緋弾のアリア -Knowledge is power- 作:ピュアドライバー
試験開始から40分。残っているのが自分を含めて3人しかいないということなど露知らない裕介は…
よし。階段での遭遇戦はやらずに済んだみたいだな。正直遭遇戦なんて心臓に悪いイベントは御免だからな。まぁ、そんな訳で2階に降りてきたはいいんだが…。
やっぱりさっきのは少しやり過ぎだったかな?下の階は瓦礫が結構派手に散らばっていて砂塵も舞って少し視界が悪いぞ…。器物損壊とかで弁償は…ないっすよね?うん、ないと願おう。
それからあの爆音、相当なもんだったからな。気づいた奴が一気に集まってきかねない。もし、そうなったら厄介だな…。
…いや、待てよ。これは逆にチャンスなんじゃないのか?同時に何人かが集まってきて、そいつらがお互いに潰しあって消耗したところで俺が一気に勝利をかっさらう!まさに漁夫の利ってやつだ!
それなら、一先ず身を潜めておかねえと…。
自称『漁夫の利』作戦を遂行するために身を潜めていた。
一方その頃、撃破数現在トップの遠山キンジは…
…ふぅ、さっきの奴は結構手こずったな。というかあの人どう見ても10代には見えなかったんだが…。
もしかして…。そうか、確かにモニターで全ては監視出来ないしな。それにこの試験の結果によって入学時の武偵ランクも決まるらしいし。恐らくあの人は受験生に紛れ込んでいた覆面試験官だったんだ。
…気絶させちまったけど大丈夫…だよな?
まぁ、そんなことはこの試験が終わってから考えよう。今までに撃破したのはさっきのも含めて6人。もう大分終盤の方っぽいし、残ってるやつも少ないだろう。ただ残っているのは2戦、3戦と勝ち残ってる奴らばかりだ。今までのようにすんなりとはいかないだろう。九重のやつは残ってるかな?
・・・この爆音は…!?下の階かっ!相当派手にやってるらしいな。周囲を警戒しつつ、音源の方に向かってみよう。
すんなり降りてこれたが。
…っ!?これは!?そうかさっきの爆音はこれだったのか。
な…!?誰かがこの穴から下の階に宙吊りにされている…!ここまでの派手な爆発を使ったにも関わらず拘束することで無力化したのか…。もし狙ってやったものだとしたら相当な策士だな。一体誰が…?
…!下の階から少し気配を感じるな。誘われているのか…?まぁいい。その誘い、乗ってやるよ・・・
「くふふっ、やっと降りてきたねー!…っと、一体どちら様かと思えばキーくんではないですか!まだ残ってたんだね!」
「理子…か。そういう君もなかなかやるようだね。さっきの爆発は君がやったのかい?」
「ブッブー!残念ながら違うのです!というか理子もそれが気になってここに来たんだよねー。でもそれっぽい人が見当たらなくて…。」
「そうか、君じゃなかったのか。ということは、爆発を起こした本人はもう他のフロアに逃走済みなのかもな。」
「うん、多分そうだねー。でも、…本当はその爆弾くんとやりたかったんだけどー、キーくんとやれるならそれでもいいかも!ね?いいでしょっ?」
「おやおや、俺としてはこんな可愛い子をあまり傷つけたくはないんだが…。他ならぬ理子の望みとあらば応えるしかないな。」
「やったー!ここからは理子ルートみたいだね!もちろん、スキップは不可だよ!…じゃあキーくん。いくよ?」
「あぁ。」
・・・あの構えは?全体的に重心を後ろめにして姿勢を低くしている…。これはまさか…?
…っ!早い!くっ、掌底を突きだして…!?見かけによらず重い一発だな。防ぐので手一杯になってしまう。それにあの攻撃…やっぱりカンフーか。ならなおさら気を抜いたらヤバいぞ…。
「おぉー!!スッゴい!まさか今のを防いじゃうなんて!」
「…ふぅ。見かけによらず重い攻撃だな。それにまさかカンフーの使い手とはな。」
「ご名答!そんなことまでわかっちゃうなんてキーくんは一体何者なのかな?」
「ははっ、映画で見たことがあるなと思っただけさ。…次はこっちからいかせてもらうぞッ。」
理子は今までの感じからして相当な実力者だ。なら、手加減は不要だッ!
あまり近接戦は好きじゃないんでね。でやらせてもらうぞ。
「おっ!今度は
まずは牽制に一発だ!
「あははっ!いいよっ、キーくん!いいよ!」
続いてフルオートで3発だッ!
