アルシャードセイヴァー・リプレイ ノベル・レイアース+a   作:椎名真白

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ドイツのサンタ

 12月4日水曜日午後23時19分ドイツ――。

 夜の町を駆ける二人のサンタクロースは奈落サンタ、ループレヒトを追跡していた。

 背中に袋を背負い漆黒の鎧を身に纏った悪魔のような姿の奈落、ループレヒト。

 それを追う二人のサンタの片方、アーデルハイト=ベーデ、通称アーデルは燃えるような赤いギター『ロート・ブレンネン』を愛用する右目に眼帯を着けた女性で、 激しいロック調の曲により鮮烈なるデビューを果たした謎多きアーティストでもある。その正体こそ、サンタ協会ドイツ支部に所属するクエスターサンタであり、現在の拠点はドイツだが、世界各地に別の拠点も持つ富豪でもある。

 もう一人のサンタ、ハインリッヒ=シュナイダー、通称ハインツはまるでニンジャのような姿の男性だった。

 自称闇に潜み、闇に生きる者。スゴウデ・サンタニンジャエージェント。もしかしなくても忍者ではない。

 幼少期は病弱っ子であったが、サンタクエスターによって救われ、クエスターとして覚醒。その恩を返すべく、サンタ協会本部で活動している。クエスターに成り立ての頃は力も弱く、失敗続きで悩んでいたが、そんなある日、東洋の「ニンジャ」という概念に触れ、闇に紛れ闇に潜むニンジャアーツは人知れずプレゼントを配るサンタクロースと相性が良いのでは、という天啓を得て今に至る。

 

「クエスターめ、追ってくるな。吾輩はこれより子供たちへプレゼントを配らなければならないのである」

「そう言われて追っかけねー奴がいるかよ」

 

 アーデルがギターを鳴らせば、精緻(せいち)な構成により冷気と眠気を与えるクラシックが響いた。

 音の残響をループレヒトはひらりと躱し、あざ笑うように町の角を曲がり、時に屋根へと登りながら逃走を続ける。

 

 

「ほれ、早めにブーツを用意している子供たちの笑顔が見えるであろう? そんな子供たちに絶望をプレゼントするのであーる。吾輩、なんて優し」

「奈落のプレゼントとかロクでもねーだろ!」

「おのれっ、ループレヒトの奴め、今度こそ逃がさんぞ……!」

 

 シュタタタタっと忍者走りで駆けるハインツ。

 振り返りその姿を見たループレヒトが頭を抱えながら答える。

 

「ハインツ兄さんこそ、さっさとその頭悪そうなコスプレをやめるのであーる」

「ほら見ろ! え? 兄さん?」

「弟である吾輩と共に、奈落サンタの道へ堕ちようぞ」

「コスプレ言うな! 貴様こそ変な鎧みたいなダサイ格好しおって……!」

「ださくなーい! ええい、邪魔するであれば戦うであーる! 恋人もろとも地獄へ落ちろ!」

「恋人じゃねーよバカ!」

「必殺、プレゼントボックスアタック!」

 

 ループレヒトは袋から正方形の箱を取り出すと、それを二人目掛けて投げつける。

 

「プレゼェント!」

 

 箱からバネと共に鳥の頭のようなものが飛び出し、嘴を前に向けて突っ込んでくる。

 

「チッ」

 

 アーデルのギターから放たれた冷気が飛来するプレゼントボックスを凍らせた。

 ハインツが別の方角からループレヒトの逃亡先に先回りし攻撃を仕掛ける。

 得意とするニンジャアーツ、フウトン・ジツとライトン・ジツ。これを合わせた奥義、電光旋風弾(ブリッツトロンベ)

 ループレヒトは何とかそれを躱すも、掠り感電してしまう。

 そこに迫るアーデルの追撃。ループレヒトは魔法で凍り付いたプレゼントボックスを呼び寄せ再び投げると、それを囮に何とか逃げ切る。

 中から現れたのは大量のネズミ。それが二人の行く手を阻む。

 

「ガハッ……………………はぁ、はぁ、はぁ、い、いちど、ひくのであーる…………」

「あっコラ待ちやがれ!」

 

 追いかけようにもネズミが邪魔で、それの処理を終えた頃にはループレヒトの姿が見えなくなっていた。

 ドイツ支部総出で情報を集めつつ、居場所を探った結果分かったのは、ループレヒトが日本に逃亡したということ。 

 

「ちっ、まさかそんなところまで逃げたとは……。しかしならば追うしかあるまい!」

「まあ、日本ならちょうど隠れ家がある」

 

 日本へ向かおうとする二人の肩を叩いて、上司は言う。

 

「お前らさっさと殺してこい。失敗したら十年間無給な」

「ヒッ」

「ざけんなっ!?」

 

 ブラック職場にも程がある。

 悲鳴を上げるハインツを引っ張り、アーデルは日本へ向け出立した。

 

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