アルシャードセイヴァー・リプレイ ノベル・レイアース+a   作:椎名真白

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尖り矢河

 そこは暗い空間。

 そこで闇の大魔は復活の時を待っていた。

  もうじきだ。 もうじきに、その時は来る……。

「…………母…………上………………」

 

 

 

 

 

 道中、ふと視線を向ければ、巨人の塔がうっすらと視界に入り込む。

 旅の終着点。本来の目的地がそこにあった。

 

「あれが……巨人の塔……東京タワーよりおっきいなぁ……」

「はい……闇の大魔を封ぜし場所です……」

「大きいわね~…」

 

 それに対し、蛍の胸はちんちくりん。

 

「都の人々を助けてから……あそこへ向かうんだね!」

 

 何なら背もちんちくりん。

 

 ここから都まで暫くかかる。

 日は沈み、夜が訪れ、また日が昇る。それでも世界は薄暗い。日付の感覚がおかしくなりそうなほどに。

 街道を進み、やがて河と交差する地点にやって来た。都まであと半分ほど、と言ったところか。ここから馬車は迂回することになるのだが、その河でまた、騒ぎが起きている。

 どうやら河に出たらしい。シーサーペント……本来なら海に生息しているであろう、恐るべき魔獣が。

 

「なんだかざわざわってして……え、危険な魔獣が出た!?」

「シーサーペント…………!?  あれは海の魔獣では…………!」

「大変だ! やっつけないと!」

「…こんなところには出ない魔獣なのね~ふふ…でも蛍ちゃんはいくのよね~」

 

 先の街での一件に同じく、今回も避けて通れる道だ。

 それでも、困っている人がいれば見捨てられない。それが、蜥堂蛍という少女だった。

 

「もちろん! 誰かが困っていたら、放っておけないもん!」

「えぇ……流石は勇者です!」

「被害が増える前に止めよう!」

「ええ、いきましょ~」

 

 そうして一同は、やはり馬車を降りて尖り矢河の騒ぎの元へ向かうのだった。

 

 

 

 

 尖り矢河の周りでは、突如出現したシーサーペントにどう対処するか、話し合いが行われている最中だった。

 幸いにも死者は出ていないが、このままシーサーペントが暴れれば時間の問題だろう。

 そこに、蛍たちが合流する。

 

「みんな、離れてー! 危ないよー!」

「あなた方は?」

「お嬢ちゃんあぶねーぞ!」

 

 突然やって来た見慣れぬ少女を心配する人たち。その心配を他所に、各々が自らの武器を手に、河の前へ立つ。

 既にシーサーペントは敵対者の気配を察知しており、それによるものなのか、河の色がおどろおどろしいものへ変化している。

 

「大丈夫! 危険な魔獣は、わたしたちがやっつけるから!」

「我々は魔法の心得があります。お任せを」

「おおー?」

 

 蛍が炎の剣を取り出し、ルーテシアがレリクスを起動すれば、訝し気だった人々の目は、途端に頼れる援軍への眼差しへと変わる。

 

「では、結界を張らせていただきます」

 

 ルーテシアが言うと、蒼く丸い球体が光を放ち、結界を形成していく。

 人々は弾かれ、残されたのは敵対者と、神秘の担い手であるクエスター、魔法騎士たち。

 勇者たる所以を示すかのようにシーサーペントに視線を向ければ、シーサーペントもそれが強敵だと理解したのか、大きな咆哮を上げる。

 

「わあ…結界は人によって違うのね~」

「かかって来い、魔獣! みんなを襲う前に、わたしたちが相手になる!」

 

 そのシーサーペントの背後から、姿を見せる者がいた。

 

「これはこれはお師匠。邪魔しに来たのかい?」

 

 その人物は、シーサーペントの頭上に乗り三人を見下ろす。

 

「あなたは……プラウディア!」

「……!? もしかして、この前言っていた……」

 

 先日戦った敵、三神官の一人アルキオネ。そのアルキオネが口にした三神官の一人。そこにプラウディアの名が確かにあった。

 

「これはあなたの仕業ですか……!?」

 

 アルキオネと違い、豊満なバストの弟子にルーテシアが問い質す。

 

