アルシャードセイヴァー・リプレイ ノベル・レイアース+a 作:椎名真白
“闇の大魔”の結界が解除される。
王城の広間で対峙する
魔神に搭乗する
香、颯、ルーテシアが持つそれぞれの宝玉の消失と共に、エメロードの周囲に三つのオーブが姿を見せた。それらの色は赤、青、緑、消えた魔法騎士のシャードと同じ色だ。
「ああっ、うちのシャードが!? あ、あんにゃろー!! 返せやー!!」
奪われたからには奪い返さねば。一先ず戦場の士気を上げるべく颯の音楽が響く。
ジャガジャガジャーンとトネール内で気持ち良く歌を歌ってみれば、エメロードの方からも何やらロックが響いて来た。
『~~~ 』
見ればエメロードの周囲を飛行しながら回遊する炎、風、海のオーブの内の一つ。風のオーブから音が響いてくるではないか。
「あの力……! 持ち主と同じ動きをするみたいだね」
「…真似すんじゃねえ!」
『攻撃を予測……』
ルーテシアの未来予知の下、雷撃による攻撃を仕掛けるが――海のオーブもまた、ルーテシアと同じ未来予知を行い拮抗する。
「逆に利用して敵の動きをある程度コントロールすることもできるかもしれません……!」
「っと……なると、先に突っ込まん方が良いってことやな!」
進みかけた足を香は止める。フラムが途中で止まったことに不服そうな顔をするが、今は大人しくしていて欲しい。
そんな香が搭乗したフラムに向け、炎のオーブが突っ込んできた。
「……っと思っとったら向こうから来たわぁ!?」
どうやら此方をトレースしている訳ではないようだ。精霊乱流に乗ったオーブはフラムの目の前でウロチョロする。ちょっと目障りである。
シャードが相手の手にあることで、香と颯はその力を万全に発揮できずにいた。
自らのシャードを手にした蛍と、元々持っているシャードがあるルーテシアだけ、加護が使える状態だ。
ルーテシアは確実にエメロードを倒すべく、魔法の詠唱を開始、後方に下がりながら指揮を執る。
「あのオーブはシャードを元に構成されているようです。破壊すれば持ち主の元に戻ってくるはず!」
「分かった! 「先に少しでも……力を貸して、ヒカル……! これでどうだ!」
『燃え尽きろ! アカラナータッ!』
ルーテシアの助言を得た蛍がヒカルを通し力を解き放つ。
エメロードを中心に燃え広がる神なる炎は風のオーブ、海のオーブを巻き込み多大なるダメージを与える。
「ないす、獅子原のかーちゃん!」
「う、うぐぐぐぅ! うちもシャード取り返したらあれくらい!」
と嘆く香。
颯がマジックポーションを飲み魔法攻撃の力を高め、念力波動により元素掌握した周囲の電流を一点に集中。一気に解き放ち神炎で燃えている敵に追撃する。
その間にルーテシアは完成した魔法をその場に設置し、同じく前へと躍り出た。
「さっさと…帰ってこい!」
この攻撃で海、風のオーブは破壊され、それと同時、ルーテシアと颯の手元にシャードが戻って来る。
エメロードの下で力を得たからか、加護の力も戻っている。これならまだ、戦えそうだ。
「よし、あとはお前らだ!」
しかし未だ音楽は鳴り響く。残響と最初の未来予測が未だエメロードの動きを補助している。
ルーテシア、颯、蛍の三人が魔神を駆りエメロードに攻撃を続ける中、突如動きが止まる。まるで祈るような姿勢を取ったかと思えば、傷が癒えていくではないか。
柱の祈りによる回復行動。この世界の礎たる少女は、自らの想いを糧とし、その傷を癒していく。
嫌な予感がした三人が一旦退けば、その足元に光の魔方陣が出現。そこから上空に目掛け膨大な光の魔力が放出される。
しれっと範囲から出たオーブ以外の四騎への一撃。まともに受ければ負けてしまう。
「く……っ! みんな!!」
「怖い事なんて、ないですよ❤」
おおよそ光の魔法とは思えない付属効果、邪毒が含まれた一撃は魔神と搭乗者の身を蝕まんとする。
