幻想郷に喫茶店を~東方喫茶亭   作:お茶会おじさん

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2.守屋の巫女・新聞記者

 神社に来た時にすることと言えば、二礼二拍手一礼だと千歳に言われ、鈴の前に立って賽銭を投げ込む。小銭どうしが触れる音を聞きながらその二礼二拍手一礼とやらをやってみる。とくに意味がありそうなわけではないので、私は少し敬遠している。父が言うにはこれは一種の習慣なのだという。

 神様に感謝するという行為は、昔の人にとってそんなに大事だったのだろうか。最近は神社が少なくなってきている気がするからよく分からないが。

 

 早苗さんがお茶を持ってきてくれた。氷の入った緑茶でグラスには水滴がついている。今日は秋とはいえど、まだ夏の空気が残っているような天気だったので、冷たいお茶は喉をスッと通って行った。

 

 千歳は神奈子と一緒に神社の裏庭みたいなところに行ってしまい、ここには二人だけだ。会ったばかりで会話がないので、ちょっと気になっていたことを聞いてみる。

 

「早苗さんは何歳なんですか?私は高2なんですけど…」

「私ですか?私は今年で18ですよ。今はまだ17ですがあなたより年上ということになりますね。」

 おおっと、やっぱり上だったか。一応聞いておいてよかった。これで神奈子さんからまた重い空気が発せられることは減るだろう。あの人冗談って言ってたけど、圧がありすぎるんだよなぁ。

 

「それにしてもアグネテさんはよくこの幻想郷に入ってこれましたね。ここは忘れられた人やモノしかないんですよ?」

「ああ、それは私の魔法を使ったんです。」

 

 うちの家系、まぁお母さんのほうの家系だが、代々魔法を使える人が生まれる家系らしい。私の魔法は「鏡」で、鏡を何でもないところに出現させて鏡どうしを行き来することができる。千歳に座標を聞いてそこに鏡を出現させるという方法でここに来たのだ。

 

 それにしても、「忘れられた人やモノしかない」だって?私、忘れられたのかな…。

 

「いや、そんなに落ち込まなくても大丈夫ですよ、そういう方法で入ってきたっていうのなら問題はありませんから。親御さんにも忘れらているということは絶対にありません!」

 早苗さんは励ますように言ってくれた。しかしそこで、一つの疑問が生まれる。

「早苗さんはもともとここに住んでいたんですか?」

 

 そう言った瞬間、早苗さんの顔が暗くなる。

 さっきまで涼しく吹いていた風がやみ、時間が何秒も止まったように感じた。早苗さんの顔を見てみると、目元に涙が浮かんでいた。やばい。これは人間関係に疎い私でもさすがに分かる。

 

 

 ぜったいに踏んじゃいけない地雷を思いっきり踏みぬいてしまった!!

 

 

 で、でも仕方がないよ!早苗さんが私の両親とか、故郷とかの話について振ってきたんだし!ここで聞き返さないほうが良くないでしょう!?

 

 私が何と声をかけるか迷っているうちに、だんだんと周りの音が私たちの周りに届きだすような感覚があった。ふと顔を上げると、千歳が戻ってきていた。

 

「やぁ、二人とも少しはおしゃべりとかしてみたかい?」

 早苗さんは元の表情で、

「あ、はいっ。アグネテちゃんとも友達になれたので良かったです。ねっ。」と言った。

 わたしは何というべきかわからず、なんとなく相槌を打った。

 

 はぁ。この幻想郷ではいろいろ気をもむかもしれない。

 

 そのあと早苗さんは神奈子さんに連れられて小屋の中に戻っていった。少ししかたっていなかったはずなのに、お茶はすでにぬるくなっていた。早苗さん大丈夫だろうか……。

 神奈子さんが、ちょっと歩いたらすごくいい場所があるよ、と言ってくれたがそんな気分にはなれなかったので断った。絶景を見るのはまた今度になりそうだ。

 

 帰り道。千歳と一緒に歩いていると話しかけてきた。

「ねえ、イープノスさん。さっきの早苗さんはどうでしたか?仲良くなれましたか?」

「そんなすぐに仲良くなれるわけないじゃないですか。私のコミュニケーション能力を舐めないでください。」

「本来はそんな自慢気に言うことじゃないと思うんだけどね……。早苗さんと何かあったんですか?」

「いえ……。あんまり。でも、何らかの言っちゃいけないようなことがあるのは確かだなと思いました。」

 