  「その通り。可愛いだろう? 僕のペットだ。名前は、シャラド・テ・ルンプ・トラと言う」

 

 シャラド・テ・ルンプ・トラ。長すぎて覚えられない。

 

「さあ、行け……トラ!」

 

 と、プラウディアが言えば、トラと呼ばれたシーサーペントが襲い掛かって来た。

 

 「お前もみんなを悲しませるのか……!」

 

 蛍が剣先を向ける。

 

「ロックでいこ~」

 

 それを支援するように、嵐がロックを奏でだす。燃え上がるような旋律が、蛍の炎をさらに燃え上がらせる。

 青く美しい結界に、赤い炎がよく映える。

 その結界を見渡して、プラウディアが笑みを浮かべた。

 

「ふふふ……師匠の結界は相変わらず素敵だね」

 

 気付けば、プラウディアの下半身が変態していた。

 人間の足だったものが、魚のような、言うなれば人魚のような姿へと変わっている。

 そして、まるで結界の中を泳ぐかのように漂い始める。

 

「…………」

 

 ルーテシアの脳裏に、嘗ての彼女たちと過ごした時間が蘇る。

 懐かしい日々。彼女の教え子はみな優秀で、だからこそ、敵となった今、危険な存在であることが分かる。

 

「師匠、見せてあげるよ。魔法騎士の力ってやつを」

 

 見れば、プラウディアの手に青い宝石が握られている。

 

「…あれは~」

「それは……!!?」

「あれは…………まさか!?」

 

 アルキオネがばらまいていたアビスシードではない。

 蛍や、嵐が持つ宝石と同じ、輝きを持つもの。神の欠片――シャードだ。

 

「都より奪われし魔法騎士の証の一つ……あなたが持っていたのですね」

「魔法騎士の力、封じさせて貰うよ?」

 

 プラウディアのシャードが輝きを放ち、秘められた力が解放される。

 それは、神の加護。否定の女神スィンの加護により、一定の時間、加護の力が封じられる。

 

「っ…何か、力が…」

「ぐっ……力が……!?」

「………………何故奈落ならざるあなたが奈落に与するのですか!」

 

 アルキオネはその身が奈落に堕ちていた。しかし、プラウディアはどうだろうか。奈落の気配らしきものは一切無い。闇の大魔に与しているとばかり思っていたが、その闇の大魔から力を与えられていないようだ。

 ならば、引き返すことは可能のはず。それなのになぜ。

 

「利害の一致ってやつさ」

「利害……?」

「この世界は終わるべきなんだ」

「そんなわけがない!」

 

 その言葉を否定したのは、蛍だった。

 

「貧富の差が激しくっても、今を一所懸命生きている人たちがその生活を奪われるなんて、そんなこと! あって良いわけがない!!」

「その通りです……!」

「そうね~…少なくとも終わらせるというのは傲慢だと思うわ~」

「もうすぐ終わる世界に安息を与えようとしてあげているのさ」

「わたしはまだ、この世界に来て少ししか経っていないけど……でも、出会った人たちはみんな優しかった! 励ましてくれた、応援してくれた、力になってくれた! そんな人たちを苦しめようとするお前たちは……絶対に許さない!」

 

 その言葉を聞いて、プラウディアの顔が歪む。

 ルーテシアはその表情を見てはっとした。

 プラウディアは亜人だ。その身は半人半魚。人の姿を取って暮らしていたが、その暮らしていた場所で、迫害を受けていた。

 彼女は力を欲し、そこでルーテシアと出会う。師と仰ぎ、技を学んだ。

 確かに、ルーテシアは良き師である。だが、プラウディアにとって世界とは、自らを迫害する敵。異形の身たるプラウディアを、奈落は受け入れてくれた。オークもまた、亜人の一種、ゴブリンが奈落へと変化したもの。それらに同族意識は無いまでも、同じ世界で迫害される者として、理解できるものがある。

 ならば共に奈落に染まれば良かったと思うかもしれないが、プラウディアはそれを躊躇っている。プラウディアにとって、第一に信頼しているのはルーテシアなのだ。残された良心が、弟子であるプラウディアが奈落に堕ちるのを防いでいる。それでも、最終的に受け入れてくれるのは、奈落側だと思っている。

 

