アルシャードセイヴァー・リプレイ ノベル・レイアース+a 作:椎名真白
12月6日金曜日午後3時00分ロルフの家――。
「ロルフくーん、あそぼ、あそぼ」
ロルフの家に友人である少女が遊びに来た。
「
同じクラスメイトの
ロルフは相手が見知った顔であることから何の警戒もせず扉を開け百合を出迎える。
扉を閉めようとしたところ、玄関との隙間に手が挟まった。
驚いていると、その手は扉を開き、玄関先に良く知る少女の笑顔が。
「ロールフッ」
急行したビリーは軽く百合を睨んだ後、凄く良い笑顔でロルフを見た。
「今日は私に構ってよ」
「お、おう。びっくりしたぁ……ビリー、おかえり」
「今日は寂しいから構ってもらいに来たの」
何の作戦も無しに向かってしまったビリーの後方で身を隠した一行が話し合う。
「ふーむ、ではお家の中はお友達のお二人にお任せして我々は家の周囲を見張りましょうか?」
「だな。中で異常があれば結界を張ってくれ」
「だね」
「異論は無い。こちらからも何かあれば知らせよう」
「わかりました…では」
ビリーに続くようにセリアが向かい家凸。
アーデルたちはそれぞれ家を囲むように散って身を隠す。
「セリアも! ちょうど良いや。四人でスマシス*1しようぜ」
「いいですよ、みんなで遊びましょう」
ロルフはトナカイの着ぐるみを着ていて、首の部分から顔を出していた。
何その服……セリアがツッコミたい気持ちをぐっと堪え笑顔を向ける。
新たな女子の登場に百合がむすっとした顔をする。
「ロルフ君、女の子のトモダチいっぱいいるんだね」
「
「……?」
「だあれ?」
殺意マシマシの目で百合を睨むビリー。
一触即発の空気が漂う。
「ロルフ君の隣の席の百合ですけど。何か?」
「
よわ……。
「ラブコメの波動を感じる……」
外で待っているサーラが言う。
どちらかというと惨劇の結末が起きそうだが、それもやっぱりラブコメなのだろうか。
中ではビリーがロルフの腕を組んでアピールし、鈍感ロルフはセリアと共にゲームの準備に勤しんだ。
※
ひと悶着あったものの、ロルフの家で和気藹々と取り合いながら正妻戦争を行ったビリーたち。
子供たちの日常の一コマは特に変わったこともなく過ぎる。
午後4時50分――。
ロルフの家のインターホンが鳴った。
「ん、誰だろ」
『……誰か来ましたね』
サーラがシャードを通じシャード会話を行う。その内容は中にいるビリー、セリアにも通じ、ビリーは暗器が如くインフィニティガンをいつでも呼び出せる用意をする。
『だな、どうする? 結界張って様子見るか?』
『……うむ、異変が起きたらすぐに結界を張ってくれ』
『念のため、近くで待機しておこう』
樹理の言葉に頷き、一同は玄関口付近に潜伏。
ハインツの言葉に従い、アーデルはいつでも結界が張れるようにし警戒を行う。
「おかーさんが迎えに来たのかな。おかあさんしんぱいしょうだからなー」
「そうっぽいな!」
部屋にあるモニターで確認したところ、顔立ちが百合に似ている女性が立っている。
授業参観で見覚えがある顔で、百合の母親なのは間違いなさそうだ。
「では、みんなで迎えにいきましょうか」
「今いきまーす!」
玄関に向かうロルフ。ビリーは終始ロルフの腕にしがみついており、絶対に離さないという強い意志を感じる。
同じく百合がロルフのもう片方の腕にくっついて、玄関に着いた。
「ロルフ君ロルフ君」
「ん?」
セリアに肩を叩かれて振り返るロルフ。
セリアはやはり笑顔のまま、ロルフの前に一歩出る。
「私このドア、開けさせてもらっていいですか?」
「良いぜ」
「一度開けてみたかったんです、ありがとう」
割と意味不明なことを言いつつも扉を開くセリア。
胸目掛け突き出されるナイフをセリアは難なく躱し、鋭い視線を下手人に向ける。
「あら? あら、あらあら」
ループレヒトが憑依したヤマトノナデシコ。
「こわいこわい…」
ちっとも怖がる素振りも見せず、セリアは肩を震わせる。
「おかーさん……何……してるの……?」
「え、え?」
状況が分からないのか、混乱している二人。
ビリーが剣王の城より呼び出した武具、インフィニティガンによる銃撃。一歩退いたヤマトノナデシコは包丁を使いそれを捌く。
「下手人は貴様だな!」
「リバースカードオープン! 奈落の落とし穴!! 奈落を結界にボッシュートしますよ!!」
「シールエリアッ!」
樹理が前に出て、サーラの号令に従いアーデルが結界を展開。それによりロルフと百合が結界外部に弾かれる。
「あらあら、お母さん困っちゃうわー」
