アルシャードセイヴァー・リプレイ ノベル・レイアース+a   作:椎名真白

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闇の大魔

 

「サァ……さあさあさあ……オベロン。その力、ぞんぶんにふるえ……!」

 

 アルキオネが幼さの残る声で命じる。まるで、それに従うようにオベロンは宙へ漂う。

 

「くすくす……どうですか、師よ。アルキオネは遂に闇の大魔を従えました。これで理想の世界が創造できます。そこに邪魔者などいりません。我らが楽園を今こそ――」

 

 ディグニティが落ち着いた声で、諭すようにルーテシアへと投げかける。

 

「たくさんの人を傷つけておいて……何が理想の世界だ!」

「…」

「その力で理想の世界なんて作れるものですか…………!」

 

 蛍が、嵐が、ルーテシアが。その言葉を否定するように武器を手に取る。

 

「ああ……やっと、やっと戻れるんだ。あの頃に……! あの楽しかった日々に……! アハ、アハッハハハハハハハッハ!」

 

 狂ったように笑いだすアルキオネ。

 プラウディアはそれから目をそらすようにして、向き直る。それからルーテシアに対し、言葉を紡ぐ。

 

「師よ。僕はまだ、僕はまだ、僕たちがそもそも、奈落側についたのは……師に、笑っていて欲しかったから……」

「……じゃあ、プラウディア! 今のルーテシアちゃんを見てみてよ! 目をそらさないで! まっすぐ! ……笑っているように見える?」

「プラウディア…………」

 

 それに対し、プラウディアは語る。ルーテシアは闇の大魔、そうなってしまった神、レクサスを生み出してしまったことを悔やんでいると。

 それだけじゃない。重圧があった。ルーテシアにはこの世界の神として、多くの人々の希望の矛先となる重圧があった。

 三人の弟子はそれを、どうにかしたいと考えた。

 考えて、考えて、考え抜いた結果――堕ちた。

 ルーテシアの後悔である闇の大魔、その勢力へと。

 

「三人とも、間違っている!」

「間違い?」

 

 黙って聞いていたディグニティが、蛍の言葉に首をかしげる。

 

「本当にルーテシアちゃんのことを思っているのなら……ルーテシアちゃんのことを、真っ直ぐ見なよ! 現状を喜んでいるように見える? 笑えているように見える? 一緒にいたから、わたしには分かるよ!! ルーテシアちゃんが、どれだけこの世界を大切に思っているか! あなたたち弟子のことを、愛しているか!」

「ふふ、ふふふ…………何も知らない癖に。まだ会って一月も経たないお前たちが……知ったような、口をきくな……ッ!そんなことわかっている!!」

「貴方たちこそ、分かっていない!!」

「蛍さん…………」

 

 共に旅をしていたルーテシアも、この数週間で蛍と嵐、その人となりを良く理解していた。それと同じく、ディグニティたちの考えも理解できる。できてしまう。

 確かに彼女たちは奈落に染まった悪だ。一歩間違えば、ルーテシアもその道に進んでいただろう。そして、その道に連れていってしまったのは、自分のせいだ。

 もっと、彼女たちのことを良く考えていてあげていれば……そう、後悔する。自分の弱さが、彼女たちを奈落へと進ませてしまったのだと。

 それでも、ルーテシアがその手を取ることはなかった。この世界の神として、この世界を闇へ染めようとする弟子たちは、敵だから。

 

「分かっている……だからこそ」

「ルーテシアちゃんが貴方たちに抱いている気持ちを、分かっていない!」

「だからこそ、私たちが作り変える……それしか、無いんだ。黙れ……! ……これ以上、話すことは無い。勝った方が、正義だ」

「平行線ね~…というわけでルーテシア様の愛は私がもらっておくわね~」

 

 一人勝ちルートでも目指しているのか、嵐がルーテシアの肩を抱きよせた。

 抱き寄せられつつも、ルーテシアは強く言葉を発する。

 

「…………えぇ、私はとうの昔に決めたのです。この世界を背負うと。たとえあなたたちが相手でも……それを曲げるつもりはありません!」

「ルーテシアちゃん……じゃあ……私は戦うよ。この世界を守るために! シャードに選ばれた、魔法騎士として!」

「お願いします……勇者たち。力を貸して下さい!」

「私もよ~プラウディアちゃんは…どうするのかしら~?」

「……僕は、確かにあの日々に焦がれていた。けれど、師はそれを望んでいない。それだけじゃない……僕自身が見てみたいと思ってしまった。この世界の行く末を、希望の国の、たどり着く場所を……!」