「そうですか。それはいいことです。……ああ、行ってはいけないことがあることではなくて、あなたがそうやって、早苗さんと少しでも距離をつかもうとしたことです。人間関係っていうのは難しいからね。僕でも時々わからなくなるものだよ。」

 

 千歳にしては珍しく、少しくだけた話し方をしてきた。もしかしたら千歳も私と距離を縮めようとしてくれているのかもしれない。そう思いながらカフェへの帰り道を歩く。後ろ髪を引っ張られるような気持ちで。

 

 

   ふもとの神社にて

 

 

 秋だというのにまだ夏の暑さを残している中に立っている神社。そこの賽銭箱の前には二人の少女が座っていた。一人は黒髪をリボンでまとめた巫女服姿の少女。おそらく説明は不要だろう。博麗神社の巫女、博麗霊夢だ。

 もう一人は、魔法使いとメイドの間のような服に、体には合わない帽子をかぶった少女。この少女は霧雨魔理沙。普通の魔法使いである。

 二人はいつものごとく二人で日陰に座り話をしていた。

 

「あっつーい。このままじゃあ溶けてしまうぜ。」

「暑いわね」

「なぁ霊夢。なんかこの辺に、おしゃれなカフェができたらしいぞ。」

「へー」

 

「だから今度行こうぜ」

「そうね」

「なんか淡白だな、返事が。」

「そう?暑いからかしら。魔理沙はいつも通りみたいね。」

「あぁ、そうだぜ」

「あっ、そういえば魔理沙。あんたこの間、庭に神社造ろうとしてたでしょ。神奈子の。」

「え、そんなことしてたっけ」

「してたわ。言い逃れができると思ってるの?」

「なんだよ、お前嫉妬してんのか?」

「ち、違うわよ」

 

「……(最近霊夢の様子がおかしいぜ。いきなりわたしの体触ってきたり、帽子の匂いかいだりして…なにか悪い病気にでもなってんのか?それともこーりんが言ってたストレスか?)」

 

「……ね。ねぇ魔理沙。そのカフェってどこにあるの?」

「ああ、守屋神社の近くだ。霊夢と一緒に行くとしたら三日後だな。その日はアリスとパチュリーとの予定もないし。」

「わかった(アリス、パチュリー……チッ)」

「あ、そういえば、パチュリーに借りてた本どこに行ったっけ。まだ読み切ってないんだよな。」

 

「また?そろそろあいつらのためにも借りていくのはやめたらいいのに。」

「それがやめられないんだよなぁ……。じゃ、わたしはこれで帰るぜ。」

「え、え、ちょっと待ってよ!」

「なんだよ?」

「あ、いや、何でも…ない……わ…」

「そうか。じゃあな。」

 

「あいつ、本当にどうしたんだ?いままであんなことなかったのに…」

 魔理沙は不思議な気分で飛んでいく。この後、彼女は家に帰って借りていた本を読み……

 

 もちろん返さないのであった。

 

 そして霊夢はというと……

「はぁ、魔理沙……。私なにやってんのかしらね。それにしてもアリスとパチュリ―…危険ね。あまり合わせたくないって、感情が言っている。なにかあったら……絶対に許せない。」

 こじらせていた。

 

 

 

   千歳とイープノス、カフェの中にて

 

 

「はぁ、やっと後ろから見てくる感覚がなくなりましたね、千歳さん。どうやら、二人くらいずっと人影がいましたけど、途中で千歳さんの仕掛けた罠に一人が引っかかったみたいです。」

 アグネテは鏡を見ながらそう言った。

 

「そうだね。少しだけど、命の危機を感じたよ。」

「千歳さんもそんなこと考えたりするんですね。」

「そりゃそうでしょ。僕も一応人間なんだから。」

「それ、嘘ですよね。人間感全くないんですが。」

「いーや、人間だよ。きっとね。」

「…」

 

「そういえばイープノス、もう明日からカフェをオープンさせてもいいかい?」

「ああ、そういえば、そうでしたね。大丈夫ですよ。」

「わかった」

 千歳は明日への準備のために、黒いエプロンを身に着けて厨房の奥へと消えていった。

 

 アグネテは暇になり、スマホを取り出そうとする。しかし、家に置いてきたことに気づきため息をつく。

 

「……暇だな~」

 

