アルシャードセイヴァー・リプレイ ノベル・レイアース+a   作:椎名真白

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王の都

 あくる日。

 プラウディアが得ている情報とのすり合わせが行われた。

 どうやら都に攻め込んでいる勢力は常闇森のオークらしい。これは始まりの街で得た情報と同じで、予想が確定に変わったと言える。

 どうやら奈落側は大魔復活の為に人々の絶望を欲しているらしい。あと三神官の思惑に関係無く単純にオーク側が都に侵攻を開始した。

 プラウディアもその奈落側として動いていたわけだが、まだ殺しはしていないようだった。とはいえ、道を塞いで商人の積み荷などを襲わせていた。到底許されることではないだろう。

 ルーテシアにとっては弟子の不手際だ。国からの補填、それはそれとして平和になったら河で荷物を運ぶ仕事などをさせるお仕置きをすることにした。

 

「オークって……この前戦ったアイツらだよね……!」

「えぇ……彼らは宵闇森に住む奈落の種族……大魔の尖兵といってもいいでしょう」

「王都にもアイツらが……全部やっつけないと!」

 

 続いて得たのが、ディグニティの情報だ。

 これはルーテシアが得ている情報も交えすり合わせを行った。

 ディグニティはルーテシアの一番弟子で、変装の達人。今どこで何をしているのかは不明だが、大魔復活の為に動いているのは間違いなさそうだ。彼女は既に闇の大魔から与えられたアビスシードにより奈落の使徒と化しており、炎の魔法を得意としている。

 

「ディグニティ……彼女も奈落に堕ちてしまいましたか……。変装の達人である彼女はどこから襲撃してくるかわかりません……。より警戒した方がよさそうですね」

 

 それから、アルキオネの情報を得る。

 三番弟子であるアルキオネは、動物と会話する特殊能力を持つ。嘗てはそんな動物との触れ合いを楽しむ純粋無垢な少女だった。

 しかし、現在では多くの魔獣を率いて襲撃を繰り返しており、その手は始まりの街まで伸びようとしている。

 事実、始まりの街で既に一度交戦している。

 

「アルキオネは……オークのあとに出会った相手だよね!」

「始まりの街を襲ったアルキオネは私達が退けました……。ですが、またどこかで襲ってくるかもしれません」

「そうね~」

「えぇ……彼女は獣と心を通わせることができましたが……今では魔獣を従える存在に……いずれどこかで配下となる魔獣を集めて再び現れるでしょう……」

 

 シーサーペントの肉を食べながら、そんな風に情報を合わせていく。

 死んでしまったシーサーペントのトラ。既に寿命も近かった彼も、魔法騎士の血肉となり、共に戦うことができるのを喜んでいることだろう。

 プラウディアはそのお墓を立てながら、さらなる情報共有を行っていく。

 

 常闇森の勢力は、現在オークキングが襲撃の指揮を務めていると思われる。

 オークキングは常闇森の根城におり、オークキングがいる限り、オークは無限に生まれ続ける。

 オークキングはぽんぽんと無限に子供を産み続ける、生殖機能を一人で完結させた存在である。これが生きている限り、オークの侵攻は止まらないだろう。

 

「オークキング……それさえ討ち果たせばオークの襲撃を止めることも……!」

 

 これは都より先に常闇森へ行くべきだろうか?

 だが、ディグニティの動向も気になる。また、都でまずは体制を整えてから向かった方が良いだろう。

 そうして移動を開始した一同は、ようやく都へ辿り着いた。

 

 

 

 

 「やっと帰ってこれました……!」

 

 王の都。民からは都、とだけ呼ばれている国の中枢を担う場所。

 本来ならば最初に来るはずだった所である。

 

「良かった……今は戦闘中ってわけじゃないみたいだね」

「えぇ……兵たちが頑張ってくれているようですね……」

 

 奈落の勢力の襲撃により防衛線が張られていたようだが、丁度敵を退けたところのようで、都の中は比較的落ち着いた雰囲気である。

 とはいえ、持久戦になれば数の減らないオーク勢力が圧倒的に有利。今はまだ大丈夫なものの、時間が経てばどうなるかはわからない。

 始まりの街とは比べ物にならないほどに大勢の人がいる。さすがは国の中心地、と言ったところか。

 

「わ~さすが都ね~」

 

 嵐が都を見て感嘆とした声を漏らす。

 比較的落ち着いている、と言ったが、活気だっているわけではない。本来ならもっと賑やかであろう広場には、疲労を隠せない兵士や国の行く末を心配する民たちで溢れかえっている。

 

「彼らのためにも……オークキングを討つための作戦を考えなければなりません。……王城へ参りましょう」

 

 城の中へ戻れば、ルーテシアが戻って来たということで一気に騒がしくなる。

 因みに都に入ってすぐにも顔を見られていたし、直接声をかけられはしなかったものの、ひそひそと噂はされていた。

 

「ルーテシア様だわ」

「まあ、素敵!」

「ご機嫌よう!」

「殴り合いしましょう世界の代表の座をかけて!」

「新しい弟子をお取りになったのかしら?」

「まあ、あの方は二番弟子だった……」

 

 等々、やっぱり城の外でも騒がしかった模様。

 

「都は変わりありませんね、師よ」

 

 感慨深くプラウディアが言う。

 まさか、再び都に足を踏み入れることになるとは思わなかった。

 

 

「わ~。ルーテシアちゃん、ものすごい有名人なんだね~」

「そうね~さすがよね~好き」

 

 平常運転な嵐である。 

 

「えぇ……皆元気そうで何よりです」

 

