アルシャードセイヴァー・リプレイ ノベル・レイアース+a   作:椎名真白

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闇の三神官

 薄暮の君を救出し、都へと凱旋する面々。

 どうやらまだオークの残党がいるようで、一部の騎士たちはその討伐を行い道を切り開いている。

 その都へ向けて、巨人の塔から恐るべき闇が……。

 

「怪我がないようで、本当に良かった! わたしたちのことは気にしないで良いんだよ!」

 

 来ているのだが、それに気づかぬまぬけこと蛍はひたすら薄暮の君に話しかけていた。

 

「これは…………!?」

「そうだ、お姫様は好きな食べ物ある? わたしはね、アイスクリームが大好きなんだ!」

「待て。何かが……来る……? 師よ。この気配は……」

「この世界にはアイスクリームあるの?」

「一応ありますよ」

「この力……まさか、大魔…………!?」

「…これが、そうなのね~」

「そうなんだぁ! へぇえ、この世界のも食べられたら嬉しいなぁ!」

「皆さん……王都へ急ぎましょう!」

「……えっ!?」

 

 今更不穏な会話に気づいた蛍。

 空の色が変わっていく。暗かった空がより濃さを増し、それは黒ではなく、紫暗の空へ変化。

 ルーテシアは都へ向かう闇の大魔を目視し、驚く。封印した時と異なる姿、その時よりも禍々しい竜の姿へと変貌していた。

 

「永遠ノ、闇……」 

 

 木霊すような、大魔――オベロンの声が響く。

 その上には、闇の三神官の一人、アルキオネの姿。

 

「空が……!?」

「復活してしまったのですね…………」

「アルキオネ……!」

 

 プラウディアが空へ向け大声で名を呼べば、それが聞こえたのが、オベロンが立ち止まり、そこから降りたアルキオネが眼下に顔を向ける。

 

「……! お前は!!」

 

 アルキオネの姿を目視した蛍が、剣を呼びだし警戒する。

 

「あっれれー、おっかしーぞー? なんでお姉様、そっち側にいるのぉ?」

「もう……やめるんだアルキオネ! こんなことに、一体何の意味があるんだ」

「そうだ、プラウディアの言う通りだ! そんな怪物を使って、この世界の人たちを苦しめて……!」

「はっはーん。裏切った訳ね」

 

 プラウディアに冷たい視線を向けた後、その隣にいる魔法師団長グレースの方に顔を向け、言った。

 

「で、そっちのお姉様は?」

 

 グレースは俯いており、その表情は伺い知れない。

 対しグレースの周りに一同が、グレースの方へ顔を向けた。信じられないとでも言うように。

 

「グレース…………?」

「魔法師団長?」

「団長さん~?」

「……!? 騎士さん……?」

 

 困惑。ルーテシアが、薄暮の君が、嵐が、そして蛍が。プラウディアもどこかにいるとは思っていたが、こんな身近にいるとは思わず唖然とする。

 グレースが顔を上げれば、笑みを浮かべており、その姿が変化していく。

 

「…………!?  まさか、あなた…………!!」

「師よ。相変わらず、見事な手前。ですが私の変装も、見事なものでしょう?」

「…………迂闊でした。よもや師団長に化けていたなど……!」

「……なんでだ! 貴方はさっき、わたしたちと一緒に戦ってくれたじゃないか! 身を呈してお姫様を庇って! あなたがいなかったら、お姫様は……!」

「そうよ~それならなぜ護ってくれたのかしら~」

 

 蛍が信じられないとばかりに声を荒げる。嵐も続き疑問を投げかける。

 危険を顧みてまで守った姿。それが演技だったとは到底思えない。

 事実、あの一撃を受けて、魔法師団長はかなりの痛手を負っていた。ルーテシアが癒しの魔法を使わなければ、もう戦えないほどに傷ついていた。

 

「ああ、なんてことなの。可哀想な姫。そして可哀想な方々。信じた者に裏切られる気持ちは如何ですか?」

 

 魔法師団長改め、三神官の一人、ルーテシアが一番弟子ディグニティはうっとりと頬を染め上げる。

 

「わたしたちを騙すためにやったっていうのか……!?」

「もちもちのロン」

「ロン……確か師に告白して振られた男……!」

 

 プラウディアが思い出したように名を叫べば。

 

「それはウィーズリー」

 

 とディグニティが修正する。

 

「ロンでは、無かった」

「それは弟の方」

 

 アルキオネがさらに付け足す。

 

「…………。*1 わたしは信じない! あなたが一緒に戦ってくれたときの姿が、嘘だったなんて思えない!」

「自らの身を危険にさらしてまで……! あなたは……本当に私達の敵なのですか?」

 

 困惑する蛍。

 ルーテシアもそれが信じられない。

 蛍の心の声が通じたのか、ディグニティが話を続ける。

 

「師に告白して振られたお爺ちゃんの話だけど何か?」

「庭師のお爺ちゃん、まだ現役ー?」

 

 ディグニティに続きアルキオネが言う。プラウディアは顔を覚えていないなと記憶を辿っていた。

 

「庭師の方は先日、亡くなりました。残念なことです。まさか喉にお餅を詰まらせて死んでしまうだなんて……」

「お姉様じゃん」

「やめろ……やめてくれ………………」

 

 アルキオネのその一言が、プラウディアの心を大きく傷つけた。蘇るトラウマ。止まる呼吸、白黒する目。死を想起し、呼吸が荒くなる。

 

「やめろぉおおおおおおおおおおお!!!!!」

「やめろ! プラウディアを怖がらせることは許さない!」

「気を付けて……! 妙な会話に乗せられているうちに敵が体勢を整えています!!」

「…! …そういう戦法なんですね~」

 

 緊張感の欠片もねえなと、他の兵士たちも黙ってその話を聞いていた。

 その兵士たちが、次に思考することはなかった。

 

「――」

 

 一瞬のことだった。

 まず、ディグニティの姿が見当たらなくなった。

 そして気づけば、大勢が死んだ。

 今の、一瞬だ。

 

「なっ………………!?」

 

 オークの残党と戦っていた騎士たちが、屠られたのだ。

 他でもない、ディグニティの手により。

 

「お前……ッ!!」

「…なんて…こと」

「ディグニティ…………!! やはりあなたは……我々の敵なのですね……!!」

 

 消えたディグニティを探せば、彼女はアルキオネのすぐ真下にいた。そしてアルキオネに向けて声を投げかける。

 

「アルキオネ、あなたに貸していたあの子はいますか?」

「うんうん。良い感じに生んだよ~」

 

 黒い影が蠢く。

 

「オォオ……」

 

 そこから怪物の声が木霊した。

 一見すると鳥にも見えるその怪物――ベルフェゴールマザーは、小さな子ら――ベルフェゴールを伴って姿を見せる。

 

「オオオオ……!」

 

 闇の大魔が合わせて叫べば、そこに闇の結界が張られた。

 

「事ここに至って容赦は致しません…………大魔とその眷属たち、ここで討ち果たします!」

 

 闇を討つ決戦が始まった。

 

 

 

*1
(何の話してんだ、おめーら!!)




ディグニティ

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プラウディア

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アルキオネ

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