今日は日曜日だ。オレは武内先輩と内匠先輩といっしょに変身ヒロインアニメを観ている。そして今週の放送が終わったと同時に、ドンドンとドアを叩く音が聞こえた。
米内P「誰だ、こんな朝早くに」
武内P「上原さんか高咲さんかもしれませんよ」
内匠P「もし怪しいやつだったらすぐに俺か武内先輩呼べよ。だから行ってこい、米内ちゃん」
そこまで言ったなら自分で行けばいいじゃないか。そう思ったけど、オレは言われるがままにドアを開けた。
ガチャ
米内P「はーい」
?「失礼。346プロの関係者のおうちはここかしらぁ?」
あれ、声はするけど姿は見えない。もしかして…。
米内P「透明人間じゃないのか!?」
?「ちがうわよぉ、下にいるわよぉ」
米内P「え、うわ、ちっさ!」
足下を見ると、そこにいたのはゴスロリ衣装を着たしゃべる人形だった。そして「ちっさ!」と驚いたがあるところだけは大きかった。どことは言わないけど…。
人形「あなたねぇ、私のことを知らないのぉ?私はローゼンメイデンの第一ドール、水銀燈(すいぎんとう)。銀様とお呼びなさぁい」
ほんとに知らないな、オレは。
米内P「その銀様がなんの用ですか?」
銀様「そうねぇ、あなたじゃ話にならないから、パパかママ呼んできてくれるぅ」
お、オレだってプロデューサーなのに!この銀様はオレを子供かと思っているな。でもまあそういうことだったら…。
米内P「内匠先輩、武内先輩、お客さんたが来ましたー」
ガタッ
内匠P「おう、どうした、ヤバいやつか?」
武内P「…」ゴゴゴゴゴ
銀様「や、やっぱ他のところをあたろうかしら。私…」
やっぱりこの2人の威圧感はすごいよな。これじゃ話したくても話せないよな。だったら…。
米内P「というわけで連れてきました」
侑「当たり前のようにうちにゴスロリ人形を連れてこないでよ!」
オレは銀様を侑さんの家に連れてきた。女同士なら話がはかどる、いわゆるガールズトークってやつなら大丈夫だろう。
侑「それで、その、銀様は私になんの用ですか?」
銀様「ん〜、あなたじゃ力になれそうにないと思うけどぉ。私って、プロの役者なのよねぇ。それで、主役を務めることになったけどぅ、役作りに困ってるのよねぇ」
侑(いちいち猫撫で声かつ、高飛車な態度だなぁ。彼女…)
米内P「侑さんならなんとかできるかな?」
侑「まって、私よりも適任がいるから。その子に相談しよう」
そう言うと侑さんはスマホを取り出して誰かに連絡した。そしてしばらくして…。
ガチャ
しずく「こんにちは、侑先輩!私でよければ力になります!」
演劇部員兼スクールアイドルのしずくさんだった。以前彼女のテーマソングを考えたのだが、しずくさんはイメージが掴みづらい。逆に言えばどんな風にも感じとれる。それだけ、高い演技力を持っているということだ。
しずく「あなたが銀様ですね。尊敬しています。桜坂 しずくです」
銀様「ふふん、わかっているじゃなぁい」
嬉しそうだな、なんだか。やっぱり自分のこと知ってもらえるというのは気持ちのいいものなのかな?
銀様「あのね、私ね、今度の舞台で主役を演じることになったのよぉ。
それであなたにちょっと相談してもらいたいことがあるのよねぇ」
しずく「いいですよ」
銀様「私、役作りに困ってるのよねぇ。その登場人物になりきるために、どうすればいいのかしらぁ」
しずく「それはね…」 スゥ
ちょっと深呼吸したしずくさん。これから大事なことを話すという雰囲気だな。
しずく「私としては、あえて自分を捨てること。観客にその人物であると思わせること」
米内P「え、どういうこと?」
しずく「アイドルとしてステージに立つなら自分を表現してもいいと思う。でも演技ならそうはいかない。例えば私が米内Pを演じたとします。そのとき必要なのは観客に「桜坂 しずく」ではなく「米内P」として認識してもらうことなの」
侑「なるほど」
銀様「奥が深いわねぇ」
え、いまので二人とも理解できたの!?オレにはさっぱり!
しずく「でもそこまで完璧にやる必要はないと思います。一応、アドバイスのひとつとして受け取ってください」
銀様「そうよねぇ、私なりに表現してみるわぁ。今度の日曜に舞台があるから、暇だったら観にきてねぇ」
しずく「ええ、とにかく観客を感動させればきっと大丈夫ですから」
〜舞台本番当日〜
銀様「えっと、冷蔵庫のショートケーキ食べたの私じゃないのよぉ」
ニョキニョキ
「なんということでしょう。ピノキオは嘘をつくと鼻が伸びてしまう体質となったのです」
侑「いや、人形の役やるならわざわざ相談する必要あったの!?」
「こうしてピノキオは人間になりました。めでたしめでたし」
銀様(しまったわぁ、人間になるってどんな感覚って最後にしずくちゃんに聞いておけばよかったわぁ)