頬に手を当て困った素振りを見せるヤマトノナデシコ。
その目の前でそれぞれの武器を手に取るビリーとセリア。
玄関から離れた地点にいたアーデルたち、内サーラは最も後方に立つ。
「どう調理しようかしら?」
ヤマトノナデシコはもう一本持っていた包丁を構え抵抗の意志を見せる。
その体からループレヒトが分離して言う。
「吾輩の居場所がばれるとは思わなかったである。だが、吾輩の手元にはこの素晴らしい駒があるのであーる。さあ、行け、ヤマトノナデシコ……“もうすぐアラフォー”の継子よ!」
「
「ひぇ……であーる」
「そうはさせません! 我々クエスターが相手です!」
カードを構えサーラが叫ぶ。
「なるほどなるほど…この人が下手くそのものまねさんですか」
「物まね? 今、物まねって言ったか!? やっぱお前のせいだったか!?」
「なんのことでしょう?」
樹理の言葉にとぼけるセリア。冤罪を吹っかけて来たのはヤマトノナデシコのせいだが、その大半はセリアによる殺しが含まれている。
追手に魔術師が混じっていたのはセリアのせいだし、アリバイ作りが出来なかったのもセリアのせいだ。
折角その事実に気付かなかったことにしていたのに、やっぱりセリアのせいじゃないかと睨んで、やっぱ敵対やめとこと苦笑い。
「お前は許せないことを三つした。一つ、お兄ちゃんに手を出したこと。一つ、ロルフに手を出したこと。一つ……!」
怒りながら銃撃するビリー。それを捌きながらヤマトノナデシコは次の言葉を待つ。
「……」
いや、三つ目何なのであーる?
「さあ、クエスター共、かかってこいである」
ループレヒトはもやもやしながら攻撃を始めた。
アーデルがその横で音楽を奏でる。勇気のロック&ロールは仲間の力を高める。此方もクリスマス仕様なのか、クリスマス感ある音楽が響いた。
「クリッターを召喚!」
「リッタァ~~!」
サーラが召喚した小悪魔がサポートに回ろうとして、何やら騒ぎ出す。
「どうしたんで……っ!?」
「チッ、マズいな。コレは……」
アーデルが舌打ち。セリアもそれに気づき「なるほどなるほど…」と怒りを露にする。
「……? 何の話だ?」
樹理は話の流れが分かっていないらしく、首をかしげる。
「結界から漏れてますね……張りなおしますか?」
提案したのはサーラだ。
結界の外側に奈落の気配を感じ取った。どうやら結界に取り込めなかった敵がいるらしい。
「悪いな、判断ミスだ」
敵の増援だろうか。その可能性を考慮していなかったアーデルは悔いる。
「……いや、これは仕方あるまい。とにかく張り直そう」
「仕方がない事ですよ」
ハインツに続いて事態がさっぱり分からない樹理もフォローを入れる。
「あらあらおしゃべり? お母さんも混ぜて欲しいなぁ……っ!」
セリアを無視し目の前に迫るヤマトノナデシコ。
獲物を前に逃すはずもなく、セリアの包丁が振り払われたヤマトノナデシコの包丁を受け止める。
ヤマトノナデシコは一旦後退。続くループレヒトが幾つもの闇の刃を生み出し放つ。
それをアーデルの冷気、ハインツの雷遁という名の魔法が落とす。
ループレヒトの後方に回ったビリーが銃撃するも、障壁のようなものを展開し防がれる。
セリアはヤマトノナデシコに追撃しようとし、ハインツに待ったをかけられる。
この中で今一番結界を張りなおすのが早いのはセリアだ。ハインツはそれをすぐに見抜く。
「……頼めるか? このままでは友達の危険が危ない」
「…っ…はぁ…わかりました…」
「させないのである!」
闇の刃が足元から出現。セリアの体を抱え跳んだハインツはそれを躱す。
宙でシャードを握りしめたセリアが力を解き放ち、アーデルの結界がセリアの結界に塗り替わった。
※
「ロルフ君」
「ぁ……え?」
結界の効力により、普通人であるロルフは意識を失うはずだった。その意識が、百合の声により覚醒する。
そして辺りを見渡し、二人がいないことに……百合の母親もいないことに気付き首をかしげる。
確か、百合の母親が迎えにやって来て、セリアが代わりに扉を開いて……それから、どうなったんだっけ?
「ふふ。ロルフ君、プレゼントがあるの」
「お、う?」
未だ混濁とする意識の中、そう声をかけられ百合を見る。
プレゼント……そうだ、今日はプレゼントが貰える日。
「受け取ってくれるよね。サンタさんからの、プレゼントだよ」
断る理由などない。
百合が渡して来たのは、大きな箱――プレゼントボックスだ。
それを受け取ったロルフの目から光が消える。
諸悪の根源……奈落、プレゼントボックスは新たな体をここに得た。