緋弾のアリア -Knowledge is power-   作:ピュアドライバー

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21話 不穏

「ん…」

 

ふぁ…いまなんじだろ?

 

そう思い取り出した携帯の画面には6:42の表示。

 

まぁちょっと早いけどいい時間だな。

ってあれ?何で俺ソファで寝てたんだ?

 

カサッ

 

ん、紙?

 

先程まで俺が寝ていた場所に落ちていたメモ用紙サイズの二つ折りにされている紙を拾い上げる。

表には『裕介君へ』と書いてあるため、どうやら手紙の類いらしいことがわかる。

開いて中身を見る。

 

えーっと、詩織から?

そうだ、昨日は確か詩織に付き合ってもらってそのあと…思い出せない。

もしかして詩織にここまで運んでもらったのか?

 

…は?どういうことだよ、これ!

とにかく詩織に直接会って聞かねぇと!

 

 

〈side・キンジ〉

んー…なんだリビングの方がやけに騒がしいな。

 

リビングからの物音で起きてしまったために、伸びをして体をほぐしながらベッドルームにある二つの二段ベットの内の一つの普段使っている下側から立ち上がる。

 

ユーは…ベッドにはいないか。

てことはこの物音の発生源はあいつだろうな。

昨日も帰りが随分と遅かったみたいだし、なんかあったのか?

そーいや、アサルトで詩織と決闘してるのを昨日見たな。確かそれに負けて蘭豹からペナルティ受けたんだっけか?

まさか詩織がユーより強いなんてな。

 

「ユー、おはよう…ってこんな朝早くからどこか行くのか?」

 

「すまんキンジ!今急いでるんだ!」

 

「え?っておい!…行っちまった。」

 

ていうかユーのやつ学校はどうすんだよ。

…ん?なんか落ちてるぞ。

 

拾い上げたそれはどうやら手紙らしく詩織からユーにあてたものらしい。

 

この手紙の内容が気になるところではあるが…見ていいのだろうか。

いや、でももしかするとユーが焦ってた理由がわかるかもしれないし一応軽く確認はしておこう。これも同居人の務めみたいなもんだ。

 

『決闘での約束の件ですが、東京を出て速やかに近衛本家に行ってください。詳しいことは追って伝えます。』

 

は?なんだこりゃ?

 

ピンポーン

 

ユーのやつ忘れ物でもしたのか?

 

「鍵なら開いてるぞー」

 

「む?そうか、では失礼する。」

 

そうして扉の向こうから現れたのは

 

「ここは裕介…いや九重裕介の部屋であってるか?」

 

ユーではなくスーツ姿の見知らぬ男だった。

 

「ってあんた誰だよ!?」

 

タイミング的にユーかと思ったら違ったじゃねぇか。

それにしてもこのスーツ、見覚えがあるぞ。

…そうだ、兄さんが仕事で着てるのと同じだ。ってことは

 

「申し遅れたな。俺は武偵庁所属の特命武偵、近江茂人だ。」

 

やっぱり特命武偵か…

それにコノエってまた厄介そうなのが来たもんだな。

 

〈side・キンジ 終〉

 

 

詩織を探しに出たはいいけど、どこにいるか…

片っ端から探すには学園島は広すぎる。

あの謎な手紙だけ残して姿くらますとかどういうことだよ!

 

…ダメだ、こういう時こそ落ち着くんだ。少し状況を整理してみよう。

詩織は一週間ほど前に転校してきた近衛本家の人間だ。

そもそもこの時期に引っ越しとかの都合も無いやつが転校ってのは明らかにおかしい。

ってことは、あの手紙から察するに俺に関わる何らかの命令で東京に来た、とか…?

