アルシャードセイヴァー・リプレイ ノベル・レイアース+a 作:椎名真白
宿で一晩を過ごし、一夜明ける。
今日は雷神の居場所へ向かう予定だ。昨日は会えなかったが、今日は会えるだろうか。
「トネールは時折この街に降りてくるそうですが……」
辺りを捜索するルーテシア。同じく探すのを手伝っている薄暮の君は息が上がっている。
「はぁ……はぁ……旅は……疲れるものですね…………はぁ……」
「お姫様、大丈夫か? うちがおぶるで!」
『(*'ω'*)』
香が薄暮の君を背中にしょいながら聞き込みを続ける。
ルーテシアは少し離れたところで声を掛けようとしては無視されていく颯が目に入る。
街の人も無視しているわけではないのだろうが、声が届いていないのか、中々颯に耳を傾けてくれない。
裏社会から情報を持ち帰ってきた昨日とは真逆の状態であった。
「手伝いましょう」
「お、おう…たのまあ」
無意識ながらも、ルーテシアは母親のように振る舞う……或いは父親かもしれない。通った参道は嵐の参道だから、ルーテシアの参道は通っていないのだ。
協力した情報収集の末、雷神が出現するという街角まで歩いてきた。お洒落なカフェがある場所で、その店の近くに怪しげな機械がいる。
「……」
待ち合わせのカップルの目印に使われていた。
「トネール!」
「おおぉ……あれが! なんや、ごっついなぁ! かっこええなぁ!」
「なあ、ルーテシア…さん、あいつ機械なのか?」
「はい。私が作りました」
雷神、トネールの体を弄りながら、自らのレリクスと端末を接続する。
「マスターコード、認証を…………あら? エラーが起きていますね……修復が必要のようです」
「クロネージュ……シロノワール……」
「えーと、こういうのは……叩けば治るんちゃう?」
ぽんぽんと叩く香。流石にそれで直る訳はなく、大人しくルーテシアの修正が終わるのを待つことにする。叩いて直るのはディグニティの魂くらいだろう。
と、かつての魔法騎士の名を呟く。
大食らいだった魔法騎士を懐かしみながら、ルーテシアはシステムの修正を行っていく。その魔法騎士の名を冠した菓子をカフェで取り扱っているらしく、香と颯、薄暮の君はコーヒーブレイクと洒落込んでいた。
再起動を繰り返しているルーテシアにも、買ったサンドウィッチを渡そうと香が近づいた、その時。
「魔神は私が貰う……!」
「!?」
物陰から誰かが飛び出して来て、トネール狙い突撃してくる。
ルーテシアにサンドウィッチを手渡した香は反射的に後ろを振り向き、思わずそれを蹴り飛ばしてしまう。
「ぐあー!」
「誰……っ!?」
「だ、誰や!」
そのままお空に消えていく人影。
「いまのは…………まさか、例の魔神を狙う……?」
「はっ、ママに似とった……まさか噂のお人か!?」
「トネール、私がわかりますか?」
「マザー……ゴッドマザー……」
システム修正が終わったところで颯と薄暮の君も合流する。少し丸みを帯びたボディは女性型のようで、どこか愛嬌のある見た目をしている。
「おーこいつかわいいな」
「マスター颯。よろしく頼む」
「おう、よろしくな! …て、私がマスターなのか!?」
「おそらくシャードに反応したのでしょう。それに……あなたは彼にとって妹のようなものですし」
「…へーほー…え? 今なんかいったか?」
機械に夢中だった颯は良く聞き取れなかった。
「いえ、トネールをよろしくおねがいしますね」
颯のシャードが輝き、トネールの力を得ていく。
魔法騎士として魔神と無事契約ができたようで、颯はその力を扱うことができるようになった。
「トネール、みんなを乗せていくぞ!」
「イエス・マスター」
トネールが雷撃を纏ったかと思うと、その姿が何倍にも膨れ上がり、巨大になる。
その光景に民は驚くも、ルーテシアがいたことですぐ落ち着きを取り戻した。
颯の合図に従い、トネールが飛翔する。そうして、次の目的――氷風山脈へ舞い戻る。まさに稲妻の如き速度は、魔法により乗っている人物が落下しないよう安定化も取られているのだろう。快適な空の旅を約束するものだった。
「流石は兄妹……息があっていますね」
「ひゃーーーシャードで呼び出したうちのサラマンダーもどきよりずっとはやーーい!」
(もうなんかわかってきたぞ…このルーテシアがあのルーテシアだなあ!?)
流石に今度は聞こえた颯が真実に辿り着く。
兎も角、次の魔神をどう解放するか考える必要がある。
氷風山脈で先ほどの下手人、ヒカルがいた可能性が高い今、蒼神が無事か確認する必要もあった。