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ぬるま湯の中を漂う感覚を感じた。
私が何者かすらも分からない中、ふと頭が締め付けられる感覚を覚える。
その感覚は頭から始まり足先へと伝っていく。
同時に閉じられた瞼に光の感触。
恐る恐る目を開ければ、周りには驚愕の色浮かべる者達が居た。
その日、禪院直毘人は一人で何時ものように酒を飲んでいた。特にこれといった用事もなく、強いて挙げるなら自身の側室の一人が産気付いていることくらいしかなかったため、完全に寛いでいた。
瞬間、屋敷の一画から濃密な正の呪力、即ち反転術式の行使を感じた。その力は瞬く間に屋敷を覆い尽くし、呪霊部屋の呪霊を全てを祓い尽くした。
直毘人はいきなり過ぎるその事態に暫し呆けていたが、それも束の間、すぐさま反転術式が発されている部屋に向かった。
そこは、自身の側室に出産の為に宛てがわれた部屋だった。このような部屋から何故これ程までの濃密な正の呪力が発せられているのか?と頭を捻りながら襖を開け―――我が目を疑った。
反転術式の発生源は、赤子だった。
赤子が、反転術式をそれも体外へと放出され、屋敷全体を覆い、あまつさえ呪霊を祓う程の濃さを持って扱っていることに、直毘人は目眩さえ覚える―――と同時に、予感がする。
この赤子はいずれ、呪術界に大きな何をもたらす事を。
これはどういうことなのでしょうか?
私の眼の前には表情を驚愕の色に染めた大人たちが数名居ますね。
おや、もう一人立派な髭を携えた方が増えましたね。この方も驚愕している模様。
ふむ、私は産まれたてという認識で良いみたいですね。
それにこの白い靄の様なものは何なのでしょうか?私の体から吹き出ているみたいですが……。先程からほんの少し気怠さを感じるのはこれを吹き出しているせいなのでしょう。少し体に留めて見ましょう。………出来ましたね。
それにしても産まれたばかりだというのに、何故私には自我あるのでしょうか?普通こういったものはそれなりの知識を得てから芽生えるもののはず。こうして思考を廻すだけの知識は何処から来ているのか?少し気になりますね。
あっ、自分のことに夢中になりすぎて、産声を挙げるのを忘れていましたね。
それでは、赤子は赤子らしく泣くとしますか。
直毘人は、先程の予感が確かなものだと感じた。
何故なら直毘人の眼の前にいる膨大な量の反転術式を垂れ流しにしている赤子が、その生み出された正の呪力を淀みなく自身の内へと満遍なく行き渡らせ留めたのだ。
その操作の洗練のされようは歴戦の呪術師のそれに匹敵、或いは凌駕しているとは思わせるものであった。
その後思い出したかのように産声を挙げたことから、間違いなくこの赤子には自我がある。俄には信じがたいがそう考えると生まれながらに膨大な量の正の呪力を生み出せる事にまだ納得がいく。
口元がついニヤけてしまう。間違いない、この赤子は呪術界を変える逸材だ。
まだ赤子の性別すら判明してないですね。
次回も宜しければお読みください。