絵名「はい、ちょっと見せてみて」
ヤンキーの青年が描いてくれた絵は、プロの絵師並に上手く。
内匠P「ちょっと下手だったかな」
絵名「えっ、私より上手い!」
図体のでかい中年男は、日曜朝の変身ヒロインレベルにお目々キラキラで。
武内P「あの、どうでしょうか?」
絵名「私こんな目してたかしら…」
そして年端もいかない少年の絵は、テレビの前のお友達みたいな絵だった。
米内P「すごいでしょ!」
絵名「うわー、みんなの似顔絵で元気100倍 絵名姉さん(棒)」
どうしてこうなったのか…。このヤンキーが彰人の知り合いで、同人誌販売イベントに間に合わせたいって言うから。絵の練習に付き合っているのに…。
絵名「え〜、試しに私のこと描いてもらったけど。みんな絵のコンセプトがバラバラだね」
「「「そうなんです!」」」
あ、それは気付いていたんだ。ただどんな絵を描きたいのか、私は専門外だけどどんなストーリーにするのか、いくらか気になる点はあるけど。
絵名「3人で作成するんですよね?」
武内P「そうです」
絵名「誰が作画担当ですか?」
内匠P「俺だよ」
あ〜、まあ、作画は大丈夫そうね…。ただ…。
米内P「オレがストーリー担当だよ!「大怪獣漫画 サクヤVSキラリ」の!」
武内P「私は売り子を担当します」
残りが不安なんだけど…。
絵名「………ってなにを気にかけてるの、私!」
後日、気になってそのイベントにやってきたけど…。予想通り、彼らのブースには誰ひとりとしてお客さんがこなかった。
絵名「どうしたのこの状況!?誰も買ってくれていないじゃない!」
内匠P「ああ、あんた彰人の姉ちゃん。ちょっと試しに読んでみてくれよ、こいつの最高傑作なのに」
どれどれ、絵は悪くないわね…。ただ、ストーリーはめちゃくちゃだけど…。
絵名「えっと、これはどんなお話なのかしら…」
米内P「えっと、ドカーンとなってズドーンとなってバビューンとなって…」
具体的な説明ができてない!そんなんだから売れないのよ!まあこれもあるけど一番の問題は…。
絵名「そっちの中年男、どうしてミニスカなんて履いてるのよ!」
武内P「私は売り子ですから、このような衣装のほうが興味を持ってくれると思いまして…」
SNSで笑われ者として写真を投稿される、という意味なら注目されるけど…。
絵名「待って、誰かがくる」
こんなダメダメな3人組に同情してくれたのか、もの凄いヘアースタイルの男が同人誌を買いに来てくれた。
「一冊くれないか?」
米内P「どうぞ」
とても険しい表情だった。まるでプロの編集者さんみたいだった。
「なんだこれは、ストーリーに対して絵に迫力がない!だから一冊も売れなかったんだ!そうだろ!!」
内匠P「ごもっともです。俺が描いたやつです」
あら、絵に対して辛口の評価。このわけのわからないストーリーにダメ出しすると思ったのに。
「そっちのオッサンと子供とJKも描くのかい?ちょっと見せてくれよ」
武内P「いいですよ」
米内P「わかりました」
絵名「私も!?」
なんかこいつらの仲間だと思われているんだけど!?とりあえず初音ミクのイラスト描こう。まずは私のから…。
「普通すぎる!」
続いて武内Pの少女漫画風のミクちゃん。
武内P「どうですか?」
「なんだこのクリーチャーは、バカにしてるのか!」
そして最後は米内Pの幼稚園児レベルの画力で描いたミクちゃん。
米内P「どうですか?」
「………、なんだこれは」
ああ、もう金髪になるんじゃないかって勢いで怒りだすかも。この状況はヤバい!
「最高だ!この女の子がイキイキとしている様子が伝わってくる!!」
絵名「えーっ!?」
いや普通はこの下手な絵に怒るはずなのに!?
「ひょっとしてこの大迫力のストーリーはキミが考えたのか!?」
米内P「はい、二大巨大アイドルの激突するストーリーです」
いやぁ、人の好みは十人十色というけど、誰が何を好むかなんてわからないね。
「漫画の作成に興味を持ったのなら僕を訪ねてくるといい!ああそうだ、僕の名前は岸辺 露伴(きしべ ろはん)!」
武内P「きしべろはん…」
内匠P「キシベロハン…」
絵名「岸辺露伴…。えっ、あのプロの漫画家のっ!?」