アルシャードセイヴァー・リプレイ ノベル・レイアース+a 作:椎名真白
トワイライトワールドを訪れた一行は、そのあまりの寒さに身震いする。
一面に広がる銀色の世界。
雪だ! 雪! 雪が降っている! すっごい雪!
「……うわ、なんやココさっむ!? こっここここれがトワイライトワールドなん!?」
ガタガタと身を震わせながら香が言う。
ルーテシアが周囲を見渡し、ここが王の都の北方に位置する北風山脈だと理解する。
「ここは……氷風山脈? 随分王都から離れた場所に出てしまいましたね……」
「とても……さむい……」
「うち出せるの、ろうそく程度の炎なんよなー……くっ、焚火くらいのごっついデカくてあったかいの出せるように修行しときゃよかった……! お姫様、大丈夫か!? うちのろうそく炎魔法いるか!!」
香が武器とする炎剣はあくまで敵を切り捨てるものであり、暖を取るには適していない。
「ああもうパーカーしかないけどこれで我慢しろ」
寒そうに震える薄暮の君を見ていられなくなった颯が、自分が着ていたパーカーを脱ぎ羽織らせる。
「すぐに山を降りたほうが良さそうですね……ここに留まっていては皆さんのお身体が……」
そうして下山を提案するルーテシア。
「あっ!? あれ!!」
何かに気づいた香が指さした場所に人影が見えた。
それは、蛍のように思える。顔までは分からず、姿もすぐに雪の中へと溶けてゆく。
「いまのは……蛍さん?」
「ママか! おーーい!!」
「あちらは山頂……」
「き、消えた? モノホンか? それとも幻覚か?」
「獅子原のかあちゃんかあれ? 調べるか」
颯は人物、物品の場所を探る魔法、ロケーションを使用する。もしあれが本物の蛍ならば、これだけ近くにいるのだから魔法が反応を示すはず。
手から生み出された雷が、矢印の形を取って浮き上がる。それが宙で回転したかと思うと、南方を示した。蛍が消えた方とは逆方向、王の都の方角だ。
「おいあれ偽物だよ。本物は王都のほうって感覚がある」
「マ、マジか!?」
「……罠、ということですね。ありがとうございます」
「なら、いったいあれはだったのでしょうか……」
『隠し子?』
薄暮の君が首を傾げた。一度見ただけであれど、自分を救おうとし、代わりに連れ去られた人物。気にならないはずがない。
「さてはうちらを騙してあっち行かせて雪山の中で倒れさせようっちゅー、こっすい手やな!」
「山を降りて王都へ向かいましょう!」
「がってんや!」
結局ディグニティの遺体もプラウディアの手で氷漬けにされたものの、回収されずそのまま放置されてしまった。任せますと言ったのにそのまま放置されたディグニティ涙目である。
あの蛍が何者だったかは気になるところだが、優先すべきは王の都の現状の確認、蛍の奪還、それからディグニティの埋葬である。
遺体も下手に放置しておくとアンデッドになりそうで怖い。手遅れかもしれないが。
薄暮の君はルーテシアがそのまま抱え、下山を開始する。道中、クリーチャーとの戦闘などがありつつも、然したる問題なく都の近くにやって来た。
都は結界のようなもので覆われている。“闇の大魔”によるもので、破るのは難しそうだ。
「ち…こりゃはいれねーな」
「強固な結界ですね……破るのは難しそうです」
「すぐ直行はできんってワケか! むきー!!」
「入る方法を探しましょう……!」
ロケーションが通じたということは、何かしらの穴があるはず。
それを探るべく、ルーテシアは封じていた自らの記憶を読み解いていく。そして、ある存在のことを思い出した。
何でそんな強力な兵器の記憶を封じていたかというと、若気の至りというか、ルーテシアが破天荒な時期に生み出した存在だった為、性格がだいぶアレなのだ。ちょっと、見たら目を覆いたくなるくらいに。
全部で三騎ある魔神は、それぞれ
情報を元に、都を一旦離れ付近で聞き込みを行う。時に魔法を行使しながら調べた結果、それぞれの居場所が判明する。
まず、雲の中に隠した雷神は、時折地上に姿を見せるようで、仮の姿を取り始まりの街で治安維持部隊と協力し事件解決をしているようだ。ただし意思疎通は取れず、機械的に治安維持に務めているだけのようで、街の人もルーテシアが作り出した警備ロボくらいの認識だったらしい。
また、奈落との戦いには参加しないという。どうやら奈落勢力に闇の神が紛れているのが原因のようで、レクサスや他の闇の神が混じっているかもしれない、という考えからエラーを起こし真面に活動できないのが原因のようだ。
「へえ…魔神ての格好いいな、味方にできないもんかな」
そりゃ格好良いだろう。そういうコンセプトで作り上げたのだから……。
「識別機構……改修しなければいけませんね」
雷神の現状を顧みてルーテシアが呟いた。魔神もルーテシアが生みだしたのだから、レクサスや颯と同じく自分の子と言えよう。親として、愛してあげるべきだと、嵐と愛し合ったことで向き合うべきとの考えに至った。
炎神フラムは巨人の塔より東の先、そこに炎に覆われた最果てがあり、その奥底で眠っている。呼び覚ますには王の鍵が必要だが、王の鍵とは何だったか……。
蒼神メールは氷風山脈の頂上に封じられている。その身を溶かし覚醒させるには、灼熱の炎が必要。
覚醒の順としては雷、炎、蒼の順で起こすのが妥当だろう。
彼らのことを調べる中で、やっと王の鍵をしまった場所を思い出した。*1
巨人の塔、魔法騎士のシャードを全て揃えた時、鍵は出現する。
「魔法騎士のシャードは全てここに……まずは巨人の塔からいくべきでしょうか」
「マカミっちゅーのが、ごっついすごそうなのはよう分かったで!」
始まりの街で調査を進める中、流石に疲労が溜まっていたのか、眠たげな薄暮の君を寝かしつけていると、外に出ていた颯が戻って来る。
裏社会の人物たち、王の都に不満を持つ影に潜む、そんな者たちから情報を聞き出してきたのだ。
危険だとルーテシアが静止するも、慣れていると言って向かった颯は、しっかりと務めを果たしてきた。
どうやら、自分たち以外にも魔神を探している人物がおり、ヒカルと名乗っていたという。
「…………? 私達の他にも魔神を探している人物が……?」
「ヒカルって誰だ…?」
特徴を聞き出し絵にしてみれば、蛍に似た容姿であることが判明する。
そこで浮かんだのが、氷風山脈で見た人影のこと。
「蛍さんに似ている…………? まさか、山にいたのは……?」
「見た目が似てて、名前も同じ?偶然……なんやろか? それとも双子?」
「念の為、そちらについても警戒しておきましょう」