「蒼神メール! 守護の力をここに!!」
「Wide protection!」
『!!!』
ルーテシアはメールの力を活性化。その加護を使い、その場にいる皆のシャードのマナを一つにまとめ、防壁を展開。
号令に思わず反応した炎のオーブの力も加わり、エメロードの魔法、光の裁きを防ぎきる。
今なら落とせるのでは? とルーテシアが隣の炎のオーブにレーザーを放った。
『レーザーだーーーー!? すっごーーーい!?』
「!?」
『!?』
「おともだちに……なれそう……!!」
突然響いた声に反応したフラム。対する炎のオーブは、着弾しそうなレーザーを軽やかに躱し、上下に動く動作をし、
『ごめんなさい……!』
「!?」
お断りした。
お友達になれなかったフラムはしょんぼりしてから顔を上げると、炎のオーブが砕けていた。
ルーテシアの未来予測はこの回避を読めていた。一発目はブラフであり、本命は二発目にある。
「オーブはこちらにも!!」
メールの隣には光のオーブが出現していた。ルーテシアが呼び出していたもので、そこから二発目の光線が放たれ、炎のオーブを砕いたのである。
だが、完全には砕けきれなかったらしく、ボロボロの状態で尚も浮遊している。
「ありがとう、ルーテシアちゃん! 続けて行くよ!!」
「お願いします!」
蛍の乗るザ・ガード。その手には蛍、そしてヒカルの得物である太刀が握られていた。
「たああああっ!!!!」
『!? ……ママ……?』
「そうや、うちのママやぞーー!!」
オーブが破壊され、シャードが……どっちに戻るかちょっと考える。
「おいこら、お前はこっちやーー!?」
香に怒られしぶしぶと戻ってきた。香の前の持ち主が蛍だったことと、蛍と一緒にいた期間の方が長いことでどっち帰ればいいんだっけとなったシャードである。
「よっし! 無事に戻ってきたな! っしぃ! シャードさえ戻ってくればこっちのモンやァ!!」
「エメロードの弱点はここです!」
エメロードに突っ込む香に向かいルーテシアが声をかける。
フラムの中の思考読取型操縦席に映像が映し出される。ルーテシアが手元で弄る可動式ゼウス像の右足をここ! と指さしている。エメロードと違い二足歩行だが、きっと前足の方に違いないと信じ攻撃を放つ。
エメロードは攻撃を躱そうとするが、何かに躓きバランスを崩す。その右前足に向けフラムの一撃を叩きこむ!
『ひぃっ! ふ、踏み潰さないで……! 凍って無かったらバラバラだった……』
「獅子原のかーちゃん、トネールの力を使え!」
「あぁ……私とヒカルの力を……君の魔神へ!」
蛍のシャードはザ・ガードを通しトネールに加護の力を与える。
トネールはその加護をエネルギーとし、さらにフラムにそれを送り込む。
エメロードがその加護の流れを絶とうと加護を放つが、
「ち、させねーよ!」
颯の持つオーディンの加護がそれを消し飛ばし、勢い良く香の元へエネルギーが到達する。
右足を切り裂いた香はフラムを駆り雷鳴の如き速さで続けざまに連続して攻撃を放つ。
「あらあら」
右前足が完全に壊れエメロードはその場に転倒する。すぐさま回復を行い足を生やし距離を取るべく刀を受け止めるが、ルーテシアのレリクスによる攻撃が妨害をし、受け止めていた手が開いてしまう。それにより今度は手が切り落とされるも、その落とした手が不意打ちと言わんばかりにフラムに向け噴射。
「しかたねえ! トネール、私もだ!」
シャードの加護を糧とし、トネールの力をさらに引き出した颯がその場へ到達。エメロードの腕を掴みながら、フラムに向けさらなるエネルギーを分け与える。
「いけ、フルパワーだ!」
「でええええい、っやああぁぁぁぁぁあ!!!」
この一撃により、エメロードの体が半分に割れた。
胴体は砕け消滅するも、上半身が残っている。