「…………これも私の力が及ばなかったが故のことだとしても、まだ手遅れでないのなら…………あなたを止めます! プラウディア!」

「やってみるといい。今の僕は、黄昏の魔力を宿している」

「いろいろあると思うけど~止めるわね~すこ~し、びりっとするわよ~」

 

 二人の世界に入っている横から、嵐が雷撃をお見舞いする。

 それを邪魔するなと言わんばかりにシーサーペントのトラが庇った。もろにその雷撃を受けるが、倒れない。

 横合いからは、蛍が既に接敵している。ルーテシアが補助の魔法を使い、攻撃の軌道を修正。

 

「やあああぁあああッ!」

 

 プラウディア目掛け斬りかかる。

 正直なところ、プラウディアは二人の魔法騎士を舐めていた。

 師から技を学んだ自分たちならいざ知れず、どこかから連れてきた良くわからない人間。それが戦えるはずがないと思い込んでいた。

 プラウディアは正式な手順でシャードの継承を行っていない。だから知らないのだ。先人から、戦いの記憶が継承されることを。

 

「食ら、えぇええッ!!」

「っ!」

 

 プラウディアがそれを躱そうとするが、一手足りない。このまま直撃かと思われた時、トラがカバーに入った。

 先の雷撃でかなり痛手を受けていたトラは、その一撃を受け倒れ伏す。

 

「マモ…………レ…………タ…………」

「あとは……お前だけだ!」

 

 力を封じたと言っても、シャードの力、加護を封じただけ。それで、何もできなくなると思い込んでいた。

 まさかここまで戦えるとは予想外だ。

 

「トラ………………今までご苦労、おやすみ。そして、お前たちはここで死ぬ、いや殺す。絶対にだ!」

「わたしたちは、お前なんかにやられたりしない! 世界を危険に陥れようとする、お前なんかに!」

 

 プラウディアは自ら使った加護をもう一つの加護、オーディンの力で解除。

 そして、師から学んだ魔法技術の神髄を発揮する。

 互いに譲れないものがあるからこそ、衝突しあう。 

 そこに正義も悪も関係がない。勝者こそが、絶対。それが戦いというものだ。

 

「…世の中ままならないものね~…誰もが幸せを求めてるはずなのに」

「そう……ですね…………」

「お前にどんな事情があったかなんて知らない! ……でも、それでも! 誰かを苦しめるなんて、そんなの間違っている!」

「そうね~」

 

 冷静に見えて、プラウディアは頭に血が上っていた。

 自らの魔法を、加護の力で広範囲化。生み出された魔力の矢が、魔法錬成により氷の魔力へ書き換えられる。プラウディアの身から高ぶる黄昏の魔力が、その精度を上げ、高速かつ鋭利な矢として解き放つ。

 

「……!!」

 

 それを、蛍は難なく躱した。蛍だけじゃない、嵐も、ルーテシアも、その攻撃を躱し切った。

 

「しまっ……」

 

 プラウディアは大きなミスを犯した。

 本来の想定ならば、魔法技巧による特技でさらに命中の精度を上げるべきだった。それを、頭に血が上っていたせいで、怠った。結果、誰にも攻撃は当たらず、矢は悲しいことに結界のいたるところに突き刺さり、消滅する。

 蛍が何かを察したような顔をする。

 

「お前……本当は……迷っているんじゃないのか?」

 

 尚、魔法技巧があれば確かに命中力は上がったが、それでも魔法騎士の力を正式に継承している二人と、師であるルーテシアにあたるかと言われれば、蛍になら当たったくらいである。悲しいね。

 

「そんな……狙いも心もブレた技、あたらないよ!」

「…うん、まだ間に合うかもしれませんね~ルーテシア様」

「えぇ……!!」

「うるさい……!」

 

 プラウディアの目を覚まさせる。

 ルーテシアが一切の躊躇いの無いピンポイントレーザーを放てば直撃。さらに隣にいた嵐と自分の命中精度を魔法で高め、さらなる追撃を行う。

 

「そうね~わかりあうためにも~全力で~ぶつかるべきかしらね~? 射角固定…いくわね~」

 

 レーザーに続き今度はレールガンが発射される。その威力をルーテシアがさらに高める。

 

