アルシャードセイヴァー・リプレイ ノベル・レイアース+a   作:椎名真白

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闘神(とうかみ)ザ・ガード

「にこにこ!」

 

 戦いを遊びと捉えているのか、楽しそうににこにこ笑うフラム。

 

「続けて参りましょう……!」

「まかせろ…あー…あー…おう」

 

 ルーテシアのプレコグニションによる未来予知。それを啓示のように受け取った颯は反射的に返事をしながら、恨んでいたことを思い出す。

 自分の思い違いによるものだったし、相手側にその感情を気取られてはいないだろうけれども、それまでの感情を無かったことにできるものではなく、どう接したらいいのか時折分からなくなる時があるが、今は戦闘に集中しないと。

 しかし、ルーテシアが父親……? だとして、自分にその要素はちゃんと継がれているのだろうか。直感的にそう思えただけで、自分の体にその要素があるかと言われれば疑問である。

 いや、よく見比べてみれば胸のサイズなんかは……。

 

「小サキ者ヨ」

「うるせえ! だれがペチャパイだ!」

「???」

 

 “闇の大魔”の言葉に思わず反応してしまう颯。隣にいたルーテシアは突然何をと疑問顔。

 何を思ったか“闇の大魔”もその言葉に一瞬固まるも、にやりと不気味な笑みを浮かべて弄りだす。

 

「チイサイヤツメ」

「殺す」

「ペチャパイってなあに!! おいしいの!!?」

「殺す」

「……」

 

 ペチャパイ発言、まさかのアルキオネにも被弾した。可哀そう。

 

「small....Good.....」

「何の話をしているのでしょう?」

「わかりません……」

 

 メールも会話の流れをくみ取ってそんな発言をする始末。

 薄暮の君とルーテシアは会話の流れが良く分かっていないようだ。そのままのキミでいて。

 

「誰がペチャパイやーーー!!!!」

 

 ついでとばかりに飛び火した香が“闇の大魔”に斬りかかる! 

 対し“闇の大魔”は加護の力を以てその身を固めた。斬られた一撃はしかと受けるも掠り傷。そのまま香を掴んで投げ飛ばす。

 その横では颯がアルキオネにこんなの*1連れて来やがってと雷撃を放っていた。未来予知を受けた攻撃であったものの、怒りで我を忘れたアルキオネが火事場の回避を発揮し躱してしまう。

 

「うるせー!」

「よけんなー!」

 

 これが怒りのペチャパイパワーか……。

 颯は胸があれば当たっていたのによぉと舌打ちをしつつ、投げ飛ばされていった香に目配せをする。

 敵三人の背後から香が精霊球による火炎球を放つ。

 

「おんどりゃああああ小ささの怒りを知れやーー!!!!!」

「いけ、獅子原、ペチャパイ同盟の力見せてやれ!」

「誰がペチャパイ同盟やコラーー!!!???」

「いやもうこれわかんねーな??」

 

 怒りの炎は“闇の大魔”の防護を貫きさらなるダメージを与える。加護の力で防御を上げたと言えど、一撃を完全に防ぐ加護と異なり、持続時間が長い加護を纏ったことで防げる量には上限がある。何とかアルキオネのカバーが間に合ったオベロンも合わせ、一気に削れた。

 このまま押し通す。香がさらなる追撃を仕掛けようとしたところ、真横から太刀による斬撃。ヒカルによるもので、香は慌ててそれを精霊刀である炎剣で防ぐ。

 

「ったぁー!? あっぶなぁ!? ええい、今はそんなことしとうバヤイやないやろ! あっち! この世界をヤバくしよーとしてるんやで!!」

「なんか気に食わない……!」

「な、なんちゅー理由やーーー!?」

「ひゃっはーーー!」

 

 フラムみたいな叫び声をあげたヒカル。その頭上に巨大な炎が生み出され、切り結んでいる香目掛け放つ。

 

「は? お前空気読めよ!」

 

 あまりの暴挙。颯がそれを阻止せんと加護を放つも、ヒカルも同じく加護で抵抗しそれを相殺。神炎が香に迫る中、今度はルーテシアが加護を使い颯の加護を回復、再び颯の加護が放たれ、ようやく神炎は消滅する。

 

「素直に向こうを狙っておいてくれれば助かったのですが……仕方ありません」

 

 元より敵対関係……だったはずの少女だ。あっちは香に任せ、ルーテシアは“闇の大魔”勢力に向けレーザーを放つ。

 乱戦状態故に回避が疎かになった“闇の大魔”たちをレーザーは確かにとらえ、その内の一つが急激に力を増した。

 