エメロードは笑みを浮かべると、加護の力を使いその場の加護を封じようとする。
「それは通じませんっ!」
ルーテシアが加護を使いそれを封じる。そんなルーテシアにエメロードは微笑んだ。
「トネールに使う加護を使いましたね?」
「っ!」
トネールの力を使うには加護を代償とする。その代償とできる加護を使わせるのが目的だった。
とはいえ、これでエメロードも加護を使ったことになる。トネールを潰すのを優先したが、かなり追い込まれている状況なのに変わりはない。
「さてと、覚悟しろよ?」
ぽきぽきと腕を鳴らす颯。
「燃えろフラムーー!! アンタの力を見せたれやーー!!!」
「うん……!! みんながんばれ~~……!!!」
フラムの力が解放され、その場にいる味方全員に炎の力が宿る。
「お、ロックにきたな!」
トネールを駆り颯はエメロードにさらなる追撃。回復される前に蹴りをつける。
炎を宿した雷撃。
「受け取れや、颯ちゃん!!」
「君こそが、今最も反抗すべき立場にある!」
そこに香と蛍、二人の加護が加わり、強力な一撃へと変わる。
「ああ、もらうぜ…!」
「無駄なことです❤」
「薄暮の君に……分かってもらおう! 君という存在の大きさを!」
それは今のエメロードを消し飛ばせるだけの力があった……が、エメロードの前に隻腕の戦神ティールの加護による防壁が出現。それはルーテシアの姿を取ると、トネールの拳をその手で止めた。
「んな……っ、防がれたぁッ!?」
「いえ……もうひと押しです!!」
あの一撃を防がれるとは……しかし、エメロードを見ればまさに満身創痍。あと一太刀、届けば勝てる。
「ち…だがもう切り札はねーだろ!」
「ああ。まだ私たちに光はある! 勝機という名の光が!」
四人に反抗するように、エメロードから膨大な魔力の一撃が放たれる。
加護、ネルガルにより拡大化した一撃は、それぞれが強力、受ければただではすまない。
「おい、あれくれ!」
「颯っ……!!」
耐久力に余裕があるルーテシアは言葉の意味を悟り、また子の親として、その子を守るべくトランスポーターでトネールの前に転移。メールで庇おうとするも、エメロードの加護がさらに重なり、攻撃が湾曲。颯をこの世から抹消する為、神なる一撃がトネールに乗る颯を殺さんと到達する。
香の精霊壁が守りを固めるが、颯への一撃を防ぐには至らず。
「颯ちゃん……!」
心臓を貫かれるのを悟った颯は蛍に念力盾を使い防御を重ね、倒れる。
「颯ちゃん!!」
香の悲痛な叫び。
まずは一人。エメロードが次の標的を定めようとした時、トネールから攻撃が放たれた。
「まだ立ちますか……!」
颯の確定した死をシャードが緊急回避し、ブレイク状態になった。マナの限界を超えた活動が可能になるも、もう一度受ければ次こそ死ぬだろうが、そうなる前に決着をつければいいだけだ。
「すみません……!」
ルーテシアが庇いきれなかったことに謝る。
「いいよ! みんな無事だな?」
「はい……!」
「よ、良かった……! ナイス・おかんカバーパワーやったで!」
「決めちまえ、あんたの世界だろ!」
「我が子に守られてばかりじゃない母親の力……見せてあげないとね、ルーテシアちゃん!」
『やっちゃえ!』
「えぇ…………終わりにします!」
「はわぁ……!! がんばって~……!!」
「攻撃を許すとでも……っ!?」
エメロードの不意を撃つように設置された魔法。それが遂に発動する。
後方から放たれた光線をエメロードは躱し切れない。
「これで…………終わりですっ!!」
その光線はフラムによりさらに力を増しており、エメロードを貫くと同時、爆発。薄暮の君の体が宙に放り出され、地面に激突。手足が変な方向に曲がる。
一同が魔神から降りて薄暮の君の前に立つと、恍惚とした笑みを浮かべる薄暮の君の姿が……なんて?
