちが経験したみたいな!」
ルーテシアとの出来事を良く耳にしていた香はすぐにそのことに気づく。
そうでないにせよ、
「…あー…てことは
「……かもしれんな!」
二人が懐から宝石……嘗てルーテシアより母親が授かったシャードを取り出す。
「ママ………………………………母上………………」
薄暮の君は何か思うところでもあったのか、暗い表情で落ち込む。
「…お、おい…なんとかするからあんま落ち込むなよ」
「……わ、わぁどうしたんお姫様。大丈夫やって! ちゃんとママに会えるよう、うち、協力するから!!」
「とりあえず…獅子原のかーちゃんとこいこうぜ。何かわかるだろ」
「そうだね!」
そう言って薄暮の君の手を取ろうとした時、地面が揺れ、何かが姿を見せる。
「ピギャーーーー!」
「はぎゃーーー!!!?? びびびびびっびくりするやんかぁ!!?? なんや、またコスプレか!? ヒーローショーの撮影か!」
地面から突如、蛇のように蠢く怪物が姿を見せた。
「…気持ちわっる…なんだこいつ」
その怪物を見て、颯が鳥肌を立たせる。
その体は緑色に輝きを放っており、魚のような顔に、ヒレを持ち、蛇のような肉体から獣のような爪のある腕を生やしている。翼を持つが、今は地面を這うだけで空を飛ぶ気配はない。異形の怪物は気味の悪い動きをしながら、その口を開いた。
「ミツケタ」
「……い、いやちゃうな! ママから聞いたやつに似ているぞ!」
それは奈落の者。世界の敵……!
「…奈良漬けか!」
「奈落や!!」
「ヒッ……!?」
「お…おう…そうだったな」
「クエスターーーー!」
「えーとえーと奈落に会ったときは、シャードを……こう!」
香がシャードを掲げると、赤き光が満ち溢れる。そこから現れた炎の剣を手に取り、奈落へと対峙する。
「んで、こう構えて……よし、うちがなんとかするからね、お姫様!」
「…なあ、獅子原。確か結界だかはるんじゃないっけか?」
「………………それやーー!!」
「ソレクライナラマッテヤル!」
「お、おう…じゃあ貼るな?」
「ありがとう! お前親切やな!!」
「…こんな感じか?」
颯が魔術により結界を構築する魔法、シールエリアを唱え、辺り一帯を外界と隔てた世界へ塗り替える。
これで、周囲の建物への被害を考慮せず戦闘ができる。
「おう…なんかだんだんわかってきたわ…使い方」
「ソウダ、ヨクヤッタ。愚かなクエスタータチ……!」
「おおー、これが颯ちゃんの結界かー! お前親切なチュートリアルエネミーやな!!」
「これで外部からの援軍は望み薄くなったダロウ……!!!」
「へへっ、援軍なんか来る前に片付けちゃえば良いんだ!」
奈落クリーチャー、ベルフェゴールと香たちの戦いが――。