「はん?」

 

 オベロンのカバーも何故か間に合わずアルキオネにも攻撃は命中。さらに“闇の大魔”が光を受け、その場に倒れ伏す。

 どうやらレーザーの一筋に神の加護が乗せられたようだ。

 

「これで大魔はなんとか……!」

「おおおーっ! やってくれるやん、ルーテシアさんーっ!! それに今の光! さてはお前の力やな!」

「おう、やるな」

「ふんっ」

 

 どうやらそれはヒカルの加護によるものだったようだ。

 

 

「あんた、ちょっとは役に立つところも……って、危ない!」

 

 アルキオネの魔法、それが加護により拡張、拡大し強力な神撃として放たれた。

 金に輝く雷撃は瞬く間に到来――。

 

「颯さん……!」

 

 ルーテシアがトランスポーターを起動し颯を庇うべく前に前に出る。

 

「あほか…ここの王様がおっちんでどうする! どけ!」

「っ!?」

 

 そのルーテシアを押しのけ、逆に庇うように前に出た颯。

 香、ヒカル、颯の三人に被弾した一撃は、一気にその命を削っていく。

 

「ふんんぬううぅぅうううっ!」

「痛いぞ!?」

「あーーーくっそ」

 

 シャードの力が守ってはいるが、すぐに動けなくなるヒカル。

 

「香さんっ! 颯さんっ!!」

 

 颯も辛うじて、シャードにより死を回避する。

 その視線の先で、香が死んでいた。

 その身は焦げ、肉の焼けた臭いが辺りに漂う。

 体の一部は炭のようになっており、そこからボロボロと砕けていく。

 

 すかざすルーテシアが加護の力で蘇生を試みる。

 逆再生するかのように、砕けた体が元に戻り、その場に復帰する香。

 

「か、感謝するで……ルーテシアさん! そっちの……ヒカル、って言ったな! あんたは大丈夫か!?」

「おい、生きてるか? 獅子原は死んでたけどよ」

「余裕のよっちゃんってやつよぉ!?」

 

 強気の言葉のヒカルだが、無理をしているのは見て取れる。あと一撃でも受ければ死ぬだろう。

 シャードの加護は人の死すら蘇生する強力なものだが、使える加護や使用できる回数には限度がある。そう何度も一度に使えるものではない。

 もう一度香を塵へと返そうとするオベロンの拳をなんとか躱し、態勢を立て直す。

 

「って、おっわぁ! 人が他人の心配してるときに危ないなお前ぇ!?」

 

 残された敵、アルキオネとオベロンにどう攻めたものか。

 

「まだいけるか?」

「大丈夫です……! ありがとうございます」

 身を挺し守ってくれたことに感謝しつつ、ルーテシアは魔力を高めていく。

 その時、倒された“闇の大魔”の体から膨大な闇が溢れ出し、声が聞こえた。

 

「よくやったヒカル」

「…………!? お前は…………!!」

「あーっ! あんときのオバハン!」

「“闇の大魔”は砕け散り、その力、今ここに……!」

 

 ヒカルの背後に現れた幻影、デボネイラは、その手に“闇の大魔”の力を集める。

 やがて幻影はその闇を元に新たな姿を構成していく。

 

「さあ、この力で、魔法騎士(マジックナイト)を倒すのだ……!」

「んなッ!?」

「おい…なんかやばくねーか」

「まさか」

 

 その姿は巨体にして機械、機械にして神に近き等しき存在。

 ――魔神(まかみ)

 

あはははは! 来い……! 闘神(とうかみ)……ザ・ガード

 

EMERGENCY! EMERGENCY! EMERGENCY!

闘神(とうかみ)ザ・ガード

 

 

「おい…なんかやばくねーか」

「えぇい、なんでや! なんでそうウチらの相手してくるんや! 今の力だって、ヤバイやつやろ!?」

「さあ、戦いを始めようよ!」

「くっ……うちらの敵になる言うんやったら、遠慮なく転がさせてもらうで……! あんたとは……分かり合えそうな気もしたんやけどな……!」

「お前の中には確かに、暖かいもの*2が感じられる。だけど……! お前の中のもう一つ*3が、私は気に食わない……!」

 

 ザ・ガードが登場すると同時、そこへ向け無視するなとアルキオネが魔法を放つ。

 ザ・ガードは身を護るべく前に手を出すと、タイミングを合わせ障壁を展開。

 通常ならば入ったはずのダメージ、しかしタイミング良く出された障壁は魔法の威力を軽減するのではなく中和し、完全に消滅させた。

 ザ・ガードに搭乗したヒカルが巧みな操作技術を介しその本領を発揮していく。

 防御の布陣。闘神ザ・ガードの名の冠す通り、ガード性能に特化した魔神のようだ。

 