一発は理子を直接、あとの二発は地面を使っての跳弾だ。
「そのくらいよゆ…うっ!?まさか…跳弾!?」
「流石に今のは避けられなかったみたいだね。」
「キーくん…強いね。これは理子も本気出すしかないかなー?」
「さっきのは本気じゃなかったのかい?」
「あったりまえじゃん!いいよ。見せてあげる!理子の本気!」
っ!距離を詰めて…!?また格闘か…?いや、これは…アル=カタか!
「キーくん、後悔してももう遅いよ!」
…?なっ!?
これは流石に予想してなかったな。というか分が悪すぎるぞ、この状況。
アル=カタは、お互いが防弾服を着ている状況下では銃弾が一撃必殺の武器になり得ないためにそれを『打撃武器』として使うスタイルだ。そのアル=カタにおいて、銃が一丁と二丁とではそれこそ天地の差だ。生憎俺が携帯してる拳銃は
「ガンエッジ?そんなのじゃ、ダメダメだよ!」
アル=カタでは銃口の向いている方向で射線を予測してかわすしかない。
来るぞ、一撃目!
…なんとか紙一重だな。こっちも反撃だ!
…かわされたか。相当アル=カタに慣れてるな、理子は。
「あははっ!もっと、もっと!」
楽しんでるのか?闘いを。さっきまでとはまるで別人だ。
…くっ!やはり分が悪すぎる!…っ!しまった、弾切れだ!
「カハッ!」
「そんなものなの?キーくん!」
ドスドスドス・・・・
「ガハッ!」
マズイ、容赦が無いぞ理子のやつ。どんどん撃ってきてる!一旦距離を置かなければ!
「どこ行くの?キーくん!もっと、もっとやろうよ!」
はぁはぁ、何とか距離をとったが…。また近づかれてアル=カタに持ち込まれたら正直勝ち目がないぞ。どうする…!
〈side・理子〉
久しぶりだ、こんな感覚。まさかこんなところで本気になれるなんて!
いや、本気を出した気になっていただけかもしれない。いつも化け物みたいな奴らとの闘いで、自分なんてあそこじゃ最弱の部類だったし。何より心のどこかで
でも今は違う。アタシは今こんなにも自由で本気を出して闘っている!あぁ、なんて幸せなんだろう…。もっと、もっと闘いたい!
遠山キンジは確かに
「キーくん?まだ理子ルートは終わってないよ?早く続きを・・・」
「一の型、突裂」
…っ!?こいつは…九重裕介?まさかっ!ずっと機会をうかがっていたの!?…避けられない!!
「うっ…!!」
「なっ…!九重!?そうか今まで機会をうかがっていたのか!」
「ゴホッ、ゴホッ・・・よくも…よくも邪魔をしてくれたな!!九重裕介!…気が変わった!キンジの前にお前から倒す!!」
先程までとは一変、怒りの感情を露わにした理子が今にも裕介に飛びかかろうとしていた。
<side・理子 終>
時は少し遡り、キンジと理子が闘っている最中。裕介は・・・
…こいつら、他の受験生とは比べものになんねぇ。正直格が違い過ぎる。チャンスをうかがってはいるが…不意をついたとしても勝てるのか?こいつらに。
…なんだ?理子がいきなり距離を詰めて…。
に、二丁拳銃!?キンジの奴も拳銃を持っているのと逆の手にナイフ…?一体何をしようっていうんだ?
…これは!お互いに超至近距離で撃ち始めやがった!すごい!あんなにも近くからの攻撃を両方ともしっかり処理してる!…けど、ほぼ素人の俺でもわかる。この超接近戦、理子の方が押している。この状況下で拳銃が一つか二つかの違いはかなりデカいな。
…やっぱり。キンジの奴がかわしきれないで一発もらっちまった。
と思ったら理子の奴、容赦ねえ…。キンジに立て直す暇を与えずにどんどん撃ちこんでいってる。…キンジは何とか距離をとったみたいだが、もう一度さっきの距離まで詰められたらそこで終わりだろうな。
キンジはしばらく満足な状態で動けそうにないみたいだな…。キンジが相当消耗してる今が俺の仕掛けるチャンスの時なのか?
だけど、ここにいる三人以外でまだ残っている可能性が…。
いや、待てよ。よく考えてみればこれだけ派手にやっているんだ。もし残っている奴がいるなら何かしらの行動を起こしてるはず…。だが、そんな気配は全くに感じない。もう三人以外残ってないんじゃないのか?