「ああ……❤ルーテシア様の、熱いものが……私に……❤」
「…………」
「ああ……❤」
決め方……間違えたかな……と一同が思う中、香が口を開く。
「姫さん……」
え、なんて声かけよう。香が迷っていると、エメロードの方が語り掛けて来る。
「ルーテシア様、私は、間違っていたとは思っていません。それは、ルーテシア様が、一番分かっておられるはず……この世界は、一度壊した方が良いと……それでも、世界を続けますか?」
トワイライトワールドは奈落による侵攻で最早風前の灯火。いつ壊れてもおかしくない状態だった。
ならばいっそ、一度全てを壊し、やり直した方が早い。そんなこと、言われずともわかっていた。
少なくとも、この世界を創造した時のルーテシアなら、もう一度作り直していたことだろう。
それでも、今は。
「続けますよ」
「何故、と聞いても?」
「…………親が子を犠牲にして作り直した世界。そんなもの、良い世界ではないでしょう」
「ルーテシアさん……!」
香が感動で涙を流していた。
蛍はその言葉を聞いて、黙って微笑みながら頷いている。彼女もまた、人の親へと成長した勇者なのだ。
「例え困難な道でも……全ての生まれてくる命が愛される世界にしてみせます」
「ふふ……そんなことも分からないだなんて、光の神、失格ですね」
薄暮の君……エメロードの体が、光の粒子となり消滅していく。
「希望の王国を、民を……」
「エメロード、次に会う時は手を取り合えることを……」
「あ……姫さん……!」
香が手を伸ばすも、
「お元気で」
そう声を残し、消える。
カラン。小さな音を立て、修復された光のシャードが転がる。
「…死んで…ねーよな?」
呆然と手を伸ばしたまま固まっている香の横で、颯が首を傾げた。
ルーテシアはそれを拾い上げる。
それこそ、この世界の要たる
これを手にした時、ルーテシアには民を守る使命が発生するが、元よりこの世界は彼女が創造した世界だ。
エメロードの忘れ形見。それを大切にしまい、一歩前へ踏み出す。
――――戦いは終わった。
“闇の大魔”も滅びた……はずだ。
戦いの終わりを告げるように、ザ・ガードの魔神も消滅。
ようやく、すべてが終わった。いや、ここから始まるのだ。
奈落は未だ世界に蔓延っており、そこから新たな“闇の大魔”が生まれてくることだろう。
戦いの終わりは、新たな戦いの始まりを告げ、安寧の日々はまだまだ遠い。
あれから一週間。
「皆さん……ありがとうございました。元の世界にお送りします」
ルーテシアの手に希望の鍵が現れる。
異界の門が開き、
「ルーテシアちゃん……元気でね! ルーテシアちゃんがいるんだから、この世界は大丈夫だって信じているよ!」
「おう…また会えるんだろ?」
「なんやかんや色々あったけど、楽しかったわ!! フラムたちも……じゃあな! 本当に助かったよ、ありがとなー!」
「ありがとな、お前らのおかげで楽しかったぜ」
三騎の魔神もまた眠りにつく時が来た。強力な分、燃費も悪いのだ。
「ばいばい……!! 元気でね……!!!」
「Bon voyage!」
「了承、またおあいしましょう」
そう言ってそれぞれの場所へ帰る魔神たち。この内トネールのみ、分身を作り出せるため、向かえば会えるのかもしれない。
因みにディグニティはやっと王城の墓地に埋葬された。南無南無。
開いた門に入る四人。
四人……?
香、颯、蛍、そしてルーテシア。
四人である。
「それでね~」
「はぁ……」
やって来たのは未だに惚気が続いている嵐とプラウディアの下。
カレンダーを見れば一週間が経過している為、あちらと同じ時間が経過したようだが……。
と、ここに来てようやくなんでルーテシアも一緒にこっちに来たのか理解した三人。
プラウディア、回収しないとね……。
ルーテシアを見た嵐は飛び上がり抱き着く。
これは、長い夜になりそうだなとプラウディアを連れて席を外す蛍。
「うし、じゃあな」
察した颯もその場を退散し……、
「……?」
何がなんだか分からない香を颯が戻って引っ張り再退場する。
こうしてまた、日常が戻ってきた。
日常という名の非日常は、今日も続いていく。
ルーテシアはその後、数日滞在した後、トワイライトに帰還する。
その間、颯を連れてテーマパークに遊びに行ったり、嵐とワンナイトを過ごしたりなどした。
都へ戻ったルーテシアは国を立て直し、仕事がひと段落するとまたブルースフィアに。
“闇の大魔”を倒したおかげで、世界の希望が安定し、定期的に行き来できるようになったのだが、数年後、大規模な奈落の侵攻が起きるのだった。