アルシャードセイヴァー・リプレイ ノベル・レイアース+a 作:椎名真白
「あちらへいったぞーーーーー!」
警官の声に続いて、他の警官が街中を行く。
「これで資金面の問題は解決っと……」
丁度カードの売却を終えて店から出てきたサーラは警官に気付かず、それとは逆方向に歩みを進める。
セリアたちのおかげで無事資金確保が完了した。流石に数週間は無理でも、数日程度ならこれで何とか生活できそうだ。
サーラは歩みを進めた視線の先に大きな段ボールが落ちているのに気づく。
「ん、なんですかあの段ボール」
段ボールの横には二人の人物が立っていた。
アーデルとハインツだ。
「やれやれ、いったか」
足音が全て行ったのを確認した
「あの段ボール偽の殺人姫さんじゃない?」
「…あれあれ~? これはどういう状況でしょうね~?」
その顔を見たビリーとセリアが反応を示す中、顔を上げた樹理はというと、目の前に
段ボールを手に持ったアーデルの横で、ハインツの方に電話がかかって来る。
「むっ。電話か。ちょっと待て。
「あ、さっき結界貼った奴か。所属を教えてくれ」
アーデルは自分たちを見ている
まさか話しかけられるとは思わず後退るサーラだが、結界を認識していたしと立ち止まる。
「アデ姉さま!?」
樹理は段ボールを取ったのがアーデルだと気づき嬉しそうな声を上げた。
拠点が複数あるアーデルは勿論日本にも拠点があり、何度か樹理と仕事も共にしている。姉のように慕う存在である。
「聞いてください、かくかくじかじかうまうまさんたくろーすってわけで」
アーデルは樹理が何か言ってくるのを一旦無視し、電話の方もハインツに任せサーラと話す。
「あ、クエスターの方ですか? サンタ協会イタリア支部の者ですが」
「イタリアか、アタシとそこの忍者モドキはドイツ。この子は日本支部の子」
そう説明するアーデルの横で、スピーカーにしたハインツの携帯の声が漏れてくる。
樹理はやはりドイツ語は分からんと聞こえてくる声を無視し自分の話を続ける。
「
「
「どういったわけか、警官とかタナトスとかに追われているんですよ!」
「ああ、そういうこと」
「とりあえずそちらの方の電話が終わったら状況を整理しましょうかねえ」
「そうだな」
ビリーはドイツ語で聞こえてくる会話に納得し、アーデルとサーラも一先ずハインツの電話が終わるのを待つことにし、スピーカーに耳を傾ける。
「
「
「
「日本語しゃべれ、馬鹿野郎!」
隣で聞いてた樹理が文句を言うも、電話口の向こう側には聞こえていない。
「
「
「では、健闘を祈る」
「何故日本語??????????」
こればっかりはハインツでも疑問に思った。
一緒に聞いていた面々も何で最後だけ日本語……? と思う中、その最後の締めを聞いた樹理があることに思い当たる。
「………ん? こいつ、まさかうちにイタ電かけてきたやつか?」
「アイツ、どこの支部にもあんな調子なのか……」
電話口の相手を知っているアーデルが樹理の言葉にえぇ……と呆れた声を出した。
サーラと一緒に聞いていたビリーとセリアはニコニコ微笑みながら見ている。
話が理解できず微笑んでいるだけの子供に見えるが、将来を知っているサーラだけ何で笑ってるのこの子たち! と恐怖を覚えていた。
「アデ姉さま、良いか? 実は、うちにも……」
樹理が録音していた音声を流せば、なるほどループレヒトが逃亡した協力を仰いだようだが……日本語で話せよ!