 

 プラウディアが、姉弟子と妹弟子に武器を向ける。

 

「……プラウディア。あなたの裏切りを、私は許しましょう。魔法騎士たちよ。お願いします……闇を、奈落を、祓って……!」

 

 薄暮の君の言葉に魔法騎士たちが強く頷く。

 

「……うん。希望の未来を切り拓くのは……わたしたち、魔法騎士。プラウディアも、その一人の……わたしたちの仲間だ!」

「決まりね~。え~がんばりましょ~」

「えぇ……! 三人の魔法騎士が揃いし今……再び闇を祓う時……!」

 

 ルーテシアが号令をかけ、決戦の合図となった。

 

「お話し合いは終わったー?」

 

 その会話が終わるのを待っていたアルキオネが降り立つ。

 蛍はディグニティ、アルキオネの二人を見て、プラウディアのように救う手立てはないかを符呪による口寄せを使い調べあげる。

 ディグニティは、倒すことが出来ればその身の奈落を消し去ることは可能。しかし、アルキオネは既に手遅れ。完全に奈落と化しており、倒し蘇生させたところで、奈落であることに変わりはないようだった。

 それでも何か、救う手立てはないか。その僅かな間に、ディグニティは己が本当の武器を呼びだす。

 

「煉獄の炎よ我が手に宿れ……」

 

 蛍と同じ、炎の武器。剣王の座より呼び出したのは、煉獄の炎。

 定められた運命を覆し、不可能を可能にする者のみが呼び出せる剣王の武具を使うということは、本来ならば、ディグニティも奈落に対するクエスターになり得たはず。その目を覚まさせる。

 ルーテシアが仲間たちに魔法を使い補助を行う。

 

「助かります!」

 

 プラウディアが魔法の矢を展開しながら師へ言う。

 

「紅の神の炎……轟け、赤い稲妻!」

「煉獄の炎よ、神の炎を打ち消せ……!」

 

 蛍は決戦に出し惜しみなく魔法騎士としての力、シャードの加護を用いた戦術を展開。

 神なる炎がディグニティを焼き尽くさんとすれば、それに邪へと転じた炎をぶつけ相殺を目指す。

 ルーテシアが加護の力を使い、ディグニティを妨害すれば、蛍の背後に巨大な神、アカラナータの幻が顕現し、炎の剣を振り下ろす……!

 それに巻き込まれたベルフェゴールが全滅。

 

「もー、やられちゃったの? しょうがないにゃあ。この結界があればまだ生めるし、それで埋め合わせはするよ」

 

 余裕そうにアルキオネが結界のことを口走る。

 

「闇の結界がある限り、奈落の闇は祓えない。残念でしたね、師よ」

「ならばその結界を崩すまでのことです……」

 

 随分と余裕そうに、ディグニティが続けた。

 わかったところで、破壊するだけの力はないと舐めているのだ。

 きっと、闇の結界がベルフェゴールマザーに力を与え、子を胎ませるのだろう。*1

 

「DAI……DA……DAAAA! KESU!!」

 ベルフェゴールマザーが不気味な鳴き声を発する。

 嵐が闇の結界を上書きしようと、シャードの力で自らの結界の展開を試みる。広がったと思われた結界はしかし、すぐに闇に呑まれてしまう。

 

「んんん…まだ…たりない」

 

 ならばと加護の力を使う。

 

「うたうわよ~とま~ら~ない~」

 

 芸術の神、ミューズの力を使ってルーテシアの魂に力を注ぐ。

 

「っ、陣形を……!」

 

 二つのシャードから発せられた結界が、徐々に闇をかき消していく。ディグニティがその動きに警戒を強める中、火と風と水を司るニョルド神の加護を得て、神の怒りで敵を灼かんとする。

 

「はああぁあああッ!! 吠えろ赤い……竜ッ!!」

 

 燃え盛る炎が竜の姿を取り、ディグニティを襲った。

 対しディグニティも炎で対抗する。

 