いや、多分そうだろう。というかそうだと仮定しよう。でないとこの絶好のチャンスを見逃すことになる。
ただ、仕掛けるにしても今の三割の集中状態じゃダメだ。もっと集中を高めないと…。
でも、茂兄が言ってた『集中の段階の使い分け』は意識しないと。…何でも茂兄曰く、集中には様々な段階があって、俺が銀行事件の時になったような100%…つまり別の人格のようになる状態や、そこまではならない80%の段階等があるらしい。そして、それらの段階にはそれぞれメリット・デメリットがあるらしく、100%には状況判断や作戦構築…要するに頭を使って考えることにはずば抜けているものの戦闘中でも必要以上に頭で考えてしまうから戦闘には不向きらしい。そしてそのメリット・デメリットが入れ替わったような状態が80%らしい。
つまり、状況を分析し作戦を構築するのは100%。そのあとの戦闘には80%といった具合で使い分けをするのが一番強いらしい。
実際に段階の使い分けをするのは初めてだが、修行ではどちらの状態にもなれている。あとは応用を利かすだけだ。
…よし。まずは100%だ!
そして次第に集中力が研ぎ澄まされていった裕介は、銀行事件のときに見せたような別人になったかのような状態になった。
状況、峰理子並びに遠山キンジを下方に確認。なお、遠山キンジの危険度は現在負傷により下降中。よって現在の最も危険な対象は峰理子と断定。峰理子は依然こちらの存在には気づいていない模様。
制圧方法は…相手の技量からして拳銃よりも刀による攻撃が有効と判断。
これより攻撃を開始する。・・・ふぅ。
瞬間、裕介は身を潜めていた物陰から理子に向って勢いよく飛び出した。
「近衛流一の型、突裂」
「うっ…!!」
よし、一撃目決まった!それに使い分けも出来てるみたいだ。
「なっ…!九重!?そうか今まで機会をうかがっていたのか!」
「・・・よくも…よくも邪魔をしてくれたな!!九重裕介!…気が変わった!キンジの前にお前から倒す!!」
理子のやつ相当荒ぶってるな…。銃口を二丁ともこっちに向けて接近している。やっぱりさっきの超近接スタイルに持ち込む気か!…だが、そんなに上手く行くと思うなよ。・・・
そうして理子は裕介に二発同時に発砲した。
…二発ともはきついか。なら一発は避けてもう一発は・・・
「なっ!?弾丸切り!?」
よし、流石は近衛流の集中力だ!弾丸も一瞬なら正確に軌道が目視でわかる。軌道がわかってしまえば、あとはその軌道上に時雨を構えておくだけで弾丸切り成功だ!
このまま、理子が困惑している少しの間に一気にいかせてもらうぜっ!
「はぁぁぁ!」
「くっ!」
「すごい…。九重の奴、理子の得意なアル=カタに持ち込ませないように上手く立ち回っている…!」
流石に一筋縄ではいかないか。理子の奴、ただかわすことの専念してるわけじゃなく、少しづつ俺の動きを読んで反撃しようとしてやがる…。
そうなったらここまで作ってきた流れが一気に崩れちまう。
テニスでも途中まで圧倒してた相手にいつの間にかひっくり返されることなんてざらにあるしな。そんな時唯一流れを相手に譲らない方法が一つだけあった。
それは…相手の反撃の前にギアを上げて一気に片をつけることだ!
…あの技で一気に決めるしかないか。正直、修行でもあまり成功してなかった部類の技だ。今成功する確率は良くて五分五分ってとこだ。それに失敗したら決定的な隙を作ることになる。だが、何もしなければこのままずるずると流れがひっくり返されるだろう。なら、俺は50%に賭ける!
そして裕介は少し理子から距離を取り、時雨を下段に構えた。
「理子…。これで終わりにさせてもらうぜ。」
「終わり?まだだよ!まだ終わらない!何をするつもりなのか知らないけど、それを攻略して一気に形勢逆転してやる!」
「ふぅ…。近衛流三の型、
言い放ち、裕介は下段に時雨を構えたまま理子への距離を一気に詰めた。そして正面に来た瞬間、まずは時雨を上に振り上げて一撃。
そして振り上げる瞬間に反動を生かして地面を蹴り、理子の横を通り越し背後に来た瞬間、振り上げたために上段にあった時雨を逆手に持ち、そのまま腰にある鞘へ戻すかのような動きで刀を後方横に薙ぎ二撃目を繰り出そうとする。
しかし・・・
しまっ…!一撃目が浅かったか!理子はダメージは負ってるものの俺が時雨を横に薙ぐより前に一発撃たれるぞ!!
ドン!!
「くっ!!だが…この一撃は・・・!」
…何としても決める!!
「な…んで、一発命中した時点で…勝負は…」
バタッ…
やった…のか…。けど俺もさっきの一発でも…う…
バタッ…
そこにあったのは気絶して倒れた2人の少年少女と、それを目を丸くして見ている1人の少年の姿だった。
ビーーーービーーーー・・・
「そこまでや!遠山キンジ以外全員の戦闘不能状態を確認。これでアサルト試験第2班は終了や。」
ご読了ありがとうございます!
いやー、理子の表と裏の使い分けが難しい!!
どこかおかしなところがあったらご指摘お願いします!