アーデルが得られた情報をまとめて話す。ビリーとセリアについても、アーデルはイタリア支部の子だと思っているため、そのまま情報を共有した。
「なるほど……奈落サンタと本物の殺人鬼が結びついていると……」
サーラが何とか阻止せねばと決意を新たにする。
「奈落絡みとなるとクエスターとしては放置できないですね……ボクはそれについて調査することにします。皆さんもご協力いただけますか?」
「やれやれ、また厄介ごとか。とにかく、バイトを続けるためにも冤罪は晴らさないとだし」
「報酬さえあるならね、タダ働きはごめんよ」
「なるほどなるほど…私も協力したほうがいいのでしょうか?」
冤罪により現在進行形で追われている樹理は勿論のこと、行動を共にしているビリー、セリアも調査に協力してくれることに。
「報酬に関してはボクから協会にかけあいます。まぁ、ダメだったらさっきカード売ったお金から払いますよ……」
「そんな高くなくてもいいよ、代わりにご飯定期的に頂戴?」
そっちの方がなんだか高くつきそうですねーとサーラは苦笑い。
それから協力して情報収集を進めていく。
まず、ヤマトノナデシコは二年前から活動をしている凶悪な殺人鬼という情報。これはすぐに入手することができたのだが……。
「その情報間違ってるよ?」
とビリーが訂正する。
ヤマトノナデシコを名乗る人物はその殺人鬼の模倣犯だというのだ。
調べて見れば分かるが、ヤマトノナデシコの特徴として挙げられるものに『ヤマトノナデシコ見参』という八岐大蛇のマークが入った置手紙をするというものが挙げられる。しかしこれは半年前から取られるようになった手法で、それ以前は殺人現場にシールが貼ってあることが多かった。現在も其方の手法での殺人事件が発生していることから、パターンを増やしたと考えられていたが、同一人物でない可能性が高い。
警察も模倣犯の可能性には気付いていたのか、そこまでは分からない。この情報だって、神秘関係者に聞き取りを行いはじめてわかった内容だ。報道や週刊誌などで二年前にも同じ手法を、などの見出しで記事がだされたことで模倣犯ではなく同一人物とされたようだ。
ならば二年前から活動している凶悪な殺人鬼がまた別にいるということだが……。
「………ん?」
情報収集中、偶然にも樹理はその殺人鬼がセリアであることを小耳にはさんでしまう。
「なるほどなるほど…理解しました。次を調べましょう?」
と、そのまま次の情報を得ようと動くセリアにじとーっとした目を向ける樹理。
どうやら魔術連盟では魔術師殺しなどの異名で有名な人物らしく、セリアの殺人もヤマトノナデシコが行ったものと混合されていたのは連盟の手が入ったことも大きいようだ。
セリアが日本で殺して来た人物は主に依頼を受けてのもので、魔術師が大半。
先ほど殺された警官もそうだし、その妻は
こうした殺人はあったとしても報道するのは難しく、神秘秘匿の観点から無かったことにされることが多い為、セリアが行った殺人が一般的に知れ渡ることはなかったのだ。
これ、実はセリアを真犯人として突き出せば私の無罪晴れない……?*1
そう考えた樹理に、セリアが振り返りニコリと笑みを浮かべる。
あっ、これ勝てるビジョンが思い浮かばない。味方にしておいた方が安心そうだ……その事実には気付かなかったことにしよう。
情報端末を操作し情報収集を行っていたサーラが手に入った画像を見せる。
「色々とふざけてますねこの殺人鬼……」
八岐大蛇のシールが貼られた置手紙の内容で、それを読み上げていく。
ヤマトノナデシコ誕生彡ぺろりんちょっ★
みんなのおかーさん、ヤマトノナデシコここに参上
予告しなくてごめんちょろりーん( ノД`)シクシク…でもでもー☆死んだ子の魂はママが慰めてあげるからね(*'ω'*)キャッキャ
みーんな、いっしょだからね
ゼ●●ィッ
「チッ、趣味最悪だな」
アーデルが真っ先に不快感を示す。
ハインツ、樹理もそのあまりにもな内容に絶句する。
「殺人鬼なんてやからは、ふざけてるのが相場だと思うけど……」
こんなのが自分の仕業とされていると考えると頭が痛い。
「殺しは生きるため…これ絶対道楽の殺しだよ…」