 

「裕介」

 

ん?この声は…

 

「なるほど、追って連絡するとは書いてあったがまさかあんたが来るとはな…茂兄」

 

振り返るとそこにはスーツ姿の茂兄が立っていた。

茂兄がわざわざ来るあたりますます怪しいぞ。

 

「詩織、いや近衛本家が何で俺を…?」

 

「それは…俺の口からは話せない。」

 

「なんだよそれ、いきなり本家が俺に何の目的で…話してくれないなら…!」

 

決闘で決めたこととは言え流石に無茶苦茶だ。

詩織には悪いが約束は破棄させてもらおう。

色々と引っかかること多過ぎるしな。

 

そうして俺は茂兄から逃げ出す態勢に移行する。

 

「裕介、落ち着け。事情は後に分かることだ。」

 

すると茂兄は言いながら瞬きをし始めた。

 

…これは瞬き信号?

 

『カンシアリ サワギハオコスナ』

 

監視?

 

茂兄が少し視線を俺からずらしたので俺もポケットからケータイを取り出し鏡面部分を使ってその視線の先を見ると…

 

いる、確かにいるぞ。

確認できただけでも3人、それもかなりの手練れのような雰囲気を感じる。

…どうやら俺に拒否権はないみたいだな。

 

 

 

 

 

それから俺は茂兄に言われた通りに車に乗り込んだ。

これで京都の本家まで行くらしい。

ちなみに車内は俺と茂兄の二人のみだ。

 

「さっきの奴ら、あれは本家の人間なのか?」

 

「あぁ、その通りだ。あれは近衛本家直属の近衛隊、通称新撰組だ。」

 

「新撰組!?」

 

「これは本来近衛の人間でも一部の者しか知らないことだが、さっきの奴達が所属する新撰組はお前も知っているあの有名な組織の後継だ。」

 

え?

全然状況が呑み込めないんだが、つまり150年ほど前に反幕府勢力を取り締まる活動をしていたあの新撰組が実は解体されずに今も残っていて、それが近衛の傘下にあるってことか?

かなりぶっ飛んだ話だな。

もし本当だとしたら世に出回っている歴史が偽りってことになるが…

茂兄がこの状況で嘘を吐くとも思えないからな。

 

「そもそも近衛家の前身である近衛隊と新撰組はその昔、目的は似通っている部分はあったものの別々の組織として活動していた。それが幕末に新撰組が主力の隊士を失い弱体化したことで近衛隊が新撰組を吸収するという形をとったわけだ。」

 

「ってことは表向きの歴史とは別に新撰組は本当は吸収されて存続していたのか…」

 

「そういうわけだ。ただ重要なのはそこではない。」

 

「え?」

 

「今の新撰組にはその名を引き継ぐのに正当な血統の後継者が数名存在している。」

 

「正当な…血統?」

 

「つまりその昔、新撰組の中枢を担っていた『偉人』たちの子孫が今の新撰組にはいる。そしてそのどれもが常軌を逸した力を有しているということだ。」

 

『偉人』ってことは俺でも知ってるような近藤勇、土方歳三などの有名隊士ってことだろう。

専門家が知ったらホントとんでもないことになるな。

 

「それで、そんな『偉人』の子孫までもが出向いてきて俺に何をしろっていうんだ?」

 

「俺の口からすべてを話すことはできない。ただこれだけは言っておく…」

 

「なんだよ?」

 

「…待っていろ、俺たち(・・)がなんとかしてやる。」

 

「…え?」

 

茂兄がそう言った瞬間、俺は催眠をかけられたかのように意識を手放した。

 

 

<side・近江茂人>

 

「本当にお前のことを信じてもいいんだな?」

 

「もー、だから言ったじゃない。いい加減信用しなさいよ!それともやっぱり元無法組織の人間は信用できない?」

 

「いや、そういうことを言ってるんじゃない。俺が言っているのはお前が裕介を助ける縁やメリットが見えないからだ。」

 

「まぁ…そうかもね。縁は教師と生徒のイケナイ関係があるけど、メリットは無いわ」

 

「なら何故?」

 