 周囲を見て目を輝かせている蛍を他所に、ルーテシアは近くの衛兵に駆け寄る。

 

「ルーテシア、魔法騎士を連れて帰還しました。彼女たちに薄暮の君へのお目通りを」

 

 それを聞いた兵士は他の兵士と互いに見合わせて、言葉を選ぶように続ける。薄暮の君は、もういない――と。

 

「…………!?」

 

 

 

 

 そこは闇が深い場所。

 薄暮の君はそこに浮かぶ鏡のようなものを通し、ルーテシアの姿を捉えていた。

 

「ルーテシア様、魔法騎士を見つけてくださったのですね……でも……ごめんなさい……あなた様にもう一度、お目通りすることは叶わなそうです……」

 

 そう言う薄暮の君の前には、何者かがいた。

 

 

 

「彼女が……この国の王が囚われただなんて…………! 一刻も早く助け出さなければ……」

 

 どうやら、奈落勢力に捕らわれたらしい事実。オークたちの第一陣が攻め込んできた際、その被害は城の内部まで及んだという。

 まさか、そこまで被害が出ていたとは思わず唖然。恐らく闇の三神官の手引きもあったのだろう。

 

 薄暮の君の居場所は分からないが、闇の大魔は復活寸前。急ぎ巨人の塔へ向かい、再封印をかける必要がある。寄り道している暇はない。

 ふと、蛍が悪寒を覚える。嫌な予感、と言えばいいか。巨人の塔へこのまま行けば、取返しのつかないことになるような……。

 嵐が分からないなら見つければいいと、ロケーションの魔法を使用する。人物、物品などの行方を探る為の魔法だ。

 

「あら~…風が教えてくれたのだけど…」

 

 それによれば、やはりというか、オーク勢力によりオークたちの根城、オークキングの元へ連れていかれたことが判明する。

 

「……!? 大変だ! すぐに助けに行かないと!!」

 

 このままでは薄暮の君が薄い同人誌のような展開になってしまう。そうでなくても、オークキングは子沢山なのだ。薄暮の君がパパになってしまえば、より能力の高いオークが繁殖する可能性すらある。光と闇が交わり最強そうな子沢山、考えるだけで恐ろしい。

 恐ろしいのが、薄暮の君が殺害されてしまう可能性だ。これだけは絶対に避けなくてはならない。

 

 ルーテシアは薄暮の君について語る。

 薄暮の君は、代々儀式を通しその名を子へ継承してきた。そうして継承を行う際に、この世界そのものを構成する可能性――イデアを継承している。この世界のイデア、それは薄暮の君そのものであり、薄暮の君が散れば、世界そのものが終わることを意味する。何らかの形で継承ができれば話は別だが、現状、それは無理な話だろう。

 大魔復活が間近であっても、封印する前に世界が終わっては意味がない。下手をするとオークキングがイデアを吸収し、最悪なオークが生まれる可能性すらある。そうなってしまえば、世界は奈落に浸食されつくしてしまう。それは世界が散るのと同じようなものである。

 

「彼女はこの世界の要たる存在……失えば世界が滅んでしまいます…………」

「ルーテシア様、どうなさいますか? 薄暮の君の居場所が判明したというのならば、我らも兵を率いてすぐにでも出立致しましょう。もとより、姫捜索の関係で、侵攻できなかった、というのもあるので」

 

 魔法師団長がルーテシアの意思を確かめるように言う。

 情報収集で手一杯だったのをただの魔法一つで解決する辺り、流石は勇者、魔法騎士だと賞賛する。

 兵士たちが頑なに防戦一方だったのも、薄暮の君の消息が掴めず身動きが取れなかったから。下手な侵攻は相手側に捕らわれている薄暮の君の危険に繋がりかねないし、何より、城の守りを捨てて森へ向かったはいいが、巨人の塔側から攻められましたじゃ話にならない。奈落の出方が分からないからこそ、身動きが取れなかった。兵力を割く判断が取れなかった、ともいう。

 嵐の魔法で判明した居場所は常闇森。兵力を集中させるにせよ、城の守りはやはり捨てられない。だが、ここには魔法騎士たちがいる。ルーテシアは城の守りを残した上で、一部の兵力を割き救出隊として構成した。アルキオネたちの存在が気がかりであるものの、魔法騎士とルーテシアにただならぬ思いを寄せているはずだ。どちらかと言えば、森へ追ってくる可能性の方が高いだろう。何より、都を滅ぼすよりも薄暮の君を手にした方が、大魔復活には確実と考えられる。最も、背水の陣を取って姫を取り戻したけど都が滅んでましたじゃやっぱり話にならないので、上手く部隊を構成する必要があった。

 この国、如いてはこの世界の創造から今まで携わっているルーテシアだからこそ、最適な部隊構成が可能だった。

 

「とにかく急ごう! 早く助けに行かないと!!」

「えぇ……! これより薄暮の君救出のため、我らは宵闇森へ向かいます!」

「みんなの力、借りさせてもらうよ! 一緒に頑張ろう!」

 

 ルーテシアに続き蛍がそう言えば、兵士たちの士気が一気に高まる。

 やはり、統率能力が執れた人物の存在は重要だと、改めて実感する。

 

「兵たちにはオーク兵への対処を……! オークキングは私と魔法騎士たちで倒しましょう」

「そうね~いそぎましょう~」

「絶対に薄暮の君を助け出そう! この世界を終わらせなんてさせない!」

「はっ! すぐにでも出られます!!」

 

 そうしてルーテシアを始めとした薄暮の君救出部隊が、常闇森へ向け侵攻を開始する。

 

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