「我が炎よ……! くっ……押し負ける? この、私が……!?」

 

 それがディグニティを飲み込むが、ディグニティの持つ宝石が輝き、辛うじて死を逃れる。

 シャード、神の欠片。魔法騎士のものとは異なるそれを、ディグニティが持っていた。

 

「プラウディア……お願いします!」

「もう一度だ、その炎、蘇らせろ……蛍ッ!」

「行くよ……ディグニティ!」

 

 プラウディアのシャードが輝き、蛍にさらなる追撃を行わせた。

 跳躍した蛍は一瞬の内に距離を詰めると、自らの炎を持ってディグニティへとぶつかる。

 

「勝った方が正しいって言ってたね! ……ここで勝つのは、わたしだ!!」

「当たると思っているのか!」

 

 ディグニティはそれを躱すべく起き上がる。

 

「当たるよ、絶対に! わたしには……プラウディアの助けがある! 新しく仲間になってくれた、彼女の!」

「魔法騎士たちに後れを取ると思うな……!」

 

 炎の精霊が生み出され、それは攻撃を躱さんとするディグニティを逃がすまいと膨れ上がる。

 そうしてディグニティ……と、

 

「……」

 

ベルフェゴール・マザーを巻き込む劫火が吹き荒れた。

 

「…………」

「はあああぁぁぁぁぁッ!!」

「……?」

「わたしが……負ける……? こんな、魔法を習ってすらいない……ひよっこに……?」

「…………!!?!?!?!?」

「はは……は……」

「これが……わたしの……わたしたちの……力だぁぁぁぁッ!!」

 

 飲み込まれたディグニティと、巻き込まれたベルフェゴールマザーはそれにより灰燼と化す。

 

「…………大丈夫だよ、ディグニティ! あなたのことも……わたしたちが助ける!」

 

 灰と化したディグニティが返事をすることはない。

 だが、シャードの力を使い今一度蘇らせることはできる。

 一度灰と化したことで、彼女を汚染していた奈落は消えている。もう一度、やり直す機会を与えることができる。

 

「あちゃー。ま、いいか! 奈落の闇はまだあるし!」

 

 倒された二人を見て、アルキオネがそう零す。

 ルーテシアがすかさず加護を使いディグニティの蘇生を試みようとするのに対し、嵐が待ったをかける。

 

「先に結界よ~」

 

 今ここで復活させても、すぐまた闇に呑まれる可能性が高い。

 まずはこの闇の大魔の結界を破壊するのが先だろう。

 蛍がすぐさまアルキオネに接敵。すると、アルキオネから闇が生まれ、それが蛍の行動を阻害する。

 だが、それで止まる蛍ではない。必中必勝の一撃が、アルキオネに叩き込まれる。

 

「てやああああぁぁぁッ!!」

「は?」

 

 普通ならば、これを躱すことなどできない。

 しかし、アルキオネもまた加護が使える。蛍の炎の剣が振り下ろされるが、アルキオネの姿が炎の向こう側に陽炎のように消える。

 

「あたるわけないんですけど?」

「だけど! 次はどうかな!」

 

 蛍がアルキオネの相手をしている間に、プラウディアも結界への干渉を試みる。闇の結界に罅が入った。

 

「あとは任せました、師よ!」

「はい…………!!」

「ぴえんなんですけどぉ!」

 

 アルキオネから膨大な魔力が溢れ出す。それが幾重もの魔力の矢となり、ルーテシア、そして魔法騎士たちを襲う。

 

「消え去れ……ゴミムシがよぉ!」

 

 加護の力。それが絶対必中の力へと変え、さらにアルキオネの体から美しい光の魔力が溢れたかと思うと、それがオベロンへ干渉を開始する。

 闇の大魔が光に包まれたかと思うと、アルキオネに呼応したかのようにさらなる加護を使う。

 

「……っ、ぐ……! まだ……まだ……ッ!!」

 

 蛍は辛うじて立っているが――ほかの三人、嵐、ルーテシア、プラウディアはその場に倒れ伏せる。

 三人のシャードがそれぞれ輝き、ブレイク。立ち上がらせる。

 

「シャードよ……私達に力を!」

「っ…風が…助けてくれる」

「はあ? まだブレイクしてないとかぴえんを超えてぱおんなんですけど?」

「へへ、頑丈なのが取り柄なんだ!」

 