「さあ、いっくよー!」

 

 香と颯が波状攻撃を仕掛け、ルーテシアのレーザーが相手を行く手を阻害しようとするも、縦横無尽に戦場を駆けまわるザ・ガードはそれらを回避、時に障壁による相殺を行いいなしていく。

 

「くぅっ……なんやコイツ、動きがメッチャ速いな……!?」

「速さならこっちも負けてねーんだよ! とんでけ!」

 

 颯がさらに雷撃を放つ。

 ヒカルはまたもやタイミングを合わせ相殺を図るも、途端速度が増しタイミングがずれてしまった。

 それによりザ・ガードに雷撃によるダメージが入る。

 吹き荒れる光線と雷撃の嵐はアルキオネ、そしてオベロンにも徐々に傷をつけていった。

 

「しつこい!」

 

 到来する光線をアルキオネの魔法が弾き、目の前に迫ったザ・ガードの拳へ受け流す。

 ザ・ガードはそれを相殺、一度足が止まる。

 

「“闇の大魔”はなんか奪われちゃうし……! そんなの聞いてないんだから……!」

「……ひとまず、ヒカルとやらは後にさせてもらうけん……!! お前らが……先やーーッ!!」

「お願いしますっ……!」

 

 直前に跳躍していた香の精霊球がアルキオネとオベロンに迫る。

 ルーテシアの加護がそのうちの片方、アルキオネに向けられた精霊球に備わり、神の力を備えた強力な一撃となり、威力を高めた。

 その威力を確認したヒカルはザ・ガードの闘気にその攻撃を記憶させる奥義を使う。

 オベロンにカバーさせることができれば、そこまで考えるも、すぐに頭を振り払う。

 今までだって何度かカバーできた場面はあった。実際、オベロンはアルキオネを守ろうと何度も攻撃から庇おうとした。

 それでも間に合わなかったのは、これ以上オベロンに傷がつけば、倒れてしまうと分かっていたから。アルキオネがそれを拒んだ。

 とはいえ、この一撃ばかりは無理だ。

 

「でえええええい、やあああぁぁぁっ!!!」

 

 庇わせることを考えた時にはもう、アルキオネは倒れていたのだから。

 

「負けた……か……」

 

 アルキオネは倒れながらも、懐を漁り、自らのシャードを取り出す。

 翡翠色の綺麗なシャード。そこに、罅が入っている。

 

「それは…………!?」

「オベロン……分かっていた……私は、捨て駒だって」

 

 闇の三神官……ルーテシアにとっての三人の弟子。

 ディグニティ、プラウディア、その二人に次いで三番目の弟子となったのが、アルキオネだった。

 一番年も下で、努力家だった。

 いつも遅くまで魔法の練習をして、がむしゃらに二人の弟子に追いつこうとしていた。

 そんな中、アルキオネはソレと邂逅し、力を得る。

 それがこのシャードだった。

 

「お師匠……どう……私……強かったでしょ……?」

 

 アルキオネの横にシャードのアバター、オベロンが座り込む。

 それはまるで、我が子を愛しむかのように。

 

「えぇ…………あなたはとても……」

 

 ルーテシアがアルキオネに近づくと、頭を撫でた。

 

「……っ」

 

 ルーテシアの元を去って百年以上。

 久しぶりに触れた師の手は、人の親の手をしていた。

 

「一度敗れて、でも、私が強いってことを思い知らせたくて……そしてまた、敗れた……でも。オベロンと一緒に行けるなら、それも、いっかなって」

「…………」

「……でも、でもな。強くったって、それだけじゃぁダメやと、うちは思うんよ。力は困ってる人のために使いたい。誰かを傷つけたり、悲しませたりするんじゃなくて。うちはそう思うし、きっとうちのママだって……そう言うと思うんや……これはお前にも言っとるんやぞ、ヒカル!」

 

 戦いはまだ終わっていない。

 感傷に浸っている時間すら、今は惜しい。

 ヒカルとザ・ガードに向き直った香。

 ルーテシア、颯、そして三騎の魔神も同じくヒカルとの戦いに意識を集中させる。

 

「借りは返した。あなたの目的に、付き合ってあげた。後は…………好きにすると良いわ…………」

 

 アルキオネの横で、オベロンが完全に消滅。アルキオネを見ていたその人は、笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

*1
“闇の大魔”

*2
蛍の遺伝子

*3
獅子原パパの遺伝子

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