「くっ……!? 何故だ……何故、まだ覚醒したてでしかない魔法騎士に……!?」

「迷うお前なんて……わたしたちの敵じゃない!」

「まだだ……まだ僕はやれる……!」

 

 プラウディアのシャードがさらに輝きを増す。

 それは、本来なら倒れているはずのプラウディアを奮い立たせ、さらなる戦闘の継続を可能にする。

 

「プラウディア……それはっ!?」

 

 クエスターの危機をシャードの力で回避する。ブレイクと呼ばれる行為。

 だが、その反面。減少した耐久力の回復ができず、次倒れれば、死ぬという諸刃の剣。

 

「まだ戦うっていうの!?」

「さあ、師よ、そして若き魔法騎士よ。この僕を――殺していけ」

「…………!」

 

 プラウディアと接敵している蛍が振り返り、後衛にいるルーテシアを見る。

 

「…………なら、それは私の役目です」

 

 ルーテシアの魔力が高まる。これを受ければ、プラウディアは死ぬだろう。

 

「ルーテシアちゃん…………わたしは、倒すよ」

「…………!」

 

 ルーテシアの意思を確認した蛍がプラウディアに振りなおりつつ言う。

 

「ここで止まってなんかいられないから。ルーテシアちゃんもそうでしょ?」

「………………はい。私は、世界のためにも…………止まるわけには……!」

「大丈夫、わたしは知っている……ルーテシアちゃんには、強くて優しい祈りの力があるってこと!」

「強いわね~二人共」

 

 嵐がのほほんとした雰囲気でそれを見守る。

 

「ずっと、裏ばかりの人生だった。ならば最後の最後にコインの表を当てるのは、僕だ……ッ! 我が名はプラウディア。偉大なる師、ルーテシアの弟子が一人!」

 

 蛍が駆ける。プラウディアにとどめを刺す為に。

 終わらせる為じゃない。続ける為に、その命をもらい受ける。

 

「そう、覚悟はありますか~? ルーテシア様」

  

 嵐が問う。

 蛍が口にした祈りとは、ルーテシアの秘めたる力、神の加護のことだ。しかし、闇の大魔の再封印前に、ここで加護を切ってしまえば、戦いはより過酷になるだろう。

 たった一人を救うために、世界を危険に晒すようなものだ。

 それでも――。

 

「………………はい、やってください! 蛍さん!」

 

 ルーテシアの魔法が、蛍の動きを良くする。

 プラウディアが何度も魔法を放つ。それを軽やかなステップで蛍が躱していく。

 

「わたしは迷わない……困っている人がいるから! 救いたい誰かがいるから! 支えてくれる……仲間が、みんながいるから!! これで……終わりだああぁぁあああッ!!!」

 

 蛍の剣が炎を増す。それがプラウディアの放つ魔法を全てかき消していく。

 そして遂に、その一撃がプラウディアへと叩き込まれた。

 

「ああ、そうか……僕に足りなかったのは……信じる……心か……」

 

 最期の瞬間。プラウディアの脳裏に過る、走馬灯。

 ルーテシアと、他の弟子たち。幸せな、満ち足りた生活。

 どうして変わってしまったのだろう。

 迫害されていた時と違い、幸せ過ぎた生活は、罪だったとでも言うのだろうか。

 

 プラウディアの身が炎に包まれる。

 斬撃により宙に浮いたプラウディアは、このまま焼かれて死ぬだろう。

 これから師は、弟子であった他の二人も手にかけることになるかもしれない。

 

「どうか、皆を……頼む…………」

 

 そうだとしても、自分のように、その呪縛から解放してくれることを願う。

 ああ、あの頃に戻りたいな。また皆で、この世界を謳歌したい。

 

「………………まだです! この世界も……あなたも…………終わらせはしないっ!」

 

 プラウディアを優しい光が包みこんだ。

 常若の神、イドゥンの加護は、傷ついた者を癒しつくす。

 それが例え死にゆく定めにある者だとしても、目前で起きた死ならば、覆すほどの力がある。

 落下していくプラウディアを、蛍が抱き寄せた。そのまま、ゆっくりと地面へ着地する。

 プラウディアは治っていく傷に目を丸くしながら、今この場で、敵にその力を使った師を理解できずにいた。

 