「夢で見たのよ…この子はいずれ重要な局面でキーパーソンの一人になるってね。だから助けてあげるの。「そんな理由で」ってあなたは言うわね。ほら当たった。」

 

「…!」

 

「こんな風にね、アタシにはわかるのよ。このある意味不気味な能力のせいで…。だから信用して、決して軽い気持ちで行動してないって。」

 

不気味な能力か。確かにそうかもな、まるで頭の中を、いや心を覗かれているみたいだ。

だが、だからこそ頼ってみてもいいのかもしれない…

 

「…わかった。裕介のことは任せた。確かに俺がやるよりも君の方が適任かもしれない。俺はどうやら新撰組の奴らにマークされているようだしな。」

 

「うんうん、それでいいのよ。あと無理はするなって言葉は口に出さなくてもいいわよ?」

 

「!!」

 

「あはっ、いつもお固い表情だけどそんな顔もできるのね。」

 

「…俺はお前が苦手だ。」

 

「あらら、せっかく"お前"じゃなくて"君"って呼んでくれたのにまた戻っちゃったわ。」

 

くっ、こいつ完全に俺で遊んでいる…

 

「あ、そうだ。金一の弟も巻き込んだみたいだけど…いいのかしら?」

 

「それを言うならお前だってあの金髪女に何かやらせる気だろう?」

 

「あら、バレてたのね」

 

そう言って少し驚いた表情をしてくる。

 

「当然だ。先輩の弟のことだが、先輩のお墨付きだ。問題はない。」

 

「そう、金一が…ね。それなら安心。じゃ、次会うときは全て終わった後ね!」

 

そうして奴は姿を消した。

 

俺は近衛家の縛りで表立って動くことはできない。

だが役者をそろえるくらいのサポートならしてやる。

だから取り返しがつかなくなる前に最後はお前自身が過去に決着をつけてこい裕介…!

 

<side・近江茂人 終>

 

 

* * * * *

 

「・・・任務は政府要人の護衛だ。任務地はフランス、ウール=エ=ロワールのシャルトル。貴君の部隊への要請ということでわかるとは思うが、現地にてEUから指名手配中の犯罪者が今回の国際会議にて要人を暗殺するとの犯行声明を出してきたため、事が起きる前に始末をとのことだ。今回のターゲットは数年前からMという通称で名を馳せている殺人鬼。フランスからの応援部隊との接触を図り、協力して事に当たるように。」

 

― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ―

 

「貴方が日本の…。随分と幼い、いやお若いようだ。その年でこのような仕事を…いや失礼、私はフランス政府からの派遣で参上したジャックだ。」

 

― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ―

 

「私…私の名前は・・・ジャンヌだ。」

 

― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ―

 

「ふっ、さっきまでの威勢どころか何もかも失ってしまった気分はどうだい?そんな君の最期は…この金属の塊とともに。かつてない興奮を私に与えてくれた君の最期なんだ。私も偉大なる祖父に誓って君へ最大限の恐怖を贈ることにするよ。ではいずれ死後の世界…といっても私と君の行く末は天国ではなく地獄だろうがね。」

 

* * * * *

 

なんか、今いろんな光景が頭をよぎったような…

 

「・・・そうですか。では私が。ええ、任せてください。」

 

ん…誰の声だ?

 

「あら、起きられたのですね?」

 

気づくと横には着物を着て正座をしながら俺を微笑んで見下ろしてくる女性の姿が。

 

…すっごい美人だ。大人びた雰囲気で、年は俺と五つ位は離れている感じがする。

 

「あなたは?」

 

「私ですか?私は近衛雪と申します。」

 

雪さんっていうのか。

近衛…あっ!

