アルシャードセイヴァー・リプレイ ノベル・レイアース+a 作:椎名真白
氷風山脈の麓までやって来た一行が雪山を登っていく。
トネールで一気に駆け上がることも考えたが、修復が完全に終わったわけではない為、一度時間をかけて更新を行わせる必要があった。
「香さん! その氷は叩いても割れません! 気をつけてください、上に雪が積もっていますから下手に崩すと雪崩になります」
「……ひえっ!? す、すまんかった!」
危うく全員揃ってお陀仏になるところだった。
そんなトラブルに見舞われつつも、協力して山を登っていく。山に住む動物などからの奇襲に対応したり、発生した雪崩を回避したりしていく中で、ますます颯はその事実を思い知らされていく。
(あーやっぱなー妙に相性いいんだよな~確定じゃねーか!)
「ありがとうございます」
ルーテシアが颯にそう言う。目が完全に保護者の目である。
「おう…お互いにな…」
ずっと母親の浮気相手だと思っていたからこそ、どんな風に接していいのか分からない。
しかし、嵐はどうやってルーテシアとの間に自分を生み出したのだろうか……謎は深まるばかりである。まさかルーテシアにナニが生えて嵐を孕ませたとは夢にも思わず、アルフであることから神秘由来の出生の秘密でもあるのかなと薄っすらと考える程度である。
ようやく山頂が見えてきた。見れば、少し先に氷漬けにされた蒼神が眠っている。
蒼神を目覚めさせるには、炎の力が必要。これは香のシャードの力があれば炎神がおらずとも可能だ。
「香さん! あなたのシャードの力を!」
「うちやな……よぉし!」
香のシャードが光を放ったその時である。
魔神の覚醒を妨害せんとする闇が立ちはだかった。
「貴様らに解放させるわけにはいかぬ!」
「……ってぇ! な、なんやぁ!?」
姿を見せたのは下半身は蛇で、目を閉じた女王様のような風貌の巨大な女だった。
「……!!」
「知らんオバハンが!?」
「だれだ!?」
「奈落……我らの敵です!! この山に住まう怪物、とお考えください!」
「そうだ」
「な、なんやうちらの邪魔しに来たんか!?」
「初めまして。そしてさようなら。お前たちが魔神を解放する確率は、0.000000000001%だ!」
「ここで邪魔されるわけにはいかねえ…」
「去るのはあなたです! 邪魔はさせません!! ゼロではないのならいかなる確率でも引き寄せてみせましょう」
「できるかな?」
奈落の瘴気が溢れ出す。
圧倒的威圧感に押され、薄暮の君がたじろいだ。
「そんな……ここまでなのでしょうか……?」
「ち、じゃあこれでいくぜ」
颯が紡ぐ音楽が、焦る者たちの心をリラックスさせる。おかげで冷静になれた。
ルーテシアが光を放ち、目の前の敵の気をそらす。その間に香がシャードの力で蒼神を覚醒させた。
「我はメール!」
氷が溶けて姿を見せる蒼神、メール。
「メール……! 目覚めたのですね!! 私がわかりますか?」
「母上、そして新たな魔法騎士の想い、確かに受信した!」
「ありがとう! ともに戦ってください!」
「そのメールなのか!?」
思わずツッコミを入れる颯。
「メールはこの世界の古き言葉で海を意味します」
とか言いつつルーテシアは魔法で奈落を追い詰めつつ、メールに修正プログラムをメールした。
「おのれぇ……おのれぇ……!」
恨み言を吐きながら消えていく奈落……デボネイラ。魔神覚醒を止めるどころか、まともに相手にされず撃退されるのだった。
とはいえ、黙って撃退される奈落でもなかったようで、突如大きな音が響いたかと思うと、メールが封じられていた先、山頂から、雪崩が発生。
「……! 積もっていた雪が崩れます! 皆さん、脱出しましょう!」
「うひゃーー!?」
「…おいおいおい、急ぐぞ」
メールの修正プログラムの更新がこのタイミングで終わり、その本領を発揮。
守護の壁が雪崩を塞き止めるも、完全には防ぎきれなかったようで、ある程度の雪がそのまま逃げる一行の方に流れてきた。
「逃げろや逃げろーー!! ダメな分はうちの炎で燃やしたるーー!」
香がひたすら流れて来る雪を溶かし、何とか危機を脱した。