 苛立たし気に蛍を睨むアルキオネ。

 立ち上がったプラウディアが、アルキオネとオベロンを交互に見比べて言う。

 

「不思議だった。大魔の姿が変貌していることが。アルキオネ、お前……自分のシャードに大魔を、融合させたのか……!?」

「…………!!」

 

 プラウディア、ディグニティに続きアルキオネがシャードを持っていることはもはや不思議ではなかった。神の欠片に選ばれるだけの素質があったということだろう。

 アルキオネは懐から光り輝く美しいシャードを取り出しそれを見せる。

 

「のんのん。シンクロ、って言って欲しいなあ」

「なんてことを……!!」

「魂のシンクロよ」

「ハハ……ウ……エ…………」

「はぁい、あなたのままでちゅよ~」

「…………」

 

 オベロン、いや、その核となったレクサスが、母たるルーテシアを求めている。別にアルキオネの胸を見てバブみがたりないとか思ったりはしていない。ルーテシアも胸はない。

 ルーテシアのシャードがさらに結界へ干渉。そして遂に結界が崩れた。

 

「闇の結界が……解呪されていく……!?」

「結界の上書き……完了しました! ディグニティ……! 目覚めなさいっ!」

 

 青く美しい結界。空を、海を思わせる世界。

 その世界から光が生まれ、それが灰と化していたディグニティを包みこんだかと思うと、その場に立ち上がらせた。よろける体。それを蛍が支える。

 

「師よ、何故ですか。何故、私を……」

「言ったでしょ……ディグニティ、貴方のことも助けるって!」

 

 隣の蛍が言えば、信じられないといった表情でルーテシアを見て、呆れた顔をする。

 

「本当に、馬鹿な人たち。でも、とても清々しい気分だわ……良いでしょう。今だけ、力を貸すわ」

「ありがとう……!」

「へへっ、良かった!」

 

 ディグニティはすかさず光の魔法を使いアルキオネへ叩き込む。予想外の攻撃にアルキオネは抗魔が間に合わない。

 

「裏切りとかまじぴえんなんですけどぉ?」

 

 アルキオネの持つ闇の耐性に対し光の魔法はクリティカルヒット。かなりの大ダメージを与える。

 アルキオネは受けたダメージに顔を歪ませながら、厄介な加護の力を封じる為の加護を使う。

 嵐がアルキオネに向け雷の魔法――レールガンを放つ。

 

「いっくわよ~覚悟しなさい~」

「死と再生の女神よ……我を守れ……!」

 

 アルキオネの前に再生を司る紋章が浮かぶ。オベロンの前には死を司る紋章が――。

 

「そ~…ならこっちもいくわね~」

 

 と、加護の力を使おうとするも、アルキオネの加護により封じられる。

 

「ははは! 魔法騎士の力を存分に使えないみたいねえ……残念ねぇ!!」

 

 煽りながらアルキオネは加護の力を使おうと、

 

「何故、加護の力が……消える?」

 

 して封じられた。自分の加護で加護を封じた結果、加護が使えなかったのである。悲しきかな。もろにレールガンを受け傷だらけになる。

 

「凄まじい雷撃の矢……お見事です」

 

 横合いからさらにディグニティの光の魔法が着弾、そのまま吹き飛ばされる。

 

「この……裏切り者がぁああああ!!」

「もうやめましょう……こんなこと……」

「くそがぁ、糞、ガァアアア!!!」

 

 目を覚ましたディグニティがアルキオネを説得するように言うが、聞く耳持たず。

 

「アルキオネ…………」

 

 優しかったあのアルキオネとは思えない顔を見て、ルーテシアが悲し気な顔をした。

 目前まで迫った蛍が炎の剣を振り下ろす。

 

「ははは。忘れたノォ? あなたの攻撃は、通じないよォ?」

「それは、どうかなッ!! 一回目が駄目なら! 二回目!! 二回目が駄目なら……三回目ッ!! 例え当たらなくても……当たるまで!! 何度でも、何度でも!!」

 

 ルーテシア、ディグニティが蛍の剣に魔力を込める。

 

「蛍ちゃん決めちゃいなさい~」

 

 嵐の歌が、蛍の心を高ぶらせる。

 

「わたしには守りたい人たちがいる! 世界がある! 一緒に戦ってくれる……仲間がいるんだ!!」

「くそ!?」

 

 その連撃を何とか躱そうとするも、あまりに手数が多い。

 燃え上がる炎はやがて青く、そして金色へと変化。

 黄金の炎が遂にアルキオネを捉えた。

 

「嘘……でしょ………………」

「世界を好き勝手にしようとするお前なんかに……わたしたちは、負けたりなんかしないッ!!」

 

 仲間たちの力を受け、的確に、神速が如き動きにて。

 アルキオネを両断、その身が光に包まれて完全に崩れ落ちた。

 

「い、いや……いやだ、し、死にたくない……」

 

 顕現していたオベロンが闇へと変わり、アルキオネの中へ入り込む。元々一体化していたアルキオネの下に戻ったのだ。

 闇の大魔。その奈落の力がアルキオネの身を亡ぼす。

 

「貴方だって……助ける! 助けてみせる!!」

「…そうね~」

「ディグニティ……力を貸して!」

「ガイアよ。そしてイドゥンよ。どうか、愚かな私たちに……力を貸して……」

 

 ルーテシアがディグニティ―に助力を請う。

 ディグニティのシャードが輝き、加護の力でアルキオネの救済を行おうとするが、アルキオネの使った加護がそれを拒む。

 

「はーい、まかせて~風よ~まきちらせ~」

「オオオオ……!」

 

 それを嵐の加護、オーディンが打ち消す。

 アルキオネの闇を振り払わんとシャードの光が到来。オベロンとアルキオネを分離させる。

 

「師匠。あの闇を再び封じねば……!」

 

 プラウディアがルーテシアに言う。

 分離していくオベロンに対し、アルキオネがその手を伸ばす。

 

「やめ、て……」

「大丈夫……アルキオネ! わたしたちを信じて!」

 

 蛍がその手を掴もうとする。

 

「オベロンを……消さないで……お願い……だから……!」

「わたしたちを……貴方の師を!」

「これ以上……うちから奪わないで……」

 

 その手を掴んだ。

 蛍ではなく――オベロンが。

 ともに歩む者。アルキオネの大切なパートナー。

 それは、ルーテシアに師事する前から大好きだった、相棒。それが闇の大魔の力を得て、変貌した者。

 

「…………ごめんなさい、アルキオネ。これは私が生み出したもの……私が決着をつけなければいけないの……!!」

 

 そうとは知らないルーテシアが、闇の大魔、レクサスを封じるべく術式を開始する。

 

「オォオオ――!」

 

 嵐が加護の力を使い電磁砲撃。オベロンは回避を試みるも、無謀に終わる。

 

「いっけ~~」

「やだ……いかないで……やめて……!」

 

 蛍が闇を祓うべく接敵。闇を切り裂く斬撃をお見舞いするも、

 

「やめてえええええええ!」

 

 アルキオネが自らのシャードに力を籠め、オベロンを躱させる。

 

「師よ。まずは私が」

 

 躱したオベロンの着地地点に対し光の魔力をディグニティが叩き込み、すかさずプラウディアも裏拳による打撃を叩き込む。

 

「だめええええ!」

 

 再生を司る紋章と、死を司る紋章。

 発動しないままだった加護がそれらの攻撃を軽減しダメージを打ち消す。

 攻撃を打ち消されたディグニティとプラウディアの二人だが、どこか満足気な顔をしている。

 まさか、と気づいたときには既に遅く。ルーテシアのピンポイントレーザーがオベロンの目前まで迫っていた。

 

「これで…………終わりですっ……!!」

「炎よ……力を貸して!!」

 

 その一撃に蛍の加護の力が加わり、神炎なる一撃がオベロンを貫いた。

 

「ハハ……ウエ……」

「レクサス…………ごめんなさい」

「ありが…………とう……」

「……!」

 

 包みこまれたオベロン――闇の大魔が小さな光となっていく。

 最期に、レクサスの微笑んだ顔が見えた気がした。

 こうして、闇の大魔は封じられ、戦いに終止符が打たれたのだった。

 

*1
ベルフェゴールマザーはそのような特技が使えるわけではない。キングは産めるのにマザーは産めないのはなぜ……実は生み出すのはアルキオネなので、産むのはアルキオネとも。

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