「なぜ……だ……なぜだ、師よ。なぜ、助けた……!」

 

 蛍に支えられながらも、プラウディアは師たるルーテシアに言葉を投げかける。

 

「今、その力を使ってしまえば……!」

「……足りなかったもの、見つかったのでしょう?」

「それは……でも……何で…… なんで……逝かせてくれなかったんだ……」

「私達を……信じてみてくれませんか?」

「はは……は……なんて、馬鹿な師だ……裏切り者なんだぞそれを、赦すと言うのか!?」

「この世界を救って……そしてきっと……あなたも幸せになれる世界にしてみせます……! だから……生きて…………プラウディア」

「っ…………」

「………………それが、罰だと言うのなら……受け入れるしか、ないのだろうな……」

「………………それであなたが納得するなら、師として命じます。生きて、この世界の未来を見届けなさい、プラウディア」

 

 そんな会話を後ろから見つける嵐。

 は~好き、って顔をしている。目がハート。ルーテシアしゅきって感じでやばたにえんであった。

 

「……あなた、人魚みたいな姿になれるんだね」

 

 プラウディアを支えながら蛍が言う。

 

「そうだ、気持ち悪いだろう」

「ひんやりしてるけど、鱗がきらきらしてて……とっても綺麗だよ!」

「きれ……い……? この僕が……?」

 

 今まで、そんなこと言われたこともなかった。

 この姿を見た者は、みな魚みたいとか、生臭いとか、サハギン野郎とか、そんな言葉と共に石とトマトを投げてきた。

 師ですら、迫害されていたことに遠慮して、終ぞ言うことのなかった言葉を受け、プラウディアの頬に一筋の涙が伝う。

 

「うふふ…一件落着ね~ひとまずは、あの二人も仲良くなれそう」

 

 嵐は蛍がプラウディアを口説きだしたとか思いながらそれを聞いている。

 

「くく、あはははは! 師よ。あなたのあらたな弟子は、変わっている」

「え、えぇ~? 本当にそう思うんだけどなぁ!」

「ふふ……ああ、そうか。良いだろう。見届けて見せるとも。その為にも、キミたちの旅。同行させて貰うぞ?」

「ふふふ…」

 

 にこにこしながら、嵐はえ、ついてくるの? って顔をする。まさか同行を申し出てくるとは思わなかった。ルーテシアは渡さない。

 

「えぇ……よろしくね、プラウディア」

「本当!? やったぁ!! よろしくね! わたし、蜥堂蛍!!」

「改めて、プラウディアだ」

 

 こうして、魔法騎士のシャードを持つ者が三人揃った。

 プラウディアの魔法は命中の低さが欠点だが、ルーテシアの魔法があればそれを十分補える。戦力としてもかなり期待できそうだ。

 

「みんなー! 危険な魔獣はいなくなったよー!」

 

 結界が解け、集まって来た人たちに手を振る。

 まだ、旅は始まったばかりだ。

 この河から進んでいけば、ようやく本来着くはずだった場所に辿り着ける。

 都まで、あと少し――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 闇に包まれた場所。

 そこで、アルキオネが絶叫していた。

 

「あーーー悔しいいぃぃいいい! 聞いてよぉおおお! うちのペットちゃんちゃちがぁ……てかプラウディアに貸してたペットもなんか死んだっぽいんですけどおおお! おこだよおこ。激おこぷんぷん丸!」

 

 日本は現在1993年。まだ生まれていないぷんぷん丸語録を使うとは、流石アルキオネ。時代の最先端を行くのか?

 

「ぴえんなんですけどぉ……」

 

 超えてぱおんになりそうな涙声で、もう一人の少女に縋りつく。

 その少女はアルキオネの頭を撫でながら、まあまあ、とあやすように言った。

 

「それは大変でしたね。なら、少しばかり様子を見てくるとしますか」

 

 赤みがかったこげ茶色の髪を一括りに纏めた、赤眼の少女は言うと姿を翻す。

 すると、どこにでもいるような、特に特徴のない少女へと姿を変えた。

 そして、最後の神官――ディグニティは都へと向かう。

 魔法騎士との邂逅は、すぐそこだ――。

 

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