 しばらく机にうつぶせになっていたが、ふと思い立ちコーヒーのサイフォンの前に立つ。

「…できるかな」

 ものは試し。やってみることにした。幸いにもすぐとなりに本があった。

 

 まずは本の通りに器具を準備した。そしてフィルターを洗い、ろ過機にセットする。少々ひもが緩い気がしたが多分大丈夫だろう。そしてろ過機をロートに取り付け、固定する。竹べらというもので調整するのがかなり難しかったが、本の通りにした。

 お湯を沸かし始める。二、三分ほど待つらしい。うーん、疲れた。準備に十分ぐらいかかってしまった。

 

 ふと外を見ると、CLOSEDの札がかかっている扉の前、で誰かが中の様子をうかがっているのが見えた。

 

「誰ですか?」

 そう尋ねると、相手は扉を開けて入ってきた。

 

「どうも~。わたくし、清き正しい射命丸というものです。新しくお店ができるということでね、取材をしたいんですが、よろしいでしょうか?」

「え、えと初めまして射命丸さん。店長に聞いてきますね。」

 アグネテは厨房にいる千歳を呼びに行った。

 

「千歳さん、なんかウェブライターっぽいひとが来たんですけど…」

 千歳は、了解、と言って玄関に向かった。

 

 射命丸さんは、「文文。新聞」という新聞を書いているらしい。この幻想郷にはテレビとかインターネットがまだないらしくこの人が書くような新聞や、稗田家というところが出している『幻想郷縁起』というのが唯一の情報源なのだと説明してくれた。

 

「というわけでですね、ここのことを記事にしたいのです。あと…私の新聞を購読してほしいです。」

 後から言ったほうの言葉のほうが大きく聞こえたのは気のせいだろうか。

 

「別に構いませんが、値段によりますね。うちもまだどれくらい収益が出るかわからないので。仕事が軌道に乗ってからでも構いませんか?」

 

 なんだ、千歳はこのカフェを遊びでするのじゃなかったのか。てっきりお金があまりまくっている老人のようにカフェを開いたのだと思っていた。

「もちろんです!!その時はぜひお願いします。では、インタビューを始めましょうか。」

 

 そのあとは普通にインタビューを終え、射命丸さんは帰った。年齢(秘密)、身長と体重(覚えてない)、仕事の有無(特にない)、体は鍛えているかどうか(とくにはしていない)、などの質問だった。体を鍛えているかどうかは別にいらなくね、と思ったがどうやらテンプレとやらがあるらしい。

 千歳は帰り際に、新聞を持ってきた人には割引をするという文面を書いてもいいと文に言った。初めにお客さんを呼ぶにはそこそこ効果的だろうと思った。

 

 それに、文さんも次は記者ではなく客として来ると言っていた。

「本当は同僚と一緒に取材に来る予定だったんですけど、その人は罠に引っかかった上ところを上司に見つかって、仕事に呼び出されたんですよね。」

 そんなことも言っていた。

 ちなみに沸かしていたコーヒーは、いつの間にか千歳さんが作り終えていた。むーん、私がしたかったのに。

 

「では千歳さん、今日はこれで終わりですね?」

 明日の準備をしつつ寝る用意をし終わった千歳は、うん、とうなずく。

 明日はいよいよ開店か。そう思いながらベッドに入って眠りにつく。ちょっと楽しみだ。

 

 

一方そのころ、はたては…

 

「ああ! くっそ! 文と一緒に取材する予定だったのに! あのクソ上司! いまさら仕事出してくるんじゃないわよ! それにだれがあんな悪趣味な罠仕掛けたのよ! 拘束した上に服をを溶かす薬だなんて、蒸気を逸してるわ!」

「は、はたてちゃん、今日はすごく機嫌悪いね…」

「そりゃそうよ!文と一緒にいられる機会を失ったなんて、最悪よ!」

「ああ、そっか。はたてちゃん、文ちゃんのことすっごく好きだもんね」

 

「え、なんで知ってるの」

「いつもそんな風に大声でわめいてるからだよ。」

「あう」

 




サイフォンでのコーヒーの入れ方はこちらのページを参考にしました。
https://www.keycoffee.co.jp/shallwedrip/coffeeknowledge/how-to-brew-coffee-with-siphon/

早苗さんはどうなるのでしょうかね~。とくには考えてませんが、きっと3年B組だったんでしょう。
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