「なるほどなるほど…芸術性の欠片もなさすぎて不愉快な領域に達しました…決めました、絶対殺人鬼…捕まえましょうね? おねーさんたち」
「ふざけてるなんてもんじゃないよ、こいつは殺しを楽しんでる」
殺人鬼組が何か言っている……。
「ループレヒトだけを捕まえる予定だったが、これは殺人鬼ごと消した方がよさそうだな」
「じゃあ、まずは……どういう基準でこいつが出て来るか、だな」
アーデルは有名人ということもあり、ファンの子の中の信頼できる人物も駆使しこれら情報を集め、統合していく。
七瀬市に住む富豪やら社長やら一般人やら。一見すると七瀬市に住んでいるだけで共通点はないように見える被害者だが、共通する点が他にもあった。それは、被害者がブログサイトを用いて書いた記事の閲覧数が、その日の二十四時間ランキングで一位になった人物である。
そして、殺されれる日にも共通点があった。
友引の日。さらに調べて行けば、あるブログが一位になった時には事件が起きていないことが分かる。
小学校女子が書いたとされるブログのようだ。犯人はこの少女の身内か、或いは追っかけの可能性が高そうだ。
「アーデル様、お役に立てましたか!」
「もちろん」
感謝のファンサにギターを奏で、軽い演奏会を行う。
樹理は自分が警察に捕まっておけば確実にアリバイが確保されると考えるも、ハインツが見せて来たニュースを見たアーデルが、
「今日、既に一人殺されてるみたいだが」
と言うのを聞いてその案を捨てる。
「こっちは別の奴だな、多分」
「それは*2違いますね~」
どうやらシールが貼ってあっただけのようで、前からいる
最も、警察側はこれもヤマトノナデシコのせいにするのだろうから、やはり誤認逮捕は避けるべきだろう。
「どうせ無関係のやつも私のせいにしてるんだろうなぁ。はいはい、私が悪いんですよ。ポストが真っ赤なのも、サンタの服が血まみれなのもの全部私が悪いんですよー」
不貞腐れる樹理。
「このイカレ女の法則で行けば、狙われるのは今日。トップブロガー……このサイトだな」
アーデルが開いたのは今日のランキングで一位になっているブログ。
『ドイツから来た僕の日常~Ich bin ein Deutscher in Japan~』
ドイツから日本に移り住んだ男の子が書いているもので、顔などは隠されているが、同じドイツ人の妹や、友人のイタリア人の子が紹介されている。
ループレヒトが憑依しているとはいえ、宿主の中に眠って体を癒している状態だと思われる。つまり、現状ループレヒトはヤマトノナデシコの活動を邪魔する意志は無いだろうし、奈落の立場からすればむしろ支援する可能性すらある。
早く向かわねば、この少年が殺されるのはまず間違いないだろう。
「このブログの人の身元、どなたかご存じです?」
サーラが聞くと、ビリーの表情が強張った。
「駄目…その人だけは…駄目…」
「…おそらく次はロルフ君でしょう」
「おや、お嬢さんご存じで?」
「…ええと…そうですね、友人…ですね」
私に友人なんていませんが。心中ではそう思いつつも、ブログに掲載されている自分たちの写真を指してそう言った。
顔は隠されているが、髪や今日の服装が完全に一致しており、部屋の内装も今朝まで遊んでいた部屋と同じ。間違いなくロルフのことだ。
「なら、なおさら助けにいかないといけないね」
不貞腐れていた樹理が立ち上がり言う。
「殺さなきゃ…今日の奈落は自分の意思で殺す…」
ロルフに依存しているビリーから殺意が漏れ出す。
「お家の場所とかわかりますか?」
「こっち。絶対に許さない…」
「急ぎましょう!」
ロルフの家……つまりビリーが暮らす家に向かい案内を始める。
サーラがその次に続き、セリア、ハインツ、アーデルも共にロルフの家を目指す。
「いきましょうか」
「うむ。となれば急いだ方がいいな。案内頼む」
「ドイツのトップシンガーの歌を、一足先にプレゼントしてやるとしようか」
「ふふ…ロルフ君、覚醒しないでしょうか…」
「ぜったい助ける…死んだら私が壊れちゃう…」
サンタクロースと殺人鬼の一行はヤマトノナデシコの凶行を阻止すべく動きだした。