 

「裕介さんは眠りに就かれる前のことを覚えていますか?」

 

「えっと、詩織…さんから本家へ行くよう言い渡されてそのまま茂兄の車で…あれどうなったんだ?」

 

「ふふっ、お車の中で眠られてから近衛邸に着いた時もそのままでしたのでこちらのお部屋まで運ばせて頂きました。とてもお疲れだったのですね。」

 

う、そんなにぐっすりと寝ていたのか…。

 

「ということは茂兄は?」

 

「はい、お帰りになられましたよ。」

 

そうか…結局なんで本家に連れてこられたのかとか色々と聞くことができなかったな。

近衛関係の中だと父さんや母さんを除いたら一番信頼できる人が茂兄だっただけに教えてもらえなかったのが、裏切られたみたいで…。

って何考えてんだ俺は!色々と助けてくれてる茂兄に対して…

 

「裕介さん、私の前ではもっとリラックスしてください」

 

俺が色々と考えてしまったのがわかったのか、雪さんはそう言ってくれた。

 

「はい…ありがとうございます。」

 

「敬語もできれば()して下さいね?私は裕介さんの言うなればお世話係なんですから。」

 

微笑みながらそう言う雪さん。思わず見惚れてしまう…。

 

「お世話係?」

 

「そうですよ?お世話係です。不自由なことがあれば何でもお申し付けくださいね?」

 

不自由なことか。なら茂兄も教えてくれなかったことを聞いてみるか。

 

「じゃあ教えて下さい。なんで俺は近衛本家に連れてこられたんですか?」

 

「あら?聞いていないんですか?」

 

「えっと…はい」

 

「私はてっきり詩織様か茂人さんから聞いているものだと…」

 

茂兄があんなに頑なに教えてくれなかったのに雪さんはあっさり教えてくれるのか?

 

「武偵高には交換生、という武偵高同士で生徒を一時的に交換することで互いの武偵高の伝統や考えなどを共有しようという制度があるらしいのです。この度裕介さんと詩織様は東京と京都の武偵高でそれが適用されたためこのような形となったようですよ?」

 

交換生…あまり聞きなれない言葉だが…。

詩織の様子や茂兄までわざわざ出てきたあたりから、俺はてっきり何か大きな事件のようなものが関わっているのではと思い込んでいた。

だからこそ何も言わずに俺の前から姿を消した詩織や、不自然に何も話してくれない茂兄には違和感やなんかこう苛立ちのようなものを感じてしまっていたんだが、それも取り越し苦労だったんだな。

今までは悪いことばかりを考えていたが、雪さんの話した内容はそのような悪いことではなくすんなりと頭の中に入ってきて、それが本当のことだと思わせられる。

…いや、もしかすると本当のことだと思い込みたいだけなのか…?

ダメだ、これ以上考え出したら何も信じられなくなりそうだ。

 

「そうだったんですね。俺はてっきりもっと大きな何かがあるのかと思ってて…安心しました!」

 

「…それは良かったです。明日は日曜日ですので京都武偵高に通うのは明後日からですね。今日はもう遅いのでゆっくりお休みください。」

 

「そうですね、そうします。」

 

そうして雪さんはこの家…というよりお屋敷だな、のどこに何があるのか一通り案内してくれた後、おやすみなさいと部屋を出て行った。

それにしてもデカいな、このお屋敷は。

なんか所々に守衛さんみたいな人がいるし。

流石は近衛本家といったところなのだろうか。

 

ふと携帯を開いてみるが、メールも着信も何も無かった。

そういやキンジにも何も言わずに出てきちゃったけど、メールの1つも無いってどういうことだよ!

武偵高同士の制度である交換生ってことだったんなら、教師陣から何らかの説明があったのか?

 

…まぁいいや、こっちから電話して確認したらなんか負けた気がするし。

それに俺が心配していた詩織のことも交換生とやらのことだったんなら辻褄が合うしな。あの日の朝は忙しかったんだ、きっと…。




中途半端で大変申し訳ないのですがこの話をもって、『-Knowledge is power-』を凍結いたします。

ですが新たな小説という形でこの話の続きはいつか投稿したいと思っています。

形、作品名は変わりますがこれからも投稿していきますのでこれからもよろしくお願いいたします!

